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個別銘柄株への長期投資は、「メカニズム」に注目して見極める

2023/11/05 20:00
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世界最高の投資家といわれるウォーレン・バフェットが、90歳を超える現在もコカ・コーラを愛飲し、30年以上に渡ってコカ・コーラ株に莫大な投資を続けていることは有名な話だ。個別銘柄株への長期投資はロマンのある投資だが、非常にリスキーともいえる。その会社が失策やスキャンダルで低迷してしまえば、それまでだからだ。そこで、米国株専門の人気YouTuberであるロジャーパパさんに、個別銘柄株の長期投資において着目すべきポイントを伺った。

 投資系YouTuber・ロジャーパパの「相場の格言から学ぶ株式投資」
投資系YouTuber・ロジャーパパの「相場の格言から学ぶ株式投資」


長期投資では、優良企業であり続ける難しさを知るべき

株式投資における長期投資というのは、10年、20年というスパンで保有、あるいは買い増しする投資です。それがインデックス投資であれば、多数の企業に分散投資されるのでリスクは低くなるのですが、個別銘柄株で行うとなると、かなりリスキーな投資になり得ます。どんなに優良企業でも、優良であり続けることは困難であり、最悪の場合、倒産することもあるからです。

20年前の2003年に、世界でもっとも大きな企業はどこだったかわかりますか?「大きい」といってもさまざまな基準があります。売上規模であったり、従業員数などであったりもしますが、ここでは「株価×発行株式総数」から求められる「時価総額」を基準としましょう。

正解は、GE(ゼネラル・エレクトリック)です。トーマス・エジソンが設立した、時価総額で世界最大の総合電気メーカーでした。しかし、業績不振や経営者による事業の取捨選択の失敗により、いまでは上位100位にも入っていません。

2003年と2023年現在のランキングを比較してみると、20年でその顔ぶれはまったく様変わりしているのがわかると思います。

世界時価総額ランキングの変遷

世界時価総額ランキングの変遷
世界時価総額ランキングの変遷

引用元:The Largest Public Companies by Market Cap (2000–2022)より

20年前のトップ10企業のうち、現在もトップ10に残っているのは、マイクロソフトだけ。テスラやエヌビディアなど、アメリカを中心に新興企業が次々と現れ、上場からわずか10年で時価総額100兆円を超えるような成長を見せているからです。

また逆に、どんなに栄華を極めた企業も、事業の失敗や成長の鈍化などで凋落していくこともあります。先のGEもそうですし、日本でも「インテル、入ってる」のCMでお馴染みだったインテルも、経営の失敗から圏外に落ちていってしまいました。

これが、個別銘柄株で長期投資することの怖さです。どんな企業も、10年後、20年後にはどうなっているかなんて誰も予測はできません。現在のトップ10にいるgoogleやAmazonは、「インフラとして定着しているから安泰」という声もよく聞くのですが、インテルもファイザーも、かつては持続的な発展が期待されていました。

優良企業が優良であり続けることの難しさについて、世界最高の投資家といわれるウォーレン・バフェットは、こんな厳しい言葉を語っています。

「株を買うなら、どんな愚か者にも経営を任せられる優れた会社の株を買いたいと思うでしょう。なぜなら、いつかは愚かな経営者が現れるからです」
——ウォーレン・バフェット

それこそ、信頼を失うような事件を起こしたり、新たに就任したトップが誤った経営に舵を切ったりすれば、いとも簡単に企業価値は下がります。バフェットの言葉にある「愚かな経営者」はあまりに強い言葉ですが、実際問題として、どんな経営者も人間ですから、将来を見据えて正しい選択を取り続けることは困難なのです。

先述のインテルを例に挙げれば、スマートフォンというデバイスの将来性を軽視してしまったことが運命の分かれ目だったと思います。現在もパソコンのCPUでは変わらずトップシェアのブランドなのですから、企業の能力というより、経営者の選択の結果なのです。

では、バフェットのいう「どんな経営者にも経営を任せられる優れた会社」とは、いったいどういう会社を指すのでしょうか?言い換えれば、我々一般投資家が個別銘柄株の長期投資を行う場合に、予測できない企業のリスクを踏まえて、何に着目して投資を行えばいいのでしょうか?

私は、企業が持続的に発展する「メカニズム」を持っているかどうかに注目するべきだと考えます。

持続的な成長基盤をつくる「メカニズム」を捉える

持続的に発展できるメカニズムを持つ企業の最たる例は、P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)でしょう。子ども用おむつの「パンパース」や、洗濯用洗剤の「アリエール」、シャンプーの「パンテーン」など、多数の有名ブランドを持つ世界的な消費財メーカーです。

P&Gのコーポレートサイトを見てみてください。日本のサイトで大丈夫です。同社は「ブランド経営」という独自の経営戦略を標榜し、社会に対して伝えています。P&Gのブランド経営とは、簡単にいえば、ブランドごとにさまざまな領域のプロフェッショナルが集まる企業体を形成する考え方です。

普通の消費財メーカーであれば、法務部やマーケティング部、製造部があって、そのなかで自社の全ブランドを担当しますよね。一方、P&Gは、例えば「パンパース」ブランドの部門があり、そのなかに紙おむつのためだけのマーケティング部や法務部、製造部があるのです。ですから、そこに転職しようと思ったら、マーケティング全般の経験や実績ではなく、「紙おむつのマーケティングの経験と実績」を問われます。

「パンテーン」ブランドの部門に行けばシャンプーのプロフェッショナルがいて、「ファブリーズ」ブランドの部門に行けばエアケア製品のプロフェッショナルがいる、この専門性を追求した組織体制がP&Gの強みであり、他社では真似することができません。

さらに、企業文化としてロジカルシンキングが徹底されていることでも知られています。私がGAFA企業で働いていた時代に、P&G出身者が転職してきたのですが、コミュニケーション能力に感服してしまいました。客観性のある話し方、明快な論理展開、相手に合わせた効果的な例え話のチョイスによって、説得力のある会話をするのです。

そして、この戦略や企業文化の正しさと強さは、180以上の国と地域に事業を拡大し、株式市場においては60年以上も増配し続けるという驚異的な実績が裏づけています。多少の失策やスキャンダル、事件があって一時的に信用を失っても、強固な経営基盤があればこそ、いずれ業績や株価は回復することが期待できます。

P&Gを持ち上げるような話になってしまいましたが、あくまでこれは一例です。みなさんに伝えたいことは、強い経営基盤を育むメカニズムの存在です。

P&Gの「ブランド経営」に限らず、さまざまな企業が持続的な成長を遂げるためのメカニズムとして、独自戦略やポリシーを持っています。ただし、それが実効性を持つかどうかは別問題です。また、聞こえがいいだけの戦略や、根性論のようなポリシーを掲げ、形骸化している企業もたくさんあります。その見極めが、大事な資産を託す長期投資には重要な能力といえるでしょう。

メカニズムによって強い経営基盤が育まれ、ブランドや商品、サービスが「なくてはならないもの」として市場に浸透し、信頼されている確かな事業基盤――。それがあれば、バフェットがいうような「愚かな経営者」が現れようと、あるいは一時的な失策やカリスマ創業者の退任、キーマンの引き抜きがあろうと、グラつくことはありません。

「メカニズム」の理解には、アメリカの文化と背景を知ることも大切

では、企業の持続的な成長を裏づけるメカニズムを、どうやって知ればいいのかというと、これは決算書などのファンダメンタルズを読み解くよりもずっと簡単です。アメリカ企業に関しては、ホームページの事業案内や企業理念のページでアピールされているからです。

日本企業はメカニズムを持たない、あるいは持っていても言語化されていない傾向にありますから、アメリカ企業のアピールの強さに、はじめは驚きや新鮮さを感じるかも知れません。アメリカは、常識もバックボーンも違う人たちが集まる多民族国家なので、相手に伝わるように主張と理由説明をセットで言葉にすることが日常です。あらゆることに「because(なぜなら)」があり、企業が自社の魅力や成長性を理由づけて説明することも、あたりまえのことなのです。しかし、そのなかにはパフォーマンスにすぎないものもあるでしょう。

さまざまなメカニズムに触れ、それが業績や株価の成長とどのように結びついているのかを学んでいくことで、視点が磨かれていきます。さらに、企業の情報発信だけでなく、メカニズムを取り上げているメディアにも目を通し、理解を深めていってください。

それに関連して、いま、日本企業の多くがメカニズムのひとつとしてアピールする「ダイバーシティ」についても触れておきたいと思います。

日本企業を悪くいう気はありませんが、日本企業がアピールするメカニズムのひとつに、女性の活躍推進を中心とするダイバーシティがあります。それは、日本社会がこれまで人材を性別で待遇に差をつけてきた事実があるからです。しかし、アメリカではすでに性別による待遇の差はありません。

例えば、アメリカにおいて女性やマイノリティを重要なポストに着けることはモラルのアピールではなく、シンプルに能力の結果です。逆に、私が前職のGAFAにいたときは、上司である私以上の給与で女性を部下に迎えるというケースもありました。それは事業成長のために、それだけの給与を支払っても彼女の能力が必要だったからですが、日本企業では見られないことだと思います。

また、国籍・宗教・年齢・障害の有無といった社内の人材の多様性は、多民族国家のアメリカではあたりまえ過ぎて、そこにダイバーシティが主張されることもありません。従業員の過去の経歴や、より根深い文化的バックグラウンドなどがダイバーシティの焦点となっています。

アメリカ企業のメカニズムを理解するうえでは、このような日本企業の常識とは異なる前提や合理主義を理解するといいでしょう。アメリカ企業の前提とメカニズムを知ることは、株式投資だけでなく、変化する日本企業のなかで働くうえでも役立つ、視野の広がる経験になると思います。

構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム)、取材・文=吉田大悟

『月5万円の米国株投資で経済的自立を達成する! FIRE最強の教科書』
SBクリエイティブ(2022)
ロジャーパパ 著

【プロフィール】ロジャーパパ
GAFA企業での勤務のかたわら、2017年より本格的に米国株を中心とした株式投資をスタート。身につけた株式投資の知識を活かし、2019年よりYouTubeチャンネル『ロジャーパパの米国株投資』を開設し、2023年3月現在、チャンネル登録者数11.2万人の人気チャンネルに成長。現在は9年勤続したGAFA企業を退職し、2021年11月よりFIREを実現。証券会社等のセミナーに登壇するほか、外資時代の人脈を活かし企業の外部取締役も勤めている。著書に『月5万円の米国株投資で経済的自立を達成する! FIRE最強の教科書』(SBクリエイティブ)がある。

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