長期投資はリスクを分散できる投資信託がいい
ただし、長期投資といっても、個別銘柄株は企業単体の成長性に委ねなければならない金融商品ですから、一社に絞ってしまうとリスクが高まります。倒産してしまったら、それまでだからです。そこで複数の個別銘柄を押さえてポートフォリオをつくり、リスクを分散するのがセオリーとなります。その点で、リスクをより効果的に分散できるのが「投資信託」です。続いては、この投資信託の種類について解説しましょう。
投資信託には、「パッシブ(消極的)型投資信託」と「アクティブ(積極的)型投資信託」の2種類があります。
<投資信託の種類>
●パッシブ型投資信託
特定の経済指標をベンチマークとする運用を行う投資信託。ファンドはベンチマークに沿って機械的に購入するため、販売手数料や信託報酬は安い傾向にあります
●アクティブ型投資信託
ファンドが銘柄を選定し、特定の経済指標をベンチマークとしたうえで、それを上回る運用成果を目指す投資信託。販売手数料や信託報酬は高い傾向にあります。
私が米国株投資でビギナーの方におすすめするのは、「パッシブ型投資信託」です。そのなかでも、S&P500や全米株式、全世界株式のインデックスファンドです。
S&P500とは、アメリカを代表する約500社の時価総額を基準とした経済指標のことで、この約500社で全米上場企業の時価総額の80%をカバーしています。つまり、S&P500に連動したタイプのインデックスファンドを購入すれば、業種別11セクターの約500社に分散投資ができ、ほぼアメリカの経済成長と連動した収益を得られる投資商品なのです。
そのためリスク分散として申し分なく、また、アメリカ経済が過去100年で8回の暴落を経験してなお最高益を更新し続けている歴史を踏まえれば、非常に確実性の高い投資商品といえます。
S&P500のほか、「全米株式」も類似した商品です。また、「オールカントリー」と呼ばれる全世界株式インデックスは、世界約8000社を基準とした指標に連動し、それらに分散投資ができるためグローバルなリスク分散が可能です。
一方、アクティブ型投資信託は、ファンドが独自に銘柄を選別して組み立て、パッシブ型より高い運用実績を狙う商品です。多くの種類がありますが、個別銘柄株の選択と同じで、信頼できるファンドの選別には知識と経験が必要です。また、プロが運用するのだから優秀な運用実績を挙げてくれそうに思うのですが、実は20年の長期で見ればアメリカの約80%のアクティブ型の投資商品が、S&P500の運用実績を下回っているという報告があり、確かな投資眼が求められます。
そのほか、投資信託の一種としてETFという選択肢もあります。先に紹介したパッシブ型・アクティブ型の投資信託は非上場であり、投資会社や証券会社から購入する商品ですが、ETFは「上場している」点が異なります。
個別銘柄株などと同様に、アメリカでは2000種類以上のETFが上場し、リアルタイムで値動きするETFを証券取引所から購入するのです。ETFにもS&P500などのインデックスに連動したものから、アクティブ型と同様のものもあり、さらに不動産や金など、株式とは異なる相場を扱うものもあります。
ただし、パッシブ型・アクティブ型の非上場の投資信託の多くが100円から1円単位で投資できるのに対し、ETFは個別銘柄株と同様に単価が決まっており、高額になりがちです。そのため、手軽に積立投資や分配金の再投資ができる点で非上場の投資信託が有利です。
長期投資はインデックスファンドをベースに組み立てる
ここまで株式投資の種類について概要をお伝えしましたが、知識不足のままで短期投資を行うことはハイリスクであることがおわかりいただけたでしょうか。短期投資を行おうとするとき、自分はギャンブルの高揚感やロマンに駆られているのか、あるいは確信を持って投資をしているのか、一度立ち止まって考えてみるといいと思います。
あくまでカジュアルな気持ちで手堅い資産形成をするなら、私はリスク分散ができ、少額の積み立てや分配金の再投資がしやすいインデックスファンドをおすすめします。
先のウォーレン・バフェットは現在も存命ですが、すでに自分の妻に、自らの死後について「遺産の90%をS&P500に投資しなさい」と伝えているそうです。彼の妻は投資家としては素人のため、より堅実な資産運用を伝えたのでしょう。投資の神様も、アメリカ経済の成長性については心配していないことが伺えます。
ここまで紹介したように、投資にはさまざまな種類があります。リスクの高い投資にもチャレンジしたいのであれば、資金の大半はS&P500のような手堅いインデックスファンドに投資したうえで、残りの資金で行うのがいいでしょう。デイトレードであれ、高配当ETFであれ、地盤を固めたうえであれば安心して購入することができます。
この記事のひときわ#やくにたつ
・成功の根拠がない株式投資は、投資ではなくギャンブル
・長期投資はリスクを分散できる投資信託がおすすめ
構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム)、取材・文=吉田大悟