半導体検査装置の開発から美容業界のパイオニアへと変貌を遂げたヤーマン株式会社。創業当初の精密機器製造から、体脂肪計の開発、そして美容機器の市場へと領域を広げていった歴史には、革新的な技術とスピード感あふれる挑戦精神があった。

今回は、会社の変遷を支えてきた取締役の戸田正太さんに、その軌跡と今後の野望について話を伺った。ヤーマンを美容機器業界のトップに押し上げた戦略とは?そして、グローバルフラッグシップストア『YA-MAN the store GINZA』のオープンを経て目指す未来とは?この先進的なブランドが描く、新しい美容の世界についてのビジョンに迫る。

ヤーマン株式会社 取締役・ブランド戦略本部本部長の戸田正太さん
ヤーマン株式会社 取締役・ブランド戦略本部本部長の戸田正太さん【撮影=藤巻祐介】


半導体検査装置事業から美容業界をリードする存在へ!スピードと革新の哲学

ーーヤーマンの事業内容とその変遷について教えていただけますか?
【戸田正太】当社は1978年に設立した企業で、昨年2023年に45周年を迎えました。実をいうと設立当初は、精密機器や半導体検査装置の輸入製造販売からスタートし、光学変位計という機器の技術を応用して瀬戸大橋のたわみを計測するなどしていました。そして、直接は測れないものを推測するアルゴリズム設計を得意としており、その後交流回路における電気抵抗値・インピーダンスを用いて、日本で初めて体脂肪計を生み出したのも当社です。すでにアメリカにも拠点がありましたので、健康と美容に関連する先端技術情報が入ってきて。業務用脱毛器を日本で初めて輸入したのも、私たちなんです。

戸田さんが入社した当時は、半導体検査装置事業をメインとしていて、まだ美容部門は小さかったそう
戸田さんが入社した当時は、半導体検査装置事業をメインとしていて、まだ美容部門は小さかったそう【撮影=藤巻祐介】


【戸田正太】私は、2001年に新卒で入社したのですが、入社当時は半導体検査装置事業のほうが大きく、美容部門は本当に小さな部分でした。当時は、まだ業務用の機械をメインに販売しており、主に国内のエステサロンさんなどに業務用脱毛器や業務用美顔器を販売していたんです。その後、より多くのお客様に当社の技術を知っていただきたいと考え、家庭用市場であるBtoCへとシフトしていき、そこから徐々に事業を伸ばしていったんです。現在は、当社のメイン技術であるラジオ波を搭載した美顔器「フォトプラスシリーズ」や、ウェアラブル型美顔器の「メディリフト」などを展開し、美容機器ならではの新しい習慣を提案しています。そして、おかげさまで5年連続No.1のマーケットシェアを誇るブランドに成長することができました。また、美容機器だけでなくコスメブランドも展開しているので、機器とコスメの併用による、機器とコスメのシナジーを狙えることも強みです。

ーー貴社のスタート地点を考えると、今ここで美容機器についてお話を伺うことも不思議な気がします。
【戸田正太】そうですよね(笑)。当社は、スピード感を大切にするベンチャーマインドを持っているんです。机上で慎重に検討するのではなく、まずはやってみることを重視しています。ですから、美容健康分野においても、業務用から始めて家庭用へのシフトは、「まずはやってみよう」という姿勢からスタートしました。実際に行動してみると反応が見えたので、だったら、こうしてみようと。入社してからの23年間を振り返ってみると、こうした高速PDCAが連続していましたね。

ーーPDCAを回してまずやってみるというスタンスは、当時としては、かなり早い考え方ですね。
【戸田正太】オーナーである創業者がすべてそういう考え方だったんです。現代にはマッチしない部分もあるかもしれませんが、当時は「今日の仕事は今日中に、明日の仕事も今日中に」という社内の格言があったんですね(笑)。とにかくスピーディーに行動することを大事にしていました。あとになって、中途入社の方々から「普通はしっかりと事業計画を立てるものだ」と聞きましたが、私は新入社員だったので、それが当たり前のことなのだと感じていました。

まず「やってみよう」と、検証することが大切と語る戸田さん
まず「やってみよう」と、検証することが大切と語る戸田さん【撮影=藤巻祐介】


ーースピーディーな行動を大事にする、御社の考え方についても教えてください。
【戸田正太】ヤーマンは常に「世の中にないものを作り出す」という思いが非常に強いです。多くの企業が技術や製品の開発にあたり、最初からマーケティングの観点で考えがちですが、私たちはまず「やってみよう」というスタンスを大切にしています。そして、「どのような効果があるのかを検証しよう」というプロセスも同じくらい重視しています。このようなアプローチは他社にはない特徴であり、ヤーマンの大きな強みです。創業者の、「今日の仕事は今日中に、明日の仕事も今日中に」という言葉も、そういったところにいたるのではないかと思います。

フラッグシップストア『YA-MAN the store GINZA』から世界へ!ヤーマンの挑戦

ーー45周年を迎え、銀座にグローバルフラッグシップストアである『YA-MAN the store GINZA』をオープンした背景や、今後の事業戦略について教えてください。
【戸田正太】国内市場では、5年連続で美顔器市場のNo.1を獲得している実績がありますが、もちろんグローバル市場への進出も視野に入れていて、昨年は、アメリカで美容機器のFDA(米国食品医薬品局)の認証を得て「メディリフト」の販売を開始しました。ただ、やっぱり各国の文化やレギュレーションの違いがあるので、それに対応する必要があるんです。そういう意味で、この銀座のフラッグシップストアは、世界中からさまざまなお客様に集まっていただけるので、生の声を聞ける重要な場所になっています。実際にお話を聞いて、「オセアニアの人ってそういう感覚なんだ」と学んで、「であれば、こういうことができるのではないか?」と、逆に提案もできるわけです。こうした生の声を聞くことは、グローバル展開の戦略において非常に重要だと考えています。

2023年11月に銀座8丁目に誕生した『YA-MAN the store GINZA』
2023年11月に銀座8丁目に誕生した『YA-MAN the store GINZA』写真:見学 友宙

『YA-MAN the store GINZA』1F
『YA-MAN the store GINZA』1F写真:見学 友宙


ーーグローバル市場を意識するうえで、銀座の位置づけはより重要になりますね。特に今の銀座は、円安の影響でまた違った価値を持っているように感じます。
【戸田正太】そうですね。銀座には世界中から多くのお客様が訪れます。中国やアジア圏だけでなく、最近では中東やアフリカからの訪問者も増えており、本当にさまざまな国の方々に当社の製品を手に取っていただいています。

ーー海外からのお客様は、事前に情報を得てから訪れることが多いのでしょうか?それとも銀座に訪れた際に、偶然ヤーマンの製品に出合うケースが多いのでしょうか?
【戸田正太】アジア圏からのお客様のなかには、当社のことを知って訪れる方も多いです。ただ欧米や中東圏からのお客様は、偶然来店される方がほとんどです。まだ、これらの地域では美顔器が一般的ではないため、「日本にはこんな製品があるんだ」と新鮮さを感じて購入される方も多いですね。

ーー昨年11月末にオープンしてから、まだ日が浅いですが、『YA-MAN the store GINZA』の手応えについて教えてください。
【戸田正太】オープン以来、想定以上に多くのお客様にご来店いただき、日本人のお客様からも特に高い関心が寄せられています。『YA-MAN the store GINZA』の2階にあるフェイス・リフト・ジムには、美顔器の購入を検討されている方だけでなく、美顔器の実力を実際に体感したいというお客様も多く訪れます。トレーニングを受けて「美顔器ってここまでできるんだ」と実感していただけるので、ただの物販に留まらず、お客様との継続的な関係を築くことができています。

【戸田正太】また、入店していただき入口のすぐ側にある美肌光ステーションでは、5148個ものLEDで美顔器に搭載されているのと同じ光を、全身に浴びることができます。視覚的にも印象的で、多くの方々が「何だろう?」と興味を持ってくれます。ヤーマンのテクノロジーは、言葉で伝えるとすごく難しいのですが、体感してもらうことで「あ、こういうことなんだ」って感じてもらえると思うんです。

『YA-MAN the store GINZA』1F。YA-MAN the store GINZAのエントランスすぐ側にある美肌光ステーション。LEDの光に包まれる不思議な空間を演出している
『YA-MAN the store GINZA』1F。YA-MAN the store GINZAのエントランスすぐ側にある美肌光ステーション。LEDの光に包まれる不思議な空間を演出している写真:見学 友宙


ーー銀座という立地を選んだのはいい判断でしたね。
【戸田正太】はい、銀座という立地は非常にいい選択でした。青山や代官山など、探していましたが、ヤーマンにとって銀座こそが最適な場所だと感じ、即決しました。グローバル フラッグシップストアを出店するというコンセプトは以前からあったので、いい立地でなければ形だけのものになってしまうリスクも考慮していました。長い時間をかけて探していたなか、45周年のタイミングで適切な場所が見つかったのは幸運でした。

ーー『YA-MAN the store GINZA』を立ち上げる際、特に注力したポイントや苦労されたエピソードがあれば教えてください。
【戸田正太】そうですね。ブランドの本質を感じていただく場所にしたいというのが、一番大事なコンセプトでした。ただのショールームとは違い、研究開発の拠点『表情筋研究所』と連携しながら、お客様とのつながりを重視し、体験を通じてヤーマンの技術を実感してもらう場所にしたかったのです。そのためには、製品の販売だけでなくフェイス・リフト・ジムのような施設を設け、お客様との継続的なリレーションを高めることが重要でした。フェイス・リフト・ジムでは、ご来店いただいたお客さまの肌データを計測し、表情筋研究所にフィードバックしているんです。そして、その肌データを活用して、新たなテクノロジーやサイエンス知見と掛け合わせて製品開発に役立てています。また、そこにアイデアを組み合わせて新しい習慣を提案するということにもこだわっています。

【戸田正太】フラッグシップストアのコンセプトを考える際にも、どうしても製品の販売が強調されがちですが、何が成功のカギとなるかを深く考えました。私たちが重視したのは、単に製品を売るのではなく、お客様との関係性を築き、それが製品のアップデートにつながるようなビジネススキームを構築することでした。表情筋研究所での基礎研究においてお客様からのフィードバックも重要なファクターです。また、東京大学大学院医学系研究科皮膚科学などとも産学連携を進めているので、そこから価値のある技術を開発することを目指しています。

ヤーマンが狙う米国市場。ヘアケア製品と美顔器とコスメの融合で新境地へ

ーー今後のグローバル市場、特に米国への展開についての戦略を教えていただけますか?
【戸田正太】私たちの次の大きなステップは米国市場への進出です。製品カテゴリによっては国ごとに対応すべき基準があります。例えば米国では美顔器はFDA認証に対応する品質、体制、それらをクリアする時間が必要になります。一方で、ドライヤーやヘアアイロンなどのヘアケア製品に関しては、そういった障壁がありませんので、アメリカ市場でも販売を開始しています。

日本でドライヤーやヘアアイロンなど、ヘアケアカテゴリーを強化し、米国にも進出を検討中
日本でドライヤーやヘアアイロンなど、ヘアケアカテゴリーを強化し、米国にも進出を検討中【撮影=藤巻祐介】


ーー米国でもヘアケアには関心があるのですか?
【戸田正太】もちろん、米国でもドライヤーやヘアアイロンの使用は一般的です。現地にもヘアケアブランドはいくつかあります。ただ、速乾性や、多少傷んでもスタイリング重視の傾向があるんですよ。我々のような美顔器テクノロジーを応用して、根本改善しようというブランドはないので、大きなチャンスがあると考えています。

ーー国内での今後の展開についても教えてください。
【戸田正太】国内市場に関しては、美顔器と光美容器の分野でNo.1であることは大きな強みです。美容家電市場は現在約3000億円規模と言われており、そのなかでも特にヘアケア市場は大きなシェアを占めています。我々はこの市場で、自社ブランドの価値を高め、お客様に選ばれる製品を提供していくことを目指しています。また、男性向け市場ではメンズシェーバーが最大のカテゴリーであり、2年前から製品を市場に投入してきました。この春にも新製品を発売し、メンズシェーバーの分野も強化を図っていきます。

【戸田正太】美顔器は主に肌の悩みがあるときに購入される傾向にあり、20代や30代ではまだ肌悩みが少ないため、ブランドとして生活になじむのが40代以降となりがちです。ですから、美顔器はまだ一家に1台とはいかない状態ですね。しかし、ヘアケア製品の場合、家庭で早くから使われることが多いですよね。たとえばご両親が使っていたものをお子さんが使い、自然とヤーマンブランドに親しんでいただける機会が増えます。その結果、美顔器を選ぶときにもヤーマンを選びやすくなると考えています。そのため、ブランド認知を広げる意味でも、ヘアケア製品の役割は非常に大きいと考えています。

ヤーマンでは、ブランド認知を広げるため、ヘアケア製品の展開に力を注いでいるという。さらに、美顔器とコスメの融合による新しい習慣を提案し、より大きな市場でのアプローチも検討している
ヤーマンでは、ブランド認知を広げるため、ヘアケア製品の展開に力を注いでいるという。さらに、美顔器とコスメの融合による新しい習慣を提案し、より大きな市場でのアプローチも検討している【撮影=藤巻祐介】


【戸田正太】本来なら美顔器も、もっと早い段階から使い始めることが理想的なんです。20代や30代でも毛穴の問題やニキビといった悩みがあり、誰もがスキンケア化粧品は早くから使い始めます。そして、スキンケアや化粧品市場は、美容家電市場の10倍の規模があるんです。このスキンケア化粧品市場のすべてがお客様であると考えており、当社はコスメブランドも持っているので、美顔器とコスメの融合による新しい習慣を提案し、より大きな市場でのアプローチをしていきたいと考えています。

ーー国内市場と海外市場でニーズに違いはありますか?
【戸田正太】中国市場を例に挙げると、アンチエイジングへの関心が非常に早い段階から高く、20代、30代からその意識があります。しかし日本では、そのような意識が40代、50代になってから高まる傾向があります。

【戸田正太】日本の場合、特に男性は20代、30代でもスキンケアにほとんど関心を持ちませんが、40代、50代になると「もっと早くから始めておけばよかった」と気づくことが多いようです。我々が提供しているくすみケアができる、男性にもおすすめな光美顔器ブルーグリーンショットは、特に過去にマリンスポーツやゴルフなどの屋外活動を楽しんできた男性に選ばれることもあります。

ーー男性市場の成長についてはどうお考えですか?
【戸田正太】男性市場は確実に成長していると感じています。特にムダ毛ケアが注目されており、美容機器だけでなく、美容クリニックの分野でも男性のニーズが高まっていると聞いています。特に20代、30代の男性は脱毛への意識が高まっています。我々には、メンズシェーバーもありますし、レイボーテという光美容器があるので、ケアの方法を選択できるようにしています。

ーー他社にはないヤーマンの特徴や強みについて、どのように考えていますか?
【戸田正太】まず、当社の背景には精密機器や検査装置からの出発点があります。そして、長年にわたり業務用美容機器の分野で培ってきた技術を持っています。これが、一般の家電メーカーが提供する美容機器とは一線を画す部分です。業務用で使用されている高度な技術をどう小型化して家庭用に応用するか、その過程でのスピード感は他社にはない当社の大きな強みです。特に、海外市場、たとえば中国での成功はこのスピード感が大きく寄与しています。中国では情報が迅速に流れるなかで、速やかに対応できる柔軟性とスピード経営がフィットしたと考えています。この組織体制と技術力の融合が、ヤーマンの大きな強みとなっています。

ーー今後、どのような方々にヤーマンの製品を使ってもらいたいと考えていますか?
【戸田正太】できるだけ多くの方にヤーマンの製品を体験してもらいたいですね。たとえば、電動歯ブラシが今や一家に1台あるように、私たちの製品も日常生活に溶け込むようになることを目指しています。しかし、それだけではなく、手に取ったときに「これって何なんだ?」「これって自分に対してどんなふうにしてくれるんだろう?」と、お客様にワクワク感も一緒に届けられるような製品を開発していきたいと思っています。

ヤーマンのブランド戦略を牽引する戸田さんのビジョンとリーダーシップ

ーーここからは戸田さんのキャリアについても聞かせてください。30歳で執行役員、32歳で取締役と、いずれも最年少で就任されたそうですね。そして、現在はブランド戦略全般を担当されていますが、このポジションで心がけていることはありますか?
【戸田正太】戦略と表現すると大袈裟に聞こえるかもしれませんが、私たちの基本的な考え方は「世の中にないものを作り出すこと、新しい習慣や新カテゴリーを創出すること」に重点を置いています。戦略としてあえて挙げるなら、レッドオーシャンではなくブルーオーシャン、つまり既存の市場でシェアを奪うのではなく、競争のないところの市場開拓をすることですかね。私たちのスローガン「美しくを、変えていく。」にもあるように、新しいカテゴリーを創出し、市場自体を形成していくことを目指しています。現在取り組んでいる領域もありますが、まだ手をつけていない領域やチャンネルもあります。そういった新しいフィールドにも積極的にチャレンジし、より多くのお客様にヤーマンのブランドを体験していただきたいと思っています。

ーー入社当時、計測機器を作っていた会社から美容機器へと移行していく過程で、戸惑いはなかったのですか?
【戸田正太】特に深く考えていなかったんですよね。「これが普通だろう」と受け入れていました。体脂肪計などのインピーダンス方式の機器から、次第にEMS(Electrical Muscle Stimulation)を用いた製品に関わるようになりました。これらは、体の筋肉に電気的な刺激を与える機器でしたが、スポーツを長年続けてきた私にとって、EMSのような技術がどのように機能するのか興味があったんです。「EMSって何なんだ?」と疑問に感じ、「効くわけがない」と半信半疑で試したら、筋肉痛になるほど効いたんですね。それで非常に興味が湧いて、新しい分野に進出する恐怖感よりもおもしろさが勝ったんです。実際に製品を使用してデモンストレーション販売を経験することで、さらに効果を実感し、流行らせることばかり考えていました。

戸田さんは、「常に新しい挑戦ができる環境で、毎年新しいことにチャレンジしている感覚がある」とヤーマン愛を語った
戸田さんは、「常に新しい挑戦ができる環境で、毎年新しいことにチャレンジしている感覚がある」とヤーマン愛を語った【撮影=藤巻祐介】


ーーヤーマンで挑戦し続けようと思った理由は何ですか?
【戸田正太】やはり、ヤーマンを愛しているからですね。入社当初から、常に新しい挑戦ができる環境なんです。何か新しいことを提案したいと思ったとき、「それはできない」と言われることはほとんどありません。「どうぞやってください。ただし、成果を出してください」というスタンスなんです。これは非常に珍しいことらしく、ほかの多くの企業では上司に提案を通すためにさまざまな作業が必要となるそうですね。しかも、ここで20年以上働いていますが、毎年新しいことにチャレンジしている感覚があり、同じことを繰り返していると感じたことがありません。このブランド戦略本部を立ち上げたのは約6年前ですが、それまで私は未経験でしたから。ずっと営業畑で働いてきたので「ブランド戦略って何をするんだろう?」って(笑)。ですから、リスキリングを通して勉強しながら『YA-MAN the store GINZA』の立ち上げまで辿り着きました。もう本当に、手を上げた人にチャンスを与えてくれる社風ですから、自由にいろいろできる環境ではあると思います。そういう意味でもおもしろい職場です。

ーー戸田さんが仕事において大切にしていることと、リーダーとして大切にしていることをそれぞれ教えてください。
【戸田正太】仕事において一番大事にしているのは、自分自身で実際にやってみる、試してみることです。人から聞いたことをフンフンと鵜呑みにするのではなく、まずやってみるんです。すると、「自分の感覚とは、やっぱ違うな」と思うことも多いんです。ですから、リーダーとしても、チームのメンバーに同じアプローチを促すようにしています。「自分でやってみたのか?」と問いかけて失敗を恐れずに挑戦すること、そしてその経験から学ぶことを大事にしています。メンバーに対して「失敗していいよ」とは言わないですけど、失敗していいんだよなとは思ってます。情報が溢れる現代では、調べることが以前より簡単になりました。だからこそ、「本当か?」と疑問を持ち、検証することが知識や経験を積むうえで不可欠だと考えています。

ーー『YA-MAN the store GINZA』のオープンを経て、今後ヤーマンをどのような企業ブランドにしていきたいと考えていますか?
【戸田正太】当社の「美しくを、変えていく。」というスローガンが示すとおり、世の中をあっと驚かせるような技術を開発し、世の中の美容習慣を変え、それを自分たちの手で世界に広げていくことを重要課題として掲げています。そのために、グローバル市場でも「この分野ならヤーマンだよね」と認識されるような、象徴的な製品を作っていきたいですね。今後も、日々お客様とのコミュニケーションを重視し、そのフィードバックをもとに表情筋研究所での新たな技術開発を進めること。そして、新しい美容習慣を提案していくことが、私たちの使命だと考えています。

ーーありがとうございました。

半導体検査装置の販売から美容機器の開発へと、ヤーマン株式会社の変遷はまさに技術革新の歴史そのもの。今回の戸田さんへのインタビューを通して、スピードを重視し実際に「やってみる」姿勢が、常に新しい挑戦を可能にしてきたことがわかった。ヤーマンの「世の中にないものを作り出す」姿勢は、ただの製品を超えた新しい美の習慣を提案。美容業界で独自の地位を築いた理由はそこにあった。今後もヤーマンは、技術と創造性を融合させ、美容界に新たな風を吹き込み続けるだろう。グローバルフラッグシップストアの『YA-MAN the store GINZA』を通して、日本から世界へ。ヤーマンの挑戦はまだまだ続く。

取材=浅野祐介、取材・文=北村康行、撮影=藤巻祐介

◾️YA-MAN the store GINZA
住所:東京都中央区銀座8丁目9-1 銀座中央通りMMビル1F/2F
電話:03-3289-0655
営業時間:11:00~20:00
休業日:不定休