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脳の専門医に「浪費」について聞いてみた。私たちが浪費をしてしまう原因は「脳のクセ」にあった

2023/03/10 12:30
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あらゆるものの価格が高騰しているいま、これまで以上に節約が求められている。でも、「浪費癖を直そう」と思いながらもつい無駄遣いしてしまうのが私たちの習性だ。どうして私たちは無駄遣いをしてしまうのか?脳神経外科医の菅原道仁先生は、「脳のクセ」がそうさせていると語る。なぜ脳はそんなクセを持っているのか、どうすれば脳のクセに影響されずに無駄遣いをせずに済むのか――。脳の専門医に聞いた。

脳神経外科医・菅原道仁先生
脳神経外科医・菅原道仁先生【撮影=石塚雅人】


脳は深く考えずに自動処理を好む「怠け者」

――単刀直入に伺いますが、私たちはなぜ無駄遣いをしてしまうのでしょう?
【菅原道仁】その理由は、「脳のクセ」にあります。その脳のクセとは、「なるべくものごとを深く考えることを避けて、自動的に処理しよう」というもの。そのため、「本当に必要なものかどうか?」と深く考えることなく、「いまだけ30%オフ!」なんて言葉につられて無駄遣いをしてしまうというわけです。

――なぜ脳はそんなクセを持っているのでしょう?
【菅原道仁】できるだけ、エネルギーの消費を抑えようとしているからです。脳はそもそも非常に多くのエネルギーを消費する燃費の悪い器官です。大人の脳の重さは全体重のわずか2%に過ぎないのですが、その消費エネルギーは私たちが消費する全エネルギーのなんと20%にも達します。では、そんな多くのエネルギーを消費する脳をたくさん働かせたらどうなると思いますか?

――エネルギーが足りなくなる?
【菅原道仁】そうです。生命維持のために重要なほかの器官が使うためのエネルギーが不足し、大切な命が危機にさらされてしまいます。

【菅原道仁】例えば、原始時代は今と比べると食べ物を手に入れるのが難しい時代でしたから、それだけエネルギーが貴重でした。そのため、脳はなるべく消費エネルギーを抑えるようになっていった結果、変化を嫌っていつもどおりに行動しようとしたり、反射的にものごとを判断したりと、できるだけ自動処理をするようになったと考えられます。

【菅原道仁】住んでいる国や地域にもよりますが、基本的に今は飽食の時代です。そのためエネルギー不足を心配する必要はないのですが、原始時代の名残のようなかたちで脳は自動処理を好む、いわば「怠け者」になっているのです。

脳はエネルギーを大量に消費するため、「自動処理を好む、いわば『怠け者』になっている」という。
脳はエネルギーを大量に消費するため、「自動処理を好む、いわば『怠け者』になっている」という。【撮影=石塚雅人】


あなたは大丈夫?「無駄遣いをする脳のクセ」チェックリスト

――その「怠け者」具合は、人によって違いがあるものでしょうか?
【菅原道仁】もちろんそうですね。無駄遣いが脳のクセによるものだという自覚があるかどうかは別として、自分なりに脳のクセに抵抗する手段を持っている人もいれば、脳のクセに無抵抗に従ってしまう人もいます。

【菅原道仁】後者のように「無駄遣いをする脳のクセ」がついていると、それがさまざまなサインとして現れます。そんなサインが現れているかどうかを確認するチェックリストを紹介しましょう。

【「無駄遣いをする脳のクセ」チェックリスト】
以下の質問に「YES or NO」で答えてください。「YES」の数であなたの「無駄遣い度」を診断します。

□1. 最新機種や新商品はなるべく早く買いたい
□2. いわゆる「インスタ映え」する写真を頻繁にSNSに投稿している
□3. 友人よりも多くの高級ブランド品を持っている
□4. ほとんど使っていない健康器具を持っている
□5. 特売品や処分品を買って後悔した経験がある
□6. ビニール傘をいくつも持っている
□7. 基本的に飲み会の誘いは断らない
□8. 職場での昼食は持参した弁当ではなく外食
□9. 趣味やファッションにお金をかけている友人や同僚が多い
□10.行列ができている店を見ると、入ってみたくなる
□11. 本当は行きたくない二次会にも、「みんなが行くなら……」と行ってしまう
□12.流行っているという理由で買ったものがある
□13.預金残高が給料の3カ月分を下回っている
□14.財布にたくさんのお札が入っていると、いつもより高いものを買ってしまう
□15.気づいたら終電を逃していてタクシーで帰宅することが少なくない
□16.ストレスがたまると衝動買いすることが増える
□17. 買ったことだけで満足し、包装や値札を外さず放置しているものがある
□18.趣味を始めるときに新しいグッズをそろえても長続きしない

【「無駄遣い度」診断】
●「YES」が14〜18個 → 無駄遣い度100%
完全に買い物依存症です。通販サイトは一切見ないほうがいいでしょう。パートナーがいる場合なら、家計の管理は相手に任せてしまうべきです。

●「YES」が9〜13個 → 無駄遣い度70%
買い物依存症の一歩手前といったところです。給料日前になると、何に使ったかわからないのにいつも金欠状態では?すぐに無駄遣い対策が必要です。

●「YES」が4〜8個 → 無駄遣い度30%
普段のお金の使い方を少し改善するだけで、貯金がみるみる増えていくはずです。

●「YES」が0〜3個 → 無駄遣い度0%
なんの心配もいりません。この記事を読んでいるのが不思議なくらいです。

「『無駄遣いをする脳のクセ』がついているか、まずは診断してみましょう」
「『無駄遣いをする脳のクセ』がついているか、まずは診断してみましょう」【撮影=石塚雅人】


「脳のクセ」を利用した販売戦略に要注意

――無駄遣い度が高かった人はどうすればいいですか?
【菅原道仁】それはもう、いますぐに無駄遣いを減らしていく努力をしなければいけません
ね(笑)。そのためには、企業がよく使う販売戦略を知る必要があります。というのも、そういった販売戦略のほとんどが脳のクセを利用したものだからです。

――よく見られる、脳のクセを利用した販売戦略を教えてください。
【菅原道仁】代表的なものだと、デパ地下やスーパーでの試食が挙げられます。「試食させてもらったんだから、買わないと相手に悪いな……」と、それほど欲しくもない商品を買ってしまったことはありませんか?これは、「返報性の原理」というものを利用した戦略です。返報性の原理とは、「他者からなんらかの施しを受けたからには、お返しをしなければならない」という心理を生む脳のクセです。

【菅原道仁】もちろん、この返報性の原理は、一概に悪いものだとはいえません。ビジネス書や自己啓発書では、「とにかく周囲に感謝を示すべきだ」といったことがよく書かれていますよね。その感謝が、いずれは周囲からの協力といったかたちで自分に返ってくるというものです。このことにも返報性の原理が働いていると思います。そういう意味だと返報性の原理にもプラスの面もあるのですが、販売戦略に返報性の原理が利用されている場合には注意すべきでしょう。

【菅原道仁】それから、「心理的リアクタンス」を利用した販売戦略もよく見られます。

――「心理的リアクタンス」とはどういうものでしょうか?
【菅原道仁】私たちの脳には、「行動や決断を自分の意志で自由に決めたい」という欲求があります。そのため、その「自由」が制限されると反発したくなる。「そんなことをしたら駄目!」といわれたら、逆にそのことをしたくなることってありませんか?そういった脳の反応を心理的リアクタンスというのです。

――その心理的リアクタンスを利用した販売戦略にはどういうものがありますか?
【菅原道仁】「最後の1点!」といった売り文句を使った販売がわかりやすでしょうか。在庫が十分にあれば本当にその商品が欲しくなったときにいつでも買うことができます。つまり、自由な状態です。

【菅原道仁】でも、「最後の1点!」となったら「買えるのは今だけ」なのですから、自由が制限されてしまいますよね?すると、その制限に反発して「だったら自由な今のうちに手に入れてやろう!」というふうに、その商品に執着するようになってしまうのです。

――テレビショッピングに見られる「○時までにお電話いただいた方にだけ特別価格でご提供!」といったものも心理的リアクタンスを使ったものですね?
【菅原道仁】まさにそうです。テレビショッピングでいうと、画面内に「残り○点!」というふうに在庫数が表示されている場合もあると思いますが、それも心理的リアクタンスを利用した戦略です。

有名人のイメージが本当の商品評価をゆがませる

【菅原道仁】脳のクセを利用している代表的な販売戦略をもうひとつあげるなら、「ハロー効果」になりますね。「ハロー(halo)」とは「後光」を意味する英語です。

――後光ですか。どういうものでしょう?
【菅原道仁】ハロー効果とは、「ものごとを評価するときに、それが持つ目立った特徴に影響されてほかの特徴に対する評価がゆがめられる」という脳のクセです。その目立った特徴によって、まるで後光が差しているように素晴らしいものだと思ってしまうところからこの名があります。

【菅原道仁】ハロー効果を利用している販売戦略の代表格が、テレビCMなどの広告です。人気のあるタレントやスポーツ選手を広告に起用し、「あんなにすごい人がすすめているのだから、この商品はいいものに違いない」と消費者に思わせるわけです。今なら、インフルエンサーと呼ばれる影響力のある人たちにSNSなどで宣伝をしてもらうという手法もありますよね。

――私も、パッケージに大谷翔平選手の写真とコメントが入っているソックスを買ったことがあります……。
【菅原道仁】完全にハロー効果に影響されましたね……(苦笑)。ただそれは無駄遣いではないでしょう。野球をする人ならそのソックスをきちんと使うわけですからね。ちなみに私もゴルフにハマっていたときには、「これで飛距離が10ヤード伸びた!」という有名プロゴルファーの言葉につられてクラブを買ったことがありますよ。

――脳の専門家である菅原先生でもそういうことがあるんですか!?
【菅原道仁】もちろんあります。「いきなり10ヤード伸びるなんて、そんなはずがない!」と考えても、一方で「もしかしたら本当かも?」なんて思ってしまうことはふつうにあります。脳のクセが導く無意識下の心理というものはそれだけ強力だということです。

衝動買いで後悔しないためには「買う前に時間を置いて冷静になればいい」
衝動買いで後悔しないためには「買う前に時間を置いて冷静になればいい」【撮影=石塚雅人】


無駄遣いを避けるには、とにかく「時間を置く」

――そんな強い脳のクセを抑えて無駄遣いを減らすにはどうすればいいでしょうか?
【菅原道仁】私たちが買い物をするときには、これまでお話したようなさまざまな脳のクセによって「ドーパミン」という神経伝達物質が分泌されています。その本来の働きについての解説はここでは避けますが、ドーパミンは「快楽物質」とも呼ばれており、買い物をするときにはドーパミンによって強い高揚感が生まれます。要するに、ものを買うことが「気持ちいい」から必要のないものまで買ってしまうということです。

【菅原道仁】ですから、無駄遣いを減らそうと思えば、高ぶった気持ちをクールダウンすることが最重要です。そうするには、とにもかくにも「時間を置く」ことに尽きます。

【菅原道仁】衝動買いをしてから時間がたって冷静になり、「どうしてこんなものを買ったんだろう……」なんて思った経験はほとんどの人にあるはずです。そんな後悔をしないためには、買う前に時間を置いて冷静になればいいだけのこと。つまり、「即決を避ける」ことが重要です。

――通販サイトを利用するのなら、一度カートに入れてから時間を置いてあらためて「本当に必要?」というふうに考えるようなことですね?
【菅原道仁】まさにそういうことです。でも、今はより注意が必要になってきている時代です。通販サイトによっては、「ワンクリックで購入できる」システムを導入しているものもあります。カートには入れるけれど結局買わないといったケースを減らすため、決済にいたるまでに必要な手続きを減らしているわけです。

【菅原道仁】通販サイトやそのシステムの進化でどんどん便利になっている反面、無駄遣いをしてしまうリスクも高まっていますから、無駄遣いをしたくないのなら今後はより慎重になる必要もあるでしょう。

この記事のひときわ#やくにたつ
・まずは自分の「無駄遣い度」を知る
・「脳のクセ」を利用した販売戦略に注意して慎重に買い物をする
・無駄遣いを避けるには「即決を避ける」ことが重要

構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム)、取材・文=清家茂樹、写真=石塚雅人

『頭の中の貧乏神を追い出す方法』
KADOKAWA(2019)
菅原道仁 著

【プロフィール】菅原道仁(すがわら・みちひと)
1970年生まれ、埼玉県出身。脳神経外科専門医、抗加齢医学専門医、日本体育協会公認スポーツドクター。1997年に杏林大学を卒業後、国立国際医療研究センター病院脳神経外科で研修を行う。クモ膜下出血や脳梗塞といった緊急の脳疾患を専門とし、国立国際医療センター、北原脳神経外科病院にて、数多くの救急医療現場を経験。2010年以降、北原ライフサポートクリニック院長、日本健康教育振興協会会長、四谷メディカルクリニック院長などを歴任。2015年、東京・八王子に菅原脳神経外科クリニックを開業。2019年、医療法人社団赤坂パークビル脳神経外科理事長に就任し、また、菅原クリニック東京脳ドックを開業。「病気になる前に取り組むべき医療がある」との信条で、新しい健康管理方法である「予想医学」を研究・実践している。『認知予防のカキクケコメソッド』(かんき出版)、『0〜3歳の成長と発達にフィット 赤ちゃんの未来をよりよくする育て方』(すばる舎)、『なぜ、脳はそれを嫌がるのか?』(サンマーク出版)など著書多数。

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