健康の維持や、仕事や勉強に集中するために大事なことといえば「睡眠」だ。しかし、厚生労働省による国民健康・栄養調査によると、1日の平均睡眠時間が6時間未満の割合は男性37.5%、女性は40.6%というデータが出ていて、日本人の睡眠不足が問題となっている。

厚生労働省が6時間以上を目安に睡眠時間を取るように推奨するなか、睡眠の質を改善し、日常生活の疲労感を軽減する機能を持つ商品が売れている。それが、日清ヨーク株式会社(以下、日清ヨーク)が2022年9月に発売した、ピルクル ミラクルケアだ。

発売わずか1年で累計出荷数2億本を記録したこの商品。人気の秘密は乳酸菌の持つ力にあった。今回は日清ヨーク マーケティング部 部長の犬飼美穂子さんに、ピルクル ミラクルケアの開発背景や乳酸菌の持つ力、そして商品が大ヒットした理由について話を聞いた。

日清ヨーク マーケティング部 部長の犬飼美穂子さん
日清ヨーク マーケティング部 部長の犬飼美穂子さん【撮影=福井求】


乳酸菌の魅力に惹かれ、ヒット商品を開発

――はじめに、犬飼さんの経歴についてお聞かせください。
【犬飼美穂子】私は、2019年に日清食品グループに転職したのですが、その前はあるお菓子メーカーで働いていました。そこではアイスクリームやチョコレートなどの商品開発やマーケティングを行っていて、2015年に生きた乳酸菌を配合したチョコレート菓子を企画・開発し、ヒットに導きました。

【犬飼美穂子】この商品の開発に際して乳酸菌のことをいろいろ勉強して、腸内環境の良し悪しが体全体に影響を及ぼすことを知りました。健康維持のためには腸内環境を整えることがすごく大事だなということを、自分自身が企画・開発したお菓子を食べて実感したのが乳酸菌に興味を持ったきっかけでしたね。

前職では乳酸菌の入ったチョコレートをヒットに導いた
前職では乳酸菌の入ったチョコレートをヒットに導いた【撮影=福井求】


――腸内環境を整えるのはすごく大事なことなのですね。
【犬飼美穂子】そうですね。お菓子で乳酸菌を届けるというのがすごく自分にもフィットしていたと思います。私は毎日のジョギングや週2日のジム通いといった健康行動が継続できない人間でして。サプリメントすら毎日摂取するのが苦手なんです。ですので、手軽に続けやすい形で乳酸菌をさまざまな人に提供できたのがよかったな、と思っています。

【犬飼美穂子】そして、乳酸菌のことをもっと深掘りしたいという想いが出てきて、ちょうど日清ヨークのマーケティング責任者というポストの話があったので、「お菓子の次は飲料だ!」と思い、飲み物を通して乳酸菌の魅力を広げていきたいと考えて、転職に踏み切りました。

――どのようなきっかけで乳酸菌の魅力に気づかれたのでしょうか?
【犬飼美穂子】もともと学生のころから便秘気味で、お腹の調子を整えたいという気持ちがずっとありました。乳酸菌の入っている製品をとると「調子がいいな」という体感があったので、いろいろ調べてみると腸と脳は相関しているというメカニズムをはじめとしたさまざまなことを知り、「腸が健康の根幹なんだ」ということを学びました。これが乳酸菌に興味を持ったきっかけでしたね。

ピルクル400 65ml×10
ピルクル400 65ml×10【提供=日清ヨーク】


【犬飼美穂子】「脳腸相関」という言葉があるのですが、腸の調子を整えるとストレスが軽減されて脳の調子もよくなると言われています。なります。また、ストレスがなく脳の調子がいいと腸も元気という相関があると言われています。更に、睡眠の質と疲労感の間には関係性がある事も報告されており、腸内環境を改善することが睡眠の質や疲労感軽減につながると考えられています。

――腸の健康が脳に影響するとは、とても意外でした。次に、日清ヨークではどのような仕事をされてきたのでしょうか?
【犬飼美穂子】弊社はもともと広告宣伝をはじめとしたマーケティング活動やプロモーションをほとんど行っていなかったので、2021年にピルクル400という商品を立ち上げた際に、およそ30年ぶりにテレビCMを行いました。ピルクルってとても良い商品なのですが認知度が低いという課題があったので、価値をきちんとお客様に認識してもらうために伝える活動をしています。

【犬飼美穂子】今の30〜40代くらいの方がちょうど学生のころ、500mlの紙パックのピルクルが流行しました。コンビニエンスストアや高校の売店、大学生協などで売られていたので、この世代からの認知度は高いのですが、それ以外の世代の方たちにはあまり浸透していませんでした。また、65mlタイプも販売しているのですが、こちらはあまり知られておらず、形状によって知名度が異なっていたため、あらためて宣伝に力をいれるようになったのです。

ピルクル ミラクルケア 65ml×8
ピルクル ミラクルケア 65ml×8【提供=日清ヨーク】


睡眠と疲労感に!「ピルクル ミラクルケア」開発秘話

――犬飼さんの担当されたピルクル ミラクルケアとは、どのような商品でしょうか?
【犬飼美穂子】ピルクル ミラクルケアは2022年9月に発売した商品です。生きたまま腸に届く「乳酸菌NY1301株」が、1本(65ml)当たり600億個入っています。腸内環境改善機能を持つ既存商品のピルクル400に加え、睡眠の質を改善し、日常生活の疲労感を軽減する機能を持っています。

【犬飼美穂子】これは40代くらいの働き世代の男女に向けて開発をした商品でして。日本人はすごく働くので多くの人が疲労感を覚えています。そこで、疲労感軽減に特化した商品を作ろうと思ったのがそもそものきっかけですね。そこで、睡眠がきちんと取れていると疲労感も落ちるという実感値があったので、睡眠と疲労に着目した商品を開発することになりました。

ピルクル ミラクルケア 195ml
ピルクル ミラクルケア 195ml【提供=日清ヨーク】


――この商品を開発するうえでどのような苦労がありましたか?
【犬飼美穂子】ピルクル ミラクルケアは65mlサイズと195mlサイズで展開しているのですが、苦労したのは1本に乳酸菌を600億個入れることでした。睡眠や疲労の改善を担保するには乳酸菌を600億個入れる必要があったのですが、これがとても難しくて、研究と生産の段階が大変でした。実際に工場で発酵させられるかどうか、何度もテストを繰り返しては検証を行いました。

――ピルクル400が1本あたり400億個ですから、1.5割増しですものね。開発ではどのような点にこだわりましたか?
【犬飼美穂子】このような商品は毎日摂取し続けていただくことが大事だと思っています。まずは食生活の中で毎日きちんと飲み続けていただきたかったので、食事の邪魔にならないカロリーやスッキリとした味わいなど、続けてもらうための工夫を凝らしました。

【犬飼美穂子】そして、飲み続けてもらうためにはお手頃感がすごく重要です。購入を続けられない価格だと、お客様が効果を感じる前にやめてしまう可能性もあります。ですので、価格設定については何度も討議し、社長とも相談をして最終的な販売価格を決めました。ピルクル ミラクルケア 195mlは希望小売価格で税別135円、ピルクル ミラクルケア 65ml×8はオープンプライスですが、だいたい税別330円前後で販売されています。

【犬飼美穂子】また、お笑い芸人の錦鯉さんを起用したCMでも、「安い!」を強調しました。値段が安いことを直接的に伝えるCMは少ないと思うのですが、やはりこの商品のバリューは睡眠の質を改善すること、日常生活の疲労感を軽減すること、そして安いことだと思いますので、ストレートに伝えるようにしました。お客様は意外と、売り場で値段をご覧にならないことも多いので、しっかり伝えることが大事だと考えました。

「睡眠の質改善」による「日常生活の疲労感軽減」の機能を持つ機能性表示食品だ
「睡眠の質改善」による「日常生活の疲労感軽減」の機能を持つ機能性表示食品だ【提供=日清ヨーク】


――「安い!」と言いきるのはすごいことですね。ユーザーからの反響や感想などはいかがでしたか?
【犬飼美穂子】ありがたいことに多くの好評のお声をいただいています。睡眠の質や疲労感という長年の悩みが改善されたといった感想をもらったり、なかには直筆のお手紙をくださる方もいらっしゃったりしてとてもうれしく感じています。同時に、体調に悩んでいるのって私だけじゃないんだな、という気持ちになっています。

累計出荷数2億本を達成!大ヒットの理由は?

――『日経トレンディ 2023年9月号』の「健康ヒット商品ランキング」において大賞を受賞し、10月には発売1年で累計出荷数2億本を突破しました。ピルクル ミラクルケアが大ヒット商品になったのは、どのような理由があったと思われますか?
【犬飼美穂子】そうですね。世の中のさまざまな商品が睡眠にフォーカスしていたので、タイミングもよかったと思います。ヒットの理由としては、睡眠に悩んでいる方がすごく多かったこと、すっきりとした味わいとトライアルのしやすい価格を実現して続けやすさにこだわったこと、そして実際に効果を感じられた方が多かったことが挙げられると思います。

【写真】発売わずか1年で累計販売本数2億本を突破
【写真】発売わずか1年で累計販売本数2億本を突破【提供=日清ヨーク】


――ピルクル ミラクルケアはどのような年齢層の方に多く売れていますか?
【犬飼美穂子】当初の狙い通り、40代以上の方に一番よく売れていますね。おそらくですが、睡眠に悩み始める時期というのがそれくらいの年代なのだと思います。仕事も家庭も忙しくなるにもかかわらず両立をしなければいけなくなる時期ですからね。事前の調査で「疲労感を改善したい」という意識が一番高かったのが30〜40代だったので、この年代の人たちが反応してくれると、非常にうまくいったな、というのが率直な感想ですね。

――私も30代に入ったので、そろそろ悩み始めるかもしれません。
【犬飼美穂子】ぜひ、ピルクル ミラクルケアを手に取ってみてください!なお、ピルクル400に比べて甘さ控えめでスッキリした味わいなので、晩ご飯のあとや就寝前にも飲みやすいのが特徴です。ぜひ、試してみてください。

――今後、ピルクル ミラクルケアをさらに展開させていくうえでの展望を教えてください。
【犬飼美穂子】ピルクル ミラクルケア自体は今すごく好評ですが、それでもまだまだ知らない方も多いですし、認知度が高いとは言い切れないのが現状です。ですので、今後もしっかりプロモーションを行ってトライアルをしていただけるようにしていきたいです。またブランド全体としては、多様なニーズにお応えできるようなラインアップを広げていき、無理せずに楽しく健康になれるような商品を提供していきたいです。

【犬飼美穂子】昔は「健康にいいものなので味は我慢してくれ」といった“良薬口に苦し”的な商品が多かったのですが、それだと続けることは難しいですよね。ピルクルをおいしく楽しく味わっていただいて、結果として腸内環境の改善や睡眠の質の向上などを通して、健康的な毎日を送ってほしいと思っています。

「ぜひピルクルを手に取ってみてください!」と犬飼さん
「ぜひピルクルを手に取ってみてください!」と犬飼さん【撮影=福井求】


――ありがとうございます。最後に、消費者の方に向けて一言お願いします。
【犬飼美穂子】睡眠や疲労感などの問題はどの年代の方でも感じることなので、これらに悩まれている方は、ぜひピルクル ミラクルケアを試してみてください。また、無理なく楽しく取り入れられる商品なので、これまでサプリメントや運動が続かなかった人でも続けやすいと思います。ぜひ、一度お手に取ってみてください!

この記事のひときわ#やくにたつ
・人々の悩みを解決できる商品はヒットを生む
・年齢や属性などターゲットを見据えた商品開発が肝要
・楽しく無理なく続けられることが、健康への第一歩

取材・文=福井求(にげば企画)