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アトリエは常に満室!創立20周年の「台東デザイナーズビレッジ」が若手クリエイターたちに必要とされ続ける理由

2024/02/20 12:00
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2004年4月に設立され、2024年で創立20周年を迎える「台東デザイナーズビレッジ」(東京都台東区)。ファッション・デザイン系の創業支援施設として、これまでに118ブランドを輩出。台東区の施設でありながら、区の枠を超えてファッション業界に大きく貢献してきた。若手クリエイターに貸し出しているアトリエは常に満室だという、その人気の秘密とは。設立当初からクリエイターたちを近くで支え続けている村長・鈴木淳さんに、施設とクリエイターの関係性や活動内容、未来について話を伺った。

デザビレの村長こと鈴木淳さん
デザビレの村長こと鈴木淳さん【画像提供=台東デザイナーズビレッジ】

台東デザイナーズビレッジの魅力とは?入居希望者の多くがアドバイスを求めて

――まず、「台東デザイナーズビレッジ」(以下、デザビレ)とはどのような施設なのでしょうか?

【鈴木淳】国内で初めて作られた、ファッション・デザイン関連の創業支援施設です。創業支援施設は全国に存在していますが、ほとんどがベンチャー企業やIT企業といった成長産業が対象。ファッション系という、どちらかといえば縮小している産業の創業支援施設はかなり少数です。デザビレでは、事業を始めて5年以内のクリエイターに最長で3年間アトリエを貸し出し、成長するための場所、ソフト、ネットワークなどを提供しています。入居者は主にアパレル、ジュエリー、皮革や雑貨のクリエイターで、イラストレーターやグラフィックデザイナーもいますね。

――廃校になった校舎を再活用している、という点もユニークですね。

【鈴木淳】台東区の人口減少で廃校となる小中学校がいくつか出てきまして、それらを有効活用しようという動きがありました。ここ旧小島小学校は「産業振興のために使う」ことになり、デザビレが誕生しました。校舎は3階建てですが、デザビレでは1階と2階を活用しています。クリエイターに貸し出しているアトリエは、1つの教室を2部屋に分けた約20平米と約40平米のもので計19室。ものづくりのアトリエとしては決して広くはありませんが、一般的な創業支援のアトリエと比較すると都内では広いほうだと思います。校舎を使っているので、設立当初は「学生さんが入っている」「売れない作家さんが入っている」と言われていましたが、実際には「成長意欲が高いメーカーやブランドの卵」が集まっています。

【写真】旧小島小学校を再活用している
【写真】旧小島小学校を再活用している【画像提供=台東デザイナーズビレッジ】


――現在は募集のたびに満室となるそうですが、クリエイターたちはなぜデザビレに入居を希望するのでしょうか?

【鈴木淳】入居前の説明会で取っているアンケートをみると、アドバイスを期待している人が一番多いです。というのも、入居希望者の多くが自分で事業をスタートさせたけど壁にぶつかっている、伸び悩んでいるという人たちなんですね。会社なら上司や先輩に相談できますが、フリーランスだとそれができない。その点、デザビレなら相談ができて、アドバイスももらえて、クリエイター仲間もできます。あとは家賃の安さもありますね。共益費込みで月2万9000円〜(家賃8000円〜、共益費2万1000円)ですから、相場の3分の1くらい。かなり割安感があると思います。ただし、入居時には書類審査、1時間の面接、審査会と3回の審査を行っています。そこで本人のやる気や「成長性」「支援の必要性」を見極めさせていただくので、家賃が安いという理由だけでは入居はできません。

校舎内に設けられたアトリエの様子
校舎内に設けられたアトリエの様子【画像提供=台東デザイナーズビレッジ】


【鈴木淳】「成長性」というのは、入居期間の3年間でどれだけ伸びそうか、その可能性ですね。事業を伸ばすためにどれだけ努力を積み重ねてきたのかも重要視しています。「支援の必要性」というのは、成長目標の有無です。自分の課題がはっきりしていて、そのためにどういうリソースが必要なのか。問題意識をしっかりと持っている人のほうがデザビレを有効活用できますからね。そういう人が入居できるように、しっかりと審査を行っています。

職人や工場とクリエイターのマッチングも!事業が成功するために各人にあった支援を提供!

――入居後はクリエイターをどのように支援していくのでしょうか?

【鈴木淳】まずはブランドの目標やコンセプトを確認し、次に展示会の参加の仕方やSNSでの発信の仕方、事業内容を外に伝えるためのアドバイスをしていきます。“商品の売り方”はこの20年間で大きく変化していて、昔は展示会でバイヤーに選んでもらえればある程度売り上げが確保できましたが、今はバイヤーが展示会であまり買い付けてくれません。なので、自力でお客さんを作り、その人たちに販売していく必要があるんです。

【鈴木淳】そこをクリアしたら、生産体制の強化や運転資金の確保といった事業が大きくなるにつれて出てくる問題や課題に対する支援に移ります。順調にお客さんが増えていくと製作が追いつかなくなるので、手作りから職人や工場に作ってもらう段階に切り替える必要があります。そのためにクリエイターと工場をマッチングする機会を作ったりもしています。

――それぞれの事業ステージに合わせた支援を行うんですね。

【鈴木淳】失敗する理由はだいたいみんな同じなのですが、成功する理由は人によって全然違います。クリエイティブ能力やコミュニケーション能力が高くて売れる人がいれば、めちゃめちゃ働いて伸びる人もいる。かと思ったら、頼りなくてまわりが世話をしてくれて伸びる人もいる。正解のルートは無数にあるんです。なので、そのポイントをクリエイターと一緒に見つけるという点は意識しています。

――「クリエイター起業塾」という講座も開催されていますが、こちらではどのようなことを教えているのでしょうか?

【鈴木淳】講義内容としては、自分のブランドの強みを再認識し、その強みを活かしてお客さんにどのような価値を提供できるのか。誰をお客さんにすると喜ばれるのか。その人たちに対してどういう発信が必要なのか。そういったブランドのファンを作る方法などをグループで考えていきます。デザビレで個別指導している内容ですが、入居者も半分くらいが受講していますね。起業塾は入居者以外のクリエイターも参加可能です。

「クリエイター起業塾」で講義する鈴木村長
「クリエイター起業塾」で講義する鈴木村長【画像提供=台東デザイナーズビレッジ】


――いわゆるワークショップのような感じですね。

【鈴木淳】最近では“参加型アクティブラーニング”といわれる手法なのですが、だいたい講義の半分は自分でワークシートを書いて、グループで話し合って成果物を作っていく感じです。1回8時間の講座を6日間行います。ストップウォッチを使って分刻みで作業していくので、講義の密度は尋常じゃないです。みんな夕方くらいには「疲れて頭が痛い」と言い始めていますね(笑)。私自身も疲れすぎてしまうので、開催は年に2回だけ。参加者からは「デザビレにいる3年間より起業塾の6日間のほうが濃い」という声もあがっています。

卒業後も台東区で事業を!地域全体で若手クリエイターを育てていくことが理想

――現在、デザビレ卒業後に台東区で事業を行っている卒業生はどれくらいいるのでしょうか?

【鈴木淳】台東区内に残留している卒業生は40ブランドで、ジャンルはジュエリー・アクセサリー系、革系、洋服が多いです。たとえばジュエリー関係だと、御徒町で材料の仕入れから加工までができるので、台東区内に事務所を構えているとやりやすいんです。

――デザビレ時代のつながりが活かされているんですね!

【鈴木淳】入居中に地元との付き合いが多いと台東区内に残る傾向にあります。逆に地元の付き合いが少ないと、人が多い都心のほうに出ていきがちです。台東区は問屋さんや職人さんが多く、ものづくりにはとても便利なのですが、“売るためのお店”として考えると人が多い都心に比べると不利なので…。とはいえ、このあたりもものづくり系のお店が増えたことでメディアで取り上げられるようになりました。そうすると若者が来るようになって、カフェができたりして。この20年で徐々に人の流れができてきたのかな、って感じです。

デザビレ卒業生が立ち上げた「carmine」。革小物やアクセサリーを販売
デザビレ卒業生が立ち上げた「carmine」。革小物やアクセサリーを販売【画像提供=台東デザイナーズビレッジ】


――話を伺っていると、台東区内にアトリエを構えるメリットは多そうですね。

【鈴木淳】昔は「まわりに競合ブランドがいないこと」「家賃が安いこと」「ものづくりに適した環境であること」が台東区を選ぶ大きな理由でした。そうして先輩たちが地元に定着するようになったことで、今は「卒業生のネットワーク」も強みとなっています。しかしながら最近は人気のエリアになってきたため家賃が上がっており、物件を探すのに苦戦することも少なくないようです。この状況は台東区としてもどうしていけばいいのか、悩みどころではあります。

――最後に、20周年を迎えるデザビレの未来、今後の目標を教えてください。

【鈴木淳】台東区の施設なので、“デザビレの未来”というより“区の産業の未来”という感じになりますが、若手クリエイターたちがもっと街に溶け込んでいくような流れが生まれるといいですね。この20年で台東区にも若者を受け入れる素地ができてきたように思います。今後も地域全体で若手クリエイターを育てていけるようになればと。それと、台東区には東京が誇る観光地、浅草と上野があります。今後は海外の方が浅草寺や上野の町を観光した流れで、「この地域のクリエイターの店がおもしろい」と寄ってくれるようになるといいですね。

デザビレがクリエイターたちから必要とされる理由は、本気で向き合って支援してくれる鈴木村長の存在とものづくりに適した地域環境があった。なお、校舎の大規模改修工事のため、2026年から2年間は一時休業。次回の入居募集は2028年分から行われるとのこと。今後もどのようなクリエイターがデザビレから羽ばたいていくのか、注目したい。

■台東デザイナーズビレッジ
公式サイト:http://designers-village.com/
X(旧Twitter):https://twitter.com/designervillage

■鈴木淳
X(旧Twitter):https://twitter.com/szkjn

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