誰もがリフレッシュできる先進的なトイレ「nagomuma restroom」。TOTOが目指す新時代のオフィストイレとは?

東京ウォーカー(全国版)

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フリースペースやカフェスペースなどワーカーのためにつくられる空間は数あれど、どのビルでも確実に必要とされるのが「トイレ」だ。近年のオフィストイレには用を足すだけでなく、ひとりになれる場所としての空間が求められている。さまざまなプレッシャーのあふれるオフィスから解放される空間、それがトイレの新たな役割となりつつある。

そんな気分転換を図れるトイレを提案しているのがトイレのリーディングカンパニーであるTOTO株式会社(以下、TOTO)だ。東京駅の近くにあるオフィスビル、TOKYO TORCH常盤橋タワーのカフェスペースやフリースペースの階に、三菱地所株式会社とのコラボレーションによって“誰もがほっと一息ついて「和む」ことができる”がコンセプトのオフィストイレ「nagomuma restroom」が誕生した。

今回は、オフィスビルにリラックスやリフレッシュを目的としたトイレを設置した経緯や狙い、そしてオフィストイレ設置の最新事情について、TOTO 特販本部 市場開発第二課の丸山智美さんと、TOTOアクアエンジ株式会社 営業本部 設計部の宮野直樹さんにインタビューを行った。

TOTO 特販本部 市場開発第二課の丸山智美さん(左)、TOTOアクアエンジ株式会社 営業本部 設計部の宮野直樹さん(右)【撮影=後藤巧】


狙いは「働く人が気分転換できる空間」

――初めに、nagomuma restroomが設置されることになった経緯を教えてください。
【丸山智美】もともとは新しいトイレを三菱地所さんと一緒につくっていこうということで、プロジェクトがスタートしました。この企画に向けて「オフィストイレに求められる要素とは何か」といったことをディスカッションした際、リフレッシュ・リラックスがこれからのオフィストイレに求められる要素のひとつになるという結論にいたりました。そして、今後のトイレに求められるであろう「誰もがリラックスやリフレッシュできる」を追求したトイレとしてnagomuma restroomをつくることになりました。

【写真】「ひらめき」は爽やかなホワイト基調の空間によって気分が一新でき、心と体が冴えわたるというコンセプト【撮影=後藤巧】


――上司や同僚がいるオフィスの中でリフレッシュってなかなか難しいですよね。トイレに入って気分転換ができると仕事にもいい影響が出そうですね。
【丸山智美】オフィストイレがだんだんと用足しだけでなく、気分を切り替えたりリチャージしたりするという役割を求められるようになりました。また、トイレの快適性自体が仕事のモチベーションに影響することも弊社の調べで判明しています。このようなことをトイレ空間として実現したらどんな感じになるのかと、実験的に企画をした部分もあります。

【宮野直樹】最近のオフィスビルにはワーカーのためのフリースペースが設けてられていることが多いです。それでもひとりきりになれるような場所って、意外にもトイレくらいなのですよね。そこで、本当の意味でひとりになってくつろいでもらうために、nagomuma restroomでは「くつろぎ」「いきぬき」「おちつき」「ひらめき」の4つの内装パターンをつくり、それぞれ使う人の気分や目的によって選んでもらえるようにしています。何回か入ると全パターンを把握できたり、お気に入りの個室ができたりするような設計を目指しました。

「おちつき」は都会的で洗練され、落ち着いた雰囲気で高揚した気持ちを静める【撮影=後藤巧】


【宮野直樹】それに伴って内装は4つのコンセプトに沿って、それぞれの気分に合わせた気持ちにさせるようなインテリアを選びました。また入ると照明と連動し、座ると音と連動しているつくりにしています。特に照明については壁の色の明暗によって光の反射が違ったりするので、どの照度になると落ち着くのかといったことを計算するなど、くつろいでもらうための研究を徹底しています。

六角形の個室やフレキシブルブースを設置した意図は?

――個室が六角形になっているのはどのような意図があるのでしょうか?
【宮野直樹】六角形の個室を採用することで、真ん中の2つのブースを男女で切り替えられるように2方向から入れるようにしています。このようなつくりを成立させるために、六角形の部屋が企画段階でアイデアとして出ました。その後、設計を進めていると六角形は形としてすごく安定しているとわかりました。このような設計は人の気持ちや感情などにも影響すると思うので、六角形の個室は今回のコンセプトにぴったりだったと思っています。

六角形のブースは、通常の四角形と比べて広がり感と包まれ感があり、リラックス効果を高めてくれる【提供=TOTO】


【宮野直樹】ですが、決められたスペースの中で六角形を組み合わせ、求められる個室数を配置していくのはとても困難な作業でした。普通のトイレブースは四角なので単純に一列に並べられるのですが、六角形だと入口が向かい合ってしまい、複数の利用者が個室から出てきたときにお見合いをしてしまいます。そのため、あえて入り口をずらすなどの工夫を行いました。

【丸山智美】最初に図面を見たときに「どうやって実現するの?」と言ってしまいました(笑)。普通のトイレは下部に隙間があるブース状になっているのですが、今回のトイレでは個室感を出すために完全に壁で仕切っています。また、男性トイレと女性トイレの両方から利用できるフレキシブルブースがあるのですが、ここはがっちりはめてふさいでいます。そのため、例えば男性側からフレキシブルブースに入ると、女性側からは壁にしか見えないような工夫をしています。

中央2カ所のトイレ空間は六角形の2辺にドアがついていて、男女ブースの切り替えが可能なフレキシブルブースになっている【提供=TOTO】


――フレキシブルブースを設けようと思われたのはどのようなことがきっかけですか?
【丸山智美】最初は男女みんなで使えるオールジェンダートイレを目指していました。入口と出口の前後2つのドアをつけたワンウェイの個室を考えていたのですが、2021年の竣工当時に男女共用トイレが受けいれられる雰囲気にあるかというと、まだそこまで醸成されていないのではという結論にいたりました。そこで、「だったら男女を分けてみてはどうか」ということでフレキシブルブースを設置しました。

【丸山智美】もうひとつの理由としては、オフィストイレをつくるときの課題として利用者の男女比がありました。オフィスビルに女性社員が多い会社が入ったり、逆に男性ばかりの会社が入ったりした際に、男女のトイレの比率をどうするかという問題が起こってしまいます。そのため、全個室のうち2カ所だけフレキシブルブースにして、例えばフリースペースで女性が多いイベントが開催されるときには、フレキシブルの2ブースを女性トイレにする、といった変則的な形を取れるようにしています。

混雑度のデータを分析しながら、男女ブースを切り替えて使用できるのが特徴【提供=TOTO】


――nagomuma restroomのオープンから2年以上たちましたが、ユーザーの反応はいかがでしたか?
【丸山智美】多かったお声として、まず満足度が非常に高かったところが挙げられます。特に、洗面が個室の中にあることが男女ともに非常に高評価でした。私たちは最初、音響や照明、六角形の形などが主に評価されるかと予想していました。しかし、洗面空間があることによって落ち着いて見繕いや身だしなみチェックができるという声が男女ともにありました。同僚や上司などの顔見知りの方たちに、身だしなみを直しているのを見られるのが嫌な人は多かったようです。

【丸山智美】このトイレを設置して、心理的安全性が保たれるのは大事だということをあらためて実感しました。バリアフリーを目的とした個室トイレは数多くあると思いますが、リフレッシュとかリラックスをコンセプトにした個室トイレがフリースペースの近くにあるのは、意外にも少なかったと思われます。そのような意味においても、このnagomuma restroomの設置は新しい試みでした。

利用者からの評価が最も高かった手洗い場。すべての個室についているので、周囲の目を気にせずに身だしなみを直すことができる【撮影=後藤巧】


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