円安による生活コストの上昇や、老後資金問題など、お金に関する漠然とした不安を抱えている人も多いはず。一方で、これまでにも「お金を貯めたい」と考えてきたにもかかわらず、なかなかうまくいかないという人も少なくないだろう。ここでは、『年収300万円でもラクラク越えられる「貯蓄1000万円の壁」』の著者でもあるファイナンシャルプランナーの飯村久美さんが、お金を増やすコツを伝授。

固定費の見直しで、必ずやるべきことが「自動引き落とし」のチェックです。ここまで見直し項目として取り上げた保険料、通信料、住居費だけでなく、水道光熱費、スポーツジム利用料、子どもの塾や習い事の月謝など、ありとあらゆる支払いを自動引き落としにしている人が多いと思います。
自動引き落としにすることで、払い込み用紙を使って毎月、コンビニや銀行の窓口などで支払わずに済みますから、時間を大きく節約することができます。また、カード決済を使うことで、ポイントが加算されるものも多くありますので、自動引き落としは有効に使うべきだと思います。
でも、便利だからこそ、この自動引き落としを定期的に見直す必要があるのです。そうすることで、隠れた支出が見つかることが多々あるからです。数多くの支払いを自動引き落としにしている人ほど、隠れた支出がよく見つかります。
見直す際にチェックするのは、次の3つです。
①利用しなくなったサービスに、お金を払い続けていないか
②そのサービスや商品は、いまも本当に必要か
③自分でもわからないことに支払っているものはないか
例えば、あれほどやる気満々で入会したスポーツジムでも、いつの間にか行かなくなってしまった……というのはよくある話です。「時間ができたら行くからいい」。そんなふうに放置していませんか?そういう人に限って、トレーニングを再開することはほとんどありません。
海外ドラマや映画が観たくて加入した動画配信サービス、毎月定期的に届けられる食品・健康食品・サプリメントなど、最初は目的があって申し込んだものの、時間が経つにしたがって必要性が薄れていくものもあります。
それから、スマートフォンのオプションや保証サービスといった、入ったことさえ覚えていないようなものもあるはずです。自動で引き落とされている内容を細かく見ていくと、少ない人なら数百円程度ですが、多い人になると数千円の無駄な支出が見つかります。
そして、「まさか自分が?」と思うかもしれませんが、あなたもクレジットカード詐欺にあっていないとはいえません。よくあるのが、犯人が毎月数千円だけ使っていくパターンです。
この「数千円」というのが肝で、一度に大きな金額を引き落とすとカード会社が怪しんで持ち主に通知して被害を未然に防げることが多いのですが、数千円なら、カードの持ち主に明細書が届いても、「なにかに使ったかもしれないな」で被害が見落とされてしまうのです。2000〜3000円程度なら、気づかれずにカードの有効期限が切れるまで使い続けるケースがよくあるそうです。これが積もり積もると、何十万円という金額になるので注意が必要です。
自動引き落としは大変便利なシステムですが、お金の流れを見えにくくするというデメリットがあることを忘れないでください。不要なものがあれば、すぐに解約しましょう。
いろいろと書いてきましたが、お金がどうしても貯められない人に対しては、わたしはできる限りの現金払いをおすすめしています。その理由は、自動引き落としに比べて、「面倒」だからです。「わざわざ現金で支払うなら、解約したほうがラク」となれば、本当に必要な支出かどうかを見極めることができ、お金を貯めることにプラスに働くはずです。

この記事のひときわ#やくにたつ
・固定費の見直しで、必ずやるべきことが「自動引き落とし」のチェック
・自動引き落としには「お金の流れを見えにくくする」というデメリットもある
編集協力=岩川悟(合同会社スリップストリーム)、洗川俊一、横山美和、撮影=樋口涼