コロナ禍による環境の変化などで健康意識が高まり、同じ価格や似たような食品ならできるだけ体に良いものを選びたいというニーズが高まっている。そこで食品選びの新基準として考えたいのが「健康コスパ」。健康コスパで選ぶメリットを管理栄養士に聞く。

物価高の影響で節約意識は高まりつつも、食や健康への関心は高い
物価高の影響で節約意識は高まりつつも、食や健康への関心は高い


物価高騰のなか、節約と健康の両立に苦労を感じている人が7割も!

コロナ禍の生活様式の変化により、健康に気遣う人が増えている一方、昨今の物価高騰による家計や企業への影響は深刻化しており節約の意識が高まっている。食品メーカーが2022年11月上旬に実施した20代~60代の社会人男女2412名を対象としたアンケート調査では、「節約をしながら健康にも気遣うことに、苦労を感じるか?」と聴取したところ、7割弱の人が「感じる・やや感じる」と回答した。

2023年女性の消費意欲のキーワードはコスパ!物価上昇の影響で節約傾向も

女性トレンド総合研究所の行った調査によると、2023年に「今よりもお金を使いたい」項目の上位に「食」「健康」がランクイン。また、「食品・食事」を購入するうえで重要なポイントでは「価格が安く、節約ができる」が78.2%「栄養バランスが良い」が77.4%、「免疫力を意識した食材」が36.5%となり、昨今の物価上昇の影響で節約志向が非常に強くなっていることがわかった。
【調査概要】
期間:2022年12月3日~2022年12月7日
方法:インターネット調査
対象:15歳以上の女性881人
会社:ハー・ストーリィ

【写真】今よりもお金を使いたい項目は?
【写真】今よりもお金を使いたい項目は?


食品選びの新基準「健康コスパ」とは?

健康コスパとは「健康を軸にしてコストパフォーマンスを見ていこう」という、健康に特化した指標。どのような栄養素がどのくらい含まれており、得られる価値やメリットがどのくらいあるのかを表している。今回は管理栄養士の浅野まみこ氏が「健康コスパ」「コスパ」「タイパ」「食品特性」の4つの軸で、それぞれ比較をした。

管理栄養士の浅野まみこ氏
管理栄養士の浅野まみこ氏


浅野まみこ
管理栄養士。総合病院、女性クリニック、企業カウンセリングにて糖尿病の行動変容理論をベースに1万8千人以上の栄養相談を実施。その経験を生かし、現在は健康経営サポート、レシピ開発、食のコンサルティングをはじめ講演、イベントなど多方面で活躍中。メディア、雑誌にも多数出演。具体的な食品を使った実践型栄養アドバイスをモットーに活動している。

ヨーグルト編|多種多様なヨーグルト。いつものヨーグルトに○○菌は入っている?

ヨーグルトを健康コスパで選ぶなら?
ヨーグルトを健康コスパで選ぶなら?


「健康コスパ」で選ぶならどっち? 乳酸菌入りヨーグルトvsビフィズス菌入りヨーグルト

1:健康コスパ【乳酸菌入り<ビフィズス菌入り
比較ポイントは「ビフィズス菌」が入っているかどうか?
乳酸菌、ビフィズス菌どちらも整腸作用が期待できるが、乳酸菌は「乳酸」を作り出して主に小腸で働くのに対し、ビフィズス菌は主に大腸で働き、「乳酸」だけではなく、短鎖脂肪酸のひとつである「酢酸」を作り出す。短鎖脂肪酸は、腸の蠕動運動を促す、脂肪燃焼を助ける、腸内環境をより改善するなどの働きがあるため、乳酸菌のみのヨーグルトよりビフィズス菌が入っているほうが健康コスパが高いといえる。

2:コスパ(費用対効果)【乳酸菌入り<ビフィズス菌入り
どちらもほぼ同じ価格帯で販売されているが「乳酸菌のみのヨーグルト」のほうが若干高い場合がある。

3:タイパ(手に入れやすさ・アレンジのしやすさ)乳酸菌入り>ビフィズス菌入り】
「乳酸菌のみのヨーグルト」はコンビニやドラッグストアなど、ほぼすべての店舗に置かれている。一方「乳酸菌+ビフィズス菌入りのヨーグルト」は、コンビニなどでは置かれていないこともあり4の評価に。

4:食品特性(酸味)乳酸菌入り>ビフィズス菌入り】
ヨーグルトの味の特徴である「酸味」を比較的強く感じるのは「乳酸菌のみのヨーグルト」。ビフィズス菌は酸に弱いため、結果的に「乳酸菌+ビフィズス菌入りのヨーグルト」のほうが酸味が抑えられており、まろやかさを感じるものが多いのが特徴。

ヨーグルト対決グラフ
ヨーグルト対決グラフ


魚の缶詰編|常備品に秀逸な缶詰。使い勝手がよくて栄養価が高いのは?

魚の缶詰を健康コスパで選ぶなら
魚の缶詰を健康コスパで選ぶなら


「健康コスパ」で選ぶならどっち?ツナ缶vsサバ缶

1:健康コスパ【ツナ缶<サバ缶
比較ポイントは「オメガ3脂肪酸」の含有量はどのくらいか?
あっさりして脂質が少ないツナ缶に比べて、サバ缶のほうが全体的に栄養価は高い。サバ缶はツナ缶に比べ、血液凝固低下作用や認知症の予防効果が期待される「オメガ3脂肪酸」を断然多く含んでいる。その他、カルシウムやビタミンD、鉄、亜鉛ビタミンEなどもサバ缶のほうが豊富に含まれているため、栄養の観点からみるとサバ缶が圧勝する結果に。

2:コスパ(費用対効果)【ツナ缶<サバ缶
マグロの価格が高いこともあり、グラム当たりでみると(※)、現状としてはサバ缶のほうが安価になっている。
※2023年3月時点

3:タイパ(手に入れやすさ・アレンジのしやすさ)ツナ缶>サバ缶】
どちらも手軽に入手可能だが、ツナ缶のほうがより入手しやすいこともあり評価を5に。どちらも加工せずにそのまま食べられ、炊き込みご飯やゆでた野菜とあえたりなどアレンジにも便利。長期保存できるのも魚の缶詰のメリット。

4:食品特性(脂のり)【ツナ缶<サバ缶
サバ缶のほうがこってりとして脂のりがよく、ツナ缶のほうがあっさりとしている。

缶詰対決グラフ
缶詰対決グラフ


豆腐編|意外と知らない?製造工程の違いが健康コスパの差に!

豆腐を健康コスパで選ぶなら?
豆腐を健康コスパで選ぶなら?


「健康コスパ」で選ぶならどっち?木綿豆腐vs絹ごし豆腐

1:健康コスパ木綿>絹ごし】
比較ポイントは「製造工程」に注目!
水分を抜いて凝縮して作る木綿豆腐は、たんぱく質やカルシウムなどの大豆本来の栄養素が多く含まれており、絹ごし豆腐に比べて全体的に少しずつ栄養価が高くなっている。反対に水分量が多い絹ごし豆腐は栄養価はやや下がるが、カロリーが低くカリウムが多いのが特徴。

2:コスパ(費用対効果)【木綿=絹ごし】
どちらも年間を通して手頃な価格で販売されているので5に。

3:タイパ(手に入れやすさ・アレンジのしやすさ)【木綿<絹ごし
絹ごし豆腐はコンビニなどでも売られていることが多く、サラダや白あえなどのそう菜メニューも多数あり、より身近で購入しやすいといえるため5の評価に。木綿豆腐は焼く、煮るなどの調理には適しているがコンビニなどでは扱っていない店舗もあるため4に。

4:食品特性(軟らかさ) 【木綿<絹ごし
軟らかさという商品特徴で比較すると軟らかく、つるりとした喉ごしが特徴の絹ごし豆腐は5、しっかりした歯応えの木綿豆腐は3に。

豆腐対決グラフ
豆腐対決グラフ


海藻編|食物繊維やミネラルが手軽に取れて低カロリー!

海藻を健康コスパで選ぶなら?
海藻を健康コスパで選ぶなら?


「健康コスパ」で選ぶならどっち?もずくvsめかぶ

1:健康コスパ【もずく<めかぶ
比較ポイントは「食物繊維」の含有量
めかぶは、わかめの根元部分を使っていることもあり、もずくに比べて食物繊維が100g当たり3.4g、もずくは1.4gとなっており、2倍以上と大きな差がある。また、造血ビタミンと呼ばれる「葉酸」「カリウム」など多くの栄養素でめかぶが上回るため健康コスパは高いと言える。

2:コスパ(費用対効果)もずく>めかぶ】
1パック当たりの内容量はもずくのほうが比較的多く、グラム当たりでみると、もずくのほうがコスパが高い。

3:タイパ(手に入れやすさ・アレンジのしやすさ)【もずく=めかぶ】
どちらもコンビニなどで味付きのものが販売されている。また、スーパーでもプライベートブランドの商品が充実しており、手に入りやすい商品のため同点に。

4:食品特性(歯ごたえ)【もずく<めかぶ
パックで売られているものを比較すると、コリコリとした歯ごたえを楽しむならめかぶ、シャキッとした食感とつるりとした喉ごしを楽しむならもずくがおすすめ。

海藻対決グラフ
海藻対決グラフ


食用油編|油は全身の細胞を覆う“細胞膜”にとっても不可欠

食用油を健康コスパで選ぶなら?
食用油を健康コスパで選ぶなら?


「健康コスパ」で選ぶならどっち?ごま油vsオリーブオイル

1:健康コスパ【ごま油<オリーブオイル
比較ポイントは健康効果の他、「酸化のしにくさ」に注目!
オリーブの実をしぼって作るエクストラバージンオリーブオイルにはポリフェノール類や、ビタミンEなどの抗酸化ビタミンが多いのが特徴。一方、コレステロールを低下させる作用が期待できるほか、ゴマリグナンやビタミンEなどの抗酸化成分が豊富に含まれており、脂肪酸の代謝促進などに効果的。それぞれに健康効果はあるが、“酸化のしにくさ”という点で、エクストラ バージンオリーブオイルのほうが健康コスパは高いといえる。

2:コスパ(費用対効果)ごま油>オリーブオイル】
エクストラバージンオリーブオイルは価格差が大きく、こだわればこだわるほど価格が高額に。一方ごま油は安定的な価格帯で売られている。

3:タイパ(手に入れやすさ・アレンジのしやすさ) ごま油>オリーブオイル】
エクストラバージンオリーブオイルは、産地などのこだわりがあると売り場が限られてしまい、入手しにくい場合も。

4:食品特性(香りの強さ)【ごま油=オリーブオイル】
エクストラバージンオリーブオイルもごま油もしっかりとした香りと味わいが楽しめるオイルの代表格として評価は同点に。

食用油対決グラフ
食用油対決グラフ


あらゆる食品が値上がりしている昨今。健康コスパの高い食材を日常生活にうまく取り入れて、健康的な食生活を送ろう。