オタフクソースの新入社員が入りたい課No.1「お好み焼課」とは?お好み焼のスペシャリストが集うスゴイ部署だった

2023/03/14 09:00
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お好みソースで知られる「オタフクソース」が、2022年11月26日に創業100周年を迎えた。そこでOneNews編集部では人気メーカーの歴史に迫るべく、オタフクホールディングス株式会社広報部長の大内康隆さんに取材を実施。


そこでわかったのは、“365日(休日は頭の中で)鉄板粉ものメニューに取り組む”として、お好み焼きに特化した「お好み焼課」というユニークな課が存在するということ。さらにお好み焼きのスペシャリストである資格「お好み焼士」を持って活躍する社員も大勢いるというのだ。今回は気になる「お好み焼課」や「お好み焼士」について大内さんに話を聞き、オタフクソースの知られざる社内制度に迫ってみた!

お好み焼き文化を広める世界で唯一の「お好み焼課」

――オタフクソースさんには「お好み焼課」というユニークな課があるそうですが、どんな課なのですか?
【大内康隆】1998年に発足し、20年以上お好み焼きの普及や研究をしている課です。一般の方へ向けたお好み焼教室の開催やお好み焼研修センター(開業を目指す方へ焼き方や店舗経営のノウハウを伝授する機関)の運営など、お好み焼き文化を広めるために活動しています。

「お好み焼課」では、食育の一環としてお好み焼教室を開催
「お好み焼課」では、食育の一環としてお好み焼教室を開催


――なぜ「お好み焼課」が発足したのですか?
【大内康隆】オタフクソースの営業部員はお好み焼き店でソースを販売するだけでなく、お好み焼きの焼き方の指導やメニュー構成の提案、店舗経営のアドバイスなど、店を営むためのサポートも総合的にしています。ですので、営業部員はお好み焼きをおいしく焼けないと仕事にならないんですね。ですが、当時は社内でお好み焼きの焼き方が営業部員によってバラバラでした。そこでお好み焼課を発足させ「オタフクソースとしてはこれが一番おいしい!」という焼き方に統一したんです。現在の課のメンバーはお好み焼教室の講師を務めるなど、日本はもちろん、海外の方にもお好み焼きを楽しんでもらうため、時には全編英語でのお好み焼教室を開催するなど、幅広い活動に取り組んでいます。今では新入社員が入りたい課No.1なんですよ。

「お好み焼課」の公式YouTubeチャンネルでもお好み焼きのおいしい焼き方を発信
「お好み焼課」の公式YouTubeチャンネルでもお好み焼きのおいしい焼き方を発信


――人気の課なんですね。営業部員の方が実際にお好み焼きを焼いてお仕事されているのにも驚きました。
【大内康隆】私どもはCMで商品の認知を広めるのではなく、営業先でお好み焼きを焼くことで商品を提案しています。スーパーの試食販売もオタフクソースの社員がやるんですよ。朝からスーパーでお好み焼きを焼いて、そこにソースをかけて「これ食べてください!」とお客様に配ります。そこで味を気に入ってもらえたら商品をおすすめするんですね。オタフクソースはそのような営業スタイルなので、営業に出たら必ずお好み焼きを焼けるようになりますし、営業部員はみんな「お好み焼きを焼くのは自分が一番うまい!」と自負しています。そこを社内で制度化させようと、2006年には“お好み焼士”という社内資格制度をスタートさせました。

スーパーでのデモ販売でオタフクソースの社員がお好み焼きを調理
スーパーでのデモ販売でオタフクソースの社員がお好み焼きを調理


――「お好み焼士」という社内独自の資格があるんですね!
【大内康隆】はい。初級のインストラクター、中級のコーディネーター、上級のマイスターと3つのランクがあります。現在はお好み焼士の資格取得が昇格要件のひとつにもなっているので、インストラクターの資格を取らないとチーフ(一般企業の主任レベル)に昇格できないんです。年に1度資格試験が実施されるので、そこで筆記試験と実技試験の両方に合格すれば資格取得となります。

社員の約6割が保有!社内資格「お好み焼士」の試験が難しすぎる⁉️

――筆記試験と実技試験はどのような内容なのですか?
【大内康隆】インストラクター試験では、お好み焼きの基礎知識が問われる問題のほか、オタフクソースが推奨するレシピで広島と関西のお好み焼きを1枚ずつ調理できるかどうかがテストされます。コーディネーターはお好み焼き店の設備や経営に関する知識が求められますので、審査員から問われる経営に関する質問に応えながら、広島お好み焼きを2枚、関西のお好み焼きを1枚、計3枚を同時に焼く試験になります。

――質問に答えながらお好み焼きを焼くなんて、なんだかとても難易度が高そうですが…?
【大内康隆】コーディネーター試験の合格率は25%で、昨年は12名が受けて4名が合格しました。最近コーディネーター試験を受けたメンバーから聞いたのですが「お好み焼き店を開業される方から“ソースを使わないお好み焼きを提供したいが、どうしたらいいか?”と聞かれた場合にどう答えますか」という質問をされたそうです。

――それはかなり難しそうですね!
【大内康隆】私も気になって「どうやって答えたの⁉️」と聞いてしまいました。コーディネーター試験に見事受かったメンバーは「人によっては変わり種のメニューを求められているかもしれませんが、お客様というのはソースのついている定番のお好み焼きを求めておられると思います。ベースのお好み焼きを押さえたうえでご主人が思っているお好み焼きを出されるのがいいと思います」と回答したようです。約17年前に私がコーディネーターの一期生として試験に合格してから、年々質問の難易度は上がっていますね。更新試験がないので助かっていますが(笑)。

――どのくらいの社員の方がお好み焼士の資格を持っておられるのですか?
【大内康隆】現在は548名と、全体の約6割の社員がお好み焼士の資格を持っています。そのなかでインストラクターは約400名、コーディネーターは約150名、そしてマイスターは社内に3名だけです。マイスターは、オタフクソースで長年お好み焼きを焼き続け、その知識や技術に関しては右に出るものがいないというレベルですね。

――マイスターの3名の方はどのような役職なのですか?
【大内康隆】Wood Egg お好み焼館(工場見学やお好み焼体験ができる施設)の館長、そして、お好み焼課の課長と長年お好み焼課で開業研修などを担当する者の3名がマイスターです。私たちとレベルが違ってお好み焼きについてそのメンバーに聞けば何でもわかりますよ。きっと自分たちでお好み焼き店を開業したとしても、相当な繁盛店になると思います(笑)。ちなみに“グランドマイスター”もあり、お好み焼士制度の確立に尽力し、15年間唯一のマイスターとして活躍した顧問が名誉職として就任しています。

初年度のお好み焼士の試験風景。調理に集中しつつも、試験官からの難題にも冷静に対応しなければならない…
初年度のお好み焼士の試験風景。調理に集中しつつも、試験官からの難題にも冷静に対応しなければならない…


――オタフクソースさんにとって「お好み焼士」がどの資格よりも大切なんですね。
【大内康隆】そうですね。お好み焼士の資格制度は「全社員でお好み焼きの専門家を目指そう」という思いのもとで始まりましたので、営業部員はもちろん、事務や工場勤務の社員も取得しています。オタフクソースの社員としてお好み焼きの知見を深めることが求めてられていますね。

「お好み焼き店様の心強い相談先になれるように努めます」

――お好み焼士試験の試験官はどなたが担当されているのでしょうか?
【大内康隆】審査はお好み焼課のマイスターが担当しています。コーディネーターはお好み焼き店を開業される方へのアドバイスができるレベルが求められますので、固定費や変動費、立地、家賃を踏まえたうえで、どのくらいの損益分岐点になるのか?という経営レベルの知識も必要です。知識も技術も社内トップで、経験豊富なマイスターが審査をします。

お好み焼き文化を広めるため、さまざまな活動に取り組む「お好み焼課」
お好み焼き文化を広めるため、さまざまな活動に取り組む「お好み焼課」


――お好み焼き店の方からすると、さまざまなアドバイスをもらえるオタフクソースさんの存在は心強いですよね。
【大内康隆】営業に出れば誰でもお好み焼きを焼くのがうまくなると言いましたが、うまくないとお店様から信用されないんですよね。営業トークだけが上手でも、お好み焼きをおいしく焼けないと信用されません。お好み焼き店の方から心強い存在として相談してもらえるよう常に頑張らないといけないですし、そこは営業部員が日々努力しているところですね。

――「お好み焼課」や「お好み焼士」のお話を聞いて、今回オタフクソースの社員の方はお好み焼き愛に溢れた方という印象を受けました!
【大内康隆】最近はそのような思いを持った方が数多く入社してくれていますね。新卒採用の面接を担当するとすごいんですよ。「海外でお好み焼きを広めるオタフクの事業に参画したい!」などと思いを語ってくれる方が多くて、私が入社したころはそんなことなかったので「最近の子はすごいな〜」と感心させられます(笑)。今後も“お好み焼き文化を広めたい”という思いを持って入社してくれる社員をお好み焼士として育成し、 “お好み焼き=オタフクソース”としてお好み焼き店の方に寄り添っていけたらと思います。

この記事のひときわ#やくにたつ
・広告だけに頼らず、商品のおいしさや魅力は現場で広める
・お客様からの信用を得るために、とことんスペシャリストを目指す
・独自資格制度を設けることで、社員のモチベーションアップにも繋がる

取材・文=左近智子

■オタフクソース100周年記念サイトhttps://www.otafuku.co.jp/100th/

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