円安による生活コストの上昇や、老後資金問題など、お金に関する漠然とした不安を抱えている人も多いはず。一方で、これまでにも「お金を貯めたい」と考えてきたにもかかわらず、なかなかうまくいかないという人も少なくないだろう。ここでは、『年収300万円でもラクラク越えられる「貯蓄1000万円の壁」』の著者でもあるファイナンシャルプランナーの飯村久美さんが、お金を増やすコツを伝授。
今回は投資信託について説明しましょう。私は、クライアントやセミナーに来てくれた人たちに説明する際、投資信託のことをよく「のり巻き」にたとえて説明しています。投資信託は、大勢の投資家から何千億円という資金を集めて、1本の大きなのり巻きをつくるようなイメージです。
例えば、「日経平均株価」の動きに連動する「日経平均インデックスファンド」という商品であれば、トヨタの株、NTTの株など、225社の株が具材となって、ひとつののり巻きに巻かれているイメージです。たとえ1社がつぶれたとしても、他の224社に分散投資されていますから、個別の株式に投資をするよりも断然リスクは小さくなります。
ちなみに、投資信託は運用方法により、「日経平均インデックスファンド」のような「インデックス(パッシブ)運用」と「アクティブ運用」の2種類に分類されます。日経平均株価など、市場の平均値に連動するような動きを目指すのがインデックス運用で、「信託報酬」と呼ばれる運用管理にかかる手数料が低いのがメリットです。
一方で、市場の平均値を上回る運用を目指すのがアクティブ運用です。インデックス運用よりコストがかかり、なかには手数料が1%くらい違うものもあります。アクティブ運用に期待をしたいところですが、多くのアクティブファンドは、インデックス運用を上回る運用成果を出せていないのが現状のようです。大きなのり巻き(=投資信託)はカットされて、投資家それぞれの投資額に応じて配分されるイメージです。同じ割合の具材で構成されているため、断面は金太郎飴のようにどこでカットしても同じですが、投資額に応じてのり巻きの長さが異なります。
仮に5000円を投資した人は、1000円を投資した人より5倍の長さののり巻きになります。のり巻きは、基準価額(投資信託の時価)が上がると、全体的に太くなります。当然ながら、5000円投資した人のほうが、1000円を投資した人よりも、長いのり巻きを持っている分、多くの利益を手にすることができます。
それではどんな投資信託に投資するのがいいかということになりますが、理想をいえば、同じ投資先ののり巻きを1本持つのではなく、例えば、日本の株式、外国の株式、日本の債券、外国の債券というように4本に分散して持つことです。経済成長をけん引するのは株式です。今後、世界の経済が時間をかけながらもじっくり成長していくと思うのであれば、株式に投資するとリターンが期待できます。
しかし、予期せぬ戦争が起こるような時代です。株価が暴落する可能性もなきにしもあらずです。未来は誰にもわかりません。そんなときに、債券を組み合わせて持っておくと、資産の目減りを小さくすることが可能です。
過去の例でいえば、リーマンショックで株価が大暴落したときでも、日本の債券はプラスに転じました。つまり、投資信託で投資先を分散させるのは、国内外の株式、国内外の債券をバランスよく組み合わせることでリスクを分散しながら、利益確保を狙うということなのです。
そこで、投資ビギナーにおすすめなのが「バランス型」という商品です。自分でのり巻きをチョイスして複数本持つことも可能ですが、「バランス型」は、あらかじめ複数の投資先に分散して1本の商品で販売しているタイプの投資信託です。「4資産均等バランスファンド」というものであれば、4つの資産(国内外株式、国内外債券)に均等に配分されていることを意味します。他にも、8資産バランスファンドなどもあります。
自分で投資信託を何本か組み合わせて運用するより、プロにお任せしたいという人は、こうしたシンプルな商品をチョイスするのもよいでしょう。
この記事のひときわ#やくにたつ
・日本の株式、外国の株式、日本の債券、外国の債券というように4本に分散して持つ
・債券を組み合わせて持っておくと、資産の目減りを小さくすることが可能
・投資ビギナーにおすすめなのが「バランス型」という商品
編集協力=岩川悟(合同会社スリップストリーム)、洗川俊一、横山美和、撮影=樋口涼