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「いじめ解決支援サービスを選択肢のひとつに!」ひとりで抱え込まず、家族だけで悩まず…第三者が介入するメリットとは?

2024/02/08 19:00
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2023年5月31日に誕生した新しいいじめ対策アプリ「MONSTER(モンスター)」を知っているだろうか?2022年5月に設立した株式会社KODOMOTONA(コドモトナ)からリリースされたサブスク制のサービスで、LINEから登録して使うことができる。

文部科学省が発表した「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」によれば、小・中・高等学校および特別支援学校における2022年度のいじめ認知件数は約68万2000件で過去最高件数を更新しており、深刻さは年々増している。いじめ問題が原因で不登校・引きこもりになってしまったり、自ら命を絶ってしまったりと、最悪なケースに発展することもあり、早急な対応が求められるが、いじめというのはそれぞれのケースで状況も異なり、解決まで時間がかかってしまうこともしばしばだ。

KODOMOTONA(コドモトナ)が打ち出した、いじめ解決支援サービス「MONSTER(モンスター)」。オンライン上でいじめの証拠などを管理し、解決に向けたアクションを実行できる
KODOMOTONA(コドモトナ)が打ち出した、いじめ解決支援サービス「MONSTER(モンスター)」。オンライン上でいじめの証拠などを管理し、解決に向けたアクションを実行できる【画像提供=株式会社KODOMOTONA】

そんななかMONSTERでは、いじめの証拠データの管理をしたり、MONSTERが代理でいじめた子に対して注意喚起したり、MONSTERの弁護士からいじめた子の両親などに内容証明を送ることができるというものだ。深刻ないじめであればあるほど早急な対策を必要とするため、MONSTERでは3カ月を目安に解決への道筋を示すためのアクションを実行する。KODOMOTONAの代表取締役で、MONSTERを立ち上げた金泉愛理子さんに、MONSTERにかけた想いを聞いてみた。

いじめ自体はつらい経験でも、味方がいたというポジティブな気持ちを持ってもらいたい

大学在学中から起業をしてみたいと考えていたという金泉さん。大学では、情報系のゼミに所属し、ユニバーサルデザインやアクセシビリティ(障害者がほかの人と同様に施設・サービスを利用できること)、UI(ユーザーインターフェイス)やUX(ユーザーエクスペリエンス)などを専門領域としていたそう。

「これらの学問領域は『誰かのために、誰かを思って、身の回りの課題や問題に目を向けること』が出発点です。ゼミの先生からも『世の中の問題に対して、常にアンテナを張りなさい』とよく言われていて、そういった視点で社会を見ていました。学生時代は、思い返すと若くてバカだなぁとなるのですが、社長になりたかったんです(笑)。ゼミ仲間に『CEOになりたい!』と臆面もなく話していました。ただ、当時はビジネスも知らないし、どういったことを事業にしていきたいかという強い想いはなかったです。発想力やアイデア力を生かした仕事をしてみたいくらいのビジョンでした」

大学卒業後は外資系IT企業でエンジニアとして勤務。社会人経験を積んでいくうちに、起業への夢が具体的に膨らんでいったことにより、2016年にコンサルタントにキャリアチェンジをする。

「コンサルタントとして会社で働いていた際は、比較的幅広い業界・職種と関わることができました。おかげで、自分が会社を経営する立場になったとき、何をすればいいのか、何が必要なのかというのがわかりましたし、それによって経営者としての安定感や自信につながりました。事業に対するベースがあったからこそ『こんなものなのかな?』とか『よくわからないけど、まあいいか…』と妥協することもなく、自分の“こうしたい”という思いに集中して向き合うことができ、結果MONSTERも納得いく形でリリースすることができたと感じています。また、MONSTERの中長期ビジョンを描く際にもどういった業界とコラボしたらMONSTERがより発展してくのかというイメージができたのも、コンサルタント時代にさまざまな業界を見てきたからこそだと思います。そして、コンサル業界そのものがなかなかハードワークなので、その点でも鍛えられました」

金泉さんは2021年にフリーのコンサルタントとして独立、2022年5月にはKODOMOTONAを立ち上げているが、いじめ問題にフォーカスするようになったのは何がきっかけなのだろうか?

「コロナ禍ですね。子どもたちは外出自粛や学級閉鎖、黙食の徹底など、我慢しなければならないシーンが増えていきました。社会がピンチなときこそ、選択肢があることがとても大事なのではないかと感じたんです。いじめ問題に引き直して考えたとき、一般的に思い浮かぶ対応策は、無料相談窓口に電話してみようとか、学校に相談しようとか、クラスのアンケートで訴えてみようとかそういったことだと思います。ただ、いじめとひとくちに言っても、深刻度や質はそれぞれ違います。それぞれ質が異なることに対して同じアプローチをかけるのは効率も悪いですし、深刻なものほどスピーディーな対応が求められるなかで、結果として解決しにくい行動を積み上げてしまうことになるため、非常に危険であると考えています。なので、適切に状況に対応していくために、ベースとなる選択肢を提示していくことが大人としての役割だと思っていて、“いじめ対策の選択肢になる”ことに対してMONSTERは使命感を持って取り組んでいこうと決めています」

そしてもうひとつ、金泉さんのなかでは、いじめについて考えるようになった大きな出来事が子どものころにあったという。

「小学5年生のころなんですが、上級生とトラブルになって顔面を殴られてしまったことがあったんです。私がショックと恐怖で対処できずにいると、当時のクラスメイトの男の子が、毅然とした態度で先生にそのときの状況を説明してくれて、上級生にきちんと謝ってもらえるように助けてくれました。殴られたことはネガティブな出来事ですが、助けてもらえたということでこの思い出はポジティブなものとして自分のなかに残りました。このように、大人の側から困っている子どもたちに手を差し伸べることによって、いじめ自体は暗いしネガティブで嫌なものであるという事実はありますが、『あのとき助けてくれた人がいたな』という思いに将来変わっていってほしい。この気持ちもMONSTER立ち上げの大きな原動力となりました」

街中の子どもたちにインタビュー!現在のいじめ問題に即したアプリを開発

いじめ対策のアプリを開発するのにあたって、サービスのコンセプトや方向性を決めるために、金泉さんたちはさまざまな方向でリサーチを行った。

「ほかの社員と一緒に、街で小・中・高校生たちにひたすらインタビューをするということをしました。身の回りにいじめがあるのか、ないのか、相談できる人がいるのか、自分がいじめにあったときにどうするのか、どういったことをしてもらえたらうれしいかをひたすらインタビューしましたね。あとは、いじめ問題の解決に取り組んでいる方のところに行って意見交換をしたり、カンファレンスや座談会に行ったり、最新のいじめ問題に関しての統計分析もあわせて行っていきました」

ヒアリングを重ねていくことで、いじめ問題には“イマドキ”の世相が色濃く反映されていることを強く感じたそう。

「LINEやSNSで無視をされるとか、写真や映像でバカにされるとか。これまではリアルの対面だけで起きていたことが、オンライン上に広がっているというのを強く感じました。“コロナ禍ならでは”と感じたこととしては、相談相手として、X(旧Twitter)のフォロワーを頼るという意見があったことでしょうか。本来些細なことだったら身近にいる人が止められるのに、通学できないこともあって、いじめがオンラインに移行し、そこで発展してしまっているというのを感じました。それから、子ども同士のいじめとは違いますが、SNS上で見知らぬ大人から何かされそうになったという話も聞きましたね。XのDM(ダイレクトメッセージ)で変な映像を流されたとか、遊びに行こうと誘いを受けたとか。コロナ禍でリアルの接触が減った分、いじめの件数も減るのかな?と思いきや、最高件数を更新し続けている状態です。これは、いじめがデジタル化しているというのも一因かもしれません」

いじめによって深刻な事態を招いた事例に対し、被害者生徒がいじめを訴えても学校側が取り合ってくれず、いじめ自体を隠蔽されたというようなことも、報道されてきた。過去、隠蔽されてきたいじめ問題を学校側が積極的にいじめとして認定するようになったから、件数としてのいじめ増加につながっているということはないのだろうか?

「それも考えられると思います。教育現場にいらっしゃる方に話をうかがうと、いじめに対してなんとかしなければという意思は明確に感じます。教育現場での報告の仕組み化は進んでいて、いじめとして検知したものを件数としてカウントし、エスカレーションすることは徹底されてきており、隠していたものが見えてきているというのはあると思います。しかしながら、先ほどのオンラインの話もそうですが、子どもを取り囲む環境は日々大きく変わってきていますから、そこに起因した増加というのも多いと考えています」

こうしたリサーチや分析を踏まえ、「第三者の介入がいじめに対して最も効果的にストップをかけるだろう」「社会全体でのマネタイズができるだろう」という2つの仮説を土台にMONSTERの設計に取り掛かった。

「いじめ問題は社会全体の問題としてみんなの意識のなかにあると思うのです。そこで、開発当初、マネタイズは関係者以外の寄付や、関心による寄付というのを想定していました。子どもたちにヒアリングをすると、親には知られたくないという要望がすごく強かったんです。彼らの気持ちを尊重するべく、最初は子どもだけで利用ができる仕組みを考えていました。MONSTERが仲介しますが、いじめを止めてほしいというのを被害者の子どもから言ってもらい、そこに対してわかったと返事するのも加害者の子どもという形です。しかし、マネタイズも当事者以外からで、子どもを中心とした機能を実装するというコンセプトで進めていくとさまざまなところで歪みが出てきてしまいました。どうしてMONSTERを使うのかという動機も薄くなってきてしまって、このままではアプリとして使われないものになってしまうという懸念があり、仮説から根本的に見直しして、全部イチからやり直すことになりました」

そこで見直された仮説が「第三者の見守りによる抑止が有効だろう」「解決の主体は親子」というもの。これによってどんな機能が本当に必要なのか見えてきて、開発もしやすくなったという。しかし、MONSTERに対して好意的ではない意見もしばしばあったそうだ。

「プロダクトがまだない時期だったというのもあると思いますが、いじめ問題でお金稼ぎをするのは不謹慎だ、という意見をもらうことがありました。それと、MONSTERの中身がしっかり伝わればご理解いただけるのですが、“一般消費者向けのサブスク”としては月額3万円というのは感覚的・瞬間的に“高額”と受け取られてしまい、NPOのように無償に近い形で協力すべきと考える方々もいらっしゃり、好意的に受け取られないケースがありました。しかし、常識や既存の枠組みにとらわれていると、結局既存の形にしかなりません。そこから脱しなければという思いもあって、MONSTERの開発を進めていきました」

■株式会社KODOMOTONA
ホームページ:https://www.kodomotona.co.jp/

■MONSTER
ホームページ:https://www.monster-line.com/
※利用はLINEから登録、子どもの家族である大人のみ登録が可能
※「解決プラン」は月額3万3000円(税込)のサブスクリプション制プラン
※β版の運営を経て、2024年春頃にサービスを大幅リニューアル予定

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