「美しさを私らしく」というコンセプトを掲げ、サプリメントやプロテイン、フェイスマスクなどをユーザーそれぞれの体質やライフスタイルに合わせてお届けする、パーソナライズビューティーケアブランド「FUJIMI」。このブランドを展開するトリコ株式会社(以下、トリコ)の代表取締役・花房香那さんは、28歳ながら会社を2社起業した経験のあるシリアルアントレプレナー(連続起業家)だ。今回は花房さんに起業家を志したきっかけやFUJIMIブランドのビジネス戦略、そしてこれからのブランドの目指す先について話を聞いた。

トリコ株式会社 代表取締役・花房香那さん
トリコ株式会社 代表取締役・花房香那さん【撮影=宮川朋久】


20代で2社目の企業、その原点は?

――まずは、花房さんの経歴について教えてください。どのようなきっかけで起業しようと思ったのでしょうか?
【花房香那】私はトリコという会社を2018年4月に創設したのですが、実は2社目に起業した会社です。1社目はプログラミングスクール「TechAcademy」の運営やDXプラットフォーム事業を手掛けるユナイテッド株式会社(以下、ユナイテッド)の100%子会社として設立した“ミワク”という会社で、新卒1年目のころに設立しました。当時、大学卒業後すぐに起業することになったのは、学生時代に先輩が起業した会社のメディア事業部でインターンとして入ったのがきっかけです。

【花房香那】インターンといいながらも週6出勤で正社員並みに汗水流しながら働いていました。ですが、ある日ユナイテッドがこの会社をM&A(企業の合併・買収)してユナイテッドのグループ入りをすることに。その際、会社に十何億という買収額がつき、自分たちの頑張りがきちんと評価されたことが素晴らしいと感じました。そのような経験を通して「大学を卒業したら起業したい」という気持ちが強くなったんです。そんな折、ユナイテッドの当時の取締役に「うちで子会社としてやらないか」と声をかけていただきました。先輩の会社自体は子会社として買収されたのですが、それとは別で子会社を自分で立ち上げていいよという機会をいただいて、設立したのが最初の会社(ミワク)です。

――もともと起業したいという気持ちはあったのですか?
【花房香那】一切ありませんでした。大学時代にインターンを始めたのがそもそものきっかけでした。それまでは大好きなアパレルでアルバイトをしていたので、そっちの方向に進みたいなと考えていました。ですが先輩にインターンに誘われた際「アパレル関係のサービスをしているよ」と言われ、「スタートアップってアルバイトよりおもしろそう」という軽い感じで始めました。しかしいざ始めてみると、ものすごく熱心に仕事をしている人が多くて「おもしろい業界だな」と感じました。

【花房香那】また、当時は六本木のシェアオフィスで働いていたのですが、いわゆる“ネットの黄金世代”の人たちが周囲にいたので、すごく刺激的でいい環境でした。そこに自分もどっぷり浸かってやりたいと思ったのが起業のきっかけですね。

――かなりレアなタイプのインターンをされていますね。
【花房香那】たしかにそうですね(笑)。インターンをした流れで起業した1社目ではアプリ運用の事業をやってみたのですが、なかなか思うようにはいきませんでした。特に、自己資本ではなく他人の資本を溶かしていることがすごく心苦しかったです。今のままだと自信を持って進められないなと感じたため、最終的に事業撤退し、それと共に自分も抜けて会社を閉じました。

【花房香那】その後は「起業したい」「成功したい」という気持ちがとても強かったのと、メディアの領域でM&Aをしていた経験からこのジャンルが得意だったこともあり、メディアでもう一度起業してみようと思って自己資本で立ち上げたのが今の会社になります。

――人生の早い段階での経験値がものすごく濃厚ですね。
【花房香那】2社目の起業が23歳くらいでしたからね。もちろん当時は始めたばかりのど素人だったのでなかなか思うようにはいきませんでしたが、とにかく他人の資本を溶かした経験がものすごく悔しかったというのが、2社目を動かすエネルギーになっていました。

「自分たちの頑張りがきちんと評価された」経験から起業の道へ
「自分たちの頑張りがきちんと評価された」経験から起業の道へ【撮影=宮川朋久】


「本当にいいものを届けたい」という思いから

――FUJIMIとはどのようなブランドでしょうか?
【花房香那】FUJIMIには「パーソナライズビューティーケアブランド」という名前をつけています。現代社会はたくさんのモノや情報で溢れている時代で、なかなか自分に合ったものを選ぶのが難しいのが実情です。そのなかで自分自身に合ったものをきちんと取り入れていきたいといったときに「FUJIMIがあなたにとっての最適解をお届けする」というのがサービスの根本になっています。

【花房香那】そこで一人ひとりの悩みを解決するのが、「FUJIMI MIRROR」と名づけたパーソナライズ分析。Web上で20の設問に答えるだけでぴったりのものをお届けするというものです。現在ではサブスクリプションの形態で、1カ月分ずつ必要な量をお届けすることで、都度、購入する手間を省けるような形をとっています。

――ブランド立ち上げの背景を教えてください。
【花房香那】最初はSEOのメディア事業が得意だったのでこの分野で会社を立ち上げました。自分が好きな美容のドメインで始めたのですが、主に健康商材などの単品通販のアフィリエイト記事を書いていました。そのため「この商品の記事を書いてください!」という依頼と共に商品がたくさん届くのですが、ビジュアルイメージと手に取ったものの差が激しいことが多く、「こんなので絶対痩せるわけないじゃん」とか「こんなので胸が大きくなるわけないじゃん」と思うことが多々ありました。

【花房香那】こう思うようになると自分の欲しくない商品を宣伝しているのが嫌になって、自分ならもっといい商品を作れるはずだと考えました。私たちのようなアフィリエイターと呼ばれる記事を書く人が宣伝することで、場合によって“実際は宣伝内容に見合っていない商品”を買ってしまう人がいるのかもしれないと思いました。そのようななかで、「本当にいいものを届けたい」と自分自身が思ったのがきっかけですね。

――通販で商品を買って、イメージと実物とのギャップに驚いた人はたくさんいると思います。
【花房香那】そのギャップを減らせるようにと最初に作ったのがパーソナライズサプリメントでした。創業当時、1社目で失敗して「とにかく売上を上げなきゃ」とがむしゃらにハードワークをしていたので肌がすごく荒れるようになり、もともと肌荒れするタイプではなかったのですがニキビがたくさんできたりしました。いろいろな化粧品を試したのですが何を使ってもダメで、とにかく常に荒れている状態でした。なんとか治そうとさまざまなことを調べた先に辿りついたのがサプリメントでした。

【花房香那】正直、最初はサプリメントに対して「高齢の方が飲むもの」や「本当に効果あるの?」、「胡散臭くない?」といったマイナスなイメージを持っていました。ですが、正しいものを選んで摂取すれば一定の効果が出ると体感したことで、消費者も私と同じような固定観念を抱いて損をしているのではないかと気づきました。これまでのサプリのイメージを刷新して、イケてるオシャレなデザインにし、ユーザーそれぞれの体質に合ったサプリを提供したいと思ったのが、最初のプロダクトを始めたきっかけです。

――アフィリエイトやSEOは、プロダクト自体の良し悪しにかかわらず、テクニックによって検索結果の上位に来てしまうことがありますね。
【花房香那】そうですね。当時(6年ほど前)はD2C(消費者直接取引。中間流通業者を通さずに、自社のECサイトを通じて製品を顧客に直接販売すること)という言葉がまだあまり知られていない時代でしたが、自分で商品を作り、自分で商品を届けてみたいと思って企画・開発を行いました。ですが、実際に商品をリリースするころには周囲の同業者が商品を仕込んでいて「みんなも同じことを思っていたんだ」と実感しました。

「本当にいいものを届けたい」という思いからパーソナライズサプリメントを作る
「本当にいいものを届けたい」という思いからパーソナライズサプリメントを作る【撮影=宮川朋久】


一番大事にしているのはクリエイティブ。ユーザーの人生に伴走

――FUJIMIの魅力とこだわっている部分を教えてください。
【花房香那】一番大事にしているのはクリエイティブですね。もちろん品質がいいのは当然なのですが、こだわりとしてはデザイン性と続けやすい機能性という2点があげられます。自分自身がもともとUI/UXデザイナーとして仕事をしようと思っていたので、プロダクトがシームレスな体験であるか、美しくて今っぽいかなどといったセンスはすごく大事にしています。これが、FUJIMIが大事にしている大きなポイントですね。

――創業からこれまでに3つのパーソナライズ商品を発売していますが、パーソナライズにこだわる理由を教えてください。
【花房香那】現在はプロテインやサプリメントが当社の主力商品なのですが、やっぱりサプリメントはおじいさんおばあさんが飲むもので、プロテインは男性が筋トレ後に飲むものというイメージがあると思います。実際に自分が飲んでみたいけど始め方がわからない、やってみたいけど選べないという障壁を解決するのが「あなたに合わせた」というパーソナライズだと思います。

――パーソナライズのブランドを展開するうえで苦労されることはありますか?
【花房香那】ユーザーそれぞれに合わせた商品を作っているので商品管理が大変ですね。ブランドの年数が浅いこともあってユーザーの需要の変化を予測することが難しく、SKU(ストック・キーピング・ユニット。受発注・在庫管理を行うときの最小の管理単位)が逆転することもあります。そうなると今までの傾向から予測した在庫が余ったり足りなくなったりすることもあります。

【花房香那】また、原価が下がらないことも苦労している点ですね。パーソナライズにすると大量生産ができないのが難点なので、価格との向き合い方が大切になってきます。お客様に「高いよね」って言われることも多いので、ここはもう努力するしかないと思っています。私自身としては「絶対に低単価なものは作らない」という信念があります。やっぱり価格の争いになると機能の争いになるので、体験としてのデザイン性、至高の体験や心地よさを提供するという付加価値で勝負していきたいと思いますし、そこを感じていただけるお客様だけにお届けしたいと思っています。

――1月23日のリブランディングについて、ポイントやその目的について教えてください。
【花房香那】これまではサプリやプロテインといったスポット的な形での解決課題に取り組んできましたが、FUJIMIとしては総合的にお客様の人生に伴走できるようなブランドになっていきたいと考えています。いろんな商品を展開してタッチポイントを増やし、支える部分を多くすることによって、人それぞれのライフスタイルや趣味嗜好に合わせて伴走する存在になりたいというのが、今回リブランディングを行った最大の理由であり目的です。

【花房香那】実は私、学生時代にジムでアルバイトをしていて、そこでひたすらプロテインを作っていました。そのときにプロテインのパッケージを見て「女性も飲むものなのに、なんでギンギラギンの男性がマッスルポーズをとっているんだろう」と思っていたんです。そこでデザインをもっとスマートにして持ち運びしやすいパッケージにしたほうがいいのではないかと思い、企画することにしました。このような私自身の体験から生まれるプロダクトの作り方はすごくいいと思う反面、社員も増えてブランドも大きくしていくなかで、これを続けていくのは限界がくるだろうとも感じていました。

【花房香那】ではFUJIMIとして今後どうなっていくか、ユーザーにどのような価値を提供していくかを考えたときに「迷ったらFUJIMIだよね」とか「FUJIMIの新商品ならいいに違いない」と思っていただけるような、「自分の情報を預けている会社から出る商品なら、必ず自分をサポートしてくれるだろう」と信頼されるブランドになりたいなと考えています。これからは総合的なアプローチの方向に切り替えていき、ブランドの全体像をお客様に示していきたいなと思っています。

――点であり面であり、ブランドの底上げを図りたいという感じですね。
【花房香那】そうですね!私自身も23歳に創業したころから今では28歳になって、結婚や出産などを経てライフスタイルが変わってきています。そのため、“今の自分自身”にあったモノやパーソナライズされたものが勝手に送られてきてほしいという気持ちがあります。現在、さまざまな会社がパーソナライズのブランドを出していますが、例えば漢方の一部をパーソナライズしたり、ヘアケアの一部をパーソナライズするといった形のものが多くて、総合的なブランドでパーソナライズを提供しているものがあまりない印象です。難しいチャレンジだとは思いつつ、データも何百万人規模で集まっていますので、FUJIMIとしては目指していく像を明確にしたいという感じですね。

「体験としてのデザイン性、至高の体験や心地よさを提供するという付加価値で勝負していきたい」と信念を語る花房さん
「体験としてのデザイン性、至高の体験や心地よさを提供するという付加価値で勝負していきたい」と信念を語る花房さん【撮影=宮川朋久】


FUJIMIのなりたい姿は「お客様をトータルにサポートするブランド」

――花房さん自身の一つひとつの体験で、気づきと収穫がすごく多いですね。
【花房香那】そうかもしれません。アルバイトしていたジムには有名人の方もたくさん来ていて、毎日100杯くらいプロティンを作っていました。フレーバーなどのカスタマイズ性がすごく高くて、レシピを間違えるとめちゃくちゃ怒られます(笑)。まるでスターバックスみたいに注文が複雑だったので、とても大変でした。

――今後、FUJIMIをどのようなブランドにしたいと考えていますか?
【花房香那】お客様をトータルにサポートするブランドというのが、今後のFUJIMIのなりたい姿だと思っています。同時に、ブランドはクリエイティブとテクノロジーが支えていくものだと考えていて、テクノロジーの面でいえば、分析のデータ自体をきちんと貯められる状態ができてきているので、それに対してありきたりな市場調査ではなく、本当にニーズがあるのかといったことを調査しています。デイリーで貯まった情報を100件単位で分析をしてくれているスタッフがいるので、タイムリーに最新の情報が蓄積されていくという感じです。

【花房香那】テクノロジーを最大限に生かした商品開発をする当社だからこそできることがありますし、蓄積したデータでよりよいプロダクトができると思います。そしてFUJIMIが商品を出したときに、お客様一人ひとりに最適な商品をどんどんおすすめできる状態ができていくと思っています。そのような仕組みをつくり、パーソナライズ分析を通して「テクノロジーであなたに最適なものを届ける」かつ「最新のデータで最適な商品を開発していく」ことを目指しています。

――社内のメンバーの、テクノロジーとクリエイティブのスタッフさんの比率はどのくらいですか?
【花房香那】35人の社員のうちエンジニアは17%、デザイナーは11%という比率になっています。当社はとにかく自社ですべてを行うことにこだわっていて、広告も一つひとつすべて自社で作っています。お客様はやはりインスタグラムなどに流れてくる広告を見てブランドを判断すると思いますので、そこにも全部目が届いているという状態を意識しています。最近までは本当に私が全部チェックしていました。また、マーケティングやSNS運用、アドの運用も自社でしています。自分自身がIT出身の人間なので、そのあたりはビューティヘルス業界で頭ひとつ抜きん出た存在になりたいと思っています。

――すべてを社内で行えばコンセプトがぶれないですね。
【花房香那】そうなんですよね。それと社内にノウハウが貯まってくるので、そこはすごく強いポイントだと思っています。代理店にお任せすると予想がつく正攻法の提案をしてくれるのですが、社内のスタッフに任せるとびっくりするようなものを提案してくれたり、作るクリエイティブなどもすごく今っぽかったりとすごくおもしろいです。また、商品や広告の撮影も社内でやっています。「運動にはプロテイン」といった広告を作った際には、担当者が走って汗を流して撮影に挑むなど体を張ってくれることもあります(笑)。クリエイティブは他社の担当者も参考にしているとよく耳にします。

蓄積したデータを活用し、「『必ず自分をサポートしてくれるだろう』と信頼されるブランド」を目指す
蓄積したデータを活用し、「『必ず自分をサポートしてくれるだろう』と信頼されるブランド」を目指す【撮影=宮川朋久】


“ワクワク、いきいき”していないとパワーは出ない

――花房さんが仕事において大事にしていることはなんですか?
【花房香那】自分自身が楽しめているかどうかを大事にしています。小さいことに聞こえるかも知れませんが、やはり自分が会社のトップに立っていると、自身が楽しんでいて視座高く、上を目指していける活力がある状態じゃないと社員はついてこられないと思っています。そして私が楽しんでいること以上にメンバーが楽しんでいるかどうかをすごく大事にしていています。やっぱり働くならば大事な存在を集めたいし、社員たちが楽しんでいるほうが絶対いい商品が作れます。

【花房香那】会社のミッションに「私らしい美しさで、私をもっと好きになる」ということを掲げているのですが、この裏側には「自己肯定感を高めてあげたい」という思いがあります。自己肯定感は自信につながるだけでなく、ストレスフルな社会の中でさまざまな外的要因から自分を守る盾になると思っています。

――自己肯定感は現代社会で生きていくうえで必要なものですよね。
【花房香那】そうなんです。自己肯定感の高い状態でサービスやプロダクトを生み出すというのが会社のミッションなのですが、そのようなプロダクトやサービスはそもそも自分自身が自己肯定感の高い状態じゃないとできないと思っています。そのため社員や自分が“自己肯定感が高い”状態を体現して、みんなを引っ張っていけるかが重要です。まずは社員の幸せがあって、その先にお客様の幸せがあることが大事だと思いますし、みんながワクワクすることは自分もワクワクできると思っています。

――確かに、スタッフみんなでワクワクするってとても大事ですよね。
【花房香那】“ワクワク、いきいき”していないとパワーは出ないなと思います。つらいことはたくさんあるのですが、とにかくエネルギーの炎が消えないようにすることを大事にしています。そして「幸せにならないことは絶対に数字が出てもやらない」というのを決めています。さまざまなアプローチ方法があるなかでどれを選び取るかというのが経営者の判断になるのですが、そこに自分も他者も幸せであるかどうかが判断基準になっていますね。

――現在は働き方改革に始まって、ダイバーシティやリスキリングなどが出てきて、働く環境がすごく変化している時代だと思います。こうした変化を受けて思う点について教えてください。
【花房香那】そのあたりについては実は社会が目指す方向とは逆を考えていまして……。スタッフにはみんな出社してほしいので、本当はフルリモートはしたくないですね。やっぱり顔を合わせるコミュニケーションが大事だと思っていて、上半期と下半期でキックオフミーティングをしているのですが、そこは必ずみんな集合するようにしています。また、部署ごとに出社日を決めて週2くらいで出社してもらったりしていますね。なるべくみんなの働きやすさを意識しつつ、会社としての色や特徴を出していきたいと思っています。

――リアルな環境で仕事をするほうが円滑なコミュニケーションを図りやすい部分はあるかもしれませんね。
【花房香那】自分の部署の社員だけ出社率多めだったりします(笑)。今は労働者が会社選びの段階で勤務形態を選べるようになってきているので、だからこそ「当社は出社率多めですよ!」など偽りのない発信をして齟齬がないように気をつけています。採用のときにフルリモートがないことも伝えていますね。ただ、エンジニアとデザイナーについてはフルリモートを適用するなど職種によって変えたりしています。

仕事において大切にしていることは「自分自身が楽しめているかどうか」
仕事において大切にしていることは「自分自身が楽しめているかどうか」【撮影=宮川朋久】


――花房さんの今後の野望を教えてください。
【花房香那】結構、自分が生き急いでいる感じがあるというか、この年齢で結婚も出産も一通り経験していて、今の世の中でいうといろいろなことに対して経験が早いほうなのかなと思っています。さまざまな年齢層に届くような経験をしたので、例えば30代後半の女性の気持ちが理解できるなど、サービス提供に生かすことができるのがいいことだなと思っています。ですが、この先にもっと大きなステージやライフイベントがあるわけではないかもしれないので、どうしようかなと悩んでいますね(苦笑)。

【花房香那】まずはトリコの成功が一番大事ですし、社員をもっと幸せにしたいという気持ちもあるので、そこに数年は時間がかかるのかなと思います。あまり長期的な展望があるわけではないのですが……。けれど結婚や出産などを経験したからこそ理解できることや気づけることがたくさんあるので、アイデアがたくさん生まれてきますし、やりたいことがたくさん出てきます。これを続けられるように自分自身を刺激していかないといけないし、社員にとっても刺激的な存在でありたいと思っています。社員にもどんどん新しいことを求めるし、そのためには自分がアウトプットをし続けなければいけないので、インプットをもっと早くもっと多くというのをすごく意識はしていますね。

――最後に、ブランドを利用する方、これから始めたいという方にメッセージをお願いします。
【花房香那】たくさんの人に使ってほしいと思っていますが、なかでも働いている女性に手に取ってもらいたいなと思っています。働く女性って近年ものすごくポジションが上がってきていますし、だからこそ意思決定をする場面が日々多くなっていると感じます。ペルソナ的には30代後半で子育て世代の働く女性というイメージなのですが、たくさん働かなくてはいけなかったり、育児や家事があったりとすごく忙しくて、自分のためにきちんと意思決定をする時間や場面が強制的に少なくなってしまう年齢層だと思います。

【花房香那】キレイでいたいけど時間がないとか、時間がないけど本物を選びたいと考えている方がすごく多い。丁寧な暮らしをしたいけどそういう時間がないという方に、FUJIMIなら「2分」だけ時間を借りてその方を分析すれば、ビューティヘルスの領域でその方に合った本物を届けることができる、自信を持ってそう考えています。

【花房香那】意思決定をするのがすごく大変ななかで丁寧な暮らしをしたいという思いが強い人がたくさんいて、仕事の意思決定と家庭の作業に追われていることで、本物を使いたいけど選ぶ時間がないという問題が起こっています。友達に聞いてもそれぞれ全然違ったりするので、FUJIMIなら本物を手早く選んでもらい、さらにその方が変化したらそれに伴走して内容も変えられます。「忙しいあなたもここだけは頼っていいんだよ」、そういうブランドになりたいと思っています。

この記事のひときわ#やくにたつ
・アイデアのヒントは、日常で感じる疑問から生まれることも多い
・現代社会を生きるうえで自己肯定感を高めることが大事
・さまざまなライフステージの経験がアイデアにつながる

取材=浅野祐介、文=福井求(にげば企画)、写真=宮川朋久