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TOFU MEATは「いずれは世界中の冷蔵庫に常備されるくらいの商品」、“世界一ストレスのない会社”を目指す社長の壮大な野望

2022/11/02 17:30 | 更新 2023/04/16 23:55
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株式会社トーフミート代表取締役・村上英雄さん

自称「世界一ストレスのない会社」が作るのは、世界中の冷蔵庫にストックされるべき食材

「うちの会社は、嫌なことは人に任せていい。私が率先してやりたくないことはやりたくないと言うようにしていますし、採用面接でも『うちはやりたくないことはやらなくていい会社』だと伝えています」

そう言って豪快に笑うのは、山口県宇部市にある株式会社トーフミートの代表取締役、村上英雄さんだ。

「これ、私が仕事において大事にしていることなんです。嫌なことは人に任せたらいいんです。自分は苦手でも、相手は得意かもしれませんから。私はしょっちゅう『これやりたくないんよー』なんて言っているんですが(苦笑)、『なら、私やります!』なんて人が出てきて、実際やってもらうとすごく向いていたりすることがあります。こうしてお願いしていくと、会社のみんなの得意なことが見えてきます。やりたくないなら他の得意な人に任せる、社内に得意な人がいなければ社外にお願いする。そういう体制でやっています。

とにかく、私が目指す会社は、“世界一ストレスのない会社”ですから。そういったわけで、社労士の先生とも相談しまして、8月から完全週休3日制をスタートしたところです。現在は、フルリモート、フルフレックス制で、いわゆるクラウドオフィスに出勤してもらっています」

そんな村上さんの会社が製造、販売しているのは、豆腐から作ったTOFU MEAT(トーフミート)だ。「私はこのTOFU MEATは、いずれは世界中の冷蔵庫に常備されるくらいの商品だと思っています。50年、100年くらいかかるかもしれないですけど(笑)。そして、その頃には、世界で一番ストレスのない会社ができてるんだろうなと思っています」

株式会社トーフミート代表取締役・村上英雄さん
株式会社トーフミート代表取締役・村上英雄さん


圧倒的な扱いやすさで、世界中のあらゆる食文化に対応するのが「TOFU MEAT」

「TOFU MEAT」は、ヴィーガンやベジタリアン、ハラル食の人々も安心して食べられる、豆腐を原材料にしたヘルシーフードだ。ポロポロとしたそぼろ肉のような形状が特徴で、食感や味は肉そのもの。牛肉・豚肉・鶏肉とよく食べられているどのお肉よりも高タンパクで、それでいてカロリーは低く、食物繊維もたっぷり摂れる。添加物を使用していないので、肉を避けている人だけでなく、健康意識の高い人や、アスリートにも最適なのだ。

高タンパクで栄養素の高い食品といえば、最近ではオートミールやキヌア、大豆ミートなども注目されているが、扱いやすさの面でもTOFU MEATは優れている。冷凍で1年間保存でき、水戻しなど面倒な下ごしらえは不要で、パックの中から必要量を取り出してそのまま調理できる。

しっかり栄養を摂りながら時短料理できるので、多忙な単身暮らしや共働き夫婦、さらには小さな子どものいる家庭など、すべての多忙な人々にとって強い味方だ。

「ヴィーガンの方々が食べることを想定すると、コンソメやカツオ出汁は動物性のためNGです。ハラル食の場合も、みりんはアルコールが入っているため使えません。そして、ヴィーガンとハラルの両方で敬遠されるのが、精製過程で動物性の材料を使うケースの多い白砂糖。そこで、味付けするにあたって、醤油や味噌のほか、うま味成分に椎茸・昆布の粉末を加え、甘味は有機黒糖を採用しました」

TOFU MEATも同じ大豆由来ではあるものの、大豆ミートをイメージするとその違いに驚くはずだ。TOFU MEATは甘辛い味付けの“オリジナル”のほか、甘さ控えめの“ノンシュガー”、豆腐そのものの“プレーン”と、3種類を展開するが、どれも大豆の臭みがほとんど感じられない。つまり、香辛料で香りを誤魔化すことなく、おいしく食べられるのだ。さらに、臭みのないTOFU MEATはペースト状にするとクリームチーズなどの代替としても使用することができるため、驚くことにスイーツの原料としても活用が可能となっている。

「TOFU MEATの開発にあたっては、味付けはもちろんなんですが、使い勝手を考慮して、冷凍ができること、粒を均一にすることにもこだわりました。これが苦労しまして。豆腐は冷凍すると別物になりますから、水分量から何から研究が必要でした。ポロポロにするのだって、まさか手でほぐすわけにもいきませんしね」

試作を重ね、満足のいく商品が完成した。山口県内ではホテルやレストランでも食材として使われている。「近年は環境負荷の問題もありますし、今後、肉が高騰する可能性もあります。そうなれば代替肉の出番です。そこで私はTOFU MEATをぶつけたい。おかげさまで海外のバイヤーさんの反応がいいので、世界市場は狙っていきたいですね。欧米に限らず、東南アジアや中東エリアも視野に入れて動いています」

TOFU MEATで「世界市場を狙っていきたい」と語る村上さん
TOFU MEATで「世界市場を狙っていきたい」と語る村上さん


TOFU MEAT開発に至るまでの意外すぎる経緯とは

そもそも村上さんの経歴は、食品製造とは無縁。自動車関連の営業をしていたサラリーマン時代を経て、会社を設立してシェアオフィスを経営。食品に携わることになったのはその2年後で、最初に作ったのは豆腐だった。

「シェアオフィスを始めたのは2014年。当時、私たちのいる宇部市にはシェアオフィスが1軒もなく、周りからは『こんな田舎で需要ないやろ』と反対されてのスタートでした。それでもオープンしてみたら、満室続きでいつも空室待ちの状態。シェアオフィスの経営は順調でした。そうしているうちに、山口県の職員の方から突然、豆腐製造の事業承継をしてみないかと声がかかりました。同じ宇部市の兼氏食品さんという会社には後継者がいない、あなたの会社で豆腐作りのノウハウと機械を引き継いでくれないか、と」

業種がまったく違うのに、なぜ声がかかったのだろうと不思議に思いながら、村上さんは兼氏食品について調べることにした。すると、兼氏食品は山口県でナンバー2の規模の豆腐屋さんだと判明。社長の兼氏佐憲(かねうじすけのり)さんは昭和ひと桁生まれの戦前を知る世代で、とんでもない経験の持ち主であることもわかった。

「この時点で直感的に『この人にいろいろ教えてもらいたい!』と思いまして。初回の面談で、社長は一番に『今から豆腐屋をやる人はおらんよ』とおっしゃった。儲からないからどこも潰れていった、そんなしんどい業界だ、と。『だけど、生き残ったら勝ちや』とも。なぜなら豆腐はなくならん、そういう考え方もあるから、よく考えて返事をしてほしいとおっしゃったんです。私はもうやる気でしたので、初めて会ったその日に『はい、やります』と即答しまして。契約を結び、まずは兼氏食品の工場から機械を運び出し、兼氏社長に『早よ、やれ!』と発破をかけられながら工場を建て、豆腐作りを教えてもらい、やっと豆腐が完成したんです」

ところが、取り引き先を引き継いだわけではないので、豆腐を買ってくれる相手がいない。イチから開拓する必要があったが、どこも門前払いだったという。

「そんなときに、博多で開催された『九州ヴィーガンフェス』に出展したところ、その実行委員長で日本ベジタリアン協会の方が、うちの豆腐に目を留めてくださったんです。そこで私たちも初めて知ることになるんですが、兼氏社長の豆腐は、遠心分離機を使った特殊な製法で、一般的な豆腐製造で使われる消泡剤も添加していない、極めて珍しい豆腐だったんですね。この豆腐でヴィーガン食品を作ってみたらどうかと、提案してもらい、TOFU MEATを開発することになりました」

「世界市場を狙える」と確信できる商品を生み出せた、とっておきの秘訣とは

ちなみに、県の職員が村上さんの会社に事業承継を持ちかけた理由は、「宇部市でシェアオフィスを始めるような奇特な会社だから、おもしろがって引き受けてくれそう」だったという。兼氏食品の豆腐が特別な製法で作られていたことも、豆腐製造を始めてから知ったほどなので、村上さんにはもちろん、損得の計算などはなかった。

「あんまり深く考えず、直感でいけそうだなと思うことをやっているだけなんですよ。世間では緻密に計画を立てて、その通りに進めるのがビジネスの秘訣だ、なんて言いますが、私は計画どおりなんてちっともおもしろくない。そもそも、計画のとおりになんて進みませんよね。偶発的に発生した物事をその都度クリアしていけば、気がついたら『あのとき、これやっておいてよかったね』となります」

シェアオフィスも豆腐製造の事業承継も、この天性の勘に導かれた結果だ。「わからないことや困っていることは、どんどんまわりに頼るようにしています。不思議なんですけど、そうなると必ず専門的な人が周りに現れて、助けてくれるんですよね。こうするといいよ、とか、この人に聞くといいよ、とか」

このあたりはまさしく、冒頭の「やりたくないことはやらなくていい会社」に通じる部分だ。苦手だからこそ、詳しい人や専門家の意見は素直に取り入れていく。TOFU MEATの味付けに悩んだときは、ヴィーガンフェスの実行委員長に何度も試作品を送り、意見を仰いだという。

「給料をもらうからには、どんなにやりたくないことでもこなさなければならない、サラリーマンの頃はそんなふうに思っていました。それがかっこいい社会人だと信じていましたね。会社を経営する側になってからも、最初のうちはそれを引きずっていました。でも、うまく進まなくなり、障害にぶつかるようになって、思い切ってやり方を変えることにしたんです。みんなが得意分野を生かし、好きなことを好きなだけできる会社にしようと。だからこそ、私自身がいつも機嫌よくいられるように気をつけています。なんでも言いやすい空気を作るのも、私の仕事ですから。うちのような会社がどんどん増えて、みんなが得意なことをやれる社会になったらいいなと思います」

最後に、TOFU MEATのこれからを聞いた。

「TOFU MEATは、食品製造も豆腐作りも初めてだった私たちが、ヴィーガンやハラルについて勉強して作り出した自信作です。これから類似品が出てくることは想定していますが、『いろいろ試したけど、TOFU MEATが一番おいしいし、安心して食べられるね』と言ってもらえると自負しています。どこのお店にも必ずおいてあるような商品に育てていきたいですね」

成功の秘訣は「わからないことや困っていることは、どんどんまわりに頼る」こと
成功の秘訣は「わからないことや困っていることは、どんどんまわりに頼る」こと


この記事のひときわ#やくにたつ
・やりたくないことは他の得意な人に任せる
・直感で進み、偶発的に発生した物事をその都度クリアしていく
・わからないことや困っていることはどんどんまわりに頼る

取材・文=原西香

■TOFU MEAT(トーフミート)
ホームページ:https://tofu-meat.com

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