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味噌汁に新風!テクノロジーを活用した完全栄養食。MISOVATIONがこだわる“機能”と“情緒”とは

2024/01/26 12:00
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株式会社MISOVATIONは「次世代型の味噌汁」を開発するフードテック企業。栄養学のテクノロジーを活用した味噌汁タイプの完全栄養食「MISOVATION」を手がけ、来年には「味の好み」と「足りない栄養素」に応じて味噌汁を“処方”するパーソナライズ味噌汁「MISOBOX」をスタートする。同社代表で栄養士の斉藤悠斗さんに、商品開発の背景や、味噌汁やフードテック市場の現状、健康への思いについて聞いた。

株式会社MISOVATION代表取締役の斉藤悠斗さん
株式会社MISOVATION代表取締役の斉藤悠斗さん【撮影=三佐和隆士】

31種類の栄養素が含まれる完全栄養食

「MISOVATION」は、たんぱく質や食物繊維、ビタミン、ミネラルなど31種類の栄養素が含まれる味噌汁タイプの完全栄養食。瞬間冷凍された具材と味噌、出汁がパウチ容器に入っており、耐熱容器に移してから水を加えて電子レンジなどで加熱するだけで、具だくさんの味噌汁が出来上がる。

「日本人の食事摂取基準」に基づき、1食に必要な31種類すべての栄養素をバランスよく摂取できる
「日本人の食事摂取基準」に基づき、1食に必要な31種類すべての栄養素をバランスよく摂取できる【画像提供=MISOVATION】


2021年1月にクラウドファンディング「Makuake」でテスト販売を行い、同年10月からサブスクリプションサービスとしてスタートした。健康管理がおろそかになりがちな、忙しいビジネスパーソンがターゲットだ。

「食」の機会は1年で1000以上

MISOVATIONは「健康を当たり前にしたい」という想いから始まった。その原点は、斉藤さんが10代のころに経験した、認知症を患う祖父の介護だった。

「ここ最近では認知症の治療薬の開発が進んでいますが、当時は進行を遅らせる薬しかない『治らない病気』とされていました。病気になってからいくら食事療法をしても治らずに衰退していく祖父を近くで見ていたという経験があって、病気になる前の健康をつくりたいと思いました」

大学では栄養士免許を取得し、うま味の研究をした
大学では栄養士免許を取得し、うま味の研究をした【撮影=三佐和隆士】


高校では理系を選択し、周りは工学系の大学へ進学する人が多かったが、興味を持てなかった。唯一興味を持てたのが、子どものころから好きだった「食」に関すること。「1日3食、1年で1000食以上の機会に変化を起こすことで健康を当たり前にできるのでは」と東京農業大学へ進学して栄養学を学んだ。

就職活動中に「いつか起業したい」とぼんやりと考え始めた斉藤さん。卒業後はカゴメ株式会社で営業として働き、将来的に食や栄養に関わるビジネスで起業することを見据えて株式会社リクルートキャリア(現リクルート)に転職。「在職中に自分のキャッシュで商品開発を始めて、同僚に試食してもらったり、ビジネスコンテストに参加したり、ビジネスアイデアを小さく検証していました」と振り返る。

SNSきっかけに味噌汁に着目

初めは地域の野菜を使った惣菜のサブスク事業など、いろいろなアイデアを考えていた。味噌汁に着目したきっかけはTwitter(現X)で見かけた「味噌汁って完全栄養食だよね」という投稿だった。

「今ではさまざまな会社が『完全食』を開発していますが、当時は健康食品というと『無機質なもの』というイメージがありました。例えば栄養が取れるからといって、粉末状のサプリのようなものを祖父に食べさせたいかといえば、そうではないなって。『健康=我慢』のイメージがあったが、味噌汁は完全栄養食だという投稿を見て、味噌汁はこんなに情緒的なのに機能的な側面もあるのだと気付かされました。実際に栄養を分析してみると、豊富な栄養素をバランスよく含んでおり、さまざまな具材と相性がよい料理であることから、添加物に頼らず配合を工夫するだけで完全栄養食にアップグレードできそうだと思いました」

完全栄養食品「MISOVATION」は当初のターゲットは20〜30代だった。販売を始めると40〜60代が約半数を占め、サブスク継続率も高い
完全栄養食品「MISOVATION」は当初のターゲットは20〜30代だった。販売を始めると40〜60代が約半数を占め、サブスク継続率も高い【撮影=三佐和隆士】


MISOVATIONの開発では、必要な栄養素を取れるだけでなく「心を満たす」ことも重視した。フードテックという領域は「技術的な部分が先行していて、消費者ニーズが置いてけぼりになっているのでは」と斉藤さんは分析する。「消費者がどう感じるのか、という大事なポイントが重視されていないケースが多いと、自戒を込めて思っています。例えば遺伝子検査をすると、太りやすい食事や不足している栄養素がわかります。ただし検査にはある程度の費用と手間がかかりますし、自分の遺伝子にあった特定の食品を食べるより、好きな食品を好きなときに食べたいと思うものですよね。その機能と情緒のバランスはすごく大事だと思っています」

機能と情緒を両立


「心を満たす」ための取り組みとして、MISOVATIONの材料はすべて瞬間冷凍している。「フリーズドライだと、具材が小さくなってしまって食べごたえがない。また味噌汁は沸騰すると香りが飛んでしまうので、高圧高温で殺菌処理をするレトルト食品には向いていません。おいしさを維持するという観点で、瞬間冷凍という技術を使っています。ナナスは揚げた状態、ブロッコリーは表面の殺菌処理をして生に近い状態など、具材ごとに加工方法を変え、より良い状態で瞬間冷凍しています」

味噌汁タイプの完全栄養食「MISOVATION」。価格は1食あたり950円〜1058円で購入プランによって異なる
味噌汁タイプの完全栄養食「MISOVATION」。価格は1食あたり950円〜1058円で購入プランによって異なる【画像提供=MISOVATION】


また、味噌の種類を毎月変えて届けることで、“新しい味噌との出会い”も提供する。「我々は、その月に使用させていただいた味噌の味噌蔵さんに取材をして「MISOTIMES」という紙媒体を同封してお届けしています。エンタメ的な要素もありますし、日本の味噌文化を知るという情緒的な体験にもつながります」

開発にあたり苦労したことは、製造工場を探すことと、おいしく栄養価を高めるという2点。製造工場はひたすらキーワード検索してリストアップし、地道に電話やメールでで問い合わせた。「当時は何の実績もなく、法人登記もしていない状態だったので、まったく相手にされないこともありました。今までにないものを作ろうとしていたので、食品というレガシーな産業で、自分よりもはるかに業界歴が長い方々を巻き込めるよう説明するのは難しいところでもありましたが、とにかく数を重ねながら、熱意を持って話していくという形でクリアできました」

栄養価について課題となったのはカルシウムだ。1日の基準値と比較すると、一般的な味噌汁には十分なカルシウム量が含まれていない。そこで煮干しの出汁を使うことにしたが、風味が強くえぐみが出やすい。そこで産地の異なる煮干しを複数仕入れて試作を繰り返し、えぐみの少ないものを選んだ。

「MISOVATION」は「心を満たす、完全食。」がコンセプト。味に対して「妥協できない」と話す斉藤さん
「MISOVATION」は「心を満たす、完全食。」がコンセプト。味に対して「妥協できない」と話す斉藤さん【撮影=三佐和隆士】


斉藤さんは、味噌市場は「逆風が吹いている市場」と話す。「日本には約1200の味噌蔵がありますが、味噌の市場自体がシュリンク(縮小)していて、廃業が相次いでいます。衰退する市場で戦うというのは本来のスタートアップとは真逆の戦い方です。味噌市場の主な顧客層は50代から80代ですが、新しい市場を開拓し続けないといけません」

味噌汁をパーソナライズ、新しい体験

そんななか、2023年9月にMakuakeで先行発売を始めた「パーソナライズ味噌汁 MISOBOX」では「市場の広がり」を実感できたという。WEB診断の結果をもとに、味の好みや足りない栄養素に応じて、約60種類の味噌汁から自分に最適な味噌汁が届くというサービスだ。コーヒーを産地で選ぶように、味噌も地域や味噌蔵ごとの違いを楽しみ、サプリのように足りない栄養素を補うために飲むという“新しい味噌汁体験”を提案。30〜40代の女性の購入が多かった。

例えば目が疲れている人には、アントシアニンが含まれるナスの入った味噌汁を“処方”する(画像はイメージ)
例えば目が疲れている人には、アントシアニンが含まれるナスの入った味噌汁を“処方”する(画像はイメージ)【撮影=三佐和隆士】


「もともとWEB診断は、女性を主なターゲットとして開発しました。だから、イラストがかわいいなどユーザーインターフェースに対してすごく反応がいいですね。また、WEB診断の質問が、卵焼きがしょっぱいのと甘いのではどちらが好きかなど、イメージするような味噌汁の診断と少し乖離があって、おもしろいという感想をいただけたのではないでしょうか」

「パーソナライズ味噌汁 MISOBOX」のパーソナライズ診断の画面。質問は全部で約20問。出身地や味付けの好みなどを問う
「パーソナライズ味噌汁 MISOBOX」のパーソナライズ診断の画面。質問は全部で約20問。出身地や味付けの好みなどを問う【撮影=三佐和隆士】


「MISOBOX」に入っているのは、日本各地の伝統的な味噌蔵が作ったフリーズドライの味噌汁。「約1200の味噌蔵のうち100社ほどが、フリーズドライの味噌汁を開発しているのですが、クラフトビールみたいなもので、ほとんど一般流通はしていません。既存事業を進めるなかで味噌蔵さんから『実はフリーズドライの味噌汁を作っている』と言われて知りました。各地で買い集めた味噌汁を、このパーソナライズ診断という付加価値を通じてお届けする。卸売やマッチングに近い、プラットフォームのようなビジネスになっています」

事業を始めたころからパーソナライズしたいという思いはあったが、事業規模的に何種類もの商品を開発することは難しかった。もともとあったパーソナライズの構想と、魅力的な商品の存在を知り、今回のサービス開発に至ったという。WEB診断の開発には、全国各地の味噌蔵を訪問した経験や、既存事業を通じて得たユーザーの声などが生かされている。

日本全国の伝統的な味噌蔵と連携。一般流通していない60種類以上の“クラフト味噌汁”から、1人ひとりに合った味噌汁を選んで届ける
日本全国の伝統的な味噌蔵と連携。一般流通していない60種類以上の“クラフト味噌汁”から、1人ひとりに合った味噌汁を選んで届ける【撮影=三佐和隆士】


「その人の出身地の味噌を届ければ、当然好みは合いますが、MISOBOXでは『この味噌も好きかも』という新しい好みを探ることも意識しました。そのためには全国の味噌の特徴を熟知している必要があります。また既存事業のなかで、こういう人はこういう味噌が苦手、こういう味噌が好きというのがわかってきました。誰もやったことのないことをやっているので、自分たちで一次データを集め、プラットフォーム化を進めています」

「味噌の多様性と機能性を広げたい」

株式会社MISOVATIONが掲げるのは「予防医療にイノベーションを起こす」ということ。

「日本の味噌の多様性と機能性をもっと広げていきたい」と話す斉藤さん
「日本の味噌の多様性と機能性をもっと広げていきたい」と話す斉藤さん【撮影=三佐和隆士】

「我々はいろんなプロダクトを出していますが、そもそも味噌自体がすごく身体にいいんですね。栄養素が豊富で、腸にもいいとされる発酵食品です。また、味噌汁をよく飲む人ほど胃がんによる死亡率が低いという調査結果や、さまざまな生活習慣病の予防効果に関する論文なども出ています。日本人はもちろん世界中の人が、今よりももっと味噌を食べる習慣が身につけば、栄養バランスや腸内環境が改善されると思っています。だから日本の味噌の多様性と機能性をもっと広げていきたい」

現在は国内の販売がメインだが、すでにシリコンバレーの企業向けに提案を進め、売り上げも立っている。「今後はグローバル展開を進めたいというのがひとつ。また今提供しているプロダクトはまだまだニッチな商材ではあるので、より多くの方に購入いただけるよう、商品展開を強化していきたいです」

この記事のひときわ#やくにたつ
・機能性の高さだけではなくユーザーの気持ちも考える
・つまずいたときは、できることを地道にする
・付加価値をつけることで市場が広がる

撮影=三佐和隆士

MISOVATION公式サイト:https://misovation.com/

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