家族の会話を生む“魔法”とは?スイカゲームで話題のプロジェクター「Aladdin X」、コンテンツ開発に力を入れる理由

2024/02/11 20:00
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照明、スピーカー、プロジェクターが一体になった「Aladdin X」。引っ掛けシーリングに設置して使うため、コードレスで置き場所にも困らない。力を入れているのが、オリジナルコンテンツの開発だ。大ヒットした「スイカゲーム(R)」をはじめ、実物大の動物図鑑や目覚ましアプリ、時計や景色を映し出す機能もある。Aladdin X株式会社マーケティング部シニアマネージャーの岡本岳洋さんは、「プロジェクターではなく魔法の体験を届けている」という。

妻に「邪魔」と言われ、照明一体型に

Aladdin X株式会社マーケティング部シニアマネージャーの岡本岳洋さん
Aladdin X株式会社マーケティング部シニアマネージャーの岡本岳洋さん【撮影=山本晴菜】


――「Aladdin X(旧popIn Aladdin)」が誕生した背景を教えてください。照明一体型というアイデアはどこから生まれましたか?
【岡本岳洋】当時、ネット広告の会社「popIn株式会社」の社長だった程涛(テイトウ)は3児の父です。家の中で奥さんや子どもが物理的にすごく近くにいるのに、ひとりはタブレット、ひとりはスマホ、ひとりはテレビを見ていた。それぞれが別々のことをしていることが、少し寂しいと感じ、課題感を持ったそうです。

【岡本岳洋】彼が寝室へ行くと、壁にひらがな表が貼ってあるのを目にしました。子どもたちが表を見て、家族と一緒に会話しながら言葉を覚えていく、そんなことがもう一回できるものはないかと考えました。そこで頭に浮かんだのがプロジェクターでした。

【写真】照明一体型3in1プロジェクターの最新モデル「Aladdin X2 Plus」。音質にもこだわり、オーディオ機器ブランド「ハーマンカードン」のスピーカーを採用した
【写真】照明一体型3in1プロジェクターの最新モデル「Aladdin X2 Plus」。音質にもこだわり、オーディオ機器ブランド「ハーマンカードン」のスピーカーを採用した【画像提供=Aladdin X株式会社】


【岡本岳洋】実際にプロジェクターを置いて投影してみると、奥さんに邪魔だと怒られたそうです。マンガみたいな話ですが、いい置き場所はないかと天井を見上げると、そこには引っ掛けシーリングがあった。調べてみると耐荷重は5キロ。エンジニアである彼は、すぐにプロジェクターを買ってきて取り付けました。すると奥さんも子どももとても喜んだそうです。それが2018年に発売した「popIn Aladdin」(現在は販売終了)の最初の試作機です。

【岡本岳洋】その後、popIn Aladdin事業がpopIn株式会社から独立、グローバルでプロジェクターブランドを展開するXGIMI株式会社の子会社となり、Aladdin X株式会社が設立されました。

――商品のコンセプトは?
【岡本岳洋】「Aladdin X」はプロジェクターですが、僕らは単にプロジェクターを提供しているとは思っていません。大切な人たちが自然と集まり、豊かな会話が生まれていくような魔法の空間をコンセプトとしています。僕も実際に家でプロジェクターを使っていると、子どもが「何を見ているの?」とやってきて、いつの間にか奥さんもいて、家族でひとつの大画面を眺めながら会話していることがあります。そういう空間が生まれることに、価値があるのではないかと考えています。

動画サービスのほか、テレビチューナーを接続すれば地上波テレビも視聴できる
動画サービスのほか、テレビチューナーを接続すれば地上波テレビも視聴できる【画像提供=Aladdin X株式会社】


――それで子ども向けのアプリが充実しているのですね。
【岡本岳洋】子ども向けのアプリも、単純にひとりで遊ぶゲームではなく、家族と会話が生まれるように設計しています。たとえば、大人も迷ってしまうような問いは、すぐに答えを出さずに、会話しながら考させる、みたいな。ほかにも、海外の絵本を通じて色の使い方や世界観の違いに触れられる、創造性を伸ばすコンテンツも入れています。

岡本さんは父親になったことがきっかけで「世の中にいいことをしているほうがいい」と思ったそう。「動物図鑑を見て、次は実際に動物園に行ってみて、家族の絆が深まるきっかけになれば」と話す。
岡本さんは父親になったことがきっかけで「世の中にいいことをしているほうがいい」と思ったそう。「動物図鑑を見て、次は実際に動物園に行ってみて、家族の絆が深まるきっかけになれば」と話す。【撮影=山本晴菜】


――岡本さん自身が、「Aladdin X」を使っていてよかったと感じる瞬間は?
【岡本岳洋】子どもってなかなか寝室に行きたがらないんですよね。うちは寝室に照明一体型を付けて、毎週土曜は夜の8時半から映画の鑑賞会をすると決めています。そうすると、子どもも寝室に行きたがるし、自宅にいながら家族みんなで映画館みたいに楽しめる、それってすごいことだなって思います。

構想がふくらみ、赤字でのスタート

――開発にあたり苦労したことは何ですか?
【岡本岳洋】もともとコンテンツをたくさん載せるつもりはなくて、子ども向けのあいうえお表や絵本ぐらいの予定でした。プロジェクター事業はクラウドファンディングでスタートしたのですが、思いのほか多くの方から反響をいただいたこともあり、あれもこれも載せたい、エンタメも楽しめるようにしたい、いいスピーカーを使いたいと、出荷するまでに構想がどんどんふくらんでいきました。

【岡本岳洋】最初に出した価格からは変えられないので、赤字でスタートしています。「よりよいものを世の中に出したい」という想いがあったので先行投資ですね。そのあと話題になり、すぐに回収することができましたが、最初は苦労しました。

――軌道に乗ったのはいつごろですか?
【岡本岳洋】2018年11月に一般発売をして、約半年後の2019年3月には、おかげさまで軌道に乗ることができました。これは運がよかったのですが、「アメトーーク!」(テレビ朝日系)の「家電芸人」で紹介され、世界初の照明一体型のプロジェクターということで大きな反響をいただきました。

【岡本岳洋】その後、コロナ禍には、自宅のエンタメ環境を見直す人が増えましたよね。「popIn Aladdin 2」(現在は販売終了)という短い距離でも大画面を映し出せるプロジェクターを販売していたので、巣ごもり需要の高まりに伴い、2019年と2020年も売り上げが伸びました。外的な要因としてはその2つが大きいですね。

「プロジェクターはエンタメなど、自分が好きなものを見ることが多い。好きなものを大画面で見る感動は、SNSでシェアしやすいのでは」と岡本さん
「プロジェクターはエンタメなど、自分が好きなものを見ることが多い。好きなものを大画面で見る感動は、SNSでシェアしやすいのでは」と岡本さん【撮影=山本晴菜】


――マーケティング施策についてはいかがですか?
【岡本岳洋】僕らはマス広告は出していません。プロジェクターのいいところは、最初に見たときに「こんなに大きいんだ」「こんなに音がいいんだ」って感動することなんですよね。マーケティングをどうしていこうかと話したとき、その感動をいかにユーザーの方に広げてもらうかということを考えていました。

【岡本岳洋】たとえばプロジェクターが届いて感動したときの思いを、SNSにハッシュタグをつけて投稿しよう、と呼びかけると、本当にたくさんの方が、大画面のある暮らしの感動を投稿してくださいました。だから製品をどのように知ったか調査してみると、口コミが一番多いんですよね。製品体験を向上させて、満足度を高める。そして口コミをしやすくする。そんな地道なことをしています。

スイカゲームのヒットで認知度アップ

――オリジナルコンテンツのひとつとして「スイカゲーム」を開発した背景を教えてください。Nintendo Switchへ移植した理由は?
【岡本岳洋】「スイカゲーム」は2021年4月に「popIn Aladdin 2」に搭載したゲームです。フルーツを落とし、“シンカ”させてスイカを作るというシンプルなゲームです。フルーツを落とすのに時間制限がないので、家で遊んでいると子どもがよく「パパそこじゃない」と話しかけてきて、会話につながっています。

【岡本岳洋】お客様の反応がよかったので、スイカゲームが流行れば、そこから「Aladdin X」を知ってくれる人が増えるのではないかと考え、外に出すことにしました。現在はiOS版の提供も始めましたが、スマホはアプリの数も多く埋もれてしまう可能性があったので、タイトルが当時8000本ほどだったNintendo Switch版向けに開発をしました。

「スイカゲームが爆発的にヒットして、『Aladdin X』を知ってくれる人が増えているので、とてもうれしいです」と岡本さん
「スイカゲームが爆発的にヒットして、『Aladdin X』を知ってくれる人が増えているので、とてもうれしいです」と岡本さん【撮影=山本晴菜】


――具体的にどのような影響が?
【岡本岳洋】まず、サイトへのアクセス数が4倍に増えました。スイカゲームが流行り始めたのが2023年9月ぐらいで、その時期から増えているので、これをきっかけにプロジェクターについて知ってくださった方が増えているのだと思います。

【岡本岳洋】ただ、売り上げに関しては、今はまだ大きな変化はありません。プロジェクターは「Nice to Have(あるといいもの)」な面があるので、検討期間が長いんです。調査してみると1〜3カ月がボリュームゾーン。今後、売り上げに関しても動きが出るといいなと思っています。

――2023年10月に発売された「Aladdin Marca」について教えてください。照明一体型ではなく、置き型の超短焦点プロジェクターにした理由は?
【岡本岳洋】ユーザーの方から、「『Aladdin X』を使いたいけど、天井に引っ掛けシーリングがないから使えない」という声がありました。部屋の照明タイプがダウンライト型やダクトレールだったり、斜め天井だったりすると取り付けられません。あと、壁との距離で投影サイズが決まるので、狭い部屋では40型、50型になってしまい、僕らが届けたい魔法をすべての方に届けることができていませんでした。そこで、魔法を誰でも体験していただけるように作ったのが「Aladdin Marca」です。引っ掛けシーリングのない部屋でも使うことができ、壁から24センチ離せば100インチで映し出すことができます。

壁から24センチの距離で100インチの大画面を実現した超短焦点プロジェクター「Aladdin Marca」
壁から24センチの距離で100インチの大画面を実現した超短焦点プロジェクター「Aladdin Marca」【画像提供=Aladdin X株式会社】


――家庭用プロジェクター市場の現状や今後の動向をどう見ていますか?
【岡本岳洋】中国の大手プロジェクターメーカー「JMGO」が日本に上陸するなど、プロジェクター市場のプレイヤーが増えて活性化していると感じます。また、テレビの代わりにプロジェクターを置く人も増え、今後もプロジェクターを使う人は増えると思います。

――プレイヤーが増えるなか、「Aladdin X」の強みは?
【岡本岳洋】やはりオリジナルコンテンツです。他社のプロジェクターはエンタメに特化していることが多く、インターフェースも似ています。私たちの場合は、「TVer」「ABEMA」「Hulu」などの動画サービスのほか、部屋の雰囲気に合わせてデザインを選べる「壁時計」、世界中の美しい風景などを投影できる「美風景」といったインテリアコンテンツ、あいうえお表や絵本などのキッズ系コンテンツ、フィットネスやヨガを楽しめるヘルスケアコンテンツと、1日を通じてユーザーの生活を支えられるよう、オリジナルコンテンツを組んでいます。

インテリアコンテンツのひとつ「美風景」。大画面で映し出すため、その場にいるような臨場感を味わえる
インテリアコンテンツのひとつ「美風景」。大画面で映し出すため、その場にいるような臨場感を味わえる【撮影=山本晴菜】


――ブランドの今後の展望や野望をお聞かせください。
【岡本岳洋】僕らはプロジェクターではなく、魔法の体験を提供しています。「どこから映像が出ているの?」「この距離でこんなに大画面で映し出せるんだ」という驚きや、いつの間にか人が集まってくる魔法。その「魔法」という言葉を軸にいろいろなことに取り組み、ひとりでも多くの方に届けていきたいです。

この記事のひときわ#やくにたつ
・生活のなかの悩みが、新しい商品誕生のきっかけになる
・コンセプトに沿った開発がオリジナリティーにつながる

Aladdin X:https://www.aladdinx.jp/

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