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20年前からあった商品を4万4000台も売り捌く!「一人用こたつ」をヒットに導いた「くらしと生協」の戦略に迫る

2024/03/02 14:00
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2024年1月から、大手電力会社が足並みをそろえて電気料金を値上げした。物価の上昇も止まらない。なのに賃金は上がりやしない。で、部屋は寒い。

一般的に、1年で最も寒いのは大寒から立春までの期間と言われる。つまり、寒さのピークは1月末から2月頭。最も寒い時期をどうにか越えたとはいえ、まだまだ全然寒い。たまに「春並みの陽気」なんて日もあるが、朝晩は冷え込んで、エアコンは稼働しっぱなしである。電気代を節約したいのに!

天板もテーブルもない、置き炬燵のようなフォルムの「一人こたつ」が大ヒット!
天板もテーブルもない、置き炬燵のようなフォルムの「一人こたつ」が大ヒット!

そんな我々の気持ちにフィットしたアイテムが売れている。その名も「一人用こたつ」。部屋全体を暖めなくても、自分のいる場所だけはほかほかに暖まる。日本生活協同組合連合会、略して日本生協連の通販部門、生活雑貨・衣料のカタログ「くらしと生協」から販売されている。

2018年に販売をスタートしてから累計で4万4000台を売り上げた(2023年11月28日時点)というこの商品。ヒットの裏側を通販本部マネージャーの三神貴子さんと商品担当の薄田孝明さんに聞いた。

「一人用こたつ」はパーソナル家電であるとの認識がヒットにつながる

さまざまなバリエーションのある「一人用こたつシリーズ」のうち、今最も売れているという「一人こたつ」は、テーブルと一体化していないのが特徴だ。ヒーターを囲うようにキューブ型の木枠があるだけのシンプルなつくりで、手持ちのブランケットや毛布をかけて使う。分厚い中綿布団と薄手の毛布では暖まり方も異なるので、その日の気温や好みの素材で調整でき、床でも椅子でもソファでも、どこへ座るのにも対応する便利な暖房家電だ。

【写真】「一人こたつ」の利用例
【写真】「一人こたつ」の利用例


「メーカーでは20年ほど前から取り扱っていた商品で、現在はその出荷台数の約半数が『くらしと生協』と聞いております(※山善調べ)。『くらしと生協』で初めて取り扱ったのは、2017年秋に発売した『一人用こたつ3点セット』です。通常のこたつより小さい58×58サイズと、省スペースで使えるのが売りでした。あくまでも、いつものこたつがひと回り小さくなったという認識の商品でしたが、思いがけなくヒットしたことから、おひとり様専用こたつの品揃え強化が始まったんです」(三神さん)

自分のためだけの専用家電、いわゆる“パーソナル家電”の需要に気づいたことが大きな転機となる。

「購入者の声を分析し、2018年度から『小型』『省電力暖房』を強調することにしました。私どもはカタログ通販という業態ですので、誌面が売り場。そこで、見せ方を変えていくことにしました。扱いを大きくし、購入者の声を盛り込んだり、使い方のシーンを提供したりと、売り場を改良していったんです。コロナ禍以降の2020年に“ただの小さいこたつ”ではなく、“家族のことを考えたらミニこたつ”という売り方へシフトしたところ、いえなか需要に加えて昨今の電気代高騰も後押しし、一気にパーソナル家電への需要は高まっていきました」(三神さん)

そもそもこたつは消費電力が少ない。部屋の中にいる人数が少ないのなら、エアコンの設定温度を上げるより、その場にいる人だけをピンポイントで暖めたほうが効率もよい。冷えを感じやすい足元をしっかり暖められ、電気代を節約できるのだから、こたつに注目が集まるのもごく自然な流れだ。

こたつといったら家族団らんの場に置かれるもの、リビングの中央に鎮座するもので、大勢で囲むもの、という思い込みからの脱出が、大ヒットを後押ししたのである。

若い世代ばかりのカタログ制作チームと置き炬燵の邂逅

こたつと銘打ってはいるものの、「一人こたつ」の見た目は一般的なこたつの姿とは異なる。当然、商品そのものをただ撮影するだけでは、訴求力に欠けてしまう。ところが、カタログでの見せ方を工夫しようにも、「くらしと生協」のカタログ制作チームは若い世代が多すぎた。こたつ自体にあまりなじみがなかったのである。

「商品のよさを伝えていくためにも、まずはこたつのニーズを深掘りしていく必要がありました。我々は若いメンバーが多く、こたつに慣れ親しんだ世代とは言えません。そこで社内の先輩方まで範囲を広げてヒアリングを進めると、本当は使いたいのに場所を取るためあきらめている、という意見が多く集まりました。こたつに対する憧れや未練がありながら、使える環境にないことがネックになっていることがわかったんです」(三神さん)

こたつを導入できない理由として、スペースを確保できないこと、ソファやリビングテーブルの配置に困ることのほか、こたつ布団はかさばるうえ、使わない季節の収納にも場所を取ることが挙げられる。その点、「一人用こたつ」ならコンパクトで邪魔にならない。

「さらに、テーブルと一体化していない『一人こたつ』の特性を探っていくなかで、『あんか』や『置き炬燵』の存在に辿り着きました。小型で持ち運べる熱源は古くから親しまれていたわけで、『一人こたつ』は『置き炬燵』にそっくりです。こうした昔ながらの使い方をヒントに『一人こたつ』の利点を伝えていこうと方針も固まりました」(三神さん)

幅27×奥行き27×高さ22センチの「一人こたつ」(1万2980円)。重さはわずか2.4キロで、1時間あたりの電気代(目安)は強で1.4円、弱では0.6円だ
幅27×奥行き27×高さ22センチの「一人こたつ」(1万2980円)。重さはわずか2.4キロで、1時間あたりの電気代(目安)は強で1.4円、弱では0.6円だ


あんかや置き炬燵は炭火が熱源だが、「一人こたつ」はコンセントをつなぎスイッチひとつで暖まるヒーターだから安全だ。起きている間は置き炬燵の要領で使い、あんかや湯たんぽのように寝る前の冷たい布団を温めておくこともできる。

従来の家族団らん用こたつにはできないことも、「一人こたつ」なら適う。カタログ製作チーム渾身の売り場づくりで、「一人用こたつシリーズ」は大ヒットすることとなる。

コロナ禍の“おうち時間”需要で生産が追いつかない!

売り場づくりに力を入れた甲斐あり、「一人用こたつシリーズ」は売れに売れた。

「はい。カタログで魅力をうまく伝えられるようになったことに加え、コロナ禍のテレワークやステイホームの影響も重なりまして……結果、売れすぎて生産が追いつかない事態となりました。こたつはシーズン品ということもあり、冬にしか在庫を持っていなかったのです。あっという間に品切れとなる状況が2年ほど続きました。調達課題を解消するため、春から在庫の準備をスタートし、秋には売り場を作り、早めに注文を受け付けることにしました。今では安定してお届けできています」(薄田さん)

さらに、こたつの購入時期が冬だけではないこともわかった。

「秋、そして春にも注文が入るんです。販売期間を拡大して、季節に合わせた仕掛けを行うようになったことも、好調な売り上げにつながっています」(三神さん)

市場のニーズを受けて新規に開発したのではなく、需要があるのに埋もれていた既存商品の“売り方”を変えた。思いのほか反響があったので、仕入れのスケジュールから見直すことにした。「一人用こたつシリーズ」を一気にヒット商品へと導いたのは、従来のやり方にとらわれず柔軟に対応した結果だったのである。

バリエーションも豊富。ヒーター本体だけの「一人こたつ」だけでなく、毛布やこたつ布団を挟みやすい「1人用ミニこたつ(天板付き)」に加え、2023年冬には「一人デスクこたつ(掛けふとん付き)」もデビュー。普段使いの椅子やソファに合わせられ、パソコンや作業をしやすいと評判だ。掛け布団が付いていたり、椅子が付属したり、届いてすぐに戦力となるラインナップも魅力。

「1人用ミニこたつ(天板付き)」(1万5180円)は、天板を含む寸法が幅30×奥行き30×高さ26センチ。天板があるので、小テーブルとして使える。電気代は「一人こたつ」と同じ
「1人用ミニこたつ(天板付き)」(1万5180円)は、天板を含む寸法が幅30×奥行き30×高さ26センチ。天板があるので、小テーブルとして使える。電気代は「一人こたつ」と同じ

「一人用こたつ(3点セット)」(3万7180~4万1580円)は、こたつ、椅子、毛布のセット。1時間あたりの電気代(目安)は強で5円、弱で2.5円。正方形タイプと長方形タイプがある
「一人用こたつ(3点セット)」(3万7180~4万1580円)は、こたつ、椅子、毛布のセット。1時間あたりの電気代(目安)は強で5円、弱で2.5円。正方形タイプと長方形タイプがある

「一人用デスクこたつ(掛けふとん付き)」(2万1890円)には椅子が付属しないので、自宅で使っている椅子やソファを利用できる。電気代は強5.3円、弱2.5円(1時間あたり・目安)
「一人用デスクこたつ(掛けふとん付き)」(2万1890円)には椅子が付属しないので、自宅で使っている椅子やソファを利用できる。電気代は強5.3円、弱2.5円(1時間あたり・目安)


「一人用デスクこたつ(掛けふとん付き)」は、暖かい季節にもサイドテーブルのように使えて便利だ
「一人用デスクこたつ(掛けふとん付き)」は、暖かい季節にもサイドテーブルのように使えて便利だ


春が来ても名残り雪が降ることもある。まだまだ続く寒さに対抗するべく、「くらしと生協」イチ押しの自分専用こたつを手に入れてみてはいかがだろうか。

■くらしと生協

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