近年の物価高騰に対し、実質賃金は1年以上もマイナスが続いているという現実を前に、「できるだけ収入を上げたい」と考える人も多いだろう。そうするためにはなにをすべきだろうか。日本最大級の個人向け金融教育事業を運営するABCash Technologies創業者・児玉隆洋さんに、その疑問をぶつけてみた。

将来の収入に大きな差を生む自己投資
収入を上げるためにまず知ってほしいのは、「投資の本質」です。私が考える投資の本質とは、「応援」です。資本主義経済において投資家たちは、「これからの時代に必要とされるだろう」と思える事業を「ぜひ応援したい」と考え、企業にお金を投じます。それが結果的に自分の利益となってリターンを得られることにもなるのですが、本来その根底にあるのは応援の精神なのです。
そして、リターンを得るという意味では、企業と同じように自分自身を応援することも考えてください。つまり、自分自身に投資をするのです。なかには金融投資によって労働収入を超えるような利益を出している人もいるかもしれませんが、ほとんどの人が自分の労働によって収入の大半を得ているからです。
自分自身がもっとも多くの収入をもたらしてくれるのですから、その自分を応援しないのは本当にもったいないことです。そして、そういった自己投資の重要性はどんどん高まっていると感じています。
終身雇用制や年功序列制があたりまえだった時代には、企業は多くの資金を使って社員を育成していました。そうすることが、企業にとって大きなメリットとなり得たからです。
しかし、終身雇用制や年功序列制が崩壊したといわれ、転職があたりまえとなった今は違います。もちろん一部の大企業は以前と同じように社員の育成に力を入れていますが、そうでない企業も増えているのが現実です。多くの企業が、「転職があたりまえとなったのなら、よりよい人材を中途採用すればいい」と考えているのです。
つまり、自己投資によって自らスキルアップし、世の中にとって価値を提供できるような人材になっていける人とそうできない人では、人材市場におけるニーズと将来的な収入に大きな開きが生まれるというわけです。

あたりまえのことをあたりまえに行う
ただし、単純にスキルアップだけを考えればいいものではありません。周囲から信用されて求められる人材になるためには、あたりまえのことを徹底して行う「凡事徹底」も欠かせないのだと私は考えます。
新しいことにチャレンジして、仕事が面白くなったり仕事ができるようになったりしてくると、つい日常の些細なタスクをおろそかにしがちになります。しかし、そういったことを続けると信用はどんどん減っていきます。
たとえば、仕事の基本である「報連相」も、きちんとやるべきあたりまえのことのひとつでしょう。任されている仕事の進捗を上司に報告しないなど連絡がおろそかになれば、その人の信用が落ちていくのは明白です。
報連相のレベルが高い人は、高い頻度で短く、適切なタイミングで報連相を行います。その根底にあるのは、「自分が相手の立場だったら、こうしてもらえるとありがたい」と考える、相手に対する「思いやり」でしょう。だからこそ、きちんと報連相ができる人は、周囲からの信用を勝ち得るのだと思います。
また、それこそ若い人であれば、「わからないことは素直に聞く」「デキる人から学ぶ」ということも、徹底すべきあたりまえのことです。「こんなこともわからないと思われたくない」などと考えてわからないことを隠したりわからないまま放置したりしたとして、その先に成長があるでしょうか。