投資について学びたいという場合、その学ぶ相手が富裕層だったらどうだろうか。実際に大きな資産を築いた「先輩」なのだから、伝授してくれる内容にも説得力がありそうだ。そこで話を聞いたのは、かつて東京国税局の国税専門官として何人もの億万長者と接してきた小林義崇さん。多くのお金持ちに共通する資産運用法を明かしてくれた。
大損している人のほとんどが、短期投資をしている
国税専門官として富裕層と接するうち、お金持ちの暮らしぶりといったものとは別に、資産運用法というものも見えてきました。もちろん、それらには「お金持ちだからこそできる」といった手法もありますが、一般の人にも実践できるものもあります。それが、以下の3つです。
【一般人でもできる富裕層の資産運用法】
①長期的なスパンで投資する
②海外投資をする
③分散投資でリスクを抑える
ただ、若くてまだ収入が高くない人の場合には、これら以前に考えるべきこととして、できるだけ収入を上げることも大事なポイントです。当然のことですが、投資にかけられるお金が大きくなればなるほどリターンも大きくなるからです。転職したりなんらかの学校に通ったりすることで収入を増やせるのなら、そこにはお金も時間もかけていいでしょう。
では、一般の人でも実践可能な富裕層の資産運用法を紹介していきます。ひとつ目が、「①長期的なスパンで投資する」というもの。これは、特に若い人ならぜひ意識してほしい点です。若いからこそ長い時間をかけられ、将来的に大きな資産を築ける可能性が高いからです。
私が税務署に勤務していたころ、株式投資で何百万円、何千万円といった大儲けしている人も、逆に大損している人もたくさん見てきました。そして、大損している人の多くが、1年のあいだに何度も何度も売り買いをするといった短期投資をしていたのです。
投資の世界には、投資スパンが短くなればなるほどハイリスク・ハイリターンになるというセオリーがあります。ハイリターンにありつければいいのですが、そうなる可能性はかなり低いといわざるを得ません。
短期的な売買で多額の儲けを得るデイトレードが話題になることもありますが、相続税調査ではそのような短期的な手法で大きな資産を築いた人を見たことはありません。短期的には運よくデイトレードで稼げたとしても、それを維持するのは難しいのです。というのも、短期投資では株式など投資対象の価格変動に基づいて利益を得なければなりませんが、その変動を予測するのは、ファンドマネージャーなど資産運用のプロであっても非常に困難だからです。
一方、長期投資は、投資を成功させる王道といわれます。その理由のひとつは、「市場の成長性」にあります。短期的に見ると株価は大きく値下がりするリスクがありますが、長期的に見ればおおむね値上がりします。経済成長が停滞している日本の株式であっても、バブル崩壊後には大きく値下がりしたものの、それでも20年、30年といった長期的な視点で見れば値上がりしています。
加えて、長期投資には、投資元本に対する利息に対してさらに利息がかかるという複利の力が働きます。1年目より2年目、2年目より3年目と投資期間が長くなるほど1年あたりのリターンは大きくなります。こういった理由により、長期投資こそが投資の王道だといわれるのです。
日本円だけで資産を持つことにはリスクが伴う
次に紹介するのが、「②海外投資をする」というもの。特に円安が進んでいる今は、日本円で資産を持つことのリスクが高まっていますから、この重要性が増しています。
日本は長いあいだ経済成長が停滞していますし、これからも少子高齢化が続くことは明白です。つまり、今後も高い成長を期待しにくい状況です。そんな日本にだけ投資をしていれば相対的に財産が減っていくリスクがあるため、成長が見込まれる海外に投資することを考えるべきなのです。
こういうと、「日本人なのだから、日本に投資をして応援すべきだ」と思う人もいるかもしれません。でも、ある資産運用のプロは、「海外に投資をして利益を得て、納税や消費によって日本に貢献すればいい」といいます。私もこの考えに賛同します。
そして、海外投資は「③分散投資でリスクを抑える」ことにもつながります。分散投資にもさまざまな種類がありますが、異なる国に投資することもそのひとつです。日本円だけで資産を持っていれば、先にお伝えしたとおり、円安によって資産価値が下がっていくリスクがあるからです。
私自身は、主に米国株の指数に連動するインデックスファンドに積立投資しています。自分が仕事によって得る収入が日本円であることから、リスク分散のために世界の基軸通貨であるドルベースの米国株に投資するのが合理的だと考えたからです。