在宅勤務やフレックスタイム制度を活用した柔軟な働き方、キャリアを自ら築くための支援制度など、働く人が能力を最大限に発揮できる環境づくりに取り組む株式会社LIXIL。同社が開いた座談会では、年次も部署も違う3人が現在の働き方や、これまでとこれからのキャリアについて語り合った。

(写真左から)LIXIL Housing Technology サッシ・ドア事業部 窓まわりSBU 窓リフォーム商品開発室 企画チームの下地 春菜さん、LIXIL Water Technology Japan 水栓事業部 Filtration R&D 評価研究グループ 分析評価チームの三上 歩さん、LIXIL Housing Technology 商品開発・デザイン本部 ビジネスインキュベーションセンターの藤原 未帆さん
(写真左から)LIXIL Housing Technology サッシ・ドア事業部 窓まわりSBU 窓リフォーム商品開発室 企画チームの下地 春菜さん、LIXIL Water Technology Japan 水栓事業部 Filtration R&D 評価研究グループ 分析評価チームの三上 歩さん、LIXIL Housing Technology 商品開発・デザイン本部 ビジネスインキュベーションセンターの藤原 未帆さん【写真=三佐和隆士】


専門性の求められる仕事。スキルはどうやって身につける?

座談会に参加したのは、LIXIL Housing Technologyの商品開発・デザイン本部 ビジネスインキュベーションセンターで新規事業のプロジェクトマネージャーを務める藤原未帆さん、サッシ・ドア事業部で主に窓リフォーム商品の企画と立ち上げ準備を行う下地春菜さん、LIXIL Water Technology Japan 水栓事業部で理化学分析のチームリーダーを務める三上歩さん。

専門性が求められる仕事だが、どのようにスキルを身につけたのか。大学で生物化学を学んでいた藤原さんは、入社してから必要になった仕事で必要なスキルを年齢の近い先輩から教わることが多く、それが教える側のスキルアップにもつながっているという。また社内だけでなく社外の研修も受けることができるため、異業種の人との交流を通してスキルやノウハウを学べる機会も多い。「自分で考えて自由にチャンスをつかみにいける、そしてスキルアップできる環境です」と藤原さん。

藤原さんは2015年に入社。窓まわりの商品の開発を経て現職
藤原さんは2015年に入社。窓まわりの商品の開発を経て現職【写真=三佐和隆士】


入社1年目で同社一関工場(岩手県一関市)に配属された下地さんは、生産ラインの班長を経て、生産管理を担当した。現在の商品企画の仕事において、商品ができあがるまでの工程を実際に見ていた経験が強みになっているという。「開発担当者と話す際は、企画目線だけでなく工場での生産効率などもふまえた改良の提案などができます。また、工場で勤務したからこそ、自分はこういう企画がしたいという思いが芽生えるようになりました」と振り返る。

下地さんは2019年に入社。株式会社一関 LIXIL 製作所で加工・製品管理に従事し、2022年より現職
下地さんは2019年に入社。株式会社一関 LIXIL 製作所で加工・製品管理に従事し、2022年より現職【写真=三佐和隆士】

柔軟な働き方が可能。オフィスはコミュニケーションの場へ

同社では業務の効率化や生産性の向上、ワークライフバランスのさらなる充実のため、2020年10月に「スーパーフレックス制度」を導入。コアタイムを廃止したことで、働く時間をより自由に選択できるようになった。

2児の母として子育て中の三上さんは「自分の意思を尊重してくれる会社」と話す。午後から子どもの学校行事に参加する日は、朝6時から仕事を始めることも。「子どももそういう働き方を見て、自分でできることは自分でやってくれています」といい、在宅勤務やフレックス制度を活用して柔軟な働き方ができることが、家庭においても大きなメリットとなっている。

さらに仕事においては自主性を尊重する風土がモチベーションにつながっている。三上さんはキャリア採用で同社に入社。「自分でタスクを見出して、それを自分のやり方で追求していくという働き方は、以前の会社ではかなえられなかった」とLIXILならではの魅力を話した。

三上さんは2020年に入社。前職は理化学分析機関で分析業務に携わっていた
三上さんは2020年に入社。前職は理化学分析機関で分析業務に携わっていた【写真=三佐和隆士】


働く場所や時間が自由になると、課題になるのが社員間でのコミュニケーション。同社ではオフィスをコミュニケーションの場ととらえることでメリハリのある働き方ができているという。下地さんは出社がメインだった工場から現在の部署に異動した当初、働き方が変わることに不安を抱えていたという。だがチームのメンバーと話し合って出社頻度を調整することで、適切にコミュニケーションがとれて、バランスよく働けていると話す。

社内公募制度などキャリアチェンジのチャンスも

また働き方だけでなく、キャリアチェンジについても柔軟な体制がとられている。藤原さんは入社して最初の4年間は、サッシ・ドア事業部で開発の仕事をしていた。開発以外の仕事にも携わって事業全体を知りたいと思ったことをきっかけに、ジョブポスティング制度を利用して現在の部署に異動。社内で人員の募集があり、選考に合格すれば部署を異動できるという制度だ。キャリアアップにつながるほか、ライフステージに応じて働き方を見直すことで、キャリアの断絶を防ぐことにもつながる。

藤原さんは現在の部署に異動し、パネルを設置して壁をキャットウォークに変える「猫壁(にゃんぺき)」の企画・開発を手がけた。「趣味や嗜好に合わせて暮らしを変えるという工夫ができたら、リフォームがもっと身近なものになるのではないか」と考えたのがきっかけ。ウェブ上のコミュニケーションにも力を入れ、ユーザー同士が交流できるコミュニティ「猫壁ひろば」を開設。藤原さんは「開発部隊にいたので、お客様の顔が見え、話すことのできるチャネルを持てたことはとても刺激になりました」と振り返る。

猫を飼ったことがない藤原さん。「猫壁」開発の際は、猫を飼っている人にインタビューを行って声を集めた
猫を飼ったことがない藤原さん。「猫壁」開発の際は、猫を飼っている人にインタビューを行って声を集めた【写真=三佐和隆士】


座談会の終盤には、3人が目標や展望を語った。

下地さんは、現在扱っている窓リフォームの商品の魅力を多くの人に伝えていきたいといい、「この先のキャリアとして育児と仕事を両立しながら管理職にも挑戦したい」とした。三上さんは、「LIXILの商品が実現するお客様の豊かな生活を、ハイレベルな研究開発・分析・訴求研究で支えていきたい」といい、自由に挑戦できる会社の風土づくりや後進の育成にも意欲を示した。

藤原さんは「思っているよりも簡単に、自分の暮らしに住まいをあわせられる」ということを伝えていきたいと話す。そのために、暮らしがもっと楽しくなることを想像できるような商品やサービスを提供していきたいと目標を語る。また自身のキャリアチェンジの経験を振り返り「新しいことに挑戦できる人がもっと増えて、LIXILのチャレンジングな文化が育っていくよう、私も貢献できるとうれしいです」と話した。

自分が主人公として働ける職場

座談会を終えた3人に、仕事のやりがいや大切にしていることなどを聞いた。

――やりがいを感じる瞬間は?
【下地春菜】新商品の市場投入の準備や、お客様に商品の魅力を伝えるという業務を行っています。展示会で商品の説明をするなかで、お客様から「すごく使いやすいよ」とか「ようやく出たんですね、待ってたよ」とお話ししていただいたり、営業さんから「すごくわかりやすくて説明しやすかった」と声をかけられたときに、やっていてよかったと感じます。

下地さんが携わるマンションの窓リフォームは同社の新事業。営業担当者とも密に連携をとりながら業務を進める
下地さんが携わるマンションの窓リフォームは同社の新事業。営業担当者とも密に連携をとりながら業務を進める【写真=三佐和隆士】


――仕事で悩んだり迷ったりしたときは、どのように解決していますか。
【三上歩】タスクの難易度は高いものが多く、また研究や分析は未知のことにチャレンジするという面もあるので、立ち止まってしまうことはありますが、チームメンバーや上司からのアドバイスであったり、チームの検討課題として取り組むことで解決ができています。また、答えを探す工程を楽しむことが、モチベーションの維持につながっています。

――仕事をするうえで大切にしていることは?
【藤原未帆】自分の考えが正しいと思わないことです。今は責任者という立場なので、最終的に決めるのは自分ですが、自分の経験や知識に頼った判断をすることが、必ずしもいい結果につながるわけではないと感じることが多くありました。チームのメンバーでディスカッションして、多様なバックグラウンドや経験・知識を持った人の考えに触れることで、自分自身の視野を広げたうえで、結論を出すようにしています。

さまざまな人の話を聞くことを大切にしているという藤原さん。「猫壁」を作ったときも、猫を飼っている人の言葉に驚かされることが多かったそう
さまざまな人の話を聞くことを大切にしているという藤原さん。「猫壁」を作ったときも、猫を飼っている人の言葉に驚かされることが多かったそう【写真=三佐和隆士】


――みなさんが「LIXILで働いていてよかった」と思うことを教えてください。
【下地春菜】私がLIXILへの入社を決めたのは、いろいろなことに挑戦できる会社だと感じたからでした。実際に1年目に工場で勤務して、そこで学んだことを自分が一番やりたかった企画で活かせているというのは、自分の頑張りを認めてもらえて、上司も真剣に考えてくれた結果だと思います。海外で活躍している方も多く、いろいろなことに挑戦できる環境があって、本当に入社してよかったと思います。

【三上歩】
今日の3名のなかでは唯一の転職者ということで、他社との比較という視点も交えてお話しすると、働き方が選べたり、主体性が重視される環境で、自分が主人公として働けるという点です。やりたいことを実現するために、常に挑戦できる会社はなかなかないと思います。

「日々成長でき、それを実感しながら働くことができる」と話す三上さん
「日々成長でき、それを実感しながら働くことができる」と話す三上さん【写真=三佐和隆士】


【藤原未帆】キャリアについて考えるときに使う「キャリアジャーニー」という言葉があります。キャリアを探し続けること、そして今の時点で最善だと思うキャリアを選び続けることが大事だと思っています。私自身、大学時代は研究をしていて技術職として働くのだろうと思って入社をしましたが、今では自分が思い描いていたのとはまったく違う仕事をしています。自分にとって最善のキャリアが何なのか考える機会も変えるチャンスもあるということが、この会社の一番いいところだと思います。

多くの企業で働き方が見直され、「ワーク・ライフ・バランス」「女性の活躍」といった言葉が多用されるが、働きやすさは人それぞれ。キャリアと向き合う機会を持つことができ、ある程度の自由度のある環境が、言葉だけではない「働きやすさ」につながるのでは。

写真=三佐和隆士