「どうせならなるべく大きな資産を築きたい」。投資をしている人なら当然の願いだ。では、それこそ「億り人」と呼ばれるような大きな資産を築いた人はいったいどんな投資をしてきたのだろうか。長年証券会社に勤め、3万人以上の投資家に接してきた経済コラムニストの大江英樹さんが、億り人たちの多くに共通する投資パターンを明かしてくれた。
長期での資産運用が大前提
今、ネット情報や書籍のなかには、例えば「FXで50万円を1年で1億円にした」といった話もあふれています。たしかにそういう人がいるのも事実かもしれませんが、それはたまたまそうなっただけのこと。ほかの人も同じようなことができる可能性は限りなくゼロに近いといっていいでしょう。
つまり、投資による資産形成においては、「たまたまそうなることもある」ようなことではなく、例えばこつこつと毎月定額を積み立ててインデックス型の投資信託を買うといった、「誰でもやろうと思えばできる」という「再現性」こそが重要となります。
その重要な再現性のある投資パターンに欠かせない要素としては、「長期での運用を前提とすること」「とるべきときにリスクをとる覚悟を持つこと」があります。
なぜ長期での運用を前提とすべきかというと、そもそも短期での株価変動など誰にも予測できないからです。その株価変動をそれこそたまたま2、3回続けてあてられる人もいるでしょうけれど、永遠にあて続けられることなど絶対にあり得ません。
では、なぜ長期ならいいのでしょうか。これは少し大きな話になりますが、資本主義の仕組みそのものが自己増殖していく仕組みになっているからです。企業が事業活動を行うと利益が生まれます。その一部を税金として納め、そこから出資してくれた株主に配当金として渡す。そうやって余った利益を企業はまたさらに事業へ投資します。
このことは、企業活動というものが複利によって行われていることを意味します。投資に少しでも興味を持っている人なら誰もが聞いたことがあると思いますが、複利とは運用で得た利益を再び投資することを指し、そうして利益が利益を生んで膨らんでいくことになります。
この流れが資本主義における事業活動の継続ということになりますから、長期的な視点で見ると、株価は右肩上がりになるというわけです。もちろん、個々で見れば倒産してしまう企業もあります。でも、社会全体での経済の規模というのは必ず拡大していきます。だからこそ、20年、30年といった長期での運用を前提とすれば、成功する可能性は極めて高いといっていいのです。