「仕手株(してかぶ)」、あるいは「ミーム株」と呼ばれるものを知っているだろうか。いずれも個人投資家が結託し、個別銘柄株の急騰と暴落を巻き起こす現象だ。企業の成長性に対する市場の期待を受けて高まるはずの株価が、その成長性においてまるで実態がないのに株価が高騰する。そして、多くの個人投資家がチャートに釣られて仕手株やミーム株を取得し、大きな損失を被ってしまう。この危険な仕手株やミーム株を見抜くには、どうすればいいのか。人気投資系YouTuberのロジャーパパさんに、ビギナー投資家が心に留めておくべきポイントを語ってもらった。

急騰株は「朝顔」のようにしおれてしまう
株価というのが、どうやって決まっているのかは、みなさんもご存知かと思います。誰かが値付けをしているわけではなく、投資家たちの売買による需要と供給によって決まります。500円の株を、もっと高くても買いたい人が多ければ株価は上がりますし、もっと安くてもいいから売りたい人が多ければ株価は下がっていきます。
だから、世の中にインパクトのある事業や商品が知れ渡れば、多くの人がその企業に期待をし、株を買い、株価はグングン上がっていきます。最近では、「ChatGPT」などのAIの人気上昇による、そのAIの処理能力を支える半導体を提供するNVIDIA(エヌビディア)の急騰が代表例でしょう。そこまでの大型株でなくとも、大なり小なり評判や話題は株価に直結します。
ただし、個別銘柄株において、話題や株価が急騰しているということだけで買うことは非常に危険です。投資には、こんな格言があります。
「朝顔の花ひとつ時」
朝顔は、いくつもの花を咲かせて華々しく賑やかですが、その多くは1日と持たずにしおれてしまいます。株式相場も同じで、個別銘柄株の話題性や華々しく急騰しているのを見て、後からあわてて乗りかかって買い付ければ、あっという間に天井について急落し、売り時を逃して損をしてしまうということです。
儲けを得るのは、その企業の決算書やニュースをチェックし、早くから可能性やポテンシャルに気づいていた投資家です。話題を追って買うよりも、ファンダメンタルズを精査し、計画性を持って投資することが大切です。後乗りであっても、きちんと企業の決算書やこれまでの経緯、ガイダンスを読み込み、「これからでもまだまだ成長し続ける」という確信を持って買うべきでしょう。さらにこの格言は、「仕手株」の危険性について触れているとも言われます。
仕手株による利益は、個人投資家たちの損失でもある
「仕手株」とは、投資家が巨額の投資資金によって意図的に株価を操作した銘柄のことです。また、その株価の操作を行う集団のことを「仕手筋(してすじ)」と言います。なんとなく聞いたことはあるけど、どういう仕組みなのか知らない人も多いと思いますので、解説しましょう。
仕手筋の狙いは、特定の銘柄の株価を意図的に吊り上げて、高値のタイミングで保有する株を売却して利益を得ることです。そのために、仕手筋は他の投資家にバレないよう、少しずつ慎重に狙った銘柄の株を買い集めていきます。そして、一定のボリュームが確保できたら、一気に大量注文を行って株価を上昇させます。
株価が急激に上がれば、証券会社から発信される株価情報や、ネットの掲示板、SNSでも急騰が伝えられます。それを見て一般投資家も釣られて株を買い、さらに株価は上昇しますが、ある程度のところで仕手筋が株を売却して急落させます。そして、また大量買いを行って株価を急騰させ、波をどんどん大きくさせていくのです。
波を何度も起こすことで、一般投資家が次々と参入し、株価が最高潮に達したところで、仕手筋は一斉に売り抜けてしまいます。一般投資家も慌てて売りに走ることで株価は大幅な急落を起こします。
仕手株の特徴は、ターゲットとなった企業に株価が上がるような材料がないことです。実態がないのですから、仕手筋が売り抜けてしまえば新たな買い手もおらず、波は起こらなくなってしまいます。株価は平常時よりも下がり、含み損を抱えた一般投資家たちに取り戻すチャンスはありません。この急激な波に全力で後乗りしていたら、大損害を被ることは想像に難くないでしょう。
企業に株価が上がるような成長要因がないのですから、決算書などのファンダメンタルをチェックしている機関投資家は、仕手株の可能性を考えて手を出しません。そもそも他人のお金を預かって運用しているので、ただ株価が上がっているだけで根拠のない銘柄に投資はできないのです。そのため、仕手筋が得た利益の多くは、個人投資家たちの損害といえるでしょう。