サイト終了のお知らせ

平素より「OneNews」をご利用いただき、誠にありがとうございます。本サイトは2024年5月15日をもってサービスを終了いたします。
サービス終了後、OneNews掲載の一部コンテンツ(ビジネス記事、マネー記事)は、
当社運営メディア「ウォーカープラス」に引き継がれますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。

話題の「うまい棒ケース」を作った会社とは?「副業プロ人材」を活用した新時代のものづくり企業に話を聞いた!

2023/12/29 17:30
SHARE

2023年11月17日から大阪府枚方市のふるさと納税返礼品に仲間入りした「うまい棒ケース」が話題になっている。1個12円(税抜き)の駄菓子「うまい棒」を入れるケースなのだが、なんとその寄付額は約10万円!ユニークなアイデアと寄付額の大きさで注目を浴びる「うまい棒ケース」を開発した、アクテック株式会社の芦田知之社長に話を伺った。

アクテック株式会社の芦田知之社長
アクテック株式会社の芦田知之社長【画像提供=アクテック株式会社】


「うまい棒」の株式会社やおきんも快諾!

――「うまい棒ケース」製作にあたり、(うまい棒の企画・販売をしている)株式会社やおきんには、どのタイミングで打診されたのですか?また、完成品を見られてどのような反応でしたか?

【芦田知之】初号機を製作するタイミングで、お話を持っていきました。「何言ってるの」と言われるかと思ったんですが、「全然大丈夫ですよ」と言っていただけて本当によかったです。

【芦田知之】完成品をお見せした際は、喜んで笑ってくれまして。トントン拍子に「公式グッズ」として製作できる契約までしていただきました。「うまい棒ケース」は、やおきんさんのショールームでも展示していただいていて、うれしいですね。

風通しのよさがスピーディーな展開を生んだ

――「うまい棒ケース」の発案からふるさと納税返礼品になるまでが約1年だったそうですが、物事の進行が非常にスムーズですよね。アイデアがすぐ採用されたりと、社内の風通しがよいのでしょうか?

【芦田知之】できるだけ意見が言いやすいように…というのは意識しています。なので、どの現場にもマメに顔を出すようにしていますね。

【芦田知之】それから、弊社は実は社長室がなくて。事務所でほかの社員と一緒に仕事をしているのも、いいのかもしれません。もともと社長室はあったのですが、何十年も前ですが…先代(父)のときに、人員が増えたことで手狭になったからと社員が社長に言いに行って。それで社長室がなくなったんです。先代のときからみんなでワイワイお酒を飲む機会を作ったりもしていましたし、以前から社員とコミュニケーションをとっている会社だったと思います。

――先代のときから風通しのよい環境だったのですね。芦田さんが社長に就任されてからは、新たに取り組まれていることはありますか?

【芦田知之】社長に就任して今は3年目なのですが、就任時は(コロナ禍ということもあり)売り上げが落ちていて。これから新しい商品づくりやお客様の開拓などが必要だということで、営業や製造、設計などから何人か集まって毎週1回ミーティングをするようになったんです。

【芦田知之】今回の「うまい棒ケース」もそうだったのですが、社内ではすぐに「いいね」となるのですが、どうしても内輪だけの話になるので、客観的に見て「ホンマにいいかどうか」というのがわからないんですよね。いつもそこで二の足を踏んでいたのですが、そんなときに公益財団法人大阪産業局が運営している中核人材雇用戦略デスク(大阪府プロ人材)の「副業プロ人材」というサービスを知りまして。大阪府内の中小企業向けの施策で、人材紹介会社を通じて求める人材を募集でき、テレワークで大都市圏の高度なスキルを持つ方に仕事を依頼できるというものでした。

【芦田知之】ちょうど、マーケティングに力を入れたり、ECサイトやホームページからの集客などをやりたいと考えていたのですが、社内にそれができる人材がいなくて。雇っても、それなりの収入や仕事量を提供できない…そういう状況でしたので、このサービスはいいなと思い活用させてもらいました。それが2022年の秋のことでした。

「副業人材の活用」という新たな試みが成長へのあと押しに

――では、昨年(2022年)秋から新戦力が加わったのですね。それが「うまい棒ケース」にもつながっているのでしょうか?

【芦田知之】はい。ちょうどその副業プロ人材で契約した方とECサイトのことや新商品の開発などを考えていたとき、うまい棒ケースの案が出たんです。それで、その方にもどう思うか聞いたところ「おもしろそうですね!いいですね」と言ってもらえて。やおきんさんへの許可取りについても、その方にどういう手順がいいか相談してアドバイスしてもらえたので、すぐに営業がやおきんさんに連絡をして話が進みました。

【写真】枚方市ふるさと納税返礼品の「うまい棒ケース」。3種のうち写真の「ひらかた万博モデル」が一番人気。うまい棒のロゴも入っている
【写真】枚方市ふるさと納税返礼品の「うまい棒ケース」。3種のうち写真の「ひらかた万博モデル」が一番人気。うまい棒のロゴも入っている【画像提供=アクテック株式会社】


【芦田知之】ほかにも、PRの仕方やSNSでの情報発信の仕方、プレスリリースの出し方などもアドバイスをもらいました。(2023年夏に実施した)「うまい棒ケース」のクラウドファンディングについても関わってもらって。先方との打ち合わせも弊社の代表として出席してもらい、我々では気付かないような細部まで突っ込んで聞いてくれたので、それがクラウドファンディングの成功につながったと思います。社内の者だけでなく、客観的に見てくれる人がいたのがよかったと思います。

「うまい棒ケース」クラウドファンディングのサイト
「うまい棒ケース」クラウドファンディングのサイト


――その「副業プロ人材」の方は副業でやられているので、もちろん本業を持たれているんですよね?

【芦田知之】そうです。東京にお住まいの方で、ECサイトの立ち上げなどそういった関連のお仕事をされているそうです。現在弊社とは業務委託契約を結び、週に1回オンラインミーティングに参加してもらっています。我々にない専門的な知識を持つ方のサポートが、今回のうまい棒ケースのことも含め、会社の成長につながっていると思います。

【芦田知之】コンサルなどに依頼するという方法もあったとは思いますが、コンサルにお願いしてしまうと弊社にそのノウハウが残らないと思って。こういった副業プロ人材を活用できたのは(雇うよりずっとリーズナブルな)費用面はもちろん、会社のためにもよかったと思います。

――これから、何か新しいことに取り組まれるご予定はありますか?

【芦田知之】以前から考えていたECサイトの立ち上げを進めています。「アルミケースの製造販売」という業種柄、企業からの問い合わせが多いので、ECサイトはBtoBを基軸にしていこうと思っています。ですが、「うまい棒ケース」など個人消費者向けにも販売できるようにBtoCの実現も視野に入れています。

【芦田知之】それから、会社の知名度アップにも取り組んでいきたいと思っています。我々のような中小企業だとなかなか社名を言ってもわかってもらえないことのほうが多いのですが、今回のうまい棒ケースのように知っていただいていると「ああ、あれやってたところね」となり、話がスムーズに進むなと実感しています。我々のような中小企業は、地域とかけ離せない部分もたくさんあるので、知名度を上げて地域の方をしっかり採用できる力を蓄え、それが地域貢献につながればなと思っています。

ものづくりの楽しさを実感できる「ミニ四駆大会」も

――「知名度」という点では、地元ではアクテックさんは「ミニ四駆大会」を開催している会社というイメージもあるとか。

【芦田知之】そうですね。毎年11月ごろに開催しています。お取引先や知り合いの方、過去にミニ四駆大会を取り上げてもらった際の記事を見てご連絡いただいた方などが主な参加者で、府内の方ばかりです。販売されているミニ四駆を組み立て、各々でカスタマイズして当日を迎えます。

大会当日は、各々がカスタマイズした渾身のミニ四駆が集結!
大会当日は、各々がカスタマイズした渾身のミニ四駆が集結!【画像提供=アクテック株式会社】


【芦田知之】もともとは社内バーベキューの企画のひとつだったんです。第1回は2019年で、2023年も11月19日に開催しました。毎年少しずつメンバーは変わりますが、優勝者だけは翌年必ず来てもらうようにしています。「勝ち逃げは許さない!」ということで(笑)。

2023年に開催されたミニ四駆大会の様子
2023年に開催されたミニ四駆大会の様子【画像提供=アクテック株式会社】


【芦田知之】ミニ四駆大会のことをXに投稿すると、ミニ四駆好きの方々がリポストしてくれたりするんです。ほかにも大会をきっかけにいろいろとつながりができ、ミニ四駆専門番組「ハイパーダッシュ基地」のYouTubeで弊社を紹介していただいたりと、大会が知名度アップに貢献している部分もあると感じています。

――お子さんたちも参加されていますが、反応はいかがですか?

【芦田知之】とても楽しんでくれています。今の子どもたちは、ミニ四駆やプラモデルなどに触れる機会が少ないように思いますので、大会を通じてものづくりの楽しさを知ってもらえる機会になれば…とも思っています。

――最後に、芦田社長にとって「ものづくり」とは?

【芦田知之】ものづくりは「楽しみ」のひとつで、それが会社の核にもなっています。後ろ向きな気持ちでものをつくっていると品質に影響すると考えているので、楽しんでものづくりをしたいという思いはいつも持っています。

【芦田知之】遊びみたいな企画で始まった「うまい棒ケース」は、それぞれが楽しんでものづくりをしたなと。なので、出来上がったケースは、誰が見ても笑ってもらえるような商品になり、みなさんに知っていただけるという結果になったと思います。


常に遊び心や楽しむ気持ち、またそれをあと押しする行動力とともに、ものづくりと向き合ってきたアクテック株式会社。次の展開を尋ねた際、「今はまだ、うまい棒ケースへの対応でいっぱいいっぱいです」と語っていた芦田社長だが、その精神を大切に、同社はこれからも新たな挑戦を続けていくだろう。

この記事のひときわ#やくにたつ
・作り手が楽しんで作れば、ユーザーにも楽しんでもらえる商品になる
・一つひとつの挑戦が次につながり大きな成果を生むこともある
・会社の知名度アップが地域貢献にもつながる

取材・文=矢野 凪紗

■アクテック株式会社
https://actec1972.co.jp/

あわせて読みたい

人気ランキング

お知らせ