ギャンブルであれ、投資であれ、なぜだか起こる「ビギナーズラック」。やがてツキに見放されてしまうものだが、競馬やパチンコなどのギャンブルであればせいぜい数万円で済む損失も、株式投資では数十万円、ときに数百万円の損失にもなり得てしまう。現在では米国株投資を中心に資産を形成し、FIREも実現した人気投資系YouTuberのロジャーパパさんも、実は株式投資のビギナーズラックで大失敗した経験を持つという。「しかし、本物の投資家になるには、失敗も大切な経験」と語るロジャーパパさんに、ビギナーズラックに対する心構えを聞いた。

500万円の損失を生み出した「ビギナーズラック」体験
私のYouTubeチャンネル「ロジャーパパ米国株投資」では、毎週2~3個の動画をアップして、みなさんに米国株のトレンド情報を届けています。
そんな私がどんな人間かというと、株式投資をはじめたのは2008年、ちょうどリーマンショックのころです。勝間和代さんの『お金は銀行に預けるな』という本を読み、「投資って統計学的に見て儲かるものなんだ」と気がついて株式投資をはじめたのですが、今にして思えばまったくの知識不足、経験不足でした。
ただ、リーマンショックの影響で名だたる日本株の銘柄が底値でしたから、適当に買った株をなにもわからないまま数年保有していただけで、ものすごく利益が出たのです。さらに、私はテニスが好きだったので、ウィンブルドンなどテニスの四大大会が放送される衛星放送会社の株も買い、錦織圭選手が日本人初の全米オープン・男子シングルス準優勝の快挙を成し遂げたことで、独占放送権を持つその会社の株は10倍にも成長しました。
適当に買った株だけでなく、自分が「これだ!」と思った企業の株も成長し、いわゆる「ビギナーズラック」が長期にわたって続いていたのです。
最近、株式投資をはじめた人のなかには、コロナ禍によって下落したタイミングで株を買い、私と同じようにビギナーズラックをつかんだ人もいるかもしれません。そんなあなたに、この投資の格言をご紹介します。
「おごるなよ、まるい月夜もただ一夜」
言葉どおり、「勝ったからといって、調子に乗ってはいけない」という意味です。この格言の元ネタは、江戸時代の禅僧であり画家の仙崖 義梵禅師が詠んだ「おごるなよ 月の丸さも ただ一夜」という歌ではないかと思われます。
私は日本史や美術史に詳しいわけではないので聞き伝えなのですが、この歌は、調子に乗って不義理な商売をする商人に対し、仙崖が戒めとして詠んだ歌だといわれています。
その戒めが、かつての私にも届いたらよかったのですが……このビギナーズラックによって変に自信をつけてしまい、自分が「魅力的だな」と感じていた百貨店や、スピーカーが好きだったので推しの音響機器メーカーの日本株を大量に買い付けてしまいました。
しかし、それは顧客視点で「素晴らしい」と思っていただけで、その企業の業績や将来性を投資家視点で見定める姿勢が甘かったといわざるを得ません。結果として、保有していた株価が暴落し、500万円近い損失を出してしまったのです……。貯蓄もほとんど株式投資にあてていましたから、その半分以上を失うような大損害でした。
失敗の痛みを経て、本物の投資家に成長できる
500万円の損失に至るには段階があります。100万円近い含み損の時点で、すぐ損切りをすればよかったのです。含み損とは、株価が取得時より下がったものの、売却して損失を確定させていない状態です。
しかし、売却に踏み切れず、マイナス200万円、300万円、400万円……と損失は拡大。かと思いきや、一度はマイナス300万円に回復。また、ここで損切りをすればよかったのに、「もっと取り戻せるのでは……」と期待をし、マイナス500万円へ損失は拡大。いよいよ観念し、損失を確定させました。
「株式投資は損切りが大事」。そんなこと、誰だって知っていますし、当時の私も知っていました。しかし、その重要性が「わかっていなかった」のです。この損失を経て、「損切り」の大切さを身を持って学ぶことができ、それからは損切りラインの設定と損切りの実行に迷うことはありません。
いざとなれば、損切りラインにあたる株価まで落ち込んだら、指値で自動的に売却されるように設定してしまえばいいのです。損切りに対する迷いがないからこそ、それができます。
そして、総資産に対する投資の配分についても、痛みをもって知ることができました。自分の収入やライフステージに合ったリスク許容度に基づき、仮に投資分をすべて失っても生活に困らないよう、貯蓄と投資の配分を考えること。また、投資も「コア・サテライト運用」に基づき、短期投資のようなハイリスク・ハイリターンの「攻めの投資」と、インデックス株の長期運用などリスクの少ない「守りの投資」の配分をしっかりと押さえること。そのような、理性ある投資を心がけるようになったのです。
曖昧な判断で株式投資をすることの怖さを知り、「確かな根拠のある投資」を行えるよう、ミクロ・マクロの経済学や、「ファンダメンタル」と呼ばれる国や企業の経済指標の読み解き方、相場サイクルについても勉強するようにもなりました。
一方で、私はGAFAと呼ばれる企業のひとつで働いており、一般社員ですが報酬のおよそ半分は自社株だったのです。2010年代のあいだに、GAFAを中心とするアメリカのハイテク株が力強く成長していくのをすぐそばで実感し、さらに株式投資の学びを深めたことで米国市場そのものの強さを実感し、米国株が投資の中心になりました。
そして、40歳を過ぎてからYouTuberデビューし、「ロジャーパパの米国株投資」と題してみなさんに私の学びと日々の研究を共有しているわけです。