ジュエリーブランド｢4℃(ヨンドシー)｣などを展開する株式会社エフ・ディ・シィ・プロダクツ(以下、エフ・ディ・シィ・プロダクツ)は、2022年に創業50周年を迎えた。人気ブランド「4℃」を筆頭に人気商品を打ち出し、長く日本のジュエリー業界を支えてきたが、誰もが知るブランドであるがゆえに、SNS上では「4℃論争」など一部のユーザーが発信したイメージがひとり歩きする様子も見られる。
そんななか2023年9月に開催した「匿名宝飾店」では、ブランド名を隠し商品の魅力のみでたくさんの人を集め、大きな話題を呼んだ。そんな同社から2023年11月27日、新D2Cジュエリーブランド「KAKERA」が登場。ブランド立ち上げの背景から、商品づくりのこだわり、今後の展望まで、デザイナーの佐野香澄さんと代表取締役社長 瀧口昭弘さんに話を聞いた。
鉱物のありのままの美しさを、唯一無二のジュエリーに
エフ・ディ・シィ・プロダクツが展開するブランドは「KAKERA」を含めて7つ。このうち“4℃”の名前が入らないブランドは、2022年にリスタートした｢RUGIADA(ルジアダ)｣に次いで2つ目となる。
「KAKERA」のコンセプトと誕生背景についてデザイナーの佐野さんは、「地球の中に何万年も潜んでいた鉱物にフィーチャーしたブランドになっており、『uncover』にはそれらを発見する、発掘するという意味が込められています。一つひとつの鉱物は唯一無二であり、それぞれに個性があることを身近に感じていただけるようなブランドを作りたいと思い企画しました」と話す。
鉱物コレクターでもある佐野さん自身が選び集めた石をジュエリーにし、その魅力を伝えたいとの想いから始まった「KAKERA」。6つのコレクションが用意されており、目玉となるのは鉱物の個性を活かした一点物のジュエリー『ONE of a KIND』(1万9800円～)。その石にあわせて都度商品を作るため完成までに3カ月弱かかるという。
「石の個性を活かした一点物を作りたいと企画しましたが、売れてしまったらその商品はそれで終わり、再入荷などがないものなので、弊社のように規模が大きい会社でOKが出るのかは不安でした。しかし、個体差のある石の魅力や一点しかないという特別感をお客様にお届けしたいという想いがあり、社長とともにミーティングを重ねました」
ほかにも、身につけやすさにこだわり小ぶりな誕生石をあしらったアミュレット『BIRTHSTONE』(1万9800円～)や、ダイヤモンドを主役に据えながらも肌になじみやすく日常使いしやすい『DIAMOND』(2万4200円～)、昆虫・植物・海洋生物などをかたどった『MOTIF』(1万1000円〜)、地層や岩肌など自然の強さをイメージした『SILVER』(7700円〜)、鉱物のありのままの美しさや色合いを活かした『COLOR STONE』(1万9800円～)と、どれもこだわりの詰まったコレクションとなっている。
ブランドの原点に立ち返る
2023年9月8日から9月24日まで、東京・原宿のキャットストリートで開催された「匿名宝飾店」。“ブランド非公開”の体験型ジュエリーショップとしてスタートし、“ブランド名からではなく、ものを見て、自分の指や肌のうえでジュエリーを好きになってほしい”というコンセプトのもと、ジュエリーショップとしては珍しくショーケースを撤廃。「ジュエリービュッフェ」と名づけ、実際に手に取って試着できるよう空間を構成した。
期間中に5500人以上が訪れたこの施策について瀧口さんは、「匿名宝飾店」の背景について次のように語る。
「我々としても非常に決意を持って行った取り組みでした。4℃というブランドは非常に認知度が高く昨今のSNSの世界ではいろいろなイメージがついていて、もう一度原点に戻って、我々のブランディングとはなんだろうと考えたときに、よく創業者が言っていたのは『4℃ロゴというのは自分たちが作った証明でありそれに対する責任』だと。品質保証みたいなものですね。あくまで商品でお客様をすてきにしたり、想いを馳せなければ存在の価値はない。そういう想いでスタートしているので、もう一度4℃の商品を、バイアスをなくして見てもらうために匿名という方法をとりました。さまざまなお客様に見てもらい体感してもらって、賛否両論しっかり受け止める。そのような想いで実施しました」
展示したジュエリーは非常に好評で、訪れた人の約7割が回答したアンケートによると、98%が「欲しい」と答えたそうだ。ジュエリーに求めるものは“デザイン”が圧倒的で、次いで“品質”が挙げられたことに対し、「よりデザイン力やファッショナブル性を磨いてお客様に提案していきたい」と意欲を示した。
