群馬県発、豆腐メーカーの革命児である相模屋食料。その舵を取る鳥越淳司社長は、ただの豆腐職人にあらず。入社時に28億円だった街の豆腐メーカーの売り上げを、400億円超の業界の雄へと成長させた立役者であり、ユニークな発想で豆腐の新境地を切り拓くイノベーター。ガンダム愛に満ちた彼の手がける『ザクとうふ』はSNSをにぎわせ、豆腐に新たな風を吹き込んだ。今回、そんな彼の情熱に迫るべく、相模屋食料の今とこれから、そして鳥越社長の豆腐にかける熱い思いを直撃した。聞けば、従来の豆腐の概念を覆す『BEYOND TOFU』シリーズを展開し、現在はまるでフォアグラのような味わいが楽しめる製品や白子のような味わいの製品も開発しているという。鳥越氏の豆腐への新たな挑戦が、私たちの食卓に革新をもたらしているのだ。今回は、鳥越社長自らが語る、情熱と創造の世界に迫った。

相模屋食料株式会社 代表取締役社長 鳥越淳司さん
相模屋食料株式会社 代表取締役社長 鳥越淳司さん【撮影=宮川朋久】


相模屋食料のイノベーションは、社長の熱烈なガンダム愛が原点⁉︎とうふとガンダム、意外なコラボの舞台裏

ーー2012年3月に、アニメ『機動戦士ガンダム』に登場するモビルスーツ、ザクをモチーフにした『ザクとうふ』を発売されて話題となりました。当初の予測と売り上げの結果について、どのように感じましたか?
【鳥越淳司】実は、『ザクとうふ』は私の個人的な趣味から始めたもので、売り上げ予測などは特に立てていませんでした。ガンダムが大好きで、子どものころに手に入らなかったガンプラを大人になってから楽しむような気持ちで始めただけなんですよね(笑)。そんな感じだったので、売り上げに関しては詳しく覚えていないですが、ファンの方々から「あれスゲェよな」って、言っていただけたのは非常にうれしかったです。

ガンダムコラボ第一弾となった『ザクとうふ』は、ガンダムファンだけでなく一般消費者の度肝を抜いた
ガンダムコラボ第一弾となった『ザクとうふ』は、ガンダムファンだけでなく一般消費者の度肝を抜いた【画像提供=相模屋食料】

ーーでは、反響の大きさには驚かれたのでは?
『ザクとうふ』は、社内で1機、2機と呼んでいるんですけど、発売からわずか約1カ月で、「100万機出撃しました」と報じられたんですね。そのときに、ガンダムファンの方々とファン心を共有できたなと。とにかく共感いただけたことが、何よりの喜びでした。
 
ーー本当にガンダム愛から生まれた企画だったんですね。
【鳥越淳司】はい、そのとおりです。この企画は完全に私の「やりたい!」という遊び心から始まったわけですが、ガンプラを作るような感覚で、細部にまでこだわり抜きました。たとえば、ザクのアゴから伸びている“動力チューブ”は、「SDガンダムみたいなのじゃなく、リアルなザクを意識したデザインに」など、細かいディテールにガンダムファンとしてこだわったので、パックメーカーの担当者も困っていました。さらに、『ザクとうふ』の発売にあたり、制作発表会を開催したのですが、実は、シャア役の声優、池田秀一さんに会うことが目的でした(笑)。池田さんに会いたくて、どうすればいいか相談したところ、「発表会をすれば呼べますよ」とのことだったので、「ぜひ!」ってお願いをして来ていただいたんです。KADOKAWAさんで、池田秀一さんとの対談企画も開催していただいて、非常に感動的でしたね。

趣味で作った『ザクとうふ』が、思いがけない大ヒットとなり驚いたという鳥越社長
趣味で作った『ザクとうふ』が、思いがけない大ヒットとなり驚いたという鳥越社長【撮影=宮川朋久】


ーーSNSでの反応もあったようですね。
【鳥越淳司】 Twitter(現X)に、2秒間隔ぐらいでずっとツイートしていただいて。「こんなすごいんだ、SNS」って、初めて影響力の大きさについて実感しました。
 
ーー『ザクとうふ』の金型はどのようにして作られたんですか?
【鳥越淳司】金型の製作に関しては、金型の専門業者にお願いしました。パックメーカーの社長はガンダムに詳しくなかったのですが、金型を作る業者の担当者がガンダムファンだったんですよ。それでノリノリで協力してくれまして(笑)。おかげで、独特の形状を実現することができました。通常の豆腐パックって、開けやすいようにフィルムが上向きじゃないですか。でも、『ザクとうふ』ではそれを逆転させ、顔型のトレイを上向きにした斬新なアプローチを取りました。
 
ーー近所のスーパーでも見かけましたよ。
【鳥越淳司】このような形で市場に出せたのも、ガンダムを好きな方が集まって製品化に向け試行錯誤した結果ですね。最終的にはガンダムの版権を持つ創通さんのご協力を得て、なんとか商品を発売することができたんですよ。まるで完成した作品を世に送り出すような、そんな感覚ですね。
 
ーー鳥越さんの思いが、すべて詰まったとうふの域を超えた存在なんですね。そして、このあとに『相模屋 Gとうふ シリーズ』としてシリーズ化されましたよね?
【鳥越淳司】ズゴックを作って、ビグ・ザム、ドムを出して、最後に百式を出しました。
 
ーービグ・ザムって、すごく大きいですがとうふでどう表現したのですか?
【鳥越淳司】『ビグ・ザムとうふ』は、世界初の試みで“組み立てるとうふ”というコンセプトで考えた商品です。とうふとして前例がない大型パッケージに、ビグ・ザムの胴体と脚それぞれをモチーフにしたとうふとご飯カップ、取扱い説明書を同梱したんです。しかも、物語の舞台にもなったオデッサ周辺の大豆も少量使用して。これまでの商品のモチーフとなった、ザクやズゴックのとうふには、お互いが量産型という共通点があったんです。でも、ビグ・ザムは量産型じゃないんですよ。なぜかというとこれには理由があって、「ビグ・ザムが量産の暁には連邦などあっという間に叩いてみせるわ!」という、ドズル・ザビの言葉を実現させるという思いを込めたんです(笑)。

『ビグ・ザムとうふ』は、ドズル・ザビのセリフをとうふで表現した、前代未聞の巨大とうふ
『ビグ・ザムとうふ』は、ドズル・ザビのセリフをとうふで表現した、前代未聞の巨大とうふ【画像提供=相模屋食料】


ーー創通さんからは、どのような反応がありましたか?
【鳥越淳司】「と、と、とうふでガンダム!?」と、もう愕然とされていましたね。間接的にですが、ある日担当された方が雑誌の取材で、「『ザクとうふ』を最初に見たときに、これは大事にするべきものだと思った」と語っていた記事を読んで、評価いただけたんだなと感じました。
 
ーー当時、豆腐売り場でも異彩を放っていましたもんね。
【鳥越淳司】おとうふって、いろいろな形や種類があっていいんだって、可能性を示せたかなと思っています。
 
ーー確かに、とうふって四角いイメージが強いですからね。見かけたときは斬新すぎて驚きました。やはり、反響が大きかったから、BEYOND G TOFU『百式とうふ』までのシリーズ化につながったのでしょうか?
【鳥越淳司】狙ったわけじゃなくてですね、私がやりたくなったときに取り組む、そんな感じでした。特に百式に関しては、いつかやりたいと思っていたんですよ。毎回、発表会には池田秀一さんにお越しいただき、「次は赤を出してほしいな」というセリフを最後に言っていただくのが恒例となっていました。しかし、赤いモビルスーツはシャア専用で1機しか存在しないので、それを大量に出すわけにはいかなかったんです。そこで金色のモビルスーツ、百式に着目したんです。直接金色のとうふは作れないので、金箔を含んだカレー味のソースを塗るというアイデアを思いついて。もちろん、池田さんに「今度もぜひ!」とお話していたところ、残念ながらコロナの影響で大規模な発表会を開催することが難しくなってしまったんです。「ようやく来たな」と言っていただきたかったんですけど…。

【写真】『百式とうふ』は、金粉入りのカレーソースをとうふに塗ることで、あのゴールドボディを表現した
【写真】『百式とうふ』は、金粉入りのカレーソースをとうふに塗ることで、あのゴールドボディを表現した【画像提供=相模屋食料】

ーー百式のパイロット、クワトロ大尉の声も池田さんが演じていましたもんね。
【鳥越淳司】そうなんですよね。そのとおりです。
 
ーー『百式とうふ』のノベルティーアイテム、『メガ・バズーカ・ランチャー筆』も非常にユニークでおもしろいと感じました。
【鳥越淳司】プロモーションの一環としてフォトコンテストを開催し、その賞品として作成したものになります。フォトコンテストは、『百式とうふ』をソースで塗ったオリジナルペイントの写真コンテストで、こちらも盛り上がりました。そのほかにも、『ザク・ハンド・スプーン置き S型(ヒート・ホーク・スプーン)』や『ズゴック・クロー・フォーク』、『ゴッグ・ハンド・おたま』なども作りましたね。
 
ーーなるほど、趣味全開でいろいろと挑戦されていますね。
【鳥越淳司】ビジネスは全く関係なく、完全に趣味の世界です。「趣味で悪いか」という感じで楽しんでいます(笑)。
 
ーー最初は鳥越さんおひとりで始めたと思いますが、『百式とうふ』を企画するころにはチームができていたんですか?
【鳥越淳司】ガンダム好きが自然と集まってくるんですよ。最終的にはガンダムに詳しくない人も、「よくわからないけど、おもしろそう」と感じてくれるようになりました。
 
ーーそういった遊び心がファンにも共感され、支持を集めたのかもしれませんね。
【鳥越淳司】プロモーションも「買ってくれ!」という直接的なアプローチではなく、「ただ単に作ったものを見て楽しんでもらいたい」という思いから始めたんです。その純粋さが好感を得られた理由だと感じています。私たちの主な取引先であるスーパーのバイヤーの中にもガンダムファンが多く、「何があっても取り扱いたい」という熱意を示してくれる方がいらっしゃいました。
 

うにの味を再現!相模屋食料が挑む、画期的な「BEYOND TOFU」の世界

ーー『BEYOND TOFU』シリーズにはさまざまな種類がありますが、うにに着目した理由は何ですか?
【鳥越淳司】とうふについて、「シンプルで万能だけど、クセになる味がないので、リピートしたくなることが少ない」という声を耳にしたんです。6000億と言われる大きな市場があるんですが、確かにとうふはシンプルなので「どうしてもとうふが食べたい」と思わせるやみつき感というか、クセになる要素が少ないんです。そこで、「クセになる味ってどんな味?」と尋ねると、「海鮮の味」と言われたんです。なるほどと思い、海鮮の中でも味わい深い極みってなんだろう?って考えたところ、うににたどり着いたんですよね。それで、『うにのようなビヨンドとうふ』を開発することになったんです。

クリーミーで濃厚なコクが楽しめる『うにのようなビヨンドとうふ』。醤油をかけワサビをのせて海苔で食べると、まるでうにのような風味が口に広がる。とうふの概念を覆した注目商品のひとつ
クリーミーで濃厚なコクが楽しめる『うにのようなビヨンドとうふ』。醤油をかけワサビをのせて海苔で食べると、まるでうにのような風味が口に広がる。とうふの概念を覆した注目商品のひとつ【画像提供=相模屋食料】


ーー食感もうにのような感じですか?
“うによりも、うにらしく”というコンセプトで開発したんです。私も、うには回転寿司で食べるくらいだったので、開発するにあたりしっかり味わってみました。すると、1口目、2口目はクリーミーでコクがあって確かにおいしかったんですが、それ以降は独特の臭みが強くて「もう、いいや」って思ったんです。私たちがイメージするおいしいうにって、最初の味だけなんですね。だからこそ、本物と全く同じ味にするのではなく、イメージに近いほうがいいんだなと思ったわけです。ですから、あの一口目のおいしさを追求しています。
 
ーーお酒のお供にもぴったりそうですね。
【鳥越淳司】そうですね。おとうふをソースとして使うこともできるんですよ。
 
ーーHPのおすすめレシピで『うにのようなビヨンドとうふ』を使ったうにクリームパスタを見て、とても斬新だと思いました。
【鳥越淳司】これまでのおとうふはそのまま食べるか、形を残して利用するのが一般的でしたが、調味料としてソースにしたりすることで、新しい使い方を提案できたと思っています。

パスタソースとして使えば、見た目も味も本物と同じような、うにのクリームパスタが作れる。作り方はHPを参照に
パスタソースとして使えば、見た目も味も本物と同じような、うにのクリームパスタが作れる。作り方はHPを参照に【画像提供=相模屋食料】


ーーこういったレシピや使い方のアイデアは、どうやってどのタイミングで生まれるんですか?
【鳥越淳司】きっかけは、ほぼ思いつきから始まるんですよね。やりながら「これはおもしろいかも」って。自分の中で、「これってすごいじゃん」っていう気づきは大切だなと思うんです。データや背景よりも、「おもしろい」とか「すごい」という感覚から生まれたアイデアが積み重なることが、商品化につながっていくんです。
 
ーー開発には何人くらい関わっていたんですか?
【鳥越淳司】実際のところ、私と試作担当者だけですね。
 
ーー『BEYOND TOFU』シリーズには、ほかにもさまざまな商品がありますが、アイデアはお2人で?
【鳥越淳司】アイデアの提案は私が行っているんですが、試作はほかの人にお願いしています。新しい組み合わせやアイデアを実現するのは私ですので、私が関わっていない商品はありません。大げさに言えば、私が作っていますという感じです。こういう取材で、開発チームについてよく聞かれますが、「すいません。ひとりです」って答えています(笑)。

「すべて私が作っています」と笑う鳥越社長。稀代のヒットメーカーでもある
「すべて私が作っています」と笑う鳥越社長。稀代のヒットメーカーでもある【撮影=宮川朋久】


ーーすごい!アイデアマンなんですね。
【鳥越淳司】「これっておもしろいじゃん」と思えるアイデアを集めていけば、何かしら浮かぶんですよ。
 
ーー『うにのようなビヨンドとうふ』を開発するうえで特にこだわった点や大変だった点はありますか?
【鳥越淳司】最初に、本物のうにを目指してしまったので、そうじゃないと気づくまでの過程がちょっと難しかったですね。食べたあとに残る独特な風味って、これだって言う正解はないので、自分の感覚に頼るしかないですから。うに独特な風味には「癖になるもの」と「不快なもの」があり、何回も試作しながら、見極めていったんです。

【鳥越淳司】ある方に「鳥越さんが作るとうふは、騙され感が少ないからいいよね」と言われたことがあります。ここが“うにのような”という点で評価されているんです。『カルビのようなビヨンド油揚げ』だって本物のカルビじゃない。だから、うにと同じとは誰も思っていないんです。どちらもとうふですから。
 
ーーつまり、とうふの概念を超えるから『BEYOND TOFU』なわけですね。このラインナップにはさまざまな種類がありますが、新しいバリエーションなど考えていますか?
【鳥越淳司】失敗を繰り返しながら、いくつか挑戦をしていて、『フォアグラのようなビヨンドとうふ』と『白子のようなビヨンドとうふ』を開発中です。
 
ーー どれぐらいで、我々の口に届きそうですか?
【鳥越淳司】もともとは去年の秋に出す予定でした。特に『フォアグラのようなビヨンドとうふ』は、生での食感にこだわっていたんです。でも、開発途中で「フォアグラを生で食べたことあるの?」と指摘され、「ハッ!」っと気づいてしまったんですよね。ですから、“ソテーしておいしい”と方向転換しまして(笑)。現段階では、どの段階で完成するのか、ちょっとわからないなっていう感じなんです。実はこれも、私たちの社風なんですよね。まず、思いついたらすぐに取り組むんです。そして、「ここまでに開発しなければならない」という概念はないですね。

「思い立ったらすぐに取り組んで、ダメだと思ったらスパッと中止する」と、自身のスタンスを明かしてくれた鳥越社長
「思い立ったらすぐに取り組んで、ダメだと思ったらスパッと中止する」と、自身のスタンスを明かしてくれた鳥越社長【撮影=宮川朋久】


ーーなるほど、それは柔軟な姿勢ですね。
【鳥越淳司】もちろん、決められた期日を目指しはしますが、「何としてでも出さなければいけない」というわけではありません。スーパーさんには、春と秋に棚替えのタイミングがありますが、私たちの商品は「おもしろいからいつでもいいよ」と言ってもらえることが多いです。だから、納得のいくものができたら、それを出すというスタンスでいます。
 
ーーそれは以前の『ザクとうふ』で築いた信頼が影響していますか?
【鳥越淳司】それもあるでしょうね。私たちのアプローチは少し変わっているかもしれませんが、そのユニークさも評価されているのかもしれませんね。
 
ーーユニークさといえば、『おだしがしみたきざみあげ』を愛用しています。なくなるとすぐに買い足していますよ。
【鳥越淳司】この商品は、再建を進めていた会社のひとつで取り組んだものです。石川県にある石川サニーフーズという会社が製造しており、カップうどん用の油揚げを製造していたのですが、事業の見直しでその需要がなくなってしまい、私たちにSOSを求めてきたんですよ。ただ、私たちはカップうどん用の油揚げの販売ルートを持っているわけでもなく、そもそもその方向で事業を進める意向もなかったので、「味付けを変えて、出汁感を強くする。刻んで使えばいい」と考えたんです。そこで、濃厚な味わいの油揚げを、もっとマイルドで関西風の出汁味に変更し、刻み油揚げとして再発売しました。今では約12億円の売り上げを記録する大ヒット商品になっていますよ。

『おだしがしみたきざみあげ』は、カップうどん用の油揚げを改良した商品。製造元の石川サニーフーズは、元旦の能登半島地震の影響で製造ラインがストップしていたが、先日、稼働を再開されたという
『おだしがしみたきざみあげ』は、カップうどん用の油揚げを改良した商品。製造元の石川サニーフーズは、元旦の能登半島地震の影響で製造ラインがストップしていたが、先日、稼働を再開されたという【画像提供=相模屋食料】


ーー既存の製品を自社で販売する際、一度手を加えて改良し、新たにリプロダクトしているのでしょうか?
【鳥越淳司】カッコよく言えばそうなんですが、簡単に言えば「これ、こうしたらもっといいじゃん」というアイデアをパパッと形にすれば、お客様から評価していただけますから。そんな感じです。思いつきで改良した製品ほど、お客様からの反響が大きいことが多いんです。とうふというのは、お客様から直接「こんな製品が欲しい」という声を聞くことは少ないですから、既存のものから発想を膨らませて、新しいものを作ることに挑戦しています。もし、そういった要望があったら、きっと誰かが先に製品化しているはずですから。

【鳥越淳司】思いつきから生まれた製品に対して、案外「あぁ、それそれ。それ欲しかったの」って言っていただける場合がすごく多いですね。ですから、とうふにはやっぱり成長余地があるのかなっていうふうに思っています。
 
ーー確かに、実際に使ってみて「これ、欲しかったんだよね」と感じました。
【鳥越淳司】油揚げって、5枚入りのうち1枚だけ使って、あとの残りは冷凍庫に入れられちゃうことが多いんです。私たちは、油揚げをふんわりとおいしく作るために、非常に努力しているんですよ。でも、冷凍庫に入れられると、そのふんわりした食感はもはや関係なくなってしまいます。それが非常に残念なんですよね。しかし、この製品は、もともとカップうどん用ですから、賞味期限が1年と長持ちして品質がそのまま保てるわけです。私たちのこだわりを表現できるという意味で、とても満足している製品でもあるんです。
 
ーー本日は貴重なお話をありがとうございました。
 
単なる豆腐メーカーの枠を超えて、そのイノベーションと情熱で業界に新たな風を吹き込んでいる鳥越社長。『相模屋 Gとうふ シリーズ』や『BEYOND TOFU』シリーズなど、彼のガンダムへの愛や創造力が生み出した製品は、多くの人々を驚かせ喜ばせてきた。社長自身の「やりたい!」という遊び心から始まったこれらのプロジェクトは、その純粋な楽しみが消費者にも伝わり大きな共感を呼んでいる。そんな、相模屋食料の豆腐に対する革新的なアプローチは、私たちが持っていた豆腐に対する従来のイメージを一新させた。きっと、この先も「あっ」と驚くような新たな豆腐に出合えるだろう。これからの相模屋食料の動向から目が離せない。
 
取材・文=北村康行 撮影=宮川朋久