お金にとらわれなくなった人に、お金は巡る。経営者でありながら禅僧・島津清彦さんが考える、「お金の本質」

2022/11/18 18:00 | 更新 2023/04/16 23:49
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わたしたちが生きていくうえで、お金の悩みは避けて通ることはできません。また、いまの時代は先が見えづらく、将来を見据えたお金の計画を考えるなかで、不安や怖れにとらわれる人も増えています。禅僧の島津清彦さんによると、この不安や怖れの感情は、自分に対する「執着」によって生じるといいます。禅僧でありながら経営者の一面を持ち、お金の問題にも明るい島津さんに、なぜお金の悩みが尽きないのか、どうすればお金に苦労しなくなるのか、お金の「本質」について伺いました。

島津清彦さんにインタビュー
【撮影=藤巻祐介 】


なぜ人はお金の悩みが尽きないのか?

お金の悩みが尽きないのは、そもそもお金の本質を読み違えていることに原因があります。まず、お金の役割は、モノ・サービスやお金自体と交換したりするためにあり、あくまで「機能」であり「ツール」であるということです。

にもかかわらず、実に多くの人がお金を貯めたり、利益を出したりすることを目的化してしまっています。すると、どうなるでしょうか?「老後には◯◯円ないと困る……」「とにかくもっと利益を上げないと!」というように、自分のなかでどんどんお金の悩みや不安だけが膨らんでしまうのです。

もちろん、好きな旅行へ行くためにお金を貯めたり、幸せな老後のために計画的に備えたりするのは悪いことではありません。あくまで人生を楽しむことが目的にあり、その手段としてお金を使うという発想ですね。

しかし、先に述べたように、お金に対する執着が強まれば強まるほど、それが実現しなかったとき、満たされない現状に対して「苦しみ」が生まれます。

つまり、いったんお金のための計画にとらわれると、それが崩れたとき柔軟に対応できなくなり、大きな「不安」に変わっていくというわけです。それが、お金の悩みが尽きないと感じる一番の原因ではないでしょうか。

経営者兼禅僧という、半僧半俗を貫く島津清彦さん
経営者兼禅僧という、半僧半俗を貫く島津清彦さん【撮影=藤巻祐介 】


お金は「人とのつながり」によって運ばれてくるもの

お金に執着している人は、ひと目見ただけでわかります。何気ない話をしていても、いつもお金のことばかりを気にしていて、損得だけで人と付き合う傾向にあります。すると、そんな人からは、人がどんどん離れていってしまうのです。

お金とは本来、人と人との関係性のなかで、誰かに「喜んでもらえること」によっていただけるもの。つまり、お金というのは「人とのつながり」によって運ばれてくるものなのです。お金のことだけを考えて人と付き合っていると、人との関係性が壊れてしまい、結果的に肝心のお金も離れていくのは必然の流れです。

だからこそ、お金の巡りをよくするためには、もっと「お金の気持ち」になって考えることをおすすめします。お金本来の機能を考えると、お金が喜ぶのは、世の中に流通することのはずです。お金を必要としている人や場所へお金が巡っていくこと。会社経営でも、お金はよく血液に例えられますが、それは循環してはじめて事業が成り立ち、本来の意義を果たせるからです。

しかしながら、ただの機能であるお金に、人はさまざまな思惑や感情を乗せがちです。そうして自分や自社のことばかり考えているからお金が滞留し、不都合なことが起きたときに、結局は貯め込んだものを手放さざるを得なくなってしまう。お金は常に「循環するもの」という真理をわかっていないために、結果的に苦しみに変わっていくということです。

「お金を必要としている人や場所へお金が巡っていく」
「お金を必要としている人や場所へお金が巡っていく」【撮影=藤巻祐介 】


お金を守れば守るほどお金は離れていく

誰しも、お金でうまくいかなくなるときはあります。経営者や個人事業主に限らず、会社員でも給料が下がったり、解雇されたりするかもしれません。一時的にお金が減って不安に陥るときもあるでしょう。

ですが、繰り返しますが、本来お金というものは、必要な人のもとへ巡っていくものなのです。その真理を知っていれば、ピンチになっても気持ちをしっかりと持ち、踏ん張ることができるはずです。

でも、その真理を知らないから、ついついお金を囲い込んでしまう……。そうしてお金を守れば守るほど、不思議なことにお金が離れていくのです。それはやはり、お金は巡ることが本質であり、自分のことだけを考えて滞留させると、なくなっていくのが必然の理だからです。

そうならないためにも、自分ができる範囲で、お金を世の中に循環させていくイメージを持つといいでしょう。

たとえばそれは、株式投資でもいいと思います。ある会社の事業やサービスに興味を持ち、それを応援するつもりで株を買ってみる。「この会社の社会貢献っていいな」「理念が素晴らしいし将来性もありそうだ」というように、ファンになってコツコツと投資していく。そんな振る舞いが、巡り巡って自分に還ってくることは必ずあると思います。

なぜそういえるのかというと、禅の観点から見て、真理は長期的に必ず帳尻が合うものだからです。世の中に対していい影響を与える「貢献」を応援する投資ならば、長期的に見るとおそらくその多くがうまくいきます。これが本来の投資のあるべき姿ではないでしょうか?

世の中の情報には、どうしても短期的に大きく儲けた人ばかりが出がちです。しかし、一時的に儲けても、10年、20年となると落ちていく人がほとんどです。わたしのまわりを見ても、長期的に利益を上げる投資を続けている人は、必ずその人なりのポリシーや投資哲学を持っています。真理から外れた、いわばマネーゲームのような投資は、そもそも続かないものなのです。

「利他的な行動をしてはじめて、自分にも利益が回ってくる」
「利他的な行動をしてはじめて、自分にも利益が回ってくる」【撮影=藤巻祐介 】


人のためになにかをするとお金は見返りとして巡ってくる

お金はまわりの人や社会に対してなにかの貢献をしてはじめて、その見返りとして巡ってくるものです。仕事であれば、なにかをして働いたから、それに対して報酬がいただけます。よく就職しただけで、お金(給与)が権利として入ってくると考える人もいますが、本来はいい仕事をしたから、それに対していただけるものなのです。

これを禅では、「布施(ふせ)」といいます。大乗仏教における「悟り」にいたるための6つの修行(具体的な行動)のひとつであり、簡単にいうと、見返りを求めずに人のためになにかをしてあげることです。

例えば、目の前に困っている人がいたら、できる範囲で手を差し伸べる。利他的な行動をしてはじめて、自分にも利益が回ってくるということですね。

そして、ここまで利益という言葉を述べてきましたが、仏教ではもともと「利益(りやく)」と呼びます。よく「御利益がある」などといいますが、善い行いをすると、巡り巡って返ってくることを表しています。善いことをしたら、それを仏様が見ていて、最終的に自分に巡り巡ってくる。これを、「利益(りやく)」といったわけです。

つまりポイントは、先に善行ありきで、お金はあとからやって来るものととらえることです。まず誰かに益を与え、それによって自分も益することができると考える。まず相手ありきなのです。

ただ、その見返りがすぐにはやって来ないから、多くの人は辛抱ができなくなり、目先の損得に走ってケガをしてしまう。もちろん、自分の心に余裕がなければ辛抱するのも難しいですから、最低限自分を満たしてあげる「自利」も必要です。ですが、理想はまずまわりから考えるとうまくいくということです。

要するに、自利と利他のバランスが重要であり、これを禅では「自利利他円満(じりりたえんまん)」と呼んでいます。

この記事のひときわ#やくにたつ
・お金はあくまで目的達成のための手段である
・お金は常に「循環するもの」で、必要な人のもとへ巡っていくもの
・利他的な行動をしてはじめて、自分にも利益が回ってくる

構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム)、取材・文=辻本圭介、撮影=藤巻祐介

『元上場企業社長の「禅僧」に、今の時代の悩みをぶつけてみた。心が回復する禅問答』プレジデント社(2022)
島津清彦著

【プロフィール】
島津清彦(しまづ・きよひこ)
株式会社ZENTech取締役ファウンダー、株式会社シマーズ代表取締役社長、禅メソッドアカデミー学長、曹洞宗僧侶

1965年、東京都生まれ。元スターツピタットハウス株式会社代表取締役社長。元ソニー不動産株式会社執行役員。東日本大震災での被災を機に上場企業の社長というキャリアを捨て、2012年に経営人事コンサルタントとして独立起業。その後、多くの世界の一流リーダーが禅に辿り着くことを知り、自らも出家得度し仏門入り。以降、経営者かつ禅僧という半僧半俗の姿勢を貫き、官公庁、大手企業などを対象に禅を活かした経営・組織開発コンサルティングやリーダーシップ研修、講演、坐禅指導などを行う。著書に『元上場企業社長の「禅僧」に、今の時代の悩みをぶつけてみた。心が回復する禅問答』(プレジデント社)、『仕事に活きる禅の言葉』(サンマーク出版)、『翌日の仕事に差がつくおやすみ前の5分禅』(天夢人)。学生時代にはテレビ番組の素人勝ち抜きお笑い部門でチャンピオンとなり、現在は髪も金色に染めるなどユニークな一面も。老若男女、国籍等にとらわれず、難解な禅の教えを誰にでもわかりやすく、変幻自在に伝えるのが信条。妻、娘、ミニチュアダックスフント7匹とともに暮らす。

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