物件を探すときには、とりあえず不動産会社に行ってみるという人は多いのではないか。実際に満足できる物件と出合うには、不動産会社選びが一番重要と言っても過言ではないだろう。だが、不動産会社は選べてもどんな人が担当になるかはそのときの運次第。まさに「営業担当者ガチャ」と言える状態だ。

不動産・住宅情報サービスを運営する「LIFULL HOME'S」は、800名を対象に「住まい探しの満足度に関する調査」を実施。そのなかでも、住まい探しに満足した人の理由第1位は「不動産会社の担当者の対応が良かった」だった。一方、不満足の理由1位は「紹介された物件の数が少なかった」に続き、「不動産会社の担当者の対応が悪かった」という結果に。満足のいく物件探しは不動産会社、そして営業担当者にかかっていると言えるだろう。

だが、実際にいい不動産会社や営業担当者を見つけるにはどのようにすればいいのだろうか。今回は、LIFULL HOME'S「住まいの窓口」でアドバイザーを務める、武蔵野不動産相談室株式会社の代表取締役、不動産コンサルタントの畑中学さんに、賃貸における優良な不動産会社の見分け方、そしてよい営業担当者との出会い方について話を聞いた。

武蔵野不動産相談室株式会社代表取締役で、不動産コンサルタントの畑中学さん
武蔵野不動産相談室株式会社代表取締役で、不動産コンサルタントの畑中学さん【画像提供=武蔵野不動産相談室】


プロ直伝!いい不動産会社の見分け方

ーー初めに、畑中さんが考える「いい不動産会社」とは、どのような会社でしょうか?
【畑中学】お客様に「理想の部屋を借りられた」「思ったとおりの物件だった」と思わせられる会社ですね。部屋の大きさや設備、賃料、周辺環境、そこでの暮らしやすさなど、借主がイメージする物件をちゃんと提供できる会社は評価が高いと言えるでしょう。

【畑中学】そして、物件の契約後でも何かあれば対応してくれる会社だと、借りる側にとってはうれしいですよね。不動産会社の仕事は基本的に「賃貸の仲介」がメインであり、アフターケアは管理会社がすることが一般的です。そのため、契約後の苦情や相談に対応するとなると不動産会社はタダ働きをすることになります。

【画像】不動産会社を選択する上で最も重視するポイントは?
【画像】不動産会社を選択する上で最も重視するポイントは?【画像提供=LIFULL】


ーー不動産会社にとってアフターサービスは業務の範囲外なのですね。
【畑中学】ですが、そこをきちんと対応してくれると借りる側も安心しますし、何より誠実丁寧な印象を持ちますよね。「借りたあとは管理会社に言ってください」という方針の会社よりも、最後まで面倒を見てくれたり、条件が違ったときに真摯に対応してくれるのがいい会社だと思いますね。

ーーそのような会社を見つけるためにはどうすればいいですか?
【畑中学】おすすめなのは「不動産会社を2〜3件巡ること」です。最近は情報サイトで物件を探して、気になった物件を扱っている会社に問い合わせるという流れが一般的です。ですが、インターネットで部屋だけをみるのではなく、実際に何店舗か周ってみるといいでしょう。そうすれば、それぞれの会社の営業方針や雰囲気がわかりますし、相性がいいかどうかも肌で感じられます。

不動産会社の住まい探しに不安を感じたところ
不動産会社の住まい探しに不安を感じたところ【画像提供=LIFULL】


プロが必ず見るのは「不動産会社のホームページ」

ーーですが、1日に周れる店舗数には限りがあります。その際はどうすればいいでしょうか?
【畑中学】確かに、何件も店舗を巡るのは時間的にも体力的にも厳しいですよね。その際におすすめなのが「ホームページを見る」ことです。不動産会社にとってホームページ制作は時間と労力がかかるため、おなざりにしている会社も少なくありません。だからこそ手を抜かず、お客様にとって有益で分かりやすい情報を提供している会社は「顧客目線を持っている」傾向にあります。

【畑中学】ホームページにはそれぞれの会社の経営方針が色濃く反映されているので、見るだけで会社が顧客目線を持っているかどうかが分かります。レイアウトが見やすく作られていたり、説明が丁寧に書かれていたりなど、制作に手を抜いていない会社は信用できると私は考えています。ホームページがしっかりしている会社は、実際に訪れてもきちんと対応してくれることが多いです。

不動産会社を選択する上で最も重視するポイント
不動産会社を選択する上で最も重視するポイント【画像提供=LIFULL】


ーー逆に、顧客目線のない会社のホームページとはどのようなものでしょうか?
【畑中学】顧客目線に寄り添っていない会社は自分たちの都合を最優先にすることが多く、その傾向はホームページにも表れます。例えば、トップページに「おすすめ物件」を載せているなどですね。不動産オーナーからの委託を行っている会社は、早く貸したい物件をたくさん抱えています。このような内部事情を第一に押し出す会社は、顧客に寄り添わない自分本位な営業をしていますね。

【畑中学】また、スタッフたちのプロフィールを載せずに代表者だけが顔を出していたり、理念や社訓に「日本経済を良くしていく」といった漠然としたことを書いている会社もおすすめできません。やはり、お客様に寄り添った内容を掲載している会社は顧客目線に立った営業をしていることが多いので、ぜひホームページをチェックしてみてください。

いい「営業ガチャ」を引くためにすべきことは?

ーーまた、私たちは不動産会社を選ぶことはできますが、営業担当者を選ぶことは基本的にはできません。いわば「営業ガチャ」と呼ばれるギャンブルな状態ですが、どうすればいいでしょうか?
【畑中学】いい営業担当者を見つけるのはなかなか難しいのが、今の不動産会社の営業形態です。会社を選ぶことができても、担当者は来店時に対応してくれる人がつくことが多いので、お店に入ってから「じゃあ、〇〇さんで!」と指名することは困難です。

【畑中学】だからこそ、不動産会社を巡ることが重要になります。会社を利用するたびに接する担当者の数も増えますよね。そのなかで相性のよい人がいれば、その人に物件を選んでもらうといいと思います。不動産会社は選べたとしても、最終的に物件をマッチングしてくれるのは営業担当者ですからね。

不動産会社での住まい探しに満足だったところ
不動産会社での住まい探しに満足だったところ【画像提供=LIFULL】


ーーなるほど、何件か巡って比較してみるのはとても大事ですよね。
【畑中学】そうですね。もうひとつは、訪れる予定の不動産会社のホームページを確認し、社員紹介のページでスタッフの顔をよく見ることですね。スタッフが明るく楽しそうなら足を運びたくなりますが、逆に暗くてどんよりしていると行きたくなくなりますよね。このようなところでも会社の雰囲気が一目でわかります。

【畑中学】本当はたくさんの会社を巡ってひとりずつ話すのが一番いいのですが、それは時間的にも体力的にも難しいですからね。まずはホームページを見て、相性の良さそうな担当者を探すのがいいと思います。その後、実際に店舗を訪れて指名することもできるので、ぜひやってみてください。

営業担当者に対する相性や対応についてのアンケート
営業担当者に対する相性や対応についてのアンケート【画像提供=LIFULL】


ーー物件選びでは担当者を選ぶという発想はまだ根づいていないですね。
【畑中学】そうですね。だからこそ満足度を高めるためには担当者を指名してみるのがいいかもしれません。最近ではそのような需要に対応するために、ホームページでスタッフの紹介をする会社も増えてきましたし、ブログやSNSなどに力を入れている人も少なくありません。

【畑中学】また、最近ではTiktokやYouTubeなどで物件紹介をする人も増えてきました。このようなツールでは人となりや雰囲気がはっきりわかるので、積極的に使ってもいいでしょう。

不動産のプロが考える”いい営業担当者”とは?

ーー畑中さんが考える「いい営業担当者」とはどんな人ですか?
【畑中学】「質問に答えてくれる」そして「ほったらかしにしない」の2つができる人ですね。担当者のなかには面倒臭がって質問に答えない人もいますが、そのような人ではなく丁寧に質問に答えれくれる人だと安心できますよね。

【畑中学】選んだ物件にちょっと不満があっても、担当者が「丁寧に対応してくれた」や「質問に全部答えてくれた」といった印象が残れば、不動産選びの満足度は相対的に高くなります。営業担当者が良ければ「理想とは違ったけれど結果的によかった」と思いますが、不満があると「部屋はよかったけど態度がよくなかった」と心に残ってしまう。

ーー確かに、丁寧な対応をしてくれると気持ちよく物件を借りられそうな気がします。
【畑中学】それと、物件のメリットとデメリットをはっきりと伝えてくれる人を選ぶのがいいですね。そのような人は、借りる前に欠点を理解してもらうというスタンスの人が多いので、嘘をついたり誤魔化したりする可能性が低いです。そのあたりも含めて、たくさん質問をして担当者を見極めるのがいいでしょう。

ーーどんどん質問すべき、だと。
【畑中学】はい、お客側がたくさん質問することはとても大切です。なんでも担当者任せにしてしまうと、不動産会社が貸したい物件を押し付けられてしまうこともあるかもしれません。だからこそ、ちょっとでも疑問に思ったことはなんでも聞くことが、いい物件を探すためには一番いいと思います。

営業担当者の対応・相性が重要だと感じるかどうかについてのアンケート
営業担当者の対応・相性が重要だと感じるかどうかについてのアンケート【画像提供=LIFULL】


物件探しのコツは「具体的なイメージ」を持つこと

ーー借主がいい部屋を見つけるためにすべきことはありますか?
【畑中学】自分のなかで「こういう部屋を借りたい」「こんな条件の家がいい」といった自分の希望をあらかじめ把握しておくといいですね。具体的なイメージなどをしっかり予習していくことで、いい物件に出合える可能性が高くなります。

【畑中学】逆をいえば、営業担当者はお客様が物件のイメージを持っていないと、条件に合った物件やおすすめの物件を提示できないのです。そのため、店舗に赴く前に「こんな部屋に住みたい!」とあらかじめ条件を固めておきましょう。

ーー不動産会社を初めて利用する人、初めて部屋を借りる人が準備すべきことはありますか?
【畑中学】自分の希望する条件をちゃんと理解しておくことですね。そしてエリアや賃料、面積などといった希望条件に優先順位をつけることが大事です。ここがぼやけていると担当者も「この物件はどうですか?」と勧められないですからね。

希望の住まいを探すために費やした時間や件数
希望の住まいを探すために費やした時間や件数【画像提供=LIFULL】


【畑中学】条件が具体的であればあるほど、会社側もそれに見合った物件を提案できるので、自分が希望する物件のイメージを具体的にしておくといいでしょう。不動産会社や営業担当者の良し悪しを見分けることも必要ですが、それ以上にお客側が準備をしていくのがいい物件と出合うコツですね。

意外な落とし穴!入居者審査で見られるのはどんな所?

ーー契約の際に行われる「入居者審査」は重要なのでしょうか?また、審査ではどのようなところが見られるのでしょうか?
【畑中学】とても重要ですね。不動産会社や入居先にもよりますが、基本的には勤め先や収入を見られることが多いですね。あと意外かもしれませんが、見た目や服装がきちんとしているか、常識的なコミュニーケーションが取れるか、受け答えができるかどうかなどもしっかり見ます。審査をずさんにしてしまうとすさんだ人が集まってしまいますからね。

住まい探しにおいて、重視していたポイント
住まい探しにおいて、重視していたポイント【画像提供=LIFULL】


ーー意外と不動産会社の方ってお客を見ているのですね。
【畑中学】そうですね。特に、不動産オーナーから委託されて管理をしているという物件については非常に厳しくなりますね。入居者が家賃を滞納したり他の人に迷惑をかけたりすると、最悪の場合にはオーナーから契約を切られてしまう可能性があります。

【畑中学】不動産会社とオーナーとの間の信用問題に関わってくるので、入居者を厳しく審査していることが多いです。逆に、治安や隣人の質がある程度は担保されるので、その点は安心できると言ってもいいでしょう。

ーー身なりや受け答えって、思った以上に大事なのですね。
【畑中学】賃料の滞納や隣人トラブルが起こると大変ですからね。営業担当者は入居者が信頼できる人かどうかを窓口対応中や内覧中に判断せざるを得ません。なので、見た目とか話の受け答えを厳しく見ることになるのです。なので、ある程度身なりを整えて赴き、丁寧に受け答えすることをおすすめします。

とにかく「わからない」をなくすことが成功のカギ

ーーなんでも不動産任せにするだけでなく、ある程度の準備をしないといけないことがわかりました。
【畑中学】一般の人にとって、賃貸を借りるためだけにイチから不動産の知識を身につけるのはとても大変なことだと思います。なので、重要なのは知識をつけることではなく、上手に会社を利用することではないかと思いますね。

【畑中学】わからないことはちゃんと聞くとか、自分の希望条件をはっきりさせておくとか、そのような点を押さえていれば、不動産会社を利用するのが初めてでも問題ないと思います。まずは恥ずかしがらずに何でも聞く。そして随時、確認することが大事だと思いますね。この2つを徹底するだけで80点以上の物件を探すことができます。

不動産会社での住まい探しの満足度平均
不動産会社での住まい探しの満足度平均【画像提供=LIFULL】


ーー最後に、契約の際に気をつけることはありますか?
【畑中学】賃貸を借りるとき、契約書を確認しない人って結構いるんですよね。意外にもこれを軽視する人が多いです。契約の際に「このような場合に敷金から引かれるよ」とか「原状回復にはこれくらいかかるよ」といった条件を、必ず確認することをおすすめします。

【畑中学】契約書をしっかり読み込んで、わからないことや不明なところなどは必ず聞いて確認しましょう。ここでもきちんと対応してくれる人は本当にいい営業担当者と言えるでしょう。どんなにささいなことに対しても質問と確認を徹底することが、最終的に満足度の高い物件探しができるコツですね。

この記事のひときわ #やくにたつ
・不動産会社を選ぶときは、まずはホームページをチェック
・顧客目線を持っているかどうかが不動産会社を選ぶカギ
・いい物件と出合うには、事前に具体的なイメージを持つことが大事
・わからないことがあればなんでも質問する


取材・文=福井求(にげば企画)