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ビギナー投資家は要注意。あいまいだから選ばれる「全世界株式」のワナ

2024/02/24 20:00
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2024年の新NISAスタートにより、株式投資に関心を持つ人が増え、実際に株式投資をはじめた人も多いだろう。初心者であれば、個別銘柄よりもインデックスファンドなどの投資信託がはじめやすいが、予備知識がないと、それさえなにを選べば将来の資産形成につながるのか迷ってしまう。「はじめてだからこそ、安易に『みんなが選んでいるもの』を選ぶのではなく、自分なりのロジックを持つことが大切です」と語るのは、米国株投資専門の人気YouTuber、ロジャーパパさん。NISAを機に投資信託をはじめる投資ビギナーへのアドバイスを伺った。

 投資系YouTuber・ロジャーパパの「相場の格言から学ぶ株式投資」
投資系YouTuber・ロジャーパパの「相場の格言から学ぶ株式投資」


NISAで投資をはじめるなら、米国ファンドがおすすめ

2024年から新NISAがスタートし、資産形成を目的に株式投資をはじめた人も多いと思います。でも、実際に投資をはじめる際は、「なにを買っていいかわからない」ものですよね。

大事なお金を託すのですから、いいかげんな選択はできません。株式投資には資産が減少してしまうリスクもあるからです。そのため、本来であれば株式相場のメカニズムについて勉強し、ファンダメンタルズを精査して、より成長可能性のある投資先を見定めるべきです。

ファンダメンタルズとは、国家であれば、その国の今後の経済を見通すための経済動向や消費動向、政策金利の方針などに関する情報のこと。企業であれば決算書のことで、そこから成長予測をして投資判断をします。

そうしたリサーチもなく投資をするようでは、大切な資産をギャンブルに投じているのと変わらないと思います。

その点、NISAの素晴らしいところは、優良なインデックスファンドやETFなどの投資信託が対象ファンドとして絞り込まれている点です。ですから、いまNISAをきっかけに、ほとんど勉強もなしに株式投資をはじめるのであれば、以下の3点に投資スタンスを絞ってもいいと思います。

①短期投資ではなく長期投資
②個別銘柄株ではなく投資信託
③コア投資は日本株より米国株

数週間や数年の短期間で利益を得る短期投資は、ファンダメンタルズを読み解き予測する知識と経験がなければ成功できませんし、相場の波をチェックして「売り時」を見定める必要があります。要するに、難しいのです。一方、10年以上のスパンで考える長期投資は、これまでの成長実績をもとに合理的に判断すればよく、保有した後もほったらかしにすることが可能です。

また、1社の成長性とリスクを読み解く個別銘柄株を数銘柄買うより、50社、100社、3,000社と複数銘柄を扱うインデックスファンドやETFのほうが、分散投資ができてリスクを抑えることができます。

そして、投資信託を選ぶなら、少子高齢化で成長性の鈍化した日本経済より、世界経済の中心国であり、グローバル市場で成長し続けている米国経済を投資先のコア(中心)としたほうが、資産形成において合理的な判断だということです。

みんなが選ぶ「全世界株式」は、はたして最良の選択なのか

ここで、みなさんにひとつの格言を紹介します。

「ビジネスの世界で最も危険な言葉は、5つの単語で表現できます。『ほかの誰もがやっている(Everybody else is doing it)』です」 ——ウォーレン・バフェット

投資会社バークシャー・ハサウェイのCEOであり、投資の神様として尊敬されるウォーレン・バフェットの言葉です。厳密には、企業のコンプライアンスに関する格言なのですが、投資にもいえる言葉なので、引用させてもらいました。

NISAの対象となるファンドにも、無数の選択肢があります。ここで、最も無難そうな選択肢として「みんながいいといっているもの」を選んでしまうのは、よくあることでしょう。あまり詳しくないジャンルの商品をAmazonで買うときもそうではありませんか?レビューやランキングを見て、他者評価を参考に商品を選びます。ですが、それが最良の選択肢になる保証は、どこにもありません。

あなたの周囲にいる人たちが、「リターンの大きい新興国の株がいいよ」という、攻めのスタンスばかりだからといって、新興国株を買ってしまえば、ハイリスクな商品に将来の資産を預けることになります。また、一般に「手堅い商品」といわれるなかにも、成長実績には大きな差があります。

そこで実際に、例を挙げてみましょう。SBI証券調べによるインデックスファンドの「販売金額人気ランキング」第1位は「全世界株式(オール・カントリー)」、通称「オルカン」といわれる商品です。

引用:SBI証券 投資信託 販売金額人気ランキング

他の証券会社のランキングを見ても、おおむね全世界株式が1位です。リターンを見てもわかるとおり、全世界株式はけっして悪い商品ではありません。しかし、実際に投資した多くの人が、数ある選択肢から成長可能性とリスクを考慮し、はっきりとした根拠を持って選んだかといえば、私はそうとは思えません。

むしろ、極めて日本人的なマインドからくる「無難そうな選択」の結果だと感じています。まず、なんとなく安心感を抱く国内ファンドを検討し、次に想定リターンが高い海外ファンドを検討しますが、良し悪しを判断しがたく、リスクがチラつきます。

「インドやブラジルなどの新興国はリターンが大きいがリスクも大きそう」
「米国株はよさそうだが、新興国や途上国を無視したら損ではないか?」

そうやって悩んだ結果、すべてが含まれている「全世界株式」を選んでおけば、全方位的に機会損失がなく、かつリスクも分散されると考えるのではないでしょうか。そして、販売ランキングを見て、「全世界株式はもっとも支持されている。この判断は間違いではなかった」と安心するのだと思うのです。

あらゆるファンダメンタルズを考慮し、意思を持って全世界株式を選ぶのならいいのです。ただ、「成長の実績」と「リスク回避」それぞれの観点でいえば、どちらにもより優れた商品があります。

成長実績なら、S&P500などアメリカ1本に絞ったファンドのほうが上回ります。また、リスクを完全に回避したいのなら、投資信託ではなく国債を選ぶことが正解なのです。

※S&P500……アメリカを代表する約500社の時価総額を基準とした経済指標のこと。この500社でアメリカの上場企業すべての時価総額の約80%をカバーしている。ここでいう「S&P500」は、この指標に連動したインデックスファンドやETFなどの投資信託を指す。

全世界株式の大半は「アメリカ株」が占める

インデックスファンドやETFの全世界株式は、全世界の銘柄に分散投資ができ、例年、安定的に年率7%のリターンを得られる優れた金融商品ですが、「ノーリスク」ではないことを理解しておきましょう。その点は、おすすめしたS&P500も同様です

下の図は「S&P500」が過去100年間で30%以上の暴落に直面したリストです。

平均で約49%の暴落が100年間で8回起こっており、全世界株式も数値は異なりますが似たような暴落を起こしています。

「S&P500」が過去100年間で30%以上の暴落に直面したリスト
「S&P500」が過去100年間で30%以上の暴落に直面したリスト


つまり、いずれのファンドも10年保有で1回、20年保有で2回の暴落によって大きく価値を落とす可能性があるわけです。とはいえ、そのまま株価が回復するまで5年でも10年でも買い増して保有し続ければいいのですが、一時的に保有資産が半減するリスクがあることは理解しておきましょう。

そうしたリスクに不安を感じるのなら、本当にノーリスクな金融商品は国債です。国債は、例えば10年債なら、10年後に確実に元本に金利を乗せて返ってきます。国家破綻して債権が回収できなくなるリスクはありますが、少なくとも米国をはじめとする先進国にその心配はほとんどないため、ノーリスクといえるのです。ただ、NISAの対象ではありません。

また、成長実績の観点でいえば、先の「販売金額人気ランキング」で2位、3位につけていたS&P500のほうが、例年のトータルリターンは高い傾向にあります。ふたつのインデックスファンドの成長率を比較すると、2008年から2023年11月末までで、S&P500が6.7倍に対して全世界株式は4.1倍と、無視できない差が生じています。


数値の差の理由は、全世界株式を構成する銘柄の約60%はアメリカであり、その成長を牽引しているのも主にアメリカだからです。その他の日本や欧州諸国をはじめとする先進国は、合計しても20%〜30%程度であり、その成長性はアメリカに及びません。また、成長性が期待される新興国は数%ずつしか含まれていません。

結局、アメリカ頼みのファンドなのであれば、米国株が100%のS&P500のほうが、より高い成長率となることは当然です。

この全世界株式の銘柄比率は、証券会社のホームページやインターネットで調べることができますし、少し勉強をするだけで投資判断は変わってくるでしょう。新NISAをきっかけに株式投資をはじめるのであれば、「みんなも選んでいるから」という他人任せの判断ではなく、自分自身で投資判断を下すための勉強とリサーチをしてほしいと思います。

構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム)、取材・文=吉田大悟

『月5万円の米国株投資で経済的自立を達成する! FIRE最強の教科書』
SBクリエイティブ(2022)
ロジャーパパ 著

【プロフィール】ロジャーパパ
GAFA企業での勤務のかたわら、2017年より本格的に米国株を中心とした株式投資をスタート。身につけた株式投資の知識を活かし、2019年よりYouTubeチャンネル『ロジャーパパの米国株投資』を開設し、2023年3月現在、チャンネル登録者数11.2万人の人気チャンネルに成長。現在は9年勤続したGAFA企業を退職し、2021年11月よりFIREを実現。証券会社等のセミナーに登壇するほか、外資時代の人脈を活かし企業の外部取締役も勤めている。著書に『月5万円の米国株投資で経済的自立を達成する! FIRE最強の教科書』(SBクリエイティブ)がある。

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