2023年5月8日から新型コロナウイルスが感染症法上5類に移行。本格的に“アフターコロナ”へと向かうなか、帝国データバンクが、2023年4月時点の「人手不足の動向」についての調査結果を発表。全業種で「従業員の過不足状況」を尋ねたところ、51.4%の企業が「正社員が不足している」と回答した。

アベノミクスなどによる景気回復や人口減少を背景に、「人手不足」に関して注目が高まっている。そんななか、「TDB景気動向調査」の一環で、2007年から毎月「従業員の過不足」についてアンケートを取っている帝国データバンク。今後、さらなる人口減少によって人手不足が深刻になると予想されるが、正しい実態を把握するため、また、政策提言などにつながる役割となることを狙いとして、同社はこの調査を継続して実施している。
人手不足が特に深刻な業種は?
「正社員の人手不足感は51.4%」というこの調査結果に対し、帝国データバンクの担当者は「4月としては過去最高となりました。例年4月は新卒新入社員が入るため若干、人手不足が緩和する傾向にありますが、それでも5割を上回る結果。非正社員でも4年ぶりの3割超と高水準です」と説明。


また、「正社員の人手不足割合」を業種別に見ると、「旅館・ホテル」が75.5%と最も高く、「情報サービス」(74.2%)、「メンテナンス・警備・検査」(67.6%)が続く結果に。「非正社員の人手不足割合」を業種別に見ると、「飲食店」が85.2%でトップとなり、「旅館・ホテル」(78.0%)が続いた。


企業からは「コロナ禍で抑制されていた人流の活性化や旅行支援、イベントやスポーツ大会の正常化などで高稼働の状況が続くが、人手不足で十分な対応ができない」「かつての緊急事態宣言や、まん延防止等重点措置などによって、旅館・ホテル業界から離れてしまった従業員が戻ってこない」といった悩みも寄せられているという。
人手不足を抱える今だからこそ必要なことは?
今後は訪日外国人客のさらなる増加が期待されるなかで、外国人労働者などの活躍による人材確保や、DXなどによる合理化投資が急がれるが、「『飲食店でDXの導入を検討したが店舗の構造になじまず導入できなかった』という声が聞かれるなど、難しさもあるようです」と同担当者。また、昨今は賃上げがトレンドになっているが、「学生アルバイトを中心に、業種を問わず、募集で負けないような“賃金水準の設定”も中長期的なテーマとなるでしょう」と課題を挙げる。

続けて、「2023年4月には人手不足倒産が単月として過去最多の件数を記録するなど、人手不足が企業に与えるリスクが顕在化してきました。そうしたなか、DXの導入やリスキリングなどによる社員教育など、生産性の向上に向けた施策や支援ツールは数多く登場しています」とコメント。「策を講じるにはハードルが高く感じてしまい、最初の一歩が踏み出せないという意見は多く聞かれますが、企業の半数以上が人手不足を抱える今だからこそ、企業活動の源泉である人材の確保・定着に向けた早期着手が欠かせません。もし今の段階で人手不足ではないとしても、中長期的な目線で策を講じることが必要でしょう」と、問題解決のヒントも提示してくれた。