
お金を貯めるには、稼ぎを増やすことのほかに、出ていくお金を減らすことも重要。わかっていてもついついやってしまう無駄遣いを減らすには、どうすればいいのか。お話を聞いたのは、「ミニマリスト」としてお金に関する著書も出している森秋子さん。共働き主婦である森さんが、無駄遣いを減らしてお金が手元に残るようになるための「ミニマリストの思考」を教えてくれた。
モノを置かなければほめられ、心地よさを感じられる
私が「ミニマリスト」を志したのは、20代後半。いまから15年ほど前のことです。そのころ、部屋がモノでいっぱいになっていて、まったく家事は終わらない……。いつもイライラしている自分がみじめに思えていました。「その状態をどうにかして変えたい」と行動に移したのです。
そして、「本当に自分に必要なものって何だろう?」と自分自身を振り返り、そうではないものをどんどん手放したらどうなるのかと考え、必要ないと判断したものは捨てたり、リサイクルショップで売ったりして、とにかく家のモノを減らしてみたのです。
ただ実は、当時の私はミニマリストという言葉は知らなかったのです。モノが減って片づいた部屋を見た友人たちから「ミニマリストみたいだね」と言われて、はじめてミニマリストという存在を知りました。
ミニマリストについては、人によって解釈がいろいろと異なります。いまの私は、ミニマリストとは、「たくさんのモノを持つよりも、モノが少ないほうがメリットが大きいということをわかっている人」というふうに解釈しています。
そのメリットは、まずは友人たちからほめられるということ。私の部屋を見た友人は、「ミニマリストみたい」というだけでなく、「綺麗だね」「すっきりしていて、すてき!」というふうにたくさんほめてくれました。
私自身も片づいた部屋で過ごせることで、体も心も楽になり、心地よさを感じています。これは、以前のモノにあふれた部屋ではあり得なかったことです。
もちろん、お金の面にも大きなメリットがありました。かつての私は、おしゃれでかわいいインテリアなど、まさにモノを買い集めてはすてきな空間を演出しようとしていました。ところが、むしろモノを置かないほうがまわりからはほめられますし、私自身も心地よく感じるのですから、これほどコスパがいいことはありません。
モノは買うより捨てるほうが難しい
モノを置かないほうがコスパがいいということは、お金だけではなく体や心の労力にもあてはまります。これは、モノの減らし方に関する私のベースとなる思考で、「モノは買うより捨てるほうが難しい」というものです。
モノを買うときは、「欲しい」という衝動さえあればいいから簡単ですよね。一方、モノを捨てるときには、それこそ衝動的に道端に捨てるようなことはご法度です。まずはどうやって捨てればいいのかを調べなければなりません。一般ゴミとして捨てていいのか、あるいは粗大ゴミとして回収してもらわなければならないのか、はたまた、リサイクルショップに持ち込むのか……。
粗大ゴミとして回収してもらうにも必要な手続きを踏まなければなりませんし、それこそ手数料も必要です。服などをリサイクルショップに持ち込むのなら、たくさんの不要なものの中から買い取ってくれそうなものを選び出さなければなりません。
衝動さえあればいい「買う」という行為と違って、「捨てる」という行為には知識や経験、体や心の労力といったものも必要とされます。それだけ自分に対して負荷をかける大変な行為なのです。
私は、たくさんのモノを減らした20代後半のときに、その大変さを嫌というほど味わいました。その経験は、軽いトラウマのようなものになっています。そのため、何か欲しいと思うものがあったときにも、一度立ち止まって「またあの大変さを味わうくらいだったら、今回は見送ろう」というふうに考えることもしょっちゅうです。そうして、結果的にモノをあまり買わない体質になったため、必然的に手元に残るお金も増えていきました。
モノを買うときには、捨てるときのこともイメージするようにしてみてください。普段は意識していなくても、引っ越しのときなどにゴミを捨てる大変さを味わった経験は皆さんにもあるはずです。その大変さをイメージしておけば、モノを減らす以前に、無駄な買い物をしてモノを増やしてしまうことが激減すると思います。
圧倒的にいいものに触れれば「見栄消費」をしなくなる
モノを増やさないという点でいうと、「圧倒的にいいものに触れて『見栄消費』を回避する」というのもおすすめです。
モノを買うときには、つい他人の目に触れるときのことを意識して、ちょっと見栄を張ってしまいがちです。そうして、少しだけ無理をすれば手に入るというレベルのものを買ってしまうことが無駄遣いにつながるのです。
私の感覚でいうと、5000円、6000円程度のいわゆる北欧系のおしゃれな食器などがそういったレベルにあたるでしょうか。でも、世の中には、もっとずっと高価なものがいくらでもあります。それらに触れてみるのです。
美術館には、お皿や茶碗、カップといった食器も展示されています。中には国宝もあるでしょう。そうなると、高価どころか値段さえつけられないレベルです。そういったトップ中のトップのものに触れて圧倒されると、5万円や5000円の食器、それこそ100円ショップの食器ですら同レベルのものに感じられるようになるのです。
すると、そんな大差ないものの中で見栄を張ろうとするよりも、いま持っているものを大切にしようというふうにマインドが変わっていきます。そうして、無駄遣いを減らすことができるのです。
この記事のひときわ#やくにたつ
・モノを置かないほうがほめられ、自分自身も心地よく感じる
・モノを買うときには、捨てるときのこともイメージする
・圧倒的にいいものに触れて「見栄消費」を回避する
構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム)、取材・文=清家茂樹