みなさんが支払っている保険料は、本当に適正な金額だろうか。日本には、「万が一のために」と考えてたくさんの保険に加入し、思うように貯蓄ができない「保険貧乏」が多いと指摘するのは、ファイナンシャルプランナーの横山光昭さん。保険貧乏から脱するための、保険料の見直し方を教えてもらった。

「なにかあったときのため」の貯蓄ができないのは本末転倒
私のクライアントを見ていても、とにかく多額の保険料を払い続けている人が多い印象です。これは誠実な日本人の性格も関係していると思いますが、「なにかあったときのために備えておこう」という心配性、あるいは真面目な人が多いからなのかもしれません。
しかし、その考えによってたくさんの保険に加入したり必要のない特約をつけたりして多くの保険料を支払うことになり、それこそ「なにかあったときのため」の貯蓄ができなくなってしまえば本末転倒ですよね。
みなさんも、貯蓄をするための基本のひとつとして、「固定費を見直す」ことの重要性について見聞きしたことがあるかもしれません。毎月など定期的に決まった金額を支払うものが固定費ですから、それを少しでも減らすことができれば「ちりも積もれば山となる」で、結果的には大きな節約につながります。
保険料も固定費のひとつですから、「もしかしたら必要のない保険に入っていたり特約をつけたいたりするかも……」という人は、これを機会にぜひ保険料を見直してください。その流れは、以下のようになります。
【保険料の見直し方】
①現在加入している保険をすべて洗い出す
②保障内容と保険料を把握する
③必要のない保険や特約を解約する

加入している保険と保障内容を洗い出し、無駄なものは解約
まず、現在加入している保険をすべて洗い出します。意外に思う人もいるかもしれませんが、たくさんの保険に加入している人の場合、自分で入った保険を把握できていないことも少なくないのです。保険料に限らず固定費や家計を見直す際には、現状確認が欠かせません。
続いて、保障内容と保険料を把握します。加入したときには「これは自分に必要だ」と考えたとしても、保険は内容が複雑なために、どんな保障内容でいくら払っているのかということについても忘れがちです。
保障内容をあらためて見直してみると、「高額の特約をつけていた」だとか、「同じ保障内容の保険に入っていた」といったことに気づくこともあるでしょう。
そうして、現時点で必要のない保険や特約を解約します。このようにして保険料を削減できれば、その分を貯蓄にまわすことができるようになります。
もちろん、すべての保険が必要ないというわけではありません。たとえば、家庭を持っていて一家の大黒柱として働いている人なら、不幸にして自分が亡くなったときに家族のためにお金を遺せる死亡保険には入っておいたほうが賢明です。
しかし、やはり無駄な保険に加入していたり特約をつけていたりするケースがとにかく目立つというのが、ファイナンシャルプランナーとしてたくさんの人を見てきた私の印象です。

加入する保険は、「必要最低限のもの」でいい
代表的なところでいうと、医療保険における「女性疾病特約」もそのひとつです。女性疾病特約とは、乳がんや子宮の病気といった女性特有の病気になって入院したときに給付金が上乗せされるという内容です。
なかには、「女性疾病特約をつけていないと女性特有の病気の備えにはならない」と考える人もいます。しかし、医療保険自体、女性特有の病気も保障の対象としています。ですから、女性疾病特約については原則的に不要と考えていいと思います。
また、「健康祝い金」といった特約も無駄なもののひとつ。これは、たとえば5年間など特定の期間入院しなかったら3万円などのお祝い金がもらえるというような内容です。でも、そのお金はそもそも誰が払ったものでしょう?そう、自分自身ですよね。
その特約のために月に1万円を払っているなら、その1万円から保険会社は月に500円ずつ積み立てていただけの話で、残りの9500円は保険会社に入ります。そんなお金を保険会社に支払うくらいなら、自分自身で貯蓄や投資にまわして備えておけばいいのです。
保険については、「必要最低限のものだけに加入する」ことを考えてほしいと思います。そもそも国民皆保険制度を採用している日本は、その時点で恵まれた環境にあります。それに加えて加入しておいたほうがいいのは、先にも触れた死亡保険など限定されたものです。
しかし、この「必要最低限のものはどれか」という判断をするのは、一般の人には簡単ではありません。生命保険や医療保険、死亡保険といったものは、商品によって内容のバリエーションが非常に多く複雑ですし、それぞれの資産状況などによっても「必要最低限のもの」は変わってくるからです。
ですから、やはり専門家を頼ってほしいのです。保険に詳しいファイナンシャルプランナーに相談し、あなたにとっての「必要最低限のもの」を見つけてほしいというのが率直な思いです。
この記事のひときわ#やくにたつ
・「なにかあったときのため」の貯蓄ができなくなってしまえば本末転倒
・保険料に限らず固定費や家計を見直す際には現状確認が不可欠
・保険に詳しいファイナンシャルプランナーに相談する
構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム)、取材・文=清家茂樹、撮影=藤巻祐介