投資は「リスク許容度」に留意してはじめる
少額といわず、本格的に投資をはじめるつもりの人は、まず大前提として大切な考え方があります。それは「余剰資金で投資をする」ことです。どんなに投資でお金が増える可能性が高いとしても、収入や貯金を全額投資したり、まして借金して投資したりすることは絶対にやってはいけません。
「そんなことするわけない」と、いまは思えるでしょう。しかし、投資に対してギャンブルのような快感を得てしまうと、「投資しないこと」がもったいなく感じ、ただ貯金していることが損のように思えて我を忘れてしまうのです。成功体験を積んでも、けっして投資に酔ってはいけません。
そこで、厳格なルールとして、資金の配分を決めるべきです。一般的には、最低でも6カ月から1年分の生活費に当たる現金を残しておくことが安心だといわれています。仮に投資したお金が全部消えてしまったとしても、生活を破綻させずにいられることを想定した考え方です。でも、半年から1年間生活できる貯金というと、「それって2倍も違うじゃない。いくら貯金を残せばいいの?」と思うかもしれません。それは、人それぞれ異なる「リスク許容度」によります。
例えば、あなたが1年間の生活を送れる300万円を持っていて、事業継続性が不安定な企業に勤めているとします。あなたが今月、急にリストラされても、まだ年齢も若く、3カ月以内に次の就職先が見つかるなら、退職リスクによる許容度は高いといえます。半年分の150万円を投資に充てても困らないでしょう。しかし、すでに年齢を重ね、退職したら簡単に次の就職先が見つからないのならリスク許容度は低く、9カ月分、あるいは全額を貯金したままのほうが安心でしょう。
このほか、家族の存在や既往病の有無、実家の庇護、子どもの受験など、さまざまな要因でリスク許容度は異なります。リスク許容度が高いのなら、半年といわず3カ月分の生活費を残して投資に回しても構いませんが、ハイリスクな投資はおすすめできません。このように、投資はリスク許容度と投資先のリスクの掛け合わせで考えていくものです。
投資は節約でQOLを高めるチャンスになる
投資は余剰資金で行うことが原則ですが、「余剰資金はみんな投資に回そう」と推奨しているわけではありません。冒頭でもお伝えしたように、無理なく一定額を積み立てていく投資でもいいと思います。
また、現時点で投資をするほど貯蓄の余裕がないのであれば、節約習慣をつくり、浮いた金額を投資に回すといいでしょう。投資の余剰資金をつくるために収入を増やせるならいいのですが、それは簡単ではないですよね。でも、出費を減らすことならすぐにできます。
節約に自信がないのであれば、なおさら投資と節約を連動させることは効果的です。実際に投資をはじめて、資産が増えていく成功体験を得ると、生活の無駄を省いて投資に回したくなるものです。
私自身も若いころは都心の高感度エリアに好んで住んでいたのですが、投資をはじめたいまは「すごく無駄だったなあ」と感じています。家賃は高いし、スーパーなどの生活インフラは不便だし、ちょっと外に出るにも身なりに気を遣わないといたたまれない。といいつつ、自分自身はいつもジャージでしたが……(笑)。そうした場所に住むことが自分にとって本当に重要ならともかく、私にとってそこまでの意味はありませんでした。いまなら、地価の安い場所に住んで、浮いた家賃を進んで投資に回すでしょう。
節約において固定費の削減がもっとも効果的ですが、なかでも家賃は大きい支出のため、引き下げることができるなら大きな投資資金となり得ます。このほか、スマートフォンのキャリアを格安のものにしたり、不要なサブスクを見直したりするのも効果的な手段です。
一方、変動費は「無駄遣いをなくす」ことです。買いたい衝動に駆られたら、自分にとって本当に必要かよく考えるべきですが、そうはいってもなかなかうまくいきません。でも、もし買い物でAmazonを頻繁に使うのであれば、再考を仕組み化できます。
その仕組み化とは、「ひとまずカートに入れておく」ことです。買いたいものを一旦カートに入れて放置しておいて、衝動が落ち着いた頃にもう一度考えるのがおすすめです。また、カートに1週間以上入れておくと、その商品のタイムセールがはじまることがよくあります。カートに入れた商品でタイムセールがはじまると、Amazonはメールで教えてくれますから、その差額を投資にあてるのもいいでしょう。
自分の欲望をコントロールし、不要なもの、我慢できるものは節約して投資に回し、将来に備える。一方で自分にとって本当に関心のあること、お金をかけたいモノ・コトには惜しみなく使う――。そうすることで、長期的にQOL(人生の質)の高い生活につながっていきます。
この記事のひときわ#やくにたつ
・今後の人生に「投資」を根づかせるために少額からスタートしてみる
・投資はリスク許容度と投資先のリスクの掛け合わせで考える
構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム)、取材・文=吉田大悟