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脳神経外科医が教える「無駄遣いを防ぐ方法」。事前に明確な「ストーリー」を描けば財布のひもは堅くなる

2023/03/17 18:00
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手元に残るお金を増やすにはどうすればいいのだろうか。転職をしたり副業を始めたりと、そもそもの収入を増やすというのもひとつの手。あるいは、節約して支出を減らすという手段もある。ただ、前者についてはハードルが高いと感じる人も少なくないはずだし、「お金を増やしたい」という人の多くがまず考えるのが、後者の節約ではないだろうか。

ところが、「わかっちゃいるんだけど、つい無駄遣いをしてしまう」というのが私たち人間だ。脳の専門家である脳神経外科医の菅原道仁先生は、お金を使う前に一旦立ち止まり「『ストーリー』を描く」ことで無駄遣いを防ぐことができると語る。

脳神経外科医・菅原道仁先生
脳神経外科医・菅原道仁先生【撮影=石塚雅人】


「認知バイアス」が無駄遣いを誘発する

――買い物に行ったら、まったく買う予定がなかったものも買ってしまった……。多くの人に経験があることだと思います。
【菅原道仁】そういうことが起きるのは、「脳のクセ」によるものです。脳のクセは、正確には「認知バイアス」といって、「脳の仕組みによってものごとの判断を非合理的にしてしまう心理現象」を指します。

【菅原道仁】「非合理的」ですから、「論理に合わない」ことですよね。つまり、「本当なら必要のないものや買おうと思ってもいなかったものを買ってしまう」といった論理に合わないことをしてしまうのも、さまざまな認知バイアスがもたらす結果なのです。認知バイアスが財布のひもを緩めてしまうわけです。

――そうした認知バイアスを抑えて、きっちりと財布のひもを締めるにはどうすべきでしょう?
【菅原道仁】おすすめしたいのは、買い物をする前に「必ず『ストーリー』を描く」ということです。例えば、ショーウインドーに飾られた服を見て「欲しい」と思ったときに、「来月のパーティーで着るのにちょうどいい」「春先に羽織れる上着がなくて寒い思いをしたこともあったし、これがあればそういうこともなくなる」というふうに具体的にイメージしてみましょう。これがストーリーを描くということです。

【菅原道仁】意外に思う人もいるかもしれませんが、ある買い物に対して無駄遣いだったと思うかどうかには金額はほとんど関係ありません。たとえ安くて大したことのない値段のものでも、自分にとって必要のないものだと感じたなら「無駄遣いをしてしまった……」と思いますし、自分できちんとストーリーを描いたうえで買ったものならどんなに高くても無駄遣いだと感じることはなく、「いい買い物をした」と思えるのが人間です。

【写真】「買い物をする前に必ず明確な『ストーリー』を描きましょう」というアドバイス
【写真】「買い物をする前に必ず明確な『ストーリー』を描きましょう」というアドバイス【撮影=石塚雅人】


自分を主人公にしたストーリーを描いているか

――なんとなく理解できましたが、ストーリーを描くうえでのポイントがあれば具体的に教えてください。
【菅原道仁】正しくストーリーを描くためのポイントは、①「主人公を『自分』にする」、②「『いつ』『どこで』『誰と』使うのかを明確にする」、③「『見栄』や『見返り』に踊らされない」の3つです。順にそれぞれ解説しましょう。

【菅原道仁】先にあげた服を買うときの例でもそうですが、正しいストーリーのときには、必ず「私が考えて、私が着る」というふうに自分が主人公になっています。自分で自分にものを買うのだから「当然じゃないか」と思うかもしれません。でも、そうなっていないストーリーを描いてしまうこともよくあるのです。

【菅原道仁】同じように服を買うシチュエーションでも、「有名な俳優がドラマで着ていた服ですよ」「とてもお似合いですよ」といったふうに店員にすすめられて買うケースならどうでしょう?

――主人公が自分ではなくなる……ということですか?
【菅原道仁】自分発信ではないストーリーですから、主人公は「俳優」や「店員」になり、自分自身は脇役になってしまうのです。そうして買った服は、自分が着ているシーンを具体的にイメージしにくいために結局はあまり着ることがありませんし、たまに着たとしても「いいものを買った」という納得感が薄く、あとあと「無駄遣いをしてしまった……」と感じてしまいます。

買いたいものを使うシーンをできる限り具体的にイメージする

【菅原道仁】そして、服の場合であれば、自分を主人公にするだけでなく、どんなシーンでどんなふうに着ているのかをできる限り具体的にイメージすることも大切です。

――②の「『いつ』『どこで』『誰と』使うのかを明確にする」ということですね?
【菅原道仁】わかりやすい例をあげましょう。ゴルフに全く興味がない人がゴルフのクラブセットを譲られたとします。その人には、クラブを「いつ」「どこで」「誰と」使うのかということをイメージすることはまずできないでしょう。持っておくにも保管場所も必要ですし、仮に無料で譲られたとしても、その人にとってクラブはただただ無駄で邪魔なものでしかないということになるのです。

――それはよくわかりますが、自分がまったく興味を持っていないものを買うことはないように思うのですが……。
【菅原道仁】先ほどの例はわかりやすいケースとしてあげましたが、ここまで極端ではないにしても、似たような無駄遣いをしてしまっている人は意外に多いものです。ブランド品に興味がないにもかかわらず、「残り1点」「今だけ半額」といった売り文句に誘われてブランドバッグを買うようなケースです。

【菅原道仁】普段はブランド品に興味がないのですから、その人はおそらくブランドバッグに合うような服も持っていないでしょうし、そんなバッグが必要な場に行くこともほとんどないはずです。そんな人にブランドバッグは果たして必要ですか?たとえ半額で手に入れたとしても、いずれ「全然使わないし、無駄遣いをしてしまった……」と後悔するのがオチです。

「自分を主人公として、買いたいものを使うシーンを具体的にイメージすることが大切です」
「自分を主人公として、買いたいものを使うシーンを具体的にイメージすることが大切です」【撮影=石塚雅人】


後悔するプレゼントと後悔しないプレゼントの違い

――③の「『見栄』や『見返り』に踊らされない」はどういうことを意味するのでしょうか?
【菅原道仁】これは、「人目」の問題です。SNSで知人が最新のスマホを買ったことを知り、「自分も買わないと負けたような気がする」と思って同じものを買ってしまうようなケースです。

【菅原道仁】もちろん、「最新機種を買って仕事の効率を上げよう!」といったふうに、他人の目など意識せずにそれこそ自分を主人公にしてストーリーを描けていたなら、それはいい買い物です。でも、他人を意識して買い物をしてしまうと、「よく考えたら前の機種でも不便はなかったのに、高い買い物をしちゃったな……」というふうに後悔する可能性が高まります。

――「見返り」についてはいかがですか?
【菅原道仁】「プレゼントをして意中の人に振り向いてもらいたい」だとか「これを買えば、このお店でもっとサービスをしてくれるかもしれない」というふうに、相手の気持ちを動かそうといった下心があるケースですね。

【菅原道仁】でも、他人の気持ちを自分が思うままにコントロールすることなどできません。そのため、結局意中の人にフラれたりなんのサービスもしてくれなかったなら、「無駄だったな……」と思ってしまうというわけです。

――プレゼントは、あとで無駄遣いだと感じやすいということでしょうか?「いいプレゼントができた!」と喜びを感じることも多い気がします。
【菅原道仁】もちろん無駄遣いだと感じないケースもありますよ。「プレゼントで気を引こう」「好印象を持ってもらおう」というふうに相手の気持ちをコントロールしようとするのではなく、「これはきっとあの人に似合うだろうから、ぜひ贈ってあげたい」というふうに、相手からの見返りを求めていない気持ちからプレゼントをするようなケースです。過去を振り返って「いいプレゼントができた!」と感じたときを思い出してもらえれば、きっとそういう見返りを求めない気持ちを持っていたことがわかるはずです。

「相手の気持ちを動かそうといった下心からプレゼントをすると後悔しやすい」
「相手の気持ちを動かそうといった下心からプレゼントをすると後悔しやすい」【撮影=石塚雅人】


この記事のひときわ#やくにたつ
・買い物をする前に「必ず『ストーリー』を描く」
・ストーリーは自分を主人公にして考える
・購入後の使用シーンをできる限り具体的にイメージする
・見返りを求めない気持ちでしたプレゼントは無駄遣いだと感じない

構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム)、取材・文=清家茂樹、写真=石塚雅人

『頭の中の貧乏神を追い出す方法』
KADOKAWA(2019)
菅原道仁 著

【プロフィール】菅原道仁(すがわら・みちひと)
1970年生まれ、埼玉県出身。脳神経外科専門医、抗加齢医学専門医、日本体育協会公認スポーツドクター。1997年に杏林大学を卒業後、国立国際医療研究センター病院脳神経外科で研修を行う。クモ膜下出血や脳梗塞といった緊急の脳疾患を専門とし、国立国際医療センター、北原脳神経外科病院にて、数多くの救急医療現場を経験。2010年以降、北原ライフサポートクリニック院長、日本健康教育振興協会会長、四谷メディカルクリニック院長などを歴任。2015年、東京・八王子に菅原脳神経外科クリニックを開業。2019年、医療法人社団赤坂パークビル脳神経外科理事長に就任し、また、菅原クリニック東京脳ドックを開業。「病気になる前に取り組むべき医療がある」との信条で、新しい健康管理方法である「予想医学」を研究・実践している。『認知予防のカキクケコメソッド』(かんき出版)、『0〜3歳の成長と発達にフィット 赤ちゃんの未来をよりよくする育て方』(すばる舎)、『なぜ、脳はそれを嫌がるのか?』(サンマーク出版)など著書多数。

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