どのような役柄でもそつなくこなす福士蒼汰 / ※ザテレビジョン撮影
【写真】スーツにネクタイ姿で爽やかな表情の福士蒼汰

仮面ライダーや年下彼氏など、2011年にデビューして以降、様々な役柄をこなしてきた福士蒼汰。甘いマスクと183cmという高身長で存在感を放ちつつ、確かな演技力で実力派俳優として名を連ねている。最近ではドラマ「弁護士ソドム」で母親殺しの復讐に燃える弁護士役を務め、その熱演ぶりが話題を呼んだ。また得意の英語を活かして、海外ドラマ「THE HEAD」Season2の出演も果たしている。しかし10年以上に及ぶ俳優人生の中で、悩みや葛藤を抱えていた時期も…。今回は、グローバルに活躍を広げる福士のキャリアを振り返っていく。

「あまちゃん」出演で人気に火がつく

福士が芸能界デビューしたきっかけは2010年。友人の付き添いで渋谷を訪れた際、声を掛けられて撮影した写真が雑誌に掲載された。その写真を見た、現在所属する芸能事務所「研音」の担当者が福士をスカウト。もともと芸能界に興味を持っていたわけではなかったものの、レッスンを通して演技に対する楽しさや興味を見出したという。

その後、2011年放送のドラマ「美咲ナンバーワン!!」(日本テレビ系)にてデビューを果たすと、若手俳優の登竜門と言われる仮面ライダーシリーズの「仮面ライダーフォーゼ」(2011年、テレビ朝日系)で主演に抜擢され、注目の若手俳優として支持を集める。

2013年には福士の知名度を全国に知らしめた連続テレビ小説「あまちゃん」(NHK)への出演が決まるなど、着実に人気俳優の階段を上っていく。

ちなみに同作の出演はオーディションで勝ち取っており、起用理由についてプロデューサーの訓覇圭は「初々しくて、変なクセもない。直球で気持ちいい。格好いいしチャーミング」と説明。良い意味で何色にも染まっていない福士は、“主人公・天野アキの初恋相手”という役どころにぴったりマッチしたようだ。

この作品をきっかけに、2013年公開の映画「図書館戦争」など話題作へ次々と出演。オリコンによる「2013年上半期ブレイク俳優ランキング」と「2014年ブレイク俳優ランキング」では堂々の1位に輝き、瞬く間に世間から注目を集めた。

その後2014年に出演したドラマ「きょうは会社休みます。」では、綾瀬はるか演じる30代OLと恋に落ちる21歳の大学生・田之倉悠斗を演じ、魅力的な“歳下彼氏”として多くのファンを虜にした。そして役の幅を広げながら着実に役者としての力を身に付けていく中で、その実力を名実ともにする出来事が起こる。

2015年に公開された映画「好きっていいなよ。」、「神さまの言うとおり」、「イン・ザ・ヒーロー」での演技が認められ、第38回日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞。3作品ではそれぞれまったく異なる役どころを演じた福士は、受賞にあたり「皆でこれからの映画界を盛り上げたい」と、意気込みを語っていた。

葛藤を乗り越えて役の幅を広げる

アカデミー賞新人賞受賞後も、ドラマ「お迎えデス。」(2016年、日本テレビ系)や映画「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」(2016年)など様々な作品に出演。順風満帆な俳優生活を送っていたように思えたが、実は当時福士の中にはある葛藤があったという。

立て続けに話題作に出演した福士はプライベートの時間がなく、また周囲からの評価と自分の評価のギャップが大きいと感じていたそうだ。まだ実力が伴っていないと感じた福士は葛藤し、そこから5年ほど自分の時間を作ることで心に余裕ができたという。

この期間について福士は「20代前半は仕事のほうにスイッチが入りすぎていたので、後半に入ってからのほうが、人生においての幸せを感じます」と、あるインタビューでコメント。ひとつひとつの役どころに今まで以上に向き合えるようになったことで、俳優としてさらに成長できたように感じる、とWEBメディアのインタビュー記事などでも振り返っている。

葛藤を経て自分自身を成長させ、2023年に出演したドラマ「弁護士ソドム」(2023年、テレビ東京系)では、初の弁護士役としてダークヒーローにも挑戦。これまでの“さわやかな好青年”なイメージを覆し、役の幅を一気に広げた。

プロお墨付きの英語力で海外作品へと踏み出す

一方、彼の活躍を語るうえで欠かせないのが“英語”だろう。2014年にイタリアで行われた第9回ローマ国際映画祭にて、流暢なイタリア語と英語でスピーチを披露。その英語力はプロのお墨付きで、ハリウッド映画の日本人キャスティングを担当している奈良橋陽子は「発音はもちろん、正直な気持ちを伝える、感情表現が素晴らしい」と絶賛した。

福士の英語力は2014年に公開された映画「名探偵コナン 異次元の狙撃手(スナイパー)」でも発揮され、元米軍特殊部隊の隊員ケビン・ヨシノ役として英語のセリフを見事にアフレコしている。

英語に関しては独学で、留学などの経験もない福士だが、小学生時代に地球儀で日本が小さいことを知り、“外に出てみたい”と強く思ったことをきっかけに英語が好きになったそう。また中学時代には担任の先生から「発音がいい」と褒められたこともあり、英検2級を取得するほど勉強に励んだという。

こういった努力の積み重ねもあってか、最近は海外ドラマ「THE HEAD」Season2(動画配信サービス「Hulu」で独占配信中)にも出演。本作はSeason1に続く極限の心理サバイバル・スリラーとなっており、ある日巨大貨物船を装った“秘密研究基地”で首のない死体が発見される。そしてそこに居合わせた科学チームのメンバーたちは犯人探しを始めたことで、疑念をぶつけ合う心理戦が描かれていく。

本作で福士が演じるのは、コンピューター・エンジニアのユウト・ナカムラ。自身初となる海外作品で全編英語セリフに挑戦しており、本作について「大きな船出になった作品」といったコメントも残している。

持ち前の英語力はもちろん、どのような役柄でも柔軟に対応できる福士。これまでのキャリアや経験を武器に、今後は海外作品でもマルチな才能を発揮する機会が増えてくるかもしれない。