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前代未聞の“一律料金”システムで話題に!ネットでクリーニングを頼める「せんたく便」がヒットした理由

2024/04/19 17:30
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高価な衣類の洗濯やアイロンがけ、しみ抜きなどをプロの手で行ってくれるクリーニングサービス。クリーニングに出したいものを店舗に持ち込み、再びお店を訪れて受け取る、という仕様が主流だ。しかし、近隣にクリーニング店がない人や大量の衣類を一度に運べず苦労している人、クリーニング後の衣類の保管に困っているという人も多いはず。

そんな問題を解決してくれるのが、「せんたく便」というサービス。システムは、オンラインでクリーニングを依頼すると集荷用のバッグが届き、クリーニングしたい衣類を指定の数詰めて送るだけ。しかもどんな衣類でも料金は一律だそうだ。さらに送った衣類をそのまま保管してくれるサービスもあるため、収納が限られたマンション住まいの人々を中心に人気を集めているのだが、真新しいサービスかと思いきや、2024年1月で15周年を迎えた。

今回は、新生活にぴったりな「せんたく便」の誕生秘話や“一律料金”を実現できる理由について、サービスを運営する株式会社ヨシハラシステムズ(以下、ヨシハラシステムズ) 代表取締役の吉原保さんに話を聞いた。

インターネット型のクリーニングサービス「せんたく便」。衣類の種類ではなく点数で料金が決まるという、ありそうでなかったシステムが話題に
インターネット型のクリーニングサービス「せんたく便」。衣類の種類ではなく点数で料金が決まるという、ありそうでなかったシステムが話題に


時代に合わせて考えられたシステムがヒットの鍵

「せんたく便」の始まりは、1960年に創業したとある地元密着型のクリーニング店。京都のクリーニング店に丁稚奉公していたヨシハラシステムズの初代社長が地元である滋賀県・彦根市に戻り、その技術を活用しようとスタートさせた事業だった。当時は、家に必ず誰かがいるような2、3世帯同居が当たり前の時代。依頼者の家に行けば衣類の預かりや受け渡しは容易だったため、“店舗を持たない”スタイルでの営業を開始した。

当時は車などで移動し、各家庭を巡回。クリーニングした衣類とこれから作業する衣類を交換して利用者とやり取りしていた
当時は車などで移動し、各家庭を巡回。クリーニングした衣類とこれから作業する衣類を交換して利用者とやり取りしていた


時代が変わり、70年代ごろになると核家族や共働き世帯が増加。家に誰もいないということもあり、利用者が都合のいい時間に行ける店舗型の需要が高まっていった。同時にスーパーなどの大型ショッピング施設も増え始めていたため、そうした施設内にクリーニング店をかまえる企業も多かったという。時代の変化とともに、“店舗を持たない”スタイルを確立するのが難しくなっていった。

そして、保さんの社長就任をきっかけに、ヨシハラシステムズは新たな挑戦をすることに。3代目社長である保さんは、ヨシハラシステムズを継ぐ以前はIT系企業を経営しており、クリーニング業とは無縁だったそう。企業を売却するタイミングと当時の社長である保さんの父が亡くなったことが重なり、2008年にヨシハラシステムズを引き継ぐことになった。

「私が社長に就任した当時、Amazonや楽天市場などの通販サイトが徐々に定着してきて、ネットでモノが売れる時代になり始めていました。そこで、『クリーニングもネットで流通する時代になる』と考えたんです。前職のシステム構築のノウハウを活かして、インターネットとクリーニングをうまく掛け合わせた事業を考案しました」

これが、2009年1月にサービスを開始した「せんたく便」だ。サービス開始直後、予想以上の反響を得たため、保さん自身も手ごたえを感じたのだとか。注目を浴びた理由としては、時代にマッチしたサービス形態、利便性の高さ、これまでにない画期的な料金形態が大きく影響していたと考えているという。

最短5日間できれいな衣類が自宅に戻ってくるという速さも魅力
最短5日間できれいな衣類が自宅に戻ってくるという速さも魅力

「せんたく便」は2024年でサービス開始15周年。歴史あるクリーニング店のノウハウが詰まったサービスで、着々と広がりを見せている
「せんたく便」は2024年でサービス開始15周年。歴史あるクリーニング店のノウハウが詰まったサービスで、着々と広がりを見せている


クリーニングなのに一律料金?システムに隠された意外な仕組み

「せんたく便」について、最も気になるのが“一律料金”という点。従来のクリーニングは衣類を渡してから料金が決まり、衣類の種類ごとに金額も異なるので、利用者は料金がいくらくらいになるのかざっくりとしか予測ができない。特にインターネットでクリーニングを依頼する際は、先に金額がわかっていないとなかなか利用しにくいはずだ。

さらに、利用者が「ワイシャツ」のつもりで持ち込んだものが「ブラウス」だと判断され、料金が変わってしまい混乱を招くなど、店舗型ですら料金トラブルが起こる可能性がある。お互いの顔が見えないネット上では、そういったトラブルがより起こりやすいのでは、という想定があったそうだ。こういった課題を解決するべく、「せんたく便」では料金設定を衣類の“種類”ではなく“点数”で行うことにしたという。

自宅に届く集荷用のバッグに衣類を入れて返送するだけ!
自宅に届く集荷用のバッグに衣類を入れて返送するだけ!


点数によって料金が決定するうえに送るだけ、と言われれば、コートやダウンといった通常では料金が高くなるものを依頼しようと思うのが消費者心理。それでは店舗型でのクリーニングよりもコストがかかってしまうように思えるが、運営に支障はないのだろうか。

「実は店舗で受けるときと『せんたく便』では、アベレージで見ると料金に大きく差がないんです。というのも、クリーニングにおいて最も工数がかかるのは、実はワイシャツ。その一方で、安価じゃないと利用者が増えないのでそれなりの価格にする必要もあり、赤字になるケースもあります。ですが、コートやダウンはワイシャツほどの工数はかからないので、赤字になることはありません。平均で見ると店舗型と『せんたく便』のコストはトントンになるんです」

クリーニングの免許を持ったスタッフが、ワイシャツの型を付けるプレス作業から仕上げまでを手作業で行う。しみ抜きやボタンの修繕、撥水加工や防虫加工、花粉防止加工など多彩なオプションも
クリーニングの免許を持ったスタッフが、ワイシャツの型を付けるプレス作業から仕上げまでを手作業で行う。しみ抜きやボタンの修繕、撥水加工や防虫加工、花粉防止加工など多彩なオプションも


コートやダウンなどに用いられるドライクリーニングは家庭ではできない洗濯方法だが、ワイシャツに用いられる水洗いほどの手間がなく、数も多くこなすことができる。結果として店舗型で受ける料金も「せんたく便」で受ける料金も同程度にすることができたうえ、作業効率もよくできたのだそう。

「もともとはオンラインショップのように、衣類の種類ごとにサービスを選択してカートに入れ、合計金額で会計するシステムを考えていたのですが、やめたんです。自分がお客様の立場に立って、ショッピングのようにクリーニングを楽しめるか?と考えたときに、そうは思えませんでした。なるべく手間をかけないように、安く済むように努めています。なので、一律料金にすれば簡単で何も考えなくて済むし、ラクだと考えたんです」

クリーニング後、「段ボールにそのまま入れて送られるとシワになる」という声が寄せられ、なるべくシワが残らないようにできないかと、10年もの歳月をかけて配送用のダンボールにも工夫を施した。それが、ハンガーを付けたまま梱包できるというもの。保さんは「ただ届けるだけではなくて、いかにきれいな状態で届けられるかを試行錯誤しました。現在もその途中だと思って、よりよいサービスを提供できるように日々考えています」と語った。

クリーニング後はシワになりにくいように工夫されたオリジナルのダンボールで自宅に届けられる
クリーニング後はシワになりにくいように工夫されたオリジナルのダンボールで自宅に届けられる


まるでクローゼット!QOLが高まる「保管パック」

一律料金を筆頭に手厚いサービスが行われている「せんたく便」だが、2010年から開始した、衣類を預けたままにできる「保管パック」にも注目したい。衣類を預けられるだけでなく、最大11カ月もの間、クリーニングやしみ抜き、ボタン修復なども行ってくれるというのだ。「『保管パック』は利用者の声からできたサービスなんです」と、保さんは語る。

「もともと『せんたく便』では“最短5日で戻ってくる”というサービスを売りにしていたんですが、お客様から『納期を延ばせないか』という問い合わせをいただくことがたびたびありました。工場ではところてん方式で届いた順に作業していて、納期を遅らせるという発想はなかったんです。長期間の預かりとなると、一人ひとり注文日と納期が変わってきて現場が混乱してしまうので、店舗ではなかなか管理できません。これは、インターネットならではの特徴を活かせると思いましたね」

たとえば、衣替えの時期に戻ってくるように納期の調整が可能。自宅のクローゼットを圧迫することもなく、どこかに預けたり取りに行ったりする手間も発生しない
たとえば、衣替えの時期に戻ってくるように納期の調整が可能。自宅のクローゼットを圧迫することもなく、どこかに預けたり取りに行ったりする手間も発生しない


そこでヨシハラシステムズでは1500坪もある倉庫を借り、預かった衣類を保管できるように。当初は広さと数の多さで誰の衣類がどこに保管されているのかわからなくなる問題が浮上したが、保さんは前職のノウハウを活かし、衣類が到着した際の検品時にタグ付けと写真撮影を行い、ロケーション管理の設定をすることでクリアした。

「この写真は公式サイトのマイページからも確認することができ、無事に届いていることや今の状態がクリーニング前なのか保管中なのかのステータス表示もあって、安心して預けていただけると思います。長期間になると何を預けているのかもわからなくなることがあるので、それを確認することも可能です。本当にご自宅のクローゼットのように使っていただけると思います」

集荷した衣類を検品する際は、自社で構築したシステムに情報を登録。その後はシステムによってステータスも管理されるので複雑な管理をしなくて済む
集荷した衣類を検品する際は、自社で構築したシステムに情報を登録。その後はシステムによってステータスも管理されるので複雑な管理をしなくて済む


どこにどのような状態で保管されているのかを写真とともに管理することで、利用者に返送する際に、大人数で捜索しなくても少ない人数でスムーズに対応できる。こうしたサービスは、自社でのシステム構築を行っているからこそできることなのだとか。さらに、繁忙期に起こりやすい納期遅延の問題も少なくなり、管理する側にとっても利用者側にとっても非常に便利なシステムになっている。

保さんが構築したこのシステムは、クリーニングクラウドとして同業者への提供も行うほど、クリーニング業界では革新的な取り組みとなった。保さんは「こうした人海戦術が必要となるような部分をシステムに担ってもらい、管理することで、『せんたく便』自体の利用料金を抑えるなど、お客様への還元につながるんです」と語った。

「『せんたく便』は、主にマンション住まいのファミリー層に多く利用いただいてます。その理由は、一軒家とは異なり収納スペースが限られていることと、自家用車を持たず徒歩や自転車での移動が中心で重たい衣類をクリーニングに出せない、いわゆる『クリーニング難民』が多いことが考えられます」

同じような理由から、1Kや1Rといった敷面積の小さいマンションに住む単身者からの需要も高いそうだ。さらに、近年では「保管パック」の利用者が年々増えてきており、2025年には半数を超えてくるのではないかと予想されている。時代の変化にサービスがうまくマッチした結果なのだろう。

「保管パック」でも基本的には同じように集荷されるのでとても簡単!
「保管パック」でも基本的には同じように集荷されるのでとても簡単!


クリーニングとITを掛け合わせて新たなソリューションを提供する

今後、「せんたく便」ではさらに便利なサービスを増やすことを目標しているという。たとえば、2024年4月からは革バッグの染め直しサービスを開始するなど、衣類以外も対応できるようにしていきたいそうだ。専門的な業者との連携を強化していき、クリーニングサービスとしてできる分野を増やしていきたいと考えているのだとか。

「クリーニング、メンテナンス、IT・システムなどを掛け合わせて、新しい市場を開拓していきたいと考えています。お客様への良質なサービスの提供はもちろんですが、クリーニング業界全体をよりよくしていきたいですね」

また、新たな試みとして、着物レンタル事業を行う「京都かしきもの」と連携し、着物レンタルの発注・貸出・出荷・メンテナンスのサービスもスタート。「せんたく便」のシステムを駆使し、レンタル着物の管理も同じように行うことができるという。さらに、「『せんたく便』のシステムにはまだまだ可能性があります。システムそのものを販売し、多くの企業やその先にいる利用者を喜ばせたい」と、保さん。

「せんたく便」のノウハウを活用した新事業も展開している
「せんたく便」のノウハウを活用した新事業も展開している

「せんたく便」のシステムを応用し、今後もさまざまなサービスを増やしていくという
「せんたく便」のシステムを応用し、今後もさまざまなサービスを増やしていくという


歴史あるクリーニング店が発案した「せんたく便」。シンプルかつ豊富なサービスに、多くの人々が助けられている。新生活で困りごとが増え始める今こそ、衣類や収納を整える手助けをしてくれるはずだ。

取材・文=織田繭(にげば企画)

せんたく便 公式サイト:https://www.sentakubin.co.jp/

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