円安による生活コストの上昇や、老後資金問題など、お金に関する漠然とした不安を抱えている人も多いはず。一方で、これまでにも「お金を貯めたい」と考えてきたにもかかわらず、なかなかうまくいかないという人も少なくないだろう。ここでは、『年収300万円でもラクラク越えられる「貯蓄1000万円の壁」』の著者でもあるファイナンシャルプランナーの飯村久美さんが、お金を増やすコツを伝授。
稼ぐ力を付けるには、転職という選択肢もあります。いま正社員で働いている人は躊躇するかもしれませんが、将来自分がやりたいことといまの仕事があまりにかけ離れていたり、自分への評価が著しく低いと感じたりするときは、転職という選択も当然「あり」だと思います。
転職を考える際の、大きなポイントは以下のふたつです。
❶いまの自分のキャリアを高く評価してもらえる会社であるか
❷将来、自分のやりたいことにつながる会社であるか
勤めている会社を辞める理由は他にもあると思いますが、稼ぐ力を付けるという視点に立つと、この2点になります。
❶の「高く評価してもらえる」というのは、同じ仕事のまま給与をたくさんもらえるということです。いまの会社にいる理由はお金だけではないでしょうが、会社を変えるだけで稼げるようになるなら、考えてみるのもいいでしょう。
最近、日本人のアニメーターが中国企業に採用されるケースが増えていることが話題になりましたが、これは単純に、待遇の違いです。その差は、約3倍ともいわれています。同じ仕事でこれだけの差があると、人材が流出するのも理解できます。
❷に関しては、条件によってはいまの給与より下がる可能性があります。それでも、将来的なことを考えた場合は、十分に転職の理由になりますし、稼ぐ力を付ける転職につながっていくはずです。
将来の稼ぎにつながるかどうかは、自分の好きなこと、得意なことを磨けるかどうかにかかっています。要するに、転職を希望する会社に自分がプロフェッショナルになれる道があるか、ということです。
世界中を飛びまわる衣料品のバイヤーになりたい人が、食品メーカーに居続けてもステップアップできませんし、個人宅の設計をしたい人が集合住宅を得意とする会社の設計部門にいても、夢に近づくことはできないでしょう。好きなことや得意なことで稼ぐという行為は、好きでも得意でもないことを仕事にするよりも、あきらかに人生を充実させます。
企業で仕事をしていると、不得意なことも頑張ってやらなければならないという風潮もあると思います。しかし、なかには不得意なことを上手に他人へお願いできる人もいます。そうすることで仕事のストレスは軽減できますし、適材適所な仕事のやり方をすることで、組織全体のパフォーマンスも上がるはずです。
ただ、不得意なことを他の人に任せるならば、自分の不得意な分野を理解し、他人が自分のお願いを聞いてくれる下地をつくっておく必要があります。また、自分が得意なことを他の人からお願いされる可能性も出てきます。つまりそこには、ギブ&テイクの関係が成り立たなければならない、ということを意味します。
ですから、「これだけは負けない!」といった自分の武器をしっかりと磨き、得意なことを中心に働ける環境を手に入れていってほしいと思います。
話を戻しましょう。実は、転職するにしても、貯蓄があるかないかが大きなカギになります。その理由は、転職についてじっくり腰を据えて検討できるからです。しかも、仕事を続けながらではなく、会社を辞めてからじっくり検討することもできます。転職で最も悪いパターンは、いまの仕事がただ嫌だからという理由で退職して、見切り発車することです。
仮に、貯蓄1000万円を達成したとすると、年収300万円なら手取りで計算すると4年分ということになります。つまり、3~4年は、仕事を辞めて収入が途絶えたとしても、お金のことを心配することなく転職活動ができるということです。十分な時間があれば、自分で納得できる答えを見つけられるはずです。
この記事のひときわ#やくにたつ
・転職の候補は、いまのキャリアを評価してもらえる会社か将来につながる会社か
・転職するにしても、貯蓄があるかないかが大きなカギ
編集協力=岩川悟(合同会社スリップストリーム)、洗川俊一、横山美和、撮影=樋口涼