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株価暴落のリスクを抑える金(ゴールド)への資産配分を考える

2024/03/03 20:00
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世界的な金相場の上昇が止まらない。2023年12月4日、金(ゴールド)の国際価格が史上初の1トロイオンス(約31.1グラム)あたり2100ドルを突破。日本の金相場では1グラムあたり1万928円で史上最高値を更新した。なぜ、いま金相場は上昇を続けているのか。また、金への投資にはどのようなメリットがあるだろうか。YouTubeチャンネル「ロジャーパパの米国株投資」を運営し、米国株を中心にコモディティ投資についても解説しているロジャーパパさんに、金投資の特徴と魅力を聞いた。

 投資系YouTuber・ロジャーパパの「相場の格言から学ぶ株式投資」
投資系YouTuber・ロジャーパパの「相場の格言から学ぶ株式投資」


金相場が上昇し続ける理由は「社会不安」

金相場の上昇は、2023年ずっとニュースで伝えられていました。12月には史上最高値に達し、2024年も高値が続いています。

【画像】直近20年の金相場と、S&P500と比較したグラフ
【画像】直近20年の金相場と、S&P500と比較したグラフ


上記のグラフを見てください。これは直近20年の金相場と、S&P500と比較したグラフです。インデックスファンドでもETFでも、投資信託における定番の「S&P500」は、2000年以降の23年間で+184%に成長しています。2000年に100万円を投資していれば、株価の上昇だけで約280万円に増えたということですし、継続的な積み立てと分配金の再投資を行えば、大きな資産を築けたことでしょう。
※S&P500……アメリカを代表する約500社の時価総額を基準とした経済指標のこと。この500社でアメリカの上場企業すべての時価総額の約80%をカバーしている。ここでいう「S&P500」は、この指標に連動したインデックスファンドやETFなどの投資信託を指す。

米国市場には、プロの機関投資家が運用するさまざまな投資信託がありますが、そのうちの8割はS&P500の成長率に勝てないといわれています。それほど優秀な実績なのですが、なんと、金(ゴールド)相場はその3倍超の+610%もの上昇を見せています。

なぜ、金相場がこれほどの上昇を続けるのか。その理由を、この短い格言が表しています。

「有事の金」

「平時に金(ゴールド)を買っておけば、有事の際の備えになる」という意味の投資格言です。戦争や紛争、大恐慌、金融危機など、国際情勢におけるさまざまなリスクによって現金資産の価値が揺らぎ、株式、債券、コモディティ(金や原油などの商品)が大きく価値を損なうとき、金の相場だけは下落率が比較的低いことから、この言葉は生まれています。

例えば、2008年のリーマン・ショックでは米国株の相場が50%以上も暴落しました。金相場も急落はしましたが、その下げ幅は20〜30%程度だったのです。アメリカの金融緩和の影響もあって、直後に金相場は急騰し、翌年には値を戻しています。

2020年のコロナショックにおいても、株価は30%以上の暴落に対し、金相場の下落は10%程度にとどまっています。すべての金融資産が下落するなかで、金は圧倒的に下落率が低い安全資産としての実績があるのです。

現在、コロナウイルスの感染者数は落ち着いていますが、ロシアのウクライナ侵攻、イスラエル・パレスチナ紛争、南米のベネズエラ・ガイアナ間の領土問題、そして、中国・台湾の不穏な状況など、世界的に地政学リスクが高まっています。そのため、資産を安全な金(ゴールド)に変える動きが生じ、世界的な金相場の上昇につながっているというわけです。

金が通貨の「信用」になるから下落しない

世界の基軸通貨が「USドル」であることに、疑う余地はないでしょう。でも、それを「嫌だな」と感じている国があります。それは、例えば中国やロシアなど、自国の経済圏を広げたいと思っている国や、欧米の経済圏に含まれない新興国のインドや、一部のアラブ・アフリカ諸国などです。

自国の政策が世界の中心である欧米の価値観や利害と衝突し、それが国際法違反として非難を浴びれば経済制裁が行われる場合があります。経済制裁で重要なポイントは、銀行間の国際送金システムから自国が除外されてしまい、海外との取引ができなくなってしまうことです。この国際送金システムはドル建てであり、ドルが信用されているから成り立つシステムです。

そこで、欧米勢力と覇権を争う中国やロシアなどの大国は、自国の通貨を基軸とした独自の国際送金システムを立ち上げ、そのネットワークを各国に広げたいと考えます。そのために必要なことは、自国通貨の国際的な信用です。

自国通貨の信用を高めるために行うこと、それは「金(ゴールド)を買い集めること」です。価値の変わりにくい金を中央銀行で大量保有することが、自国通貨の信用に直結します。また、そこまでの大きな構想は持たずとも、国家は自国の信用を高めるために金を保有しようとするのです。

通貨の信用を担保しているからこそ、大恐慌などで金相場が下落した際に、個人投資家や企業・団体は金を売却したとしても、大量保有する国家は金を売却しません。それが、金相場下落の歯止めにもなっています。

金の購入は、ETFならNISAの対象になる

わたしたち個人投資家が、安定資産である金を保有する方法はいくつかあります。

<金の購入方法>
①金のETF
金相場と連動するETFを証券会社から買う。NISAの対象になる。

②現物
純金を現物で保有するもので、金貨や地金(インゴッド)のかたちで流通し、貴金属メーカーなどで購入できる。

③純金積み立て
毎月一定額を支払い、継続して金を購入する投資手法で、盗難リスクのある金の現物を保有せずに権利を保有することができる。貴金属メーカーや証券会社で購入。投資信託ではないので、NISA対象外。

投資として考えると、株に比べてさまざまな買い方がありますが、株式投資で使っている証券口座から購入できるETFがもっとも手軽でしょう。金のETFは配当金が出ませんが、NISAの対象なので売却益にかかる税金をカットできる点がメリットです。

一方、現物の購入はどうでしょうか?手数料が高いし、盗難リスクもあっていいことなしのようですが、「所有する満足感」は否定できないと思います。やはり、金が世界最古の通貨であり、古来より尊重されているのは現物の魅力にあります。宝飾品や工芸品として買うと金としての価値算定が難しくなりますが、金貨や地金(インゴッド)として買えば明快なレートで売買ができます。

純金積み立ては、上記のハイブリットといえるかもしれません。現物を預けた状態で安全に金を積み立て購入できますが、購入分が一定の重量になると、手数料を支払えば現物への転換ができます。

金をポートフォリオに加え、資産を守る

大恐慌や地政学リスクなどによって株式市場が大きく下落したときに備え、個人投資家もアセットアロケーション(資産配分)を行うことが大切です。株式だけでなく、債券、コモディティ、為替、不動産などに資産を割り振って、株式市場が下落した際の資産の目減りを抑制するのです。

これらの金融商品のなかでも、金の下落率は低いため、ポートフォリオに加えリスクに備えることが効果的です。下記のグラフは、3つのポートフォリオで2004年12月から2023年10月までの約19年間の資産運用をシミュレーションしたものです。

金への分散 図版
金への分散 図版


①株 100% (ETF「SPY」のみ)
②株 50% 金50% (ETF「SPY」と「GLD」)
③株 50% 債券50% (ETF「SPY」と「AGG」)

2004年12月に、①〜③にそれぞれ1万ドルを投資した場合の2023年10月段階での成果です。金相場の顕著な上昇もあり、もっとも伸びたのは株と金の組み合わせで、5万1084ドルに伸長しました。

ただし、注目してほしい点は、成長性よりも「Max. Drawdown」の項目です。これは1カ月単位での最大下落率なのですが、この19年間で株のみでは50%以上も下落した月があったのに対し、金を組み込んだポートフォリオでは、約半分の26.13%の下落に抑えることができています。

株100%と同等のリターンを得ながら、下落に対しては債券と同レベルのディフェンスができる点で、株と金の組み合わせが優秀だということを意味します。長期投資では、一時的な下落によって含み損を抱えても、保有し続けることで相場の回復によって解消されるため、成長性さえ高ければいいという考えもあると思います。

しかし、一時的であれ、含み損の拡大はメンタルに影響を及ぼしますし、株式相場の回復が長期化することもありますから、金保有をメリットとして捉えておくべきでしょう。

なお、今後の金相場はどうかというと、わたし自身はまだ上昇の機運があると考え、投資を行っています。2024年以降、アメリカの中央銀行であるFRBは、政策金利の引き上げをやめ、引き下げに転じる可能性が高まっていますが、金相場は政策金利の引き下げに対して上昇する傾向があるからです。

国際情勢は平穏になってほしいものですが、そうならない未来への用意はしておく必要があると思います。

構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム)、取材・文=吉田大悟

『月5万円の米国株投資で経済的自立を達成する! FIRE最強の教科書』
SBクリエイティブ(2022)
ロジャーパパ 著

【プロフィール】ロジャーパパ
GAFA企業での勤務のかたわら、2017年より本格的に米国株を中心とした株式投資をスタート。身につけた株式投資の知識を活かし、2019年よりYouTubeチャンネル『ロジャーパパの米国株投資』を開設し、2023年3月現在、チャンネル登録者数11.2万人の人気チャンネルに成長。現在は9年勤続したGAFA企業を退職し、2021年11月よりFIREを実現。証券会社等のセミナーに登壇するほか、外資時代の人脈を活かし企業の外部取締役も勤めている。著書に『月5万円の米国株投資で経済的自立を達成する! FIRE最強の教科書』(SBクリエイティブ)がある。

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