チームに一体感をもたらす雰囲気づくりを大切にしてきた、リーダーとしての仕事観と将来に成し遂げたい野望

ーーでは、ここからはご自身の仕事感についても教えいただければと思います。元木さんにとっての仕事とはどういうものですか?
【元木麻由】20代のころは、大学を卒業して周りの人たちが就職しているからという理由で、何となく働いていました。でも、「自分が幸せに生きるためにはどうすればいいのか?」という考えが根本にあるんだなと、最近になってちょっと思うようになりました。だから、仕事やキャリアも、その延長線上にあるのかなって。今は、仕事が「幸せに生きるためのもの」という位置づけになっています。自分で考えた製品が世の中に出て、営業の方から「売れたよ」と言ってもらえることに、すごく幸せを感じるんです。

自分で考えた製品が世の中に出て、営業の方から「売れたよ」と言われるのが幸せを感じるひと時だそう
自分で考えた製品が世の中に出て、営業の方から「売れたよ」と言われるのが幸せを感じるひと時だそう【撮影=阿部昌也】


ーー元木さんが仕事において大切にしていることを教えてください。
【元木麻由】自分も含めて、一緒に働くプロジェクトメンバーが楽しく、モチベーションを持って働ける環境をつくることが大事だと思っています。ピリピリとした空気感だと、活発なディスカッションをしたり、積極的に質問がしづらいと思うんです。だから、みんなが意見を言いやすよう、楽しい空気づくりを大切にしています。

誰もが意見を言いやすい雰囲気が、元木さんの理想とするチームだそう
誰もが意見を言いやすい雰囲気が、元木さんの理想とするチームだそう【撮影=阿部昌也】


ーー言いやすい、言いにくい、その環境は大事ですよね。以前の取材で、ニックネームで呼び合う企業さんもありましたよ。
【元木麻由】確かに、名前の呼び方も空気づくりに関連してきますね。

ーー役職や年齢に応じて「〇〇さん」と呼ぶと、自然と上下関係が発生してしまうこともあると思いますし、ニックネームであれば上下関係もおのずと薄くなると感じました。
【元木麻由】確かに、ですね。私もたまに「元木ちゃん」って呼ばれることがあります(笑)。そう呼ばれると、不思議と、こっちも話しやすくなりますよね。距離が近くなるから。ジョージアのブランドマーケティングチームは、弊社の他ブランドに比べてかなり大所帯なんです。すごくいろいろな人がいて、すごく結束感のある仲のいいチームなんです。

ーーリーダーとして大事にしていることについてもお伺いできればと思います。
【元木麻由】やっぱりチーム一体となって、みんなが同じ立場でディスカッションしながら取り組むと、よりよいアウトプットが生まれると思います。自分から「こうこう、こうしてほしい」と具体的に何かをお願いするというよりは、各メンバーのタレントにお任せすることで最大限にいいものをそれぞれから出していただく、それが最終的にいいアウトプットにつながると考えています。私の場合はもう、「困ったどうしよう。助けてください!」くらいの感じです(苦笑)。普段から、そういうコミュニケーションというか、向き合い方をしています。

ーーなるほど。メンバーの「よし、自分がやらなきゃ!」というやる気の引き出し方という意味でも大切ですね。
【元木麻由】そうですね。頼み方ひとつで相手のやる気が変わるんだという、過去の私自身の経験から、そこはちょっと意識しています。「ワー」って言われると、萎縮してしまいますし。

ーー元木さんは、全体像の把握がとにかく速いそうですね。質問も的確だと、社員の方に伺いました。
【元木麻由】自分について語られるのは恥ずかしいですね(苦笑)。

ーー把握している、これは大事ですよね。「わかってくれている」と感じながら会話をするのか、「わかってないじゃん」という気持ちになるのかではモチベーションに大きな差が出ると思います。
【元木麻由】一緒に走っている感は大切だと思います。「同じ立場で、一緒に悩みながらやろう」という感じです。

ーーちなみに、元木さんは仕事で苦手なことはありますか?
【元木麻由】私、ひとつのことをやり始めると没頭して周りが見えなくなるんです。ですが、ブランドマネージャーは、大なり小なり、いくつかのプロジェクトを並行して持っていることが多くて…。そんななかで、効率的に仕事を進めていくことが大事だと思うのですが、この「効率的に進めること」があまり得意ではないと思っています。

ーー全体をうまく効率的に回すことと、一つひとつのディテールをしっかりと考えること、このバランスは永遠のテーマですよね。
【元木麻由】そうなんですよね。業務があまり並行してないときはマイペースでもいいんですけど、そんな状況はないので、毎日って、けっこうドラマです(笑)。

業務が並行していて「毎日って、けっこうドラマです」と、キャンペーンメッセージにかけた返答も
業務が並行していて「毎日って、けっこうドラマです」と、キャンペーンメッセージにかけた返答も【撮影=阿部昌也】


ーー失敗や挫折、落ち込んだときは、どんなリフレッシュ方法や立ち直り方を実践していますか?
【元木麻由】比較的、寝ると忘れてしまうタイプなんです(笑)。「失敗は成功のもと」って、よく言いますよね。弊社でも、トライ&エラーが正しいとされています。尊敬する先輩の方々からも「成功してるかもしれないけど、失敗の数も多い」ということを、体験談として聞いています。ですので、寝ても解決できないぐらい落ち込むことがあったときは「この失敗もきっと成功につながる」と、ちょっと見方を変えるようにして、前向きに考えるようにしています。それから、自分の考え方ってそうしても“一通り”しかないので、仕事だったら上司にフィードバックをもらったり、プライベートのことだったら家族に話したり、モヤモヤしたことは、とにかくいったん吐き出すことが大事だと思います。

成功につなげられるよう考え方を変えるのが、失敗から立ち直るコツだそう
成功につなげられるよう考え方を変えるのが、失敗から立ち直るコツだそう【撮影=阿部昌也】


ーー仕事の達成感を得られるときはどんな場面ですか?
【元木麻由】やっぱり製品をリリースしたあと、いいパフォーマンスを見るときが、一番達成感を得られます。世に出す前にも、企画が通ったり、PRイベントが終わったりとか、小さな達成感はいろいろあるんですけど、達成度合いの一番大きいところは、やっぱりいい結果ですよね。世に出したものがちゃんと評価されて、成功して、大なり小なり「これうまくいってるね」という声をひとりからでも聞けると、とてもうれしいですね。

ーーその喜びは、どれぐらい続きますか?
【元木麻由】2、3日で終わっちゃうかもしれないです(笑)。

ーー意外と短いんですね(笑)。
【元木麻由】でも、思い出したりはします。振り返って「あのとき、そういえば」っていうような感じで。今回のジョージアのブランド刷新のときも、たくさんの人が携わって準備をしてきたので、PRイベントが終わったあとにみんなで写真を撮ったとき、みんなの顔がプレッシャーから解放されて、リフレッシュしたいい笑顔だったんです。「すごくよかったな」って、あの写真をよく見返しています。達成感を味わううえで、写真は大きいかもしれませんね。

ーー先ほど20代のころのお話をしていただきましたが、もし、今の元木さんから当時の自分にアドバイスを送るとしたら、どんなことを伝えますか?
【元木麻由】実は、大学時代に海外留学しなかったことを、今ちょっぴり後悔しているんです。当時、周りの人が卒業と同時に就職するなか、1回留学してしまうと1、2年遅れちゃうじゃないですか。なんかそれが怖くて留学できなかったんですよね。そういう経験があったので、「周りの人がやっているから自分もこうやらなければみたいなものは、一旦気にしなくていいんだよ」っていうことを言いたいですね。大人になって振り返ると、「たいしたことのない1、2年なのに」っていう。だから、「今しかできないことは何なんだっけ?」ということを、仕事以外も含めて考えることが大事かなと思っています。

ーーありがとうございます。では最後に、元木さんの今後の野望について教えてください。
【元木麻由】野望というほど大きくはないんですけど…今回、50年近く続く大きなブランドの刷新に携われたことは、ブランドマネージャーとして一生に一度あるかないかぐらいの、とても貴重な経験、仕事でした。振り返ってみると、今まで担当してきたものが、コアのブランドのリニューアルとかキャンペーンばかりだったんです。今、将来的にチャレンジしたいと考えているのは、「この製品は私が出しました」というような、日本中の誰もが知ってるような大きな製品を、ゼロから作り出してみたいですね。例えば「『綾鷹カフェ』は私がやりました」とか、「『い・ろ・は・す』は私がやりました」とか、そういうレベル感のものをやってみたいです。もちろん、簡単ではないと思いますが。

ーー「野望というほど…」とおっしゃいましたが、わりと大きめな野望ですね(笑)。
【元木麻由】確かに、そうですね(笑)。

ーーでも、とても素敵な野望ですね。期待しています。本日はありがとうございました。
【元木麻由】こちらこそ、ありがとうございました。

「日本中の誰もが知ってるような大きな製品を、ゼロから作り出してみたい」という、壮大な野望を教えてくれた元木さん
「日本中の誰もが知ってるような大きな製品を、ゼロから作り出してみたい」という、壮大な野望を教えてくれた元木さん【撮影=阿部昌也】


この記事のひときわ#やくにたつ
・ターゲットの嗜好を徹底的に意識、調査する
・自分もメンバーも楽しくモチベーションを持って働ける環境をつくる
・頼み方ひとつで相手のやる気が変わる

取材=浅野祐介、取材・文=北村康行、撮影=阿部昌也