いま、アメリカ株では半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の成長が注目の的だ。AIの発展にともない、今後も成長が続くとみられる半導体関連株だが、では、高値となったいまからでも保有すべきだろうか。YouTubeチャンネル「ロジャーパパ米国株投資」を運営する投資系YouTuberのロジャーパパさんに、NVIDIA株に対して、いま、私たちが留意すべきことについて聞いた。

NVIDIAの株価上昇、いまからでも乗るべき?
2023年7月12日現在、ニューヨーク株式市場では、いまだ半導体大手NVIDIAの続伸が止まりません。
NVIDIAの株価が上昇している要因は、アメリカの市場が強気相場であることに加え、ChatGPTなどのAIに大きな注目が集まり、そのAIの性能を左右するGPU(画像処理半導体)という半導体をNVIDIAが供給しているからです。
ChatGPTが公開された2022年11月の翌月である2022年末から比較し、現在のNVIDIAの株価は3倍。さらに2年間では7倍と、ベンチャー企業でもないのに驚異的な成長を見せています。さらに、ネット上では今後もNVIDIAの成長は続き、向こう10年で5倍以上伸びるという声も見られます。
では、いまからでもNVIDIAの株を買うべきかといえば、私はこうした右肩上がりの成長株については、一定の注意を呼びかけざるを得ません。そこで、みなさんに紹介したい株の格言がこれです。
「天井3日、底100日」
そして、もうひとつ。
「上げ100日、下げ3日」
いずれも読み人知らずの日本の投資格言ですが、とても有名な言葉です。株価というのは、「上げ100日」というほど長い時間をかけて上がっていくものの、天井(最高値)にいる期間は「天井3日」といわれるほど短いのです。天井に達すれば、あとは「下げ3日」といわれるほどバーンと株価が急落し、「底100日」といわれるほど長期間にわたって停滞し続けます。
海外でも同じ意味の格言が見られますから、国を問わず、相場の基本的な値動きであると考えられます。
なぜ、こうした値動きをするかというと、長期にわたって右肩上がりの個別株は、多くの株主が「含み益」を抱えた状態で「いつ売るか?」のタイミングを図っているわけです。まして、急激な上昇をしているNVIDIAでは、いま、ほぼすべての株主がそうでしょう。
そのため、これ以上の株価が伸びる要因がなくなり、ひとたび成長が止まって下がりはじめると「いまが売り時だ!」とみんなが一斉に売りはじめます。さらに、下落を見越した空売りも増えているため、強烈な売り圧力がかかって株価は「下げ3日」といわれるほどの急落を起こすのです。
株価が下がりきった個別株には、その逆の現象が起こります。今度は、多くの株主が「含み損」を持っている状態です。売り時を逃した株主は、再び上がるまで株を塩漬けにするため、売買が行われません。
その個別株の企業が市場の期待感を呼ぶような事業や動きがあっても、少し株価が上がると含み損を持った株主の損切りが行われ、売り圧力で株価は再び下がってしまいます。そのため、株価が一度下がると再び浮上するには時間がかかるのです。
よって、天井に至って急落がはじまったなら、すぐに売り抜けて利益を確定させなければなりません。売り時を逃して底値まで着けば、長く挽回のチャンスはやってこないのです。
「AIへの期待感」が冷める可能性を考慮しよう
しかし、株の値動きは投資家たちの売買で起こるものであり、いつどこが天井になるかは、誰にもわかりません。
急落がはじまってから、「あそこが天井だったのか」と結果論でわかるものです。チャートの動きを見て天井を見極めようとするのは、翻弄されるばかりなのでやめたほうがいいでしょう。それよりも、必要なことはファンダメンタルズを分析し、情勢を見定めて予測を立てることです。
では、NVIDIAに話を戻しましょう。この半導体関連株の右肩上がりのトレンドは、果たしていつまで続くのか。本当に、向こう10年で5倍などといわれるような長期の成長はあり得るのでしょうか。
これはおそらく、「AIが具体的に企業の業績向上に貢献するかどうか」で決まると私は思っています。現在、マイクロソフトはChatGPTを開発したOpenAIに莫大な額の投資を行い、出資比率49%の強固なパートナーシップを築いています。その結果、マイクロソフトの検索エンジン「Bing」へのChatGPTの統合などが進められ、市場の期待感はさらに増しています。
しかし、まだマイクロソフトがAIへの投資によって「顕著に業績が向上した」という事実はありません。今後、実績として新しいWindowsにもAIが搭載されて記録的な売り上げに至るなど、顕著な業績貢献が起これば、この先もNVIDIAをはじめとする半導体関連株も株価が高まり続けるでしょう。でも、そうでないなら、いずれ期待感で高まった市場の熱は懐疑に変わり、冷めていく可能性もあるわけです。
実際に、GoogleもAmazonも長年にわたってAIを研究し、音声アシスタントなどに活用して話題を呼びましたが、これらは業績にほとんど貢献していないという残念な実績があります。ですから、短期投資であれ、長期投資であれ、NVIDIAをはじめとする半導体関連株をいまから買おうとするなら、「どこがターニングポイントになり得るか」を見定めるための勉強は欠かせないと思います。「まだまだいけそう」という期待感だけで買うことは、株価の急落により売り時を逃すリスクがともないます。