カクヤスはコロナ禍をどう切り抜けたのか?会長の話に見つけたビジネスのヒント!銀座のクラブ限定配達サービスも大当たり

2023/03/31 09:00 | 更新 2023/04/02 11:38
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新しい挑戦と、アフターコロナの展望

2020年に、M&Aにより九州最大手の酒販売会社を買収し、九州エリアの販売網を整備
2020年に、M&Aにより九州最大手の酒販売会社を買収し、九州エリアの販売網を整備【撮影=オオノマコト】

ーー近年は九州にも進出されていますが、その業績はいかがでしょうか?
【佐藤順一】やっぱり物流って、1から作っていくとものすごい時間とお金がかかるんですよ。それで2020年、九州の博多にある一番大きなダンガミという酒屋さんと二番目のサンノーという酒屋さんを買収したんですね。その内のダンガミがおもしろくて、「目指せカクヤスモデル」って自分たちで10店ぐらい出店していたんですよ。ただ純然と業務用の酒屋さんだったので、小売のことが全然わからなかったそうなんです。それで出店したはいいけどどうしたらいいかわからず、結局ウチに会社を売ってきたんですよ。こっちとしたら、10カ所も物件があってすべてが整っていたんですよ。システムや受注はウチのやり方でやって、拠点となる本社費もかからないから、めちゃくちゃ儲かるんです。

ーーそうですよね。最初からお店自体もあるわけですもんね。
【佐藤順一】そう。そもそも業務用をやっていたから、業務用の売り上げもあるじゃないですか。そうすると、その稼働率の悪いお店に小売のお届け技術を育てることができればいいんです。もう既に利益が出る会社ですから。それは、そんなに難しいことじゃないですよね。

ーー東京都内と九州のエリアで何か違いがあったりしますか?
【佐藤順一】まだ始まったばっかりなので、よくわかんないですね。ただ、やっぱりカクヤスの知名度がないので、まだまだ向こうでは売れないです。だから、これから、あっちでも使えるようにCMを作っていきます。今までは、『なんでも酒やカクヤス』のCMだったので、『KYリカー』などの別業態にも使えなかったし、大阪や九州でもCMは流してなかったんです。でも今度のCMは、大阪とか博多でもCMを流すようにするので、だいぶ違うかもしれないですよね。さらに、次はもうお酒のCMではなくて、いわゆる『なんでもお届けやカクヤス』みたいな、そんなようなCMにすると思います。お酒だと結局、自主規制があって夕方の18時以降しか流せないんですよ。だから日中のCMは今まで入れたことがないんですね。それを次から入れられるので、ちょっと効果を期待してるんです。

高級クラブのオーナーとの会話から誕生したワインセラービジネスは、常に売り上げの上位に位置しているそう
高級クラブのオーナーとの会話から誕生したワインセラービジネスは、常に売り上げの上位に位置しているそう【撮影=オオノマコト】


ーー銀座のクラブ向けにもサービスを展開されていますが、こちらのほうはいかがなんでしょうか?
【佐藤順一】めちゃくちゃ売れていますね。このアイデアは、たまたま銀座のクラブのオーナーとのランチ中に、「社長これからどうすんの?」って聞くと「店へ行く」って昼間に言うんですよ。それでなぜか尋ねると「お店にあるロマネ・コンティなど高級ワインが盗まれていないかチェックしに行く」と。しかも在庫が各店に800~1000万円分くらいあると言っていて。それで「それ、ウチが在庫を管理したらうれしい?」って聞くと首を縦に振ったので、銀座に16坪くらいのワインセラーを作って、取引のある高級クラブを回って、ワインリストを全部もらってきて、届けるようにしたんです。ただお客様をお待たせできるのが、MAX10分だったので、1カ所ではできないと判断して、現在は2カ所に増やして銀座の中でもエリアを限定したサービスとして展開しています。すると、ここでもお客様が変わっていくんですよ。これまで、前の晩に高級ワインを頼んでお店に置いていたのが、その日どころかお客さんが来店してから注文するようになったんです。つまりまた、ほかの酒屋さんが対応できなくなるんですよね。しかも、飲食店としては在庫を抱えるリスクが減るからありがたいんですよ。だからこのワインセラービジネスは、びっくりする売り上げになりました。ウチの拠点別でみるとワインセラーは常に売り上げ上位にいます。収益力は非常に高いですね。

 銀座8丁目にある「KAKUYASU class 銀座 Wine Cellar」の店舗
銀座8丁目にある「KAKUYASU class 銀座 Wine Cellar」の店舗【写真提供=株式会社カクヤスグループ】


ーーマスクの規制も緩和されて、感染対策も緩んできましたね。
【佐藤順一】もうトンネルは抜けたかなって感じじゃないですか。これまで、本当に3回ピンチがありましたね。一番最初のバブル崩壊で不良債権を抱え、2回目で100数十店舗も出店してすべて赤字になった。そして今回のコロナ。それが、なんとなく3つとも乗り切れちゃったのは、やっぱり守りに入らず攻めていたからでしょうね。赤字を抱えていたとき、銀行の担当者に「業務用の大きな配送センターなんて10個もいらないのでは?半分ぐらいにしたら?」と言われましたが、「半分にしたら、戻ったとき運べないでしょう。絶対嫌だ!」と、突っぱねました(笑)。コロナ禍でも、20数億の第三者割当増資を実行したんですよ。これがあったので、コロナの2年目に攻めることができたんですね。何もしていなかったら今頃どうなっていたやら。

ーー最後に、今後の夢や展望など、お考えを教えてください。
【佐藤順一】今までだいぶ苦労したんだけれども、これから回復局面に入ってくるので、恐らく業務用が回復してくるでしょう。先行投資したサテライトは今も貢献してくれているので、今の収益力からすると、きっとコロナ前よりずっと高くなるんですよね。だから、そういったことを考えても、この3年間は大変だったけども、来期以降もう1回スタートを切り直せるかなというふうに思っています。でも課題としては、このBtoCのお届けの残り55%。本当にいろいろなもので、きちっと埋められれば、さらに収益力が上がるでしょう。業務用でも「お酒以外の商品も買ってよ」と、サラダ油なども一緒に買ってくれれば、それはそれで上がってくるでしょうし。まず、今ある物流能力をフル稼働して少しずついろいろなアイテムを増やしていきます。それはBtoB向けにも、BtoC向けにもやるべきことですね。そして、博多でやったM&Aを、どこかでまたできたらいいですね。東京都内でも、大手量販店さんも弱っちゃっているんでね。そういう案件もあるかもしれませんよね。

車が入れない路地も通れるリヤカーを配送に導入
車が入れない路地も通れるリヤカーを配送に導入【写真提供=株式会社カクヤスグループ】


ーーお花見もできるようになったので、忙しくなりそうですね。
【佐藤順一】ウチは公園でも、どこでも届けているんですよ。例えば、「多摩川の川っペリにいるから届けて」とかも。でも、この3年間花見がなかったじゃないですか。従業員は配達の仕方を忘れちゃったんじゃないかな?「どうやってやってたっけな?」みたいな。経験者はもちろんいますが、以前は毎年やっていたから「こんな感じ」って引き継げたけれど、3年間やっていなかったから、花見のお届けをやったことがない人がたくさんいるんですよね。だからこの春はちょっと心配です(笑)。


この記事のひときわ#やくにたつ
・迷う前にとにかくやってみる
・失敗しても、失敗のなかから小さな成功を見つけ出す
・失敗したら止めればいい。うまくいったら、成功した理由を数字で検証する
・自社の都合を優先せず、客の立場に立ってサービスをリリース。まずは客を獲得できなければ何も生まれない
・自社の強みを知り、自社にしかできないサービスを展開する

取材・文=北村康行/撮影=オオノマコト

株式会社カクヤスグループ
代表取締役会長 佐藤順一
1959年生まれ。東京都出身。筑波大学第一学群社会学類卒業後、1981年にカクヤス酒店(現 株式会社カクヤスグループ)に入社。1993年に3代目として代表取締役社長に就任した。2019年に東京証券取引所市場第二部へ上場を果たし、2020年に会社分割により持株会社体制に移行。商号を株式会社カクヤスから株式会社カクヤスグループに変更した。2023年4月から、新たに代表取締役会長 兼 社長に就任する。

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