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1万円超えの冷凍食品も!?松屋銀座が仕掛ける高価格帯の冷凍食品が売れる理由【前編】

2023/02/16 10:00 | 更新 2023/04/16 21:56
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その年の世相を反映した食を選ぶ「今年の一皿」で2022年12月、「冷凍グルメ」が選ばれた。冷凍食品が注目されたそんな2022年に松屋銀座の地下にオープンしたのが、冷凍食品専門の売り場「GINZA FROZEN GOURMET (ギンザ フローズン グルメ)」だ。自宅にいながらハイクオリティな銀座の名店グルメや新鮮な食材が楽しめることと、昨今の冷凍食品人気が追い風となり、いま注目の冷凍食品売り場である。

数百円のスイーツから1万円超えのローストビーフまで、約55ブランド・350品がそろい、バリエーションの多さも魅力。平均価格が2000〜3000円台と、百貨店らしいちょっとプレミアム感のある冷凍食品が中心となっているものの、それでも売れ続ける、GINZA FROZEN GOURMETならではの魅力とプレミア感などについて、株式会社松屋 食品部食品1課長の今井克俊さんに話を聞いた。

銀座 みかわや「舌平目かに肉包揚げ」3456円
銀座 みかわや「舌平目かに肉包揚げ」3456円【写真提供=株式会社松屋】


冷凍食品という未知のジャンルに挑戦する銀座の百貨店と飲食店

株式会社松屋 食品部食品食品1課長の今井克俊さん
株式会社松屋 食品部食品食品1課長の今井克俊さん【写真提供=株式会社松屋】

ーーGINZA FROZEN GOURMETについて教えてください。
【今井克俊】松屋銀座は銀座の中心にお店があり、「銀座 日東コーナー 1948」や「銀座 みかわや」、「銀座 ピエスモンテ」、「銀座 吉澤」など、以前から老舗飲食店や業者さんと親交がありました。そんな長いお付き合いもありまして、松屋銀座の冷凍食品売り場のGINZA FROZEN GOURMETで販売している冷凍食品ブランド「銀ぶらグルメ」立ち上げメンバーとして参加していただき、看板メニューの冷凍食品として販売しています。これまで冷凍食品に参入したことがない飲食店に賛同していただいたことも画期的ですし、老舗店の人気メニューと同じ味が自宅で味わえるのも魅力的です。松屋としては、プラットフォームを用意し、統一されたデザインのパッケージを提供し、統一感のあるブランディングをして価値を高めています。

ーー「銀ぶらグルメ」に、なぜこの4店舗を選ばれたのですか?
【今井克俊】老舗レストランのオーナーさんたちはよく会合などをしているので、皆さん親しい間柄で同じ考えを持っていらっしゃるんです。そのなかで今回の4店舗に賛同していただきました。コロナ禍において銀座の街全体、特にレストランなど飲食店が厳しい状況だとお互いが認識していましたので、ちょうど冷凍食品を始める準備をしていた松屋の企画と、老舗レストランのオーナー様との考えが一致したという感じです。

ーー冷凍食品を販売するきっかけになった出来事は何だったのでしょうか?
【今井克俊】きっかけは、コロナの流行が最大の理由ですね。コロナが流行り出したら、テイクアウトの商品が爆発的に売れ始めたんです。当時、私も売り場で惣菜の担当をしていまして、その状況を目の当たりにしました。飲食店に行かなくなったサラリーマンや主婦の方がお惣菜を買われる傾向に変化したんですね。ただ次第に、買い物に出ることすら困難になってきたお客様が増えてきて、我々も“松屋御用聞き”というタクシーでデリバリーするサービスを始めました。そんな2020年の春ごろ、あるお客様から「冷凍食品ないの?」と聞かれたんです。当時は、冷凍食品売り場を展開している百貨店はほとんどなかったと思うんです。「今までの冷凍食品に飽きちゃったわ」という声を受けて調査したところ、ある程度ニーズがあると判明したので、2021年9月にGINZA FROZEN GOURMETの準備を始め、2022年の8月31日にオープンしたという次第です。

地下2階にあるギンザ フローズン グルメの販売コーナー。高級感ある冷凍庫が目印
地下2階にあるギンザ フローズン グルメの販売コーナー。高級感ある冷凍庫が目印【写真提供=株式会社松屋】


ーーまさに神の声だったわけですね。
【今井克俊】そうですね。でも、冷凍食品の担当者が私ひとりしかいなかったんですよ。おかげで、商品開発からマーケット調査、売り場作りまで奔走しました。しかも、当時松屋には冷凍食品のノウハウが全くないので、さまざまなスーパーの売り場の品ぞろえを偵察したり、担当者にお話を伺いに行ったり、本当にたくさんの方々に助けていただきました。そして、大手の飲食店さんや銀座を中心とした飲食店さんなどと話を始めたんです。そのなかで我々は、松屋銀座という百貨店としてどういった差別化をするのがいいかと考えていました。銀座の皆さんとより深く話をさせていただくなかで、“銀座という立地を生かしたブランディングを確立させたい”という思いに辿り着きました。本当に目まぐるしく物事が進んだ1年でしたね。

ーー準備の1年の間に苦労されたエピソードはありますか?
【今井克俊】企画が立ち上がってすぐ準備を始めたのですが、半導体問題の影響をもろに受けてしまい冷凍ショーケースが作れなかったんです。半年以上も東南アジアの工場が操業停止状態で、売り場に置く黒い冷凍ショーケースが作れるという見通しがついたのが、実は昨年の5月だったんですよ(笑)。本当なら昨年の5、6月くらいにオープンさせたかったんですけれど、冷凍ショーケースの製作をしてくれるところが全然なくて、5月から設計を始めて急ピッチで完成させました。

ーー商品の選定には何か基準があったりするんでしょうか?
【今井克俊】立ち上げ時のメニュー選びは、正直、自分の好みによる部分もありますが(笑)、“健康”というワードと“食べて満足度が高いもの”というのは、選定のポイントです。あと、“人気店=人気メニュー”という構図はわかりやすいので、そこはこだわりました。例えば、親子丼の発祥の店として知られている玉ひでさんには親子丼を出していただいています。そういった“玉ひで=親子丼”という構図の冷凍食品だと、お客様の心に刺さりやすいじゃないですか。そういう看板メニューを持っていて、完成度が高いお店にアプローチさせていただき、売り場のブランディングにお力添えいただいています。それでお互いがWin-Winの関係になれたら理想的です。

人形町の玉ひで監修「炙りモモ親子丼の素」1296円
人形町の玉ひで監修「炙りモモ親子丼の素」1296円【写真提供=株式会社松屋】


ーー50ブランド350品を扱っているそうですが、平均価格はどれぐらいでしょうか?
【今井克俊】2000〜3000円ぐらいでしょうか。これは、非常に高いプライスラインだと我々も感じています。通常、有名飲食店さんが監修した商品は、実際にお店で食べるメニューよりも格安な商品が多いと思います。ただ、我々としましては、手作りメニューを急速冷凍することで、お店と変わらない状態で味わえるように高い再現性にこだわりました。機材などの投資もしていますし、お店に何度も何度もトライしていただいた努力もあります。こうしたストーリーも付加価値として、ブランドの魅力としてある程度のお値段をいただくことに決めました。そのため、お客様に満足いただく商品を作り、作り手の皆さんにも満足していただくというサイクルを、継続していけるように取り組んでいます。

ーーそういった理由で、高級路線になっているわけですね。
【今井克俊】冷凍食品は、すでに人々の生活に根付いていて市民権を得ているので、百貨店と一般の飲食店が参入するには障壁が高い状態でした。スーパーマーケットやコンビニと同じステージでは到底勝負できないので、ただ値段が高いというだけではなく、銀座から発信するのに相応しい商品でなければならないと考えました。そもそも飲食店で提供される料理も冷凍食品も、どちらも“おいしいものを作る”ということにおいては変わらないです。しかし、冷凍食品を作るうえでの設備やノウハウが必要になってくるので、同じ料理といっても全くの別の分野なんですね。お店には調理に徹底していただき、松屋としては、我々が持っている衛生部隊やパッケージなどをデザインする関連会社といった強みを生かして、調理以外をフォローしています。より差別化ができるような商品を双方で話し合いながら開発しました。

ーー人気商品のベスト3を教えてください。
【今井克俊】1番人気は、銀座 吉澤さんの、「松阪牛 シルクハンバーグステーキ」です。これは、松坂牛を100%使用したハンバーグでしてダントツで売れています。店舗で調整して焼かれているので、ジューシーで肉の旨味が閉じ込められたお店の味を、自宅でボイルするだけで楽しめます。1383円で松坂牛100%のハンバーグが味わえるのも魅力ですね。

銀座 吉澤「松阪牛 シルクハンバーグステーキ」1383円
銀座 吉澤「松阪牛 シルクハンバーグステーキ」1383円【写真提供=株式会社松屋】


そして2番目が、よくテレビでも取り上げられる銀座 日東コーナー 1948さんの「ロールキャベツ トマトソース」。3番目が、銀座 みかわやさんの「舌平目かに肉包揚げ」です。冷凍食品の素晴らしさは、商品の繊維を壊さないので香りがすごくいいんですよね。急速冷凍の機械の性能も向上していますし、お店の味を再現できるのは冷凍ならではの強みです。特にハンバーグやロールキャベツは、調理が完成したときの香りがすごくいいです。

銀座 日東コーナー 1948「ロールキャベツ トマトソース」1998円
銀座 日東コーナー 1948「ロールキャベツ トマトソース」1998円【写真提供=株式会社松屋】

銀座 みかわや「舌平目かに肉包揚げ」3456円
銀座 みかわや「舌平目かに肉包揚げ」3456円【写真提供=株式会社松屋】


ーーこれらの商品の需要が高かった理由は何だとお考えですか?
【今井克俊】どのメニューももちろんおいしいですが、やはりレストランやメニューのストーリーも大事だと感じています。ただ単にプレミアムな冷凍食品ということではなく、レストランのストーリーと松屋、そして銀座という街で生まれたGINZA FROZEN GOURMETの取り組みのストーリーがお客様に響いたのではないかと思っています。

この記事のひときわ#やくにたつ
・それぞれ個性を持つ商品を扱うなかでもブランディングは統一させる
・社内のつながりではなく、地域の横のつながりを生かし、新規事業を立ち上げる
・わかりやすいコンセプトは人の心に刺さりやすい
・商品開発には、「ストーリー」という付加価値を付ける


取材・文=北村康行

株式会社 松屋 食品部食品1課長
今井克俊
1994年入社。入社5年目より24年間食品売り場に関わる食のプロフェッショナル。2021年より冷凍食品の専任課長に就任した

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