月間再生数が3億5000万回突破!2015年のサービス開始から成長を続ける「TVer」のビジネス戦略とは?

東京ウォーカー(全国版)

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近年、NetflixやAmazon Prime Videoのような動画配信サービスの競合化が進み、動画コンテンツが大きく変化している。そのなかでテレビ番組の視聴方法も大きく変化を見せており、各サービスのみで見られる「オリジナルコンテンツ」の拡充、番組を好きなときに見られる「見逃し配信」、インターネットのコンテンツを大画面で見られる「コネクテッドTV」(以下、CTV)などのサービスが人気となっている。

このような視聴方法に対応して業績を伸ばし続けているのがTVerだ。これは東京の民放5社と大阪の民放5社、広告会社4社が共同出資した株式会社TVerが運営する、国内最大級の見逃し無料配信動画サービスだ。ドラマやバラエティ、アニメ、報道・ドキュメンタリー、スポーツなど人気番組を毎週650番組以上見ることができるのが大きな特徴で、2023年5月には月間再生数が3.5億回を突破するなど、2015年のサービス開始より成長を続けている。

コロナ禍を経てコンテンツの消費方法が刻一刻と変わりつつある今、TVerはどのような戦略を立てて市場に参入しているのだろうか。今回は株式会社TVer 取締役 サービス事業本部長の薄井大郎氏にテレビと動画配信のビジネスやサービス展開、そしてテレビ放送の将来などについて話を聞いた。

今回お話を聞いた、株式会社TVer 取締役 サービス事業本部長の薄井大郎さん【撮影=福井求】


ユーザー数や再生数増加中!TVerのビジネス戦略に迫る

――現在、ほかの動画配信サービスとの差別化が進むなかで、どのような点を強みに事業を展開していますか?
【薄井大郎】現在、さまざまな動画配信サービスがありますが、他社との違いとしては、全国の放送局が作った良質なコンテンツが局をまたいで、かつ、すべて無料で見られる点ですね。逆に言えば、同じようなことをしているサービスが存在しません。全国の放送局が作った質の高いコンテンツをすべて無料で見られるところが支持される理由だと思います

――TVerの特徴である「見逃し配信」をビジネスの主軸に置かれている理由について教えてください。
【薄井大郎】事業が始まった当初は違法動画対策としての意味合いもあり、またインターネットの広告モデルが出来上がってきたときに、どのように差別化し対抗していくかという課題を解決したいという想いがありました。ですが、現在はこれに加えて、質の高いテレビコンテンツを多くの人に届けていくことも踏まえて、見逃し配信を主軸にして運営をしています。

【画像】TVerは2015年のサービス開始から成長し続け、国内最大級の無料動画配信サービスになった【画像提供=TVer】

TVerの月間総再生数は3.5億回を記録した【画像提供=TVer】


【薄井大郎】そのおかげで、2015年にサービスが立ち上がってからユーザー数や再生数が伸び続けています。一見、「コロナ禍があったから成長したのでは?」と思われるかもしれませんが、コロナ禍が落ち着きを見せてきた2023年現在でも増加しています。最近では2023年春クールに放送したドラマ『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系)が見逃し配信で話題を呼び、このクールで全配信番組最多となる5,481万再生を記録しています。

【薄井大郎】また、最近ではユーザー確保のため、さまざまなドラマの予告を集めて配信しています。そのおかげで「今期はどんなドラマがあるかな?」と見てくださる方が増えて、再生数の増加につながっています。放送中のドラマを知る機会になるだけでなく、わざわざドラマのホームページにアクセスする必要もなくなるという利点もあります。

――見逃し配信以外ではどのような取り組みをされていますか?
【薄井大郎】事業のベースは見逃し配信ですが、最近ではドラマのスピンオフとしてのオリジナルドラマを独占配信していますね。配信だけで見られるスピンオフパターン(ドラマ・バラエティ)と TVerオリジナルで作っているものがあります。

【薄井大郎】また、TVerの完全オリジナル番組も取り揃えています。初のオリジナルである『TVerで学ぶ!最強の時間割』という、さまざまな業界のトップランナーを先生として迎え、今後様々な出来事に向き合っていく学生、社会人に、「知っておいてよかった」と思える“考え方のヒント”をお届けする番組があるのですが、この番組は地上波コンテンツに並んで上位ランキングにも入っていたことも何度もありました。例えば、ドラマ『silent』プロデューサーのキャスティングが実現するなど、機敏に番組制作ができたことがヒットの理由だと思います。

TVer史上初のオリジナル番組『最強の時間割 ~若者に本気で伝えたい授業~』【画像提供=TVer】

TVer完全オリジナルの『褒めゴロ試合』は、ひとつのテーマを褒めちぎる番組【画像提供=TVer】


――オリジナルコンテンツの発信においてどのような戦略を取られていますか?
【薄井大郎】TVerでしか見られない作品で、新しい魅力や楽しみ方の選択肢を提供しているのが特徴です。特に、全国の放送局とのコラボはTVerでしかできないので、今後も各放送局と協力してオリジナルの番組を作ることも考えていきたいですね。

【薄井大郎】比率で言うとまだまだ圧倒的に見逃し配信が大きいですが、こういったTVerならではの新しい試みにも力を入れていきたいと思います。

――TVerがビジネスを展開するうえでの主な収益源は広告ですが、そちらではどのような戦略を立てていますか?
【薄井大郎】TVerでは配信コンテンツの冒頭や途中などに、スキップできない広告を挿入しています。興味関心についてユーザー自身が回答したアンケートをもとにターゲティングができるため、広告の視聴完了率は15秒広告では96%、30秒広告では95%、60秒以上広告では93%と、非常に高いのが特徴です。スキップされてしまうことの多い他媒体での広告に比べて、ダイレクトに情報を届けることができます。

TVer広告では「安心安全な環境」、「メガリーチ獲得」、「CTVに強い」の3点が特徴【画像提供=TVer】


【薄井大郎】一般的なテレビCMでは特定の層にターゲティングをするのが難しかったのですが、TVerではこの課題をクリアして配信することができます。また、CTVの普及も相まってユーザーは平均して1.5人でコンテンツを見ているという結果があり、実質的に1.5倍のリーチになるといえる点も、広告主から評価を得ています。

【薄井大郎】また、TVerでは地上波の放送と同等の基準で審査されたコンテンツや広告のみが配信されるため、ブランドセーフティが保たれやすいのが特徴です。番組スポンサーからはCMを流す際、どんな人に見てもらいたいかといった属性をもとにしたターゲティングを行ったり、スポンサーに対するレポーティングを充実させたりして、CM事業を強化しています。

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