円安による生活コストの上昇や、老後資金問題など、お金に関する漠然とした不安を抱えている人も多いはず。一方で、これまでにも「お金を貯めたい」と考えてきたにもかかわらず、なかなかうまくいかないという人も少なくないだろう。ここでは、『年収300万円でもラクラク越えられる「貯蓄1000万円の壁」』の著者でもあるファイナンシャルプランナーの飯村久美さんが、お金を増やすコツを伝授。

最近流行っている「ポイ活」。ポイ活とは、ポイントを貯めるための活動を行うことです。近年、スマートフォンが普及し、アプリをダウンロードすることで手軽にポイ活ができるようになりました。メディアでも、1年間貯めたポイントで、家族旅行に行けたなんていうポイ活の達人が紹介されることも多くなりました。
ポイ活は主に2種類あります。ひとつは、商品やサービスを○○payなどのQRコードやクレジットカードで決済することで、割引と同等の特典としてポイントが付与されるものです。
さまざまなサービスを組み合わせて、ポイントの二重取りや三重取りが可能になる場合もあります。例えば、お店独自のポイントとキャッシュレス決済のポイントの二重取り。さらには、それをクレジットカードでチャージをした電子マネーで支払ったりすると、ポイントの三重取りが可能になることもあります。
もうひとつは、ポイントサイトを利用してポイントを貯める活動です。例えば、新規でクレジットカードをつくりたい場合、クレジットカード会社で申し込みをするよりも、ポイントサイトを通じて申し込みをしたほうが、ポイントサイトからの特典が受けられてその分、お得になります。また、ポイントサイトによっては、動画サービスを無料で試したり、アプリをダウンロードしたり、アンケートに答えたりしてもポイントがもらえます。
ポイントの貯め方は詳しくなればなるほど、メリットを享受できます。しかし、そこには大きな落とし穴もあります。
それは、ポイントにつられて余計な支出が増えてしまうことです。例えば、1カ月にキャッシュレス決済で5万円を使うと、来月のポイント還元率が0.5%アップするなどという場合があります。
もし、月末の利用額が4万9700円で、あと300円余計に買い物をすれば、来月のポイント還元率が0.5%増える場合、あなたならどうしますか?来月ポイント還元がされるならお得だ!と思うかもしれませんが、300円払って得られる還元率は、5万円×0.5%=250円です。250円のために無駄な買い物を300円するとなると本末転倒です。
もしあなたがこのような経験をお持ちならば注意したほうがよいかもしれません。そしてここには、ポイントを稼ぐための無駄な買い物をしたことよりも、もっと重要な問題点があります。
それは、あといくら使えばポイント還元率がアップするか、という点に着目しているという点です。ポイント還元はあくまでも「オマケ」です。知らず知らずのうちにポイントが貯まっていたのでちょっと贅沢をした。もともと買い物をする予定だったものをポイントサイトから購入することで、ポイント分、得をした。このようなケースが本来あるべき姿です。
しかし、来月のポイント還元率のアップまであといくら使えばよいか?という視点で見ているならば、ポイントを貯めるために本来は必要のない買い物をしていることになりかねません。
ポイントサービスを導入している側は相手の心理を利用して、今月あといくら使うと、何回買い物をすると、来月お得になります、というような表示をします。こうなると、今いくら買い物で使ったかが気になってしまい、ポイントを貯めるために買い物をする、そして自分の貯蓄残高よりもポイント残高のほうが詳しい、というようなことが起こってしまいます。
一回一回の買い物で、少しでも得をするために、ポイントが上手に貯められる方法で買い物をする。でもポイントが今いくら貯まっているか知らない、という状況が理想です。ポイント還元率に購買行動を左右されない。これがポイントを上手に活用して貯蓄体質になるための大切なことです。

この記事のひときわ#やくにたつ
・ポイント還元はあくまでも「オマケ」
・ポイント還元率に購買行動を左右されない
編集協力=岩川悟(合同会社スリップストリーム)、洗川俊一、横山美和、撮影=樋口涼