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「季節性のアノマリー」に踊らされない投資判断のすすめ

2023/12/02 20:30
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「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざは、砂ぼこりで失明して三味線弾きになる人が増え、そこから三味線の材料として猫が乱獲されてネズミが増え、またそこから桶がかじられるから桶屋が儲かるというロジックである。だが、これを本気で信用する人は少ないだろう。同様に、株式投資でも「それって本当なの?」と首を傾げる格言やことわざが多く存在する。米国株投資の人気YouTuberであるロジャーパパさんに、アメリカにおける格言の信憑性について伺った。

 投資系YouTuber・ロジャーパパの「相場の格言から学ぶ株式投資」
投資系YouTuber・ロジャーパパの「相場の格言から学ぶ株式投資」


結論からいえば、アノマリーは信用ならない

「アノマリー(Anomaly)」という言葉をみなさんはご存じですか?理論では説明することができないけど、実際に観測される株式市場の規則性をあらわす言葉です。投資に関する格言には、特に季節性のアノマリーを指す言葉が多く見られます。

例えば日本では、「節分天井、彼岸底」という格言があります。2月上旬の節分に株価は高値をつけて、彼岸の時期(3月中旬)には安値をつけることを指しています。

米国株に関係するアノマリーの格言もたくさんありますが、なかでももっとも有名な格言はこれでしょう。

「セル・イン・メイ(株は5月に売れ)」

本当に有名な格言なので、投資の勉強をしている人や、さまざまな投資コンテンツを読んでいる人の大半は見聞きしたことがあると思います。「セル・イン・メイ」は短縮した言い方で、正確には「Sell in May and go away, don’t come back until St.Leger day.(株は5月に売って、どこかに行け。セント・レジャー・デーまで戻ってくるな)」といいます。

この格言はアメリカではなくイギリスの格言で、「セント・レジャー・デー」とは、イギリスで毎年9月の第2土曜日に開催される有名な競馬レース「セント・レジャー・ステークス」のことを指しています。

このアノマリーの根拠は、一般的に夏は「夏枯れ相場」ともいわれ、株価が停滞する傾向にあるからです。みんな夏は休んでしまうので、機関投資家も夏の時期は投資を避けてバカンスに出かけてしまい、欧米で新年度がはじまる9月にまた心機一転、投資を再開するとされています。

といったように、「セル・イン・メイ」に代表されるアノマリーは、いずれもそれらしい根拠があるのですが、私は「あまり参考にならない」と考えています。まったく無視はできないのですが、それをもとに投資の意思決定を行うようなものではありません。参考程度というところでしょう。

例えば、2023年のアメリカ相場では、8月・9月・10月と3カ月続落しましたので、実際に「夏枯れ相場」は起こりました。「セル・イン・メイ」の根拠になる部分は、あたっているのです。でも、2023年のアメリカ相場の最高値は7月でした。つまり、5月に売ってしまうと最高値を逃すので、やはり格言が正しいとは言い難いわけです。

アノマリーが生き続ける理由は「誰も相場がわからないから」

アメリカ株におけるアノマリーは、ほかにもたくさんあります。格言ではありませんが、「セル・イン・メイ」に並んで有名なものは、10月から年末にかけて起こるとされる「タックス・ロス・セリング(Tax loss selling)」です。

アメリカも日本と同様に1月〜12月の所得をもとに確定申告を行うので、個人投資家は年末に含み損のある株を売却して損失を確定し、税負担を軽くしようとします。値下がりしている株にさらなる売り圧力がかかり、相場が下落する傾向があるのです。

しかし、一方でアメリカでは「サンタクロースラリー」といわれる年末の上昇相場のアノマリーもあります。その時点で矛盾しているのですが、実際に過去の事例を洗ってみると、必ずではないのですが、年末に近づくにつれ相場が上昇基調になり、クリスマスシーズンに上げ相場が起こるケースはあるため、どちらかのアノマリーはまったく無視できないような状況にもなるわけです。

ただし、思い切りアノマリーを裏切るケースもあります。例えば、2018年のクリスマスシーズンには「アップルショック」が起こりました。中国でのiPhoneの販売不振などを背景に、アップル社が業績予想を大幅に下方修正したことで、アメリカのみならず世界の株価が急落したのです。

たった一社の業績が、それほどの影響を与えることに驚きを隠せませんが、アップル社は世界の時価総額ランキングでも上位にあり、その業績がS&P500をはじめとする経済指標に影響を与えます。また、部品製造などにおいてグローバルなサプライチェーンを構築しているため、世界各国の関連企業の業績にも影響を与え得るのです。

このほか、年始に株価が上がるとする「1月効果」、大統領選挙の年は株価が上がる「大統領サイクル」、ハロウィンシーズンに株価が下がる「10月に買って4月に売れ」など、アノマリーはたくさんありますが、いずれも「天気予報より確率の低いジンクス」程度にとらえるべきものでしょう。それなのに、どうしてアノマリーはいつまでも語られ続けるかといえば、それは「相場の原因は誰にもわからないから」にほかなりません。

相場、言い換えれば「経済」というものは全世界70億人以上の人間の活動によって動かされるものであり、そこに気象や災害などの自然現象だけでなく、国同士の戦争なども入り混じる不確定なものです。「相場がこれからどうなるのか」という未来予測はもちろん、「どうして相場はこう動いたのか」という後からの理由づけも、本当のことは誰もわからないのです。

投資系YouTuberとして活動するご縁で、証券会社のアナリストや、何千億円という資金を運用するファンドマネージャーの方ともお話をさせていただくのですが、誰もが神様ではないので「相場のことがわかる」と自信を持っていえる人はいません。

それでも、世界中のアナリストやファンドマネージャーは、仕事として相場についての見解を示す必要があります。人それぞれ異なる見解のなかで、いまでも「これは、まさにセル・イン・メイの値動きですね」と語られるなど、「相場の理由づけ」や「値動きの典型」として生き続けている言葉に過ぎないのです。

『月5万円の米国株投資で経済的自立を達成する! FIRE最強の教科書』
SBクリエイティブ(2022)
ロジャーパパ 著

【プロフィール】ロジャーパパ
GAFA企業での勤務のかたわら、2017年より本格的に米国株を中心とした株式投資をスタート。身につけた株式投資の知識を活かし、2019年よりYouTubeチャンネル『ロジャーパパの米国株投資』を開設し、2023年3月現在、チャンネル登録者数11.2万人の人気チャンネルに成長。現在は9年勤続したGAFA企業を退職し、2021年11月よりFIREを実現。証券会社等のセミナーに登壇するほか、外資時代の人脈を活かし企業の外部取締役も勤めている。著書に『月5万円の米国株投資で経済的自立を達成する! FIRE最強の教科書』(SBクリエイティブ)がある。

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