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“飲食業界で働く”に多様性のある選択肢を。週休3日制を導入した京都の老舗外食企業の想いとは

2023/09/28 19:00
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大正14年に京都錦で洋食店「スター食堂」を創業後、約98年間に渡り京都市内で飲食店を展開してきたスター食堂株式会社が、週休3日制の導入を開始した。多様な飲食業態を運営する同社では、コロナ禍が明け、インバウンドなどの観光客も増加しており、急速に回復する需要への対応が求められている。そういった状況下で、週休3日制を導入することの大きな意味とは?

大正14年創業、京都の外食企業が週休3日制を導入
大正14年創業、京都の外食企業が週休3日制を導入


スター食堂のこれまでの取り組み

スター食堂が週休3日制の導入を始めた背景として、常態化する飲食業の長時間労働を変革したいという想いがある。飲食業界で専門的な技術や知識を習得するためには長時間の実践経験が必須だ。スター食堂自体のブランドメッセージも「おいしい笑顔は、スターのかがやき。」としており、専門性にこだわった料理、心地よいおもてなしをおろそかにすることは決してない。

ただ、それらをしっかりと守ることを大切にしながら、社員の労務を軽減するために、同社ではこれまでもさまざまな働き方改革に取り組んできた。他社に先んじて週休2日制を導入し、さらに営業時間の見直しをすることで全体的な労働時間を減らし、セントラルキッチンの導入により店舗の負担を軽減、さらに労務管理をDX(クラウド化)することで労務管理の時間の短縮にも成功した。

「おいしい」と「ありがとう」を創るスター食堂
「おいしい」と「ありがとう」を創るスター食堂

ひとことで労働時間を減らすと言っても決して楽なことではなく、今までの仕事のなかで生産性が低いところを見つけ、より濃度の高い集中した仕事に変革させることと同じだ。これらの取り組みによって、これまで他社や他店で苦労してきた人が少しずつ「スター食堂なら、福利厚生がきちんとしていると感じたので」と同社に応募してくれるようになってきたという。

週休3日制の導入へ

そして「飲食業は大変、好きなら覚悟して就職しないと務まらない」という風潮や、サービス残業は当たり前という暗黙の了解が大前提となっている現状を変えたい、飲食業で働きたい人は「独立して自分の店を持つこと」や「レストラン評価で高評価を得ること」をゴールにしないといけないのか、という業界の当たり前に「より豊かな選択肢」を用意したいのだと述べる。

人手不足に悩む飲食業界において、これまで当たり前だった働き方を変革
人手不足に悩む飲食業界において、これまで当たり前だった働き方を変革


さらに同社は話を続ける。

「飲食店で働いていると、手前味噌ながらこんなに楽しい仕事はほかにないように思います。業者様からいただいた食材を丁寧に調理して、お客様に料理として提供する。多くのお客様からは笑顔で『ありがとう』と御礼をいただきながら代金を支払っていただけます。働いているスタッフとエンドユーザーの距離が最も近い仕事であり、それだけにやりがいのある仕事だと私たちは自負しています。今は何事にも取り組んだことがないうちから『やりたいこと(天職)』を見つけようとする人が多すぎる気がします。天職は探すものではなく、真剣に働いているなかで自分の仕事を天職にしていく人のほうが圧倒的に多いのです。とはいえ、やはり天職と感じるにはある程度の期間が必要です。こんなにも素晴らしい“飲食業”という仕事を、働きたい人がもっと気軽に働き、ゆっくりでもいいから確実に成長していける環境を創りたいのです。今はそこまで本気になれなくてもいい、自分がどんな料理が上達したいのかもわからない。でも、食べることは好きだし、誰かに喜んでもらうことも好き。そんな方々がもっと気軽に飲食業にプレイヤーとして参入できる。そのための週休3日制導入です」

【週休3日社員 働き方の詳細】
・月公休12日/年間144日休日
・所定労働時間9~10時間
・固定残業30時間/1日平均残業1.5時間
・月給21万3000円~

週休3日社員は通常の社員よりも所定時間を長く定めることで、月に12日の公休取得を可能にした。出勤日は開店から閉店まで仕事に集中。その分、休日が増え、自分のやりたいことにも集中できる日が多くなっている。
※ほかにも月9日休みの働き方や、もっとバリバリ働きたい社員のための働き方もあり。

今後の展望とは

スター食堂は2025年に創業100年を迎える。100周年はひとつの節目として、これからももっと「おいしい笑顔」や「楽しいひと時」を届けるために店舗数を増やしていくという。会社が大きくなると、京都以外の出店も視野に入り、今いる料理人、サービスマン、バックオフィス、セントラルキッチンなどに加え、たとえば品質管理、Webデザイン、店舗デザインなど、さまざまな業務をひとつの職種として専念することが必要になってくる。そのためにも、まずは人財ありき。同社では、会社で一番大切なのは人財だと考える。今回の週休3日制のほかにも、短時間社員、店舗(エリア)限定社員、パート責任者制度など、まだまだ用意したい働き方があるという。次の100年を目指して「変わらず在るために、変わり続ける」今後の挑戦にも注目していきたい。

【写真】2025年に創業100年を迎えるスター食堂の従業員
【写真】2025年に創業100年を迎えるスター食堂の従業員


週休3日制の導入について、スター食堂株式会社の担当者にさらに話を聞いてみた。

「(制度導入の目的は?)ひとつは、人手不足に悩む飲食業界において、これまで当たり前だった働き方を同業他社に先んじて変革し、強い想いや高い技術を持った社員を採用すること。もうひとつは、店長や料理長などの基幹社員の公休取得や労務軽減を進め、シフト作成などの心理的安心感を高めることで、安心して業務に集中できる環境を整えること。この2点が目的です」

「(制度導入の最大のポイントは?)もっと気軽に、飲食業にプレイヤーとして参加しやすくする、そのために豊かな選択肢を用意する、というのが最大のポイントです。飲食業で働いてみたい!という人は案外、多いのではないかと感じています。理由は飲食業というのは、誰しもにとって非常に身近な職業だからです。ほとんどの方は、何かしら飲食業でのサービスを受けたことがあるはずで、そこで喜びや楽しさ、感動的な体験さえもしていると思っています。しかし『飲食業で働いてみたい!』のあとに、『でもなんだかとっても大変そう…』と思う方が多くいらっしゃって、実際、飲食業の扉をノックするところまでたどり着くことがない、そんな方が多くいらっしゃると私は考えています。『飲食業は大変、好きなら覚悟して就職しないと務まらない』という風潮や、サービス残業は当たり前という暗黙の了解が大前提となっている現状を変えたい。『スター食堂ならこんな働き方ができるよ』と、より豊かな選択肢を用意したいのです」

「(週休3日制はどのようにして生まれた?)大企業ですでに実践されていた事例もありますが、週所定40時間という前提を5日ではなく4日で考えるところからスタートしました。飲食業はサービス業なので、どうしてもお店の営業時間がそのまま勤務時間、ということになりがちです。当社では働き方改革に取り組むなかで、毎日、開店から閉店までいると残業時間がどうしても多くなりすぎるという問題があり、早く出勤して早く帰る、遅く出勤して閉店まで勤務というような『早上がり、遅入り』というシフトが増えてきました。そのような店舗でのシフト管理に苦戦する上長の姿も見てきましたし、週3日休み=週4日勤務(所定10時間)とすれば、早上がりや遅入りなどのイレギュラーなシフト管理が減り、店舗スタッフのシフト作成も楽にならないか、というところから生まれたアイデアです」

「導入に向けては社長をはじめ経営陣との議論があり、週休3日制を導入することで、私たちがどのような社員に来てもらいたいかと一層明確にすることができました。私たちが来てほしい人財は『休みが多いから楽そう』という人ではなく、『仕事とプライベート、メリハリをつけてそれぞれ真剣に充実した仕事に取り組みたい』『真剣に飲食業に取り組みたいが、ご家庭などの事情があって週に3日はしっかり休みが必要』という人財です。そのような方を選考させていただきたいと考えています」

「まだ導入したばかりなので、苦労した点というのはこれから出てくることと思いますが、想定されるのは社員の休日数が増えることで、1店舗につきより多くの社員の配置数が求められるということです。また社員の取得公休日数が増えることで、休業日のない飲食業では情報共有や意思疎通をする機会が減る、という懸念もあります。配置数の問題に関しては、この働き方でより多くの仲間に出会えればクリアできますし、情報共有や意思疎通に関しては、これまで以上に定期的な店舗ミーティングや社内SNSや店舗での連絡ノートなどの活用を重視していくことでクリアしていこうと思います」

「(制度の導入後、社員の反響は?)実績はまだ少ししかありませんが、導入の相談を進めた際に、『そもそもそんなことを考えたことがない』と驚いていた社員が多かったです。相談は幹部クラスの社員をメインにしたのですが、仲間が増えることに関しては大賛成ということで、期待してくれていると思います。また別件で、先日労務的に少し負荷を感じている社員が週休3日制へと働き方を変更しました。その社員はこれまでとは違う選択肢を会社が用意できたことを喜んでいました」

「(企業として目指す姿は?)当社は飲食業への入門編のような企業になりたいと常々考えています。『どんな方でも、まずは一緒に。』というのは私の人事ポリシーです。残念ながら、まだまだ『飲食は好きという気持ちはあれど、仕事や人間関係がつらくて退職しました』とスター食堂の求人に応募してくださる方が多くいらっしゃいます。そんな方々の受け皿になりたい気持ちは強くあります。飲食業で真剣に働きたい、という強い気持ちさえあれば、まずは当社で洋食のみならず、いろいろな業態を経験してみればいいと思います。私もそうしてソムリエや唎酒師なども取得してきました。まずは週休3日制で働いてみて、そのうち飲食業での体力がつき、よりバリバリ働いてみたくなったり、幅広い業態が好きになったりして、当社で活躍し続けてくれたら本当にうれしいです。また結果として、やりたいジャンルが明確になり、他社へ転職や、独立開業した社員も多くいます。それでも、最初は当社で働けてよかった、と思ってくれれば、私たちが京都の飲食企業として存在する価値は十分にあると考えています。このように、飲食業で働く人にとって、『まずはスター食堂で働いてみよう。歴史も長いし安心して働けそう。しっかりとした技術、知識が身につきそう』と思ってもらえるような存在になりたいです」

「(ユーザーへのメッセージは?)私が本当に伝えたいことは、飲食業というのは本当に楽しく素晴らしい仕事だということです。スター食堂のブランドメッセージにもあるように、目の前のお客様に喜んでいただくことの感動、誰かに喜んでもらいたいと願うスタッフの想い、私たちが真摯に働けば、お客様は喜んでお客様の大切なお金を支払ってくださるのです。それだけでなく『おいしかった』『楽しかった』『また来ます』『あなたに会えてよかった』などの何にも代えがたい、心の報酬まで毎日本当にたくさんいただきます。素晴らしい、絶対必要なお仕事なのに、飲食業に関する話題やニュースといえば、どちらかといえば明るくないものが多い気がしています。そんな環境下ではありますが、当社で働くことで『飲食業が、自分にとって天職だ』そう感じてもらえるように、もうすぐ迎える100周年、そして次の100年へと挑戦し続けてまいります」

■スター食堂コーポレートサイト:https://www.star-kyoto.co.jp/
■スター食堂採用特別サイト:https://recruit.star-kyoto.co.jp/

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