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日本初、国勢調査ならぬ猫勢調査!「猫助け事業」が見据える人にもやさしい街づくり

2023/05/18 14:00 | 更新 2023/05/18 18:48
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保護猫カフェの運営などを行う株式会社ネコリパブリックと岐阜県飛騨市が協力して、飼い猫や地域の野良猫などの情報を集める「猫勢調査」を実施。2023年3月から4月にかけて、市内全戸を対象にアンケートを行った。いったい、どんな目的が?ネコリパブリックの担当者に話を聞いた。

3月15日から飛騨市内の約8000戸に配布したアンケートと「猫と人との完全共生マニュアル」。4月時点で約2000件の回答が集まった
3月15日から飛騨市内の約8000戸に配布したアンケートと「猫と人との完全共生マニュアル」。4月時点で約2000件の回答が集まった【写真提供=ネコリパブリック】

ふるさと納税を活用したソーシャルビジネスとしてスタート

ーー飛騨市と進めるプロジェクト「SAVE THE CAT HIDA」について教えてください。
【担当者】ネコリパブリックは、保護猫カフェの運営などで猫を助ける事業を、以前から行っています。しかし、民間だけですべてを解決するのは不可能だと感じていました。一方で行政とタッグを組めば問題解決のスピードは上がりますが、行政が猫のために予算を割くことは難しいとも感じていました。

【担当者】そんなとき、飛騨市がふるさと納税を活用したソーシャルビジネス支援事業を立ち上げたことを知りました。野良猫や多頭飼育崩壊など、さまざまな猫の問題は、住民の高齢化や空き家問題など、地域の問題と常に隣り合わせで、同時に解決していかなければならないと考えていたので、即座に応募して、採択していただきました!

空き家を活用した保護猫シェルター。殺処分ゼロを目指すプロジェクト「SAVE THE CAT HIDA」の一環として2022年6月にオープンした。プロジェクト活動の拠点にもなっている
空き家を活用した保護猫シェルター。殺処分ゼロを目指すプロジェクト「SAVE THE CAT HIDA」の一環として2022年6月にオープンした。プロジェクト活動の拠点にもなっている【写真提供=ネコリパブリック】

ーー「猫勢調査」ではどのような情報を集めたのですか?
【担当者】飼い猫の有無や、野良猫が繁殖している地域、多頭飼育崩壊が起きていないか。そのほか、猫のことで困っていることがあるかを質問しております。猫を飼っている方には、不妊手術をしているか、ワクチンを定期的に打っているか、完全室内飼いをしているか、また、それらをしていない方にはその理由などを伺っております。

ーー飼い猫以外の問題を把握するのは難しいのでは?
【担当者】手応えは感じております。猫勢調査を行う前は、ご相談いただくのは、猫に関心のある方や、猫を飼っているご本人や親戚の方からでした。今回、猫勢調査を行うことで、当事者ではない方からも声を拾うことができました。同じ地域に暮らす方々から声をいただくことで、野良猫の多い地域を絞り込むことができ、今後の活動方針をより正確に定めることができると考えております。

シェルター内の様子。一口500円以上の寄付金で、入場して保護猫と触れ合える
シェルター内の様子。一口500円以上の寄付金で、入場して保護猫と触れ合える【写真提供=ネコリパブリック】

ーー調査結果の活用方法は?
【担当者】いただいた情報は分析して市と共有し、動物愛護管理行政に役立てていく予定です。また、具体的な地域やネコリパブリックの協力が必要と回答いただいた方には、順次ご連絡をして「猫助け」を行う予定です。また、万が一、飼育できなくなった場合の備えに関する質問項目もあります。案内が必要と回答いただいた方へは、ネコリパブリックが猫を引き取り、新しい飼い主を探すサービス「猫生たすけあい制度」へのご案内も順次行っていく予定です。

産官連携で「より多くの声を拾い上げる」

ーー「猫勢調査」実施にあたり苦労した点はありますか?
【担当者】市民の方に猫勢調査に関心を持っていただき回答率を上げることと、市内にお住まいの方にもれなく配布することの2点が大きな課題でした。前者については、対策として事前に「猫と人との完全共生マニュアル」という冊子を配布しました。動物の虐待が犯罪であることや、完全室内飼いが現代のスタンダードであることとそのメリットについて、地域で野良猫を見かけたらどんな行動をするといいかなどを、20ページほどにまとめています。これにより、ふるさと納税を活用してネコリパブリックがどんな活動を行っているかをみなさんに知っていただき、市民の方に関心を持っていただきました。

ふるさと納税の返礼品の一例。飼っている猫と同じ重さのお米を詰めた、猫型のお米「にゃんこめ」。ネコリパブリックが監修し、飛騨市内の事業者と開発した
ふるさと納税の返礼品の一例。飼っている猫と同じ重さのお米を詰めた、猫型のお米「にゃんこめ」。ネコリパブリックが監修し、飛騨市内の事業者と開発した【写真提供=ネコリパブリック】

【担当者】後者については、飛騨市にご協力いただき、飛騨市の広報を配布するのと同じ方法をとりました。この方法であれば、町内会に属しているすべての方に配布が可能になります。飛騨にお住まいの方はご年配の方も多いので、インターネットのみでは限界があり、紙媒体での配布ができたことで、回答率も上げることができたと思います。

ふるさと納税の返礼品の一例。飛騨地域で昔から愛される鮎の甘露煮「ぼっか煮」を、猫が魚をくわえているようなパッケージにした「お魚くわえた猫 ぼっか煮シリーズ」
ふるさと納税の返礼品の一例。飛騨地域で昔から愛される鮎の甘露煮「ぼっか煮」を、猫が魚をくわえているようなパッケージにした「お魚くわえた猫 ぼっか煮シリーズ」【写真提供=ネコリパブリック】

ーー行政との協働は、ほかにもメリットがありましたか?
【担当者】市職員の方から猫問題に関する情報をいただき、ネコリパブリックでTNR(野良猫に不妊手術をしてもとの場所に戻し、地域の猫として見守る)とTNTA(野良猫を保護して不妊手術を行い、人に慣れさせてから譲渡する)を行いました。2022年のプロジェクト開始以前から、飛騨市へは猫問題についての声が届いていたため、協働することで、より多くの声を拾い上げることができると感じております。

【担当者】また、こういった調査は少なからずコストもかかるため、ふるさと納税で飛騨市以外の方からのご寄付がなければ、実現は困難だったと感じております。

老舗麺屋「老田屋」の作る飛騨ラーメンとコラボした「猫助拉麺」
老舗麺屋「老田屋」の作る飛騨ラーメンとコラボした「猫助拉麺」【写真提供=ネコリパブリック】

ーー今後の展望をお聞かせください。
【担当者】猫の問題は、突き詰めると人や地域の問題に行き着くと考えております。例えば、飼い主が飼えなくなるケースでは、飼い主が高齢のため施設に入ったり、亡くなったりして、猫だけが残されてしまうことがあります。また、多頭飼育崩壊のケースでは、過疎化などが原因で飼い主が喪失感を感じ、野良猫を見つけるたびに家に迎えて、自身のキャパシティを遥かに超えてしまうといったこともあります。野良猫問題には、過疎化による空き家の増加も影響し、空き家に野良猫が集まり、あっという間に繁殖してしまうというケースがあります。

【担当者】このように、猫の問題は「高齢化」「過疎化」「空き家の増加」といった課題と密接に関わっています。このプロジェクトを通じて猫の問題を解決すると同時に、地域の課題も解決することができると思っております。

今年度は、高齢者の方に保護猫の「預かりさん」になってもらい、ネコリパブリックのスタッフが訪問することで孤立を防ぐ「高齢者×猫 見守り事業」、空き家を改装してゲストハウスを作り、猫との暮らしを体験できる「猫ゲストハウス&シェアハウス事業」などを行う予定という。猫にやさしい街は、人にもやさしい街だった。

この記事のひときわ#やくにたつ
・得意分野を生かした協働が相乗効果を生み出す
・問題を明らかにすることで、根本的な解決につながる

取材・文=伊藤めぐみ

■ネコリパブリック公式サイト:https://www.neco-republic.jp/

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