「一人暮らしでも食洗機が使える」と大人気!約A4ファイルサイズの食洗機「SOLOTA」がヒットした理由とは?

東京ウォーカー(全国版)

X(旧Twitter)で
シェア
Facebookで
シェア

家庭用電化製品、住宅設備、店舗・オフィス向けの商品・サービスを提供する、総合エレクトロニクスメーカーのパナソニック株式会社(以下、パナソニック)。これまで、エアコンや洗濯機、冷蔵庫といった白物家電分野で、パナソニックは家族向けの大型商品を中心に展開してきた。

しかし近年、一人暮らし世帯の増加を受けて、パナソニックはソロ家電市場に注力をし始めた。その先駆けとして開発・発売したのが「パーソナル食洗機 SOLOTA(ソロタ)」だ。これは単身世帯向けに開発された、業界最小設計(※)のパーソナル食器洗い乾燥機。2023年2月に発売して以来、「一人暮らしでも食洗機が使える!」と大人気に。
(※出典:パナソニック調べ:国内卓上食器洗い乾燥機において。2023年10月16日現在)

今回、パナソニックが一人暮らし世帯への市場に目を向けた食洗機を開発したのには、どのような背景や理由があったのだろうか。パナソニック キッチン空間事業部 冷蔵庫・食洗機BU 国内マーケティング部の山本秀子さんに、SOLOTAの企画や開発についてのインタビューを行った。

パナソニック株式会社 キッチン空間事業部 冷蔵庫・食洗機BU 国内マーケティング部の山本秀子さん【撮影=福井求】


約A4ファイルサイズの食洗機「SOLOTA」誕生秘話

SOLOTAとは、単身世帯向けのマンションのキッチンでも置きやすい食洗機。「一人暮らしでも食洗機が使いたい!」という声を叶えるべく誕生した商品で、およそA4ファイルサイズ1枚のスペースに設置可能なため、狭めのキッチンでも置き場所に困らないのが大きなポイントだ。

「一人暮らしの方は食洗機を使う習慣がほとんどありません。現在、内閣府調査における全年代全世帯の食洗機保有率は30%弱です(※)。そこで、もっとたくさんの人に使っていただくにはどうしたらいいかを考えたところ、食洗機になじみのない方にまず試してもらうことを想定し、一人暮らし向けの卓上食洗機を開発しました。これまでに一人用と銘打ったものは市場になかったので、SOLOTAが初めての商品になります」
(※出典:令和5年3月実施 内閣府 消費動向調査による)

パナソニックが販売している「パーソナル食洗機SOLOTA」【提供=パナソニック】


山本さんによると、一人暮らしの中でも比較的若い世代で、自炊をせず少ない食器しか持っていない人にとっても、食器洗いは非常に大きな負担になっているそうだ。そこで、そのような人の負担を軽減するための商品として、SOLOTAを導入したといった背景があった。そして、一人暮らし世帯における食洗機の普及率の低さも市場参入の決め手となったと言う。

「29歳以下の単身世帯の食洗機保有率は6.5%なんですよ(※)。一人暮らし世帯は洗う食器の絶対数が少ないこともあり、『一人分の食器くらい自分で洗おう』と食洗機を購入しようとも思っていない人がほとんどです。だからこそ、特に一人暮らしを開始する20~30代の早いタイミングで、手で洗うのではなく家電に任せるという生活スタイルを構築していただきたいなというところから、一人暮らし向けの食洗機を開発し始めました」
(※令和5年3月実施 内閣府 消費動向調査による)

ほぼA4ファイルサイズという小さめサイズのため、狭めのキッチンにも置くことができる【提供=パナソニック】


SOLOTAの狙いは、一人暮らし世帯に向けた食洗機の普及と、彼らの生活スタイルが変化するタイミングでの買い替え需要の促進だ。基本的に食洗機は4〜6人用の家族世帯に向けたものが多く、消費者は結婚や出産、家の購入といった大きなライフイベントのタイミングでしか取り入れられないのが課題だった。そこで、一人暮らしの段階で食洗機に触れてもらい、ライフスタイルが変化するタイミングで家族向けの食洗機を導入してもらうのが、パナソニックの大きな狙いだ。

まずは触れてもらうために、サブスクサービスを展開

単身世帯に向けて発売されたSOLOTAだが、食洗機事業としては初めて若い一人暮らし層に向けてアプローチする商品であり、そもそもの市場が存在しなかったことも相まって、実際に開発にいたるまではさまざまな苦労があったそうだ。特に、企画段階において「実際に売れるか」をはっきりと明示することができず、発売までつかめなかったという。

「データ上と経験値としては単身世帯に需要がありそうだとは思っていましたが、誰もジャッジができない状況でした。最終的には、プロジェクトメンバーが『この方向性で行く』と強く言ったこともあって、『そこまで言うならやってみようか』と上司からOKをもらうといった感じでした。市場が成熟していないどころか未開拓だったので、どこまで突き詰めてもやってみないとわからない状況でした」

SOLOTAに食器を入れている様子【提供=パナソニック】


しかし、発売の1カ月前にリリースを出したところ、さまざまな媒体がSOLOTAを取り上げて、多くのメディア露出に成功。そしてSNSでの反響も非常に大きく「一人暮らしだけど食器洗いが嫌だった」といったコメントがたくさん届いた。しかし、ほとんどの一人暮らし世帯はその先5年〜10年後の生活スタイルの変化を予測できない場合がほとんど。そのような状況で食洗機に手を出すのはハードルが高いと想定されたため、パナソニックはSOLOTAの定額利用サービスを開始した。

ちょうど一人分の食器が入るサイズのため、一人暮らしにぴったり【提供=パナソニック】


「単身世帯の方々が食洗機を欲しいと思っても、自分の生活に合うかが不安で踏み切れないという人が多いと感じました。そこで、弊社が直接SOLOTAを貸し出す定額利用サービスを始めました。このサービスでは月額1290円でSOLOTAを使うことができるというものです。食洗機を使ったことのない人にとって購入のハードルはものすごく高いので、そこを下げる目的で始めましたね。これを展開したことで多くのお客様に気軽に食洗機デビューをしていただきました」

発売当初の売れ行きは計画比の約2倍、定額利用サービスも計画比の約2.5倍と想定以上の反響。想定外の人気を博した。『日経トレンディ2023年6月号』の「2023年上半期ヒット大賞&下半期ブレイク予測」家電部門においてヒット大賞を受賞。また、日経トレンディ2023年12月号では、『2023年ヒット商品ベスト30』の27位にSOLOTAが選出されるなど、多くの受賞をしている。今後もどのような売れ行きになるかが楽しみだ。

「予想以上にヒットし、びっくりしています」と山本さんは話す【撮影=福井求】


まるで「洗える食器棚」デザインへの徹底的なこだわり

SOLOTAは普通の食洗機以上にこだわりがいっぱい詰まっている商品だ。そのひとつが、設置面積がA4ファイルと同程度のサイズ設計。この小ささのおかげで「狭いキッチンに食洗機を置くことができた」という喜びの声も上がっている。そして、もうひとつが「洗える食器棚」のような透明の設計だ。

「SOLOTAは前面と背面がクリアになっています。本来、食洗機の設計としては前背面を透明にする必要はないのですが、今回はあえてこのようにしました。初めて食洗機を使うという人が、汚れをどういうふうに落としているかが実際に見えるのがポイントです。中が見えるようにしたことで、洗っている最中の食洗機をじっと見る人も多く、このような部分が好きな人が意外と多かったのも驚きでしたね」

【写真】食器が入っている姿は、まるで「洗える食器棚」【提供=パナソニック】


前面だけでなく背面も透明になっていることにも大きな理由が。白くて四角い箱が狭いキッチンに置かれるよりも、前背面が透明で抜け感があると、狭いキッチンでも物量感が大きく軽減されるためだ。技術的にはクリア窓を含む部品の数が少なく、ひとつの箱筐体で構成されるほうが水漏れのリスクを抑えられるそうだが、今回のSOLOTAでは情緒的なデザインを実現するため、部品の数が多くても水漏れが起こらない設計にし、洗える食器棚のような形を実現したという。

また、機能をシンプルにしているというこだわりも。一般的な食洗機よりも機能を大幅に削減し、食器を洗って乾燥させるという基本機能に絞って搭載。ボタンも2つでコースもひとつという形式となっている。開発中はさまざまな機能を搭載してはという声もあったが、SOLOTAでは食洗機入門機として機能を絞り込んでわかりやすさを尖らせた結果、現在の形になったそうだ。

「『ファースト食洗機』とはどうあるべきか、という視点で議論を重ねました。この商品から『食洗機で洗ったら楽だな』とか『自分の時間が生まれるな』という感覚を抱いた人は、結婚や住宅の購入などといったライフスタイルの変化があっても食洗機を購入されていくと思います。このように、食洗機そのものの定着を目指す商品としてSOLOTAを展開しています」

前面が透明になっているので、洗っている様子が見えるのもポイント【提供=パナソニック】

操作ボタンはシンプルに2つだけ【提供=パナソニック】


  1. 1
  2. 2

この記事の画像一覧(全11枚)

キーワード

カテゴリ:
タグ:
地域名:

テーマWalker

テーマ別特集をチェック

季節特集

季節を感じる人気のスポットやイベントを紹介

花火特集

花火特集

全国約800件の花火大会を掲載。2024年の開催日、中止・延期情報や人気ランキングなどをお届け!

花火大会人気ランキング

ページ上部へ戻る