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住宅ローンに精通する公認会計士がレクチャー。「家を買う」ときに後悔しないための心構え

2023/03/27 19:15
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「家を買う」ということに対して、どんなイメージを持っているだろうか。例えば、「人生最大の買い物」という表現もよく見られるものだ。ところが、「そんな認識を持っていると危険」だと語るのは、不動産分野に精通する公認会計士として多くのメディアで活躍する千日太郎さん。家の購入に関して多くの人が持つ認識と現実のあいだには、ギャップがあるものも少なくないという。

不動産分野に精通する公認会計士として多くのメディアで活躍する千日太郎さんにインタビュー
不動産分野に精通する公認会計士として多くのメディアで活躍する千日太郎さんにインタビュー

不動産会社の営業マンを頼り過ぎてはいけない

これまでにたくさんの人たちから住宅購入に関する相談を受けてきた経験から、家の購入に関して多くの人が持つ認識のなかに、改めたほうがいいと感じるものがいくつかあります。それは、主に以下の3点です。

【住宅購入にあたって改めるべき認識】
①不動産会社の営業マンは敵でも味方でもなく、ただの取引相手
②「人生最大の買い物」というが、「買い物」と考えていいのは一部のお金持ちだけ
③「賃貸か持ち家か」は永遠のテーマなどではなく、それほど重要ではない

住宅は人生のうちに何度も購入するものではありませから、家を買おうとする人のほとんどが、住宅購入の「初心者」です。そのため、目の前にいる不動産会社の営業マンというプロにどうしても頼りたくなるものです。もちろん、初心者である自分よりはるかに多くの物件や購入事例を見てきた人たちですから、味方につけられたらこれほど心強いことはないでしょう。

その思いから、営業マンを過大評価している人も多いようです。例えば、営業マンに対して住宅ローンに関する相談をするようなケースです。なかには住宅ローンについてそれなりの知識を持っている営業マンもいるでしょうけれど、彼ら彼女らはあくまでも不動産のプロであってお金のプロではありません。お金のことなど専門外のことについて期待し過ぎるようなことはやめておきましょう。

一方、テレビドラマなどフィクション作品で不動産会社が悪徳企業として描かれるようなこともあってか、「不動産の営業マンは信じてはいけない」というふうに必要以上に営業マンを警戒している、いわば敵視している人も少なくないようです。

でも、不動産会社の営業マンは、買い手にとって味方でもなければ敵でもありません。ただの「取引相手」なのです。自分がこれから買う家は、その後何十年も自分と家族の人生を守るためのものです。でも、営業マンにとっては家を売るまでが仕事。表現は厳しいですが、営業マンからすれば「買える人には売ればいい」わけです。

必要以上に営業マンを敵視すべきではないですが、逆に頼り過ぎてもいけません。「ちょっと交渉の進め方が早いな……」「強引さを感じるな……」といったことがあれば、一度立ち止まって頭を冷やすことが大切です。

「買い物」と捉えると、短期的な損得で判断してしまう

「人生最大の買い物」。これは、住宅購入に関してよく使われる言葉ですよね。でも、住宅の購入を「買い物」といっていいのは、一部のお金持ちだけです。なぜなら、買い物と認識すると、いい物(掘り出し物)を安く買えるという認識を持ってしまうからです。

世の中に出ている住宅の情報は、基本的には売り手側が発信したものが多いものです。あるいは、最近であれば、不動産会社のマーケティングの一環として、インフルエンサーと呼ばれる社会的にも成功してお金を持っている人が発信している情報もたくさんあります。売り手側の情報や、お金持ちが発信する「こういう家が買い得!ねらい目!」といった情報は、一般の人にはフィットしない、メリットがないものも少なくありません。

お金持ちであれば、「買い得」と感じたなら、私たちが犬小屋や物置を買うような感覚ですぐにその家を買うこともできるのだと思います。でも、多くの人たちにはそんなことはできません。購入したら何十年もローンを払い続けなければならないのですから、長期的なものさしを持ってじっくりと考えるべきことなのです。

もしそうではなく、まさに普段の「買い物」の感覚で家の購入にあたったらどうなるかというと、短期的なものの考え方によって「損得勘定」に流されやすくなります。夕飯の買い物であれば、それでもいいでしょう。「トマトはスーパーより商店街の青果店のほうが安い」ということなら、青果店で買うほうがお得です。

でも、家の購入の場合、損得勘定に支配されることは危険です。「もう二度と出ないかもしれない、早い者勝ちの超お得な掘り出し物件」といった言葉によって営業マンにコントロールされ、焦って契約をしてしまう。その結果、あとから冷静になって考えてみたら、早まった判断を後悔することだってあるのです。

家の購入は、お金の損得だけにフォーカスして考えるべきことではない

また、損得勘定によって考えると、「賃貸と持ち家、どっちが得か」ということがそれこそよく言われるように「永遠のテーマ」として捉えることになります。でも、損得については、私はそれほど重要ではないと考えています。

住宅ローンで家を買うなら、収入の減る定年時に多額のローンを残さない資金計画が必要となります。その代わり、住宅ローンを完済すればその後の住居費は安く済みます。

一方、賃貸の場合なら、ローンを負うことはない代わりに、現役のみならず老後も賃貸物件に住み続けるため、現役よりも老後にしっかりお金を残す資金計画が必要となります。

つまり、賃貸と持ち家のどちらを選ぶかは、自分の稼ぐお金を現役と老後のどちらに集中させるかというちがいに過ぎません。

損得勘定にとらわれると、賃貸と持ち家それぞれの初期費用に、毎月の返済額、家賃といったランニングコスト、生涯にかかるトータルの費用などを比較して、「どちらが得か?」ということにフォーカスして考えてしまいます。しかし、賃貸でも持ち家でも自分の選んだ住まいを、最後まで持続できる資金計画を立てることのほうが大事なのです。得なほうを選ぶ(選べる)という考え方は机上の空論だと思います。

自分と家族が安心して快適に生活できる住まいのかたちと資金計画をしっかりマッチさせるべきなのです。いつでも住み替えができる自由度が最重要なのであれば賃貸を選択し、賃貸に適合した資金計画を立てるべきです。住まいを自分好みにリフォームをしたり子どもに資産として残したりしたいと考えるのであれば持ち家を選択し、定年までに住宅ローンを完済するための資金計画を立てるべきなのです。

「賃貸か持ち家か」は、どちらを選べば得だといった損得勘定で考えるものではありません。自分と家族がどんな人生を歩みたいのか、そのための具体的な資金計画はどうするのか、といった視点で考えてほしいと思います。

この記事のひときわ#やくにたつ
・不動産会社の営業マンは「取引相手」。頼り過ぎてはいけない
・家の購入を「買い物」とは捉えない
・「賃貸か持ち家か」は自分と家族がどんな人生を歩みたいのか、そのための具体的な資金計画はどうするのか、といった視点で考える

構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム)、取材・文=清家茂樹

『家を買うときに「お金で損したくない人」が読む本』
日本実業出版社(2018)
千日太郎 著

【プロフィール】千日太郎(せんにち・たろう)
1972年生まれ、兵庫県出身。オフィス千日合同会社代表社員、公認会計士。監査法人勤務時代に資格を伏せて開始した「千日のブログ」がきっかけとなり、住宅ローン不動産分野のコラムニストとして現在にいたる。匿名の相談に無料で回答しYouTubeで公開する「千日の住宅ローン無料相談ドットコム」は、たしかな分析力と歯に衣着せぬ的確なアドバイスが評判となり、読者からの相談が途切れることがない。その豊富な相談事例とロジックをAIに応用させたスマートフォンアプリの「AI住宅ローンシミュレータ」は、ファイナンシャル・プランナーのみならず住宅購入希望者必携のアプリとなっている。著書に『50歳からの賢い住宅購入』(同文館出版)、『住宅破産』(エムディエヌコーポレーション)、『住宅ローンで「絶対に損したくない人」が読む本』(日本実業出版社)がある。

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