音楽堂ヘリテージ・コンサート
ファビオ・ビオンディ バッハ 無伴奏 全曲
2024年2月17日(土)  第1部14:00開演 第2部18:00開演
神奈川県立音楽堂

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関連音源 パルティータ第2番「シャコンヌ」

関連動画 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ BWV1002-1004

バロック・ヴァイオリンの鬼才が魅せる極致 
無伴奏ヴァイオリンのバイブルを初披露

2022年10月、神奈川県立音楽堂は歓喜に包まれた。バロック・ヴァイオリンの第一人者で世界の古楽界を牽引するファビオ・ビオンディと手兵エウローパ・ガランテによるヘンデルのオペラ「シッラ」日本初演がついに実現したのだ。当初は2020年に上演予定だったが、初日を3日後に控えた2月26日、新型コロナウイルス流行の影響により公演中止に。出演者、スタッフはもちろん、全国の音楽ファンにとっても無念だった。ビオンディは必ず音楽堂で上演を実現することを誓いイタリアへ帰国。それから2年足らずで再び音楽堂を訪れ、目くるめく歌と音楽の饗宴で多くの人に驚きと感動を与えた。2006年のヴィヴァルディ「バヤゼット」、2015年のヴィヴァルディ「メッセニアの神託」と育まれた、木のホール・神奈川県立音楽堂を舞台にしたビオンディと日本の聴衆の絆は、困難を乗り越えさらに深まったのだ。
そして今冬、今度はビオンディが単身で来日し、無伴奏ヴァイオリンのバイブルとも称されるバッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ(全曲)」に挑む。1990年にエウローパ・ガランテを創立、伝説のヴィヴァルディ「四季」、そして数々のオペラや協奏曲やソロ活動と、これまで古楽ファンのみならず音楽ファンの話題の中心に存在し続けてきたビオンディ。そんな彼が60歳にして本作をはじめて聴衆の前で披露する。彼は『これまでその時が来るのを待ち続けた』と語る。皮肉にもコロナ禍のおかげでゆっくりこの作品と向き合う時間を持つことができたのだという。一足早く収録されたCDでは、イタリア人ならではの艶やかな美音、驚異的に豊かな歌、そしてゆったりと深い音楽が徹頭徹尾貫かれ、バッハの崇高な音楽をさらに高みに引き上げている。昼夜公演で半分ずつ聴けるが、ここはぜひ2公演まとめて聴いて無伴奏全曲の宇宙にひたりたい。まさに満を持して、みなさまの前で披露される「無伴奏」。乞うご期待!

満を持しての《無伴奏ソナタとパルティータ》
鬼才ビオンディが吹かせる“イタリアからのバッハの風”

「解釈を構築するうち、これらの作品が本来持っている“力強さ”の深い意味を、明らかにする必要性を感じました」。2021年に60歳を迎え、まさに満を持して、“ヴァイオリニストにとっての聖書”こと、バッハの《無伴奏ソナタとパルティータ》全6曲の初録音を発表した折り、イタリア古楽界の鬼才ファビオ・ビオンディは自らこう綴っていた。「それは、深い生命力と現代性、そして『(聴き手と)分かち合いたい』との強い欲求をもって、初めて可能となるのです」。たおやかなる美音。縦向きの拍節感よりも、むしろ横へのフレージングを意識した音楽創り。時に華麗で自然なインプロヴィゼーションや装飾を交えつつ、また時には、あえてアウフタクトへ重心を置いて推進力をもたらすなど、バロック奏法のセオリーに囚われ過ぎることなく、変幻自在な調べを織り上げてゆく。そして、これら無伴奏ヴァイオリン作品には、バッハ自身が憧れた、イタリア音楽の精神も随所に。鬼才が吹かせる“イタリアからのバッハの風”を、ぜひ実際に体感してみたい。  寺西 肇(音楽ジャーナリスト)

■無伴奏ヴァイオリンの金字塔
音楽の父として知られるヨハン・セバスチャン・バッハ(1685-1750)は、1717年から1723年までの間、アンハルト・ケーテン公レオポルト伯爵家の宮廷楽長を務めた。この時期のバッハは、教会音楽やオルガン曲などを作曲する義務から解放され、かわりに器楽曲の作曲を求められていた。《ブランデンブルク協奏曲》、ヴァイオリン協奏曲をはじめとする協奏曲、《平均律クラヴィーア曲集》第1巻、《フランス組曲》と《イギリス組曲》、《無伴奏チェロ組曲》など、燦然と輝く器楽曲が数多く作曲された時期にあたる。《無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ》も、やはりこの時期に作曲された。たった1台のヴァイオリンのために書かれた作品でありながら、和声的にも対位法的にもきわめて高度な音楽表現で、ヴァイオリンという楽器の性能や表現の可能性を極限まで追求した画期的な作品になっている。バッハが残した多くの器楽曲のなかでも、《無伴奏チェロ組曲》とともに、もっとも重要な作品であり、ヴァイオリン音楽史上においても頂点に位置する傑作中の傑作。バッハの死後50年以上を経た1802年になってようやく楽譜が出版され、広く世に普及するまでには、さらにそれ以上の歳月が費やされることになったが、今やヴァイオリニストなら一生に一度は挑むべき”金字塔”、そして”いつ、どのように挑むか”で演奏家の矜持が試される名曲である。
■バッハのイタリアへの憧れ
バッハが生まれた17世紀、音楽を含む芸術の中心地はイタリアだった。ルネサンスやバロックの芸術をおこし、様々な音楽形式を生みだしたのもイタリアの作曲家たち。ドイツの人たちにとって、イタリアの音楽は羨望の対象だったといえるだろう。1685年、ドイツのアイゼナハに生まれたバッハにとっても、イタリアの音楽は憧れの存在。1710年代、20代半ばのバッハは、イタリアの音楽形式を学ぶ格好の機会を得る。この時仕えていた音楽好きのエルンスト公が、ヴィヴァルディやコレッリなどイタリアの作曲家による協奏曲の楽譜をバッハに渡し、チェンバロ1台で弾ける協奏曲を作るよう依頼したのだ。求めに応じたバッハはこれらの協奏曲を次々とチェンバロ作品に編曲していき、こうしてイタリアの協奏曲のスタイルや本質を会得していった。それから数年も経たずして作曲された《無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ》にもバッハ独自のものとして昇華された”イタリアルーツ”の作曲技法を随所に聴き取ることができる。

公演概要  

公演名    音楽堂ヘリテージ・コンサート ファビオ・ビオンディ バッハ 無伴奏 全曲

日時    2024年2月17日(土) 第1部14:00開演(13:15開場) 第2部18:00開演(17:15開場)

会場    神奈川県立音楽堂(神奈川県横浜市西区紅葉ケ丘9-2)※JR桜木町駅前より無料シャトルバス有

出演    ファビオ・ビオンディ(ヴァイオリン)

プログラム J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ& パルティータ 全曲
      第1部 14:00    ソナタ 第1番 ト短調 BWV1001
                                               パルティータ 第1番 ロ短調 BWV1002
                                               ソナタ 第2番 イ短調 BWV1003
                      第2部 18:00    パルティータ 第2番 ニ短調 BWV1004
                                               ソナタ 第3番 ハ長調 BWV1005
                                               パルティータ 第3番 ホ長調 BWV1006

チケット  全席指定・税込 好評発売中
              全曲券(第1部+第2部)10,000円
                 単独券(第1部、第2部それぞれ)一般5,500円
                 シルバー(65歳以上)5,000円(残席僅か) U24(24歳以下)2,750円
                 高校生以下 0円(枚数限定/要事前予約/引き取り方法により手数料がかかる場合があります) 
                 車いす席有(付添1名無料)
                 音楽堂ヘリテージ・コンサート リサイタルセット券
               (1/19ボストリッジと2/17ビオンディ[第1部+第2部]の3公演)16,000円(単独券合計17,500円)
 チケットかながわ 0570-015-415(10:00〜18:00)https://www.kanagawa-ongakudo.com/
 窓口 神奈川県立音楽堂(13:00〜17:00 月曜休)
    神奈川県民ホール/KAAT神奈川芸術劇場窓口(10:00〜18:00)
    チケットぴあ https://t.pia.jp [Pコード:243-006] 
    イープラス https://eplus.jp  ローソンチケット https://l-tike.com [Lコード:32779]
主催 神奈川県立音楽堂(指定管理者:公益財団法人神奈川芸術文化財団)
後援 イタリア大使館、イタリア文化会館

関連企画  街なかトークカフェ #J.S.バッハ
      バッハの無伴奏ヴァイオリン作品に聴く宗教と世俗
      2024/1/24(水)14:00開始(15:45頃終了予定)
      講師:樋口隆一(音楽学者) 参加費:2,000円(休憩時ワンドリンク付)
      チケットのご購入、お問い合わせは チケットかながわ0570-015-415 まで

プロフィール

イタリア、パレルモ出身。12歳でソリストとしてイタリア国立放送交響楽団(RAI)と共演し、国際的キャリアをスタート。1990年、イタリア・バロック音楽アンサンブル「エウローパ・ガランテ」を結成し活動を始める。さまざまな音楽祭に加え、ミラノ・スカラ座、アムステルダム・コンセルトヘボウ、ロイヤル・アルバート・ホール、ウィーン・ムジークフェライン、ニューヨーク・リンカーン・センター、シドニー・オペラハウス、東京・サントリーホールなどに招待される。ソリスト、指揮者としては、サンタ・チェチーリア管弦楽団、ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団、ハレ歌劇場管弦楽団、ノルウェー室内管弦楽団、モンペリエ国立交響楽団、マーラー・チェンバー・オーケストラなど数多くのオーケストラと共演。ピアノやハープシコード、フォルテピアノとのデュオでも、世界中で活動を行っている。2005年よりノルウェー・スタヴァンゲル交響楽団のバロック音楽のための芸術監督となり、15年には同交響楽団とアントニオ・カルダーラのオラトリオ《キリストの死と埋葬 Morte e Sepoltura di Christo》をレコーディングする大プロジェクトを行った。11年よりサンタ・チェチーリア音楽院学芸員。15年から18年までバレンシアのソフィア王妃芸術劇場の音楽監督を務める。オープニングシーズンにはヘンデルの《シッラ》と、モーツァルトの《イドメネオ》と《ダヴィデ・ぺニテンテ》を上演。15年、フランス文化省から芸術と文学の国家学術員に任命された。19年にはポーランド政府から優れた文化的業績が認められて、勇気と真実の勲章を授与された。使用楽器は1686年クレモナ製のアンドレア・グァルネリ。また1766年製のカルロ・フェルディナンド・ガリアーノも使用しており、この楽器はパレルモの彼の師匠が携わる、サルヴァトーレ・シチェーロ基金から貸与されている。